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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日露行動計画の採択に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の共同声明

[場所] モスクワ
[年月日] 2003年1月10日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は、

 国際社会において、自由と民主主義の原則を基礎とした新たな形態の国家間協力の活発な形成過程が進んでいる現状において、世界における日本国とロシア連邦の役割と責任が増大しており、両国の協力の一層の強化が不可欠であるとの見解を共有し、

 国際連合憲章の目的と原則に基づく国際の平和と安全の強化及び国際的なテロリズムへの対策の問題を始めとする喫緊のグローバルな問題の解決のために、共通の努力を活発化することが重要であることを理解し、

 地球的及び地域的レベルにおける日本国とロシア連邦の協力の強化が両国関係の進展を促進するとともに、国際社会全体の利益に応えるものであることに立脚し、

 自由、民主主義、法の支配及び基本的人権の尊重という普遍的価値を共有する日本国とロシア連邦が、両国の戦略的・地政学的利益に合致する創造的パートナーシップの構築に向けて引き続き力を尽くす意向であることを確認し、

 ロシア連邦と主要諸外国との関係がそれぞれ構造的かつ肯定的な変化を遂げている中で、両国関係を、様々な分野における協力の活性化を通じて、その潜在力に見合ったレベルに引き上げることが求められており、このことがアジア太平洋地域情勢及び国際情勢全体に戦略的意義を与え得ることを認識し、

 両国関係における困難な過去の遺産を最終的に克服して広範な日露パートナーシップのための新たな地平線を開くことを志向し、1956年の日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言、1993年の日露関係に関する東京宣言、1998年の日本国とロシア連邦の間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言、2000年の平和条約問題に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明及び2001年の平和条約問題に関する交渉の今後の継続に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領のイルクーツク声明を含むこれまでに達成された諸合意に基づき、精力的な交渉を通じて、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより平和条約を可能な限り早期に締結し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきであるとの決意を確認し、

 2000年9月に署名された「貿易経済分野の協力の深化のためのプログラム」が両国間の貿易経済関係の進展に果たした役割を高く評価するとともに、両国間のこの分野での協力の潜在的可能性を更に幅広くかつ効果的に現実化していくことの必要性を指摘し、

 日本センターを通じた技術支援を含め、日本国の技術支援がロシア連邦の市場経済への移行を促進したことの意義を指摘するとともに、日本国が支持しているロシア連邦のWTO加盟を含め、ロシア連邦が国際経済体制に完全に統合されることが国際社会全体の利益に応えるものであることを確信し、

 2003年のロシア連邦における一連の日本国の文化行事等及び将来の日本国におけるロシア連邦の同様の行事の実施並びに両国の様々な層における人的交流の拡大が、日露両国の国民の間の友好、信頼及び相互理解の深化を一層促進することを確信し、

 日露協力の飛躍的かつ全面的な発展を確保するために具体的施策を採ることの重要性を強調して、

 附属する日露行動計画を採択するとともに、本行動計画を着実に実現していくために共同作業を行うとの両国の意思を表明した。

2003年1月10日

モスクワにて

日本国総理大臣

ロシア連邦大統領