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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回日露フォーラム 「グローバル化の中でのアジア太平洋地域における日露協力の展望―さらなる日露関係の発展を目指して」 総括文書

[場所] イルクーツク
[年月日] 2003年9月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 2003年9月12日、13日の両日、イルクーツクにおいて、日本側総合研究開発機構(NIRA)、並びに、ロシア側戦略策定センター及びイルクーツク州行政府の共催により、第3回日露フォーラム「グローバル化の中でのアジア太平洋地域における日露協力の展望−−−さらなる日露関係の発展を目指して」が開催された。本フォーラムの参加者及び来賓に対して、川口順子日本国外務大臣及びI.S.イワノフ・ロシア連邦外務大臣より挨拶文が寄せられた。本フォーラムは、日本及びロシアから各々政界、財界、学界及び民間の有識者が参加して開催され、有馬龍夫日本国政府代表とA.P.ロシュコフ・ロシア連邦外務次官が共同議長を務めた。

 日露フォーラムは、日露両国首脳間及び外務大臣間の決定に従い、両国国民の相互理解の深化を図り、平和条約の早期締結を含むあらゆる分野での両国関係進展の重要性を日本とロシアの世論に説明するための努力を活発化させていくことを目的として開催されるものである。このフォーラムの重要性は、2003年1月にモスクワにおいて小泉純一郎日本国総理大臣とV.V.プーチン・ロシア連邦大統領により採択された「日露行動計画」において確認されている。「日露行動計画」は、「学術研究機関を通じた共同フォーラム、セミナー及びその他の行事の実施を奨励する。特に、(中略)第3回日露フォーラム(中略)を開催することに関連する問題について協力する。」旨明記している。

 「グローバル化の中でのアジア太平洋地域における日露協力の展望」を全体テーマとする当初2回の日露フォーラムは、第1回(2001年1月)はモスクワにおいて、第2回(2002年5月)はサンクトペテルブルグにおいて、成功裡に開催された。その中で両国の参加者は、二国間関係の発展、平和条約締結交渉の進展、国際場裡における両国による共同行動の強化、さらに経済、文化その他の諸分野における協力を一層推進することの重要性と方法について、自由な意見交換を行った。テロリズム、薬物の密輸及び組織犯罪、並びに環境汚染との戦いに係わる諸問題について、大きな関心を持って議論が行われた。文化協力の拡大に関する諸問題に関する意見交換にも特別な注意が払われた。

 第3回日露フォーラムの参加者は、「経済投資分野における日露協力」、「アジア太平洋地域諸国間における協力強化の要因としてのエネルギー及び環境の分野における日露のパートナーシップ」及び「日露両国の相互理解・対話の深化を目指して」をテーマとして議論を行った。

 両国が、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属の問題を解決して早期に平和条約を締結することが重要であることが確認された。

 同時に、フォーラムの参加者は、日露両国は重要な戦略的パートナーであり、すべての分野で協力を発展させるべきであることを強調した。この関連で、様々な分野における両国間の相互理解の深化をどのような方法で図り、両国の共同行動をどのように具体的に発展させるかが検討された。

 第1セッションでは、「日露行動計画」において「貿易経済及び科学技術分野における協力は、二国間関係において戦略的な優先事項の一つ」であると位置づけられた二国間経済協力について議論を行った。日露経済関係が最近活発化していること、更に、好調なロシア経済の現状にも関連して日本企業のロシアへの関心が高まりつつあることが歓迎された。また、本フォーラムの参加者は、本年1月に小泉総理がロシア訪問に際しハバロフスクを訪れ、6月には川口外相がウラジオストクを訪問して貿易経済日露政府間委員会共同議長間会合及び官民合同の極東分科会会合が開催されたことをも受けて、日本国とロシアの極東地域との協力進展の気運が高まっていることを歓迎した。同時に、日露間の経済協力の潜在的可能性が極めて高く、これを活かしていくための互いの努力が重要であるとの一致した意見が表明された。

 第2セッションでは、現在、最も喫緊のグローバルな諸問題の一つとして、エネルギー分野及び同分野と密接に関係するテーマでもある環境分野の課題が検討された。

 極東シベリア地域における日露のエネルギー協力の活発な推進は、ロシアと、日本を含むダイナミックに発展するアジア太平洋地域の経済的な相互依存関係を強化するものであり、日露双方の経済的利益のみならず、北東アジア地域の安定と持続的発展にも貢献する戦略的・地政学的意義を有するものであるとの一致した意見が表明された。この関連で、フォーラムの参加者は、サハリン石油ガス・プロジェクトが、日本企業の参加の下、本格的な開発段階に入るとともに、アジア太平洋地域に向けられた石油パイプラインの建設によるものを含めた、極東シベリア地域におけるエネルギー資源の採掘・輸送システムの開発の進展についての更なる討議に相互の関心が示されていることを歓迎した。

 先鋭化する環境上の諸問題は、ますますグローバルな性格を帯びつつあり、この分野における日露間の協力の深化が、両国のみならず、アジア太平洋地域諸国及び国際社会全体の利益に適うものであることについて共通の認識が表明された。

 第3セッションにおいては、前回フォーラムでその開催の意義につき討議し、現在、ロシア各地で成功裡に実施されている「ロシアにおける日本文化フェスティバル-2003」等の、日露両国間の知的交流及び文化交流を活発化させる大規模な文化事業の実施が、両国民の友好と相互理解の強化にかかる両国首脳レベルの課題の効果的な解決に資することが確認された。また、文化的相互理解の成功例として、フォーラム参加者は、特に、近年、両国の文学作品が翻訳・出版され、幅広く読まれるようになっていることを評価した。この関連で、日露両国の社会の広い層において相互に対する関心を更に促進する必要性について一致した考えが示された。

 学術調査機関を通じて、両国で両国国民の相手国に対するイメージの客観的な調査を実施し、共同で調査結果を分析・考察することが、日露両国民間の相互理解の深化を更に促進するとの一致した見解が示された。フォーラムの参加者は、このような手段が、両国間の友好関係の発展のための「然るべき啓発資料の共同作成及び配布」に関する日露行動計画の規定の着実な実施に資するものと考える。

 フォーラムで表明された新鮮なアイデアの実現を積極的に促進すること、及び、両国世論による広範な支持を促進することが、新しい日露関係の建設と創造的パートナーシップへの順調な前進に対し本質的な貢献をするであろうということについて、共通の認識が表明された。

 更に、第3回日露フォーラムの参加者は、今回行われた議論が、首脳レベルで採択された「日露行動計画」の着実な実施を通じて平和条約締結交渉を含むすべての分野における二国間関係の前進に向け、日露両国における良好な世論形成に貢献することについての期待を表明した。

 第3回日露フォーラムの参加者の間において、第4回日露フォーラムを2004年に日本で開催することが合目的的であることに関し意見の一致がみられ、その具体的時期、場所について今後調整していくこととされた。