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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第4回日露フォーラム 「グローバル化の中でのアジア太平洋地域における日露関係の展望」 総括文書

[場所] 石川県金沢市
[年月日] 2004年10月21日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 2004年10月20日、21日の両日、石川県金沢市において、日本側の総合研究開発機構(NIRA)とロシア側の戦略策定センターの共催の下、第4回日露フォーラムが開催された。有馬龍夫日本国政府代表及びD.F.メーゼンツェフ・ロシア連邦院副議長が共同議長を務めた。フォーラムには、日露の各界の有識者が参加し、両国外務大臣よりメッセージが寄せられた。

 日露フォーラムは、2000年9月の森総理大臣とプーチン大統領との間の合意及びその後の両国外務大臣間の決定に従い、友好的な日露関係及び平和条約締結の重要性に関する両国国民の理解を深めることを目的として、毎年開催されてきており、2003年1月に両国首脳間で採択された「日露行動計画」においてその重要性が指摘されているほか、本年6月の日露外相会談においても、改めてその役割が高く評価された。

 第4回日露フォーラムの参加者は、「グローバル化の中でのアジア太平洋地域における日露関係の展望」という全体テーマの下、第1セッションでは「北東アジアの平和と安定に資する日露関係-歴史的視座に立って」、第2セッションでは「シベリア・極東と日本の交流-イルクーツクから石川へ」をテーマとして議論を行った。

 第1セッションにおいて、参加者は、2005年が日露修好150周年という歴史的に重要な節目の年となることを踏まえ、日露両国の協力関係発展の展望について中長期的観点から議論した。参加者は、様々な関連行事を両国において開催することによって、この歴史的な年を幅広く記念するよう呼びかけた。

 参加者は、さらに、アジア太平洋地域においてダイナミックに変化しつつある国際情勢を踏まえ、国際テロ対策等の治安分野で国境を越えた協力の重要性が高まっていること及びシベリア・極東地域の経済発展の加速化のためには同地域とアジア太平洋地域諸国とのより強化された経済分野の協力が必要であることに留意しつつ、日露関係の戦略的意義に特別の注意を向けた。

 参加者は、日露関係発展のための議員交流の重要な役割を指摘し、その一層の拡大を歓迎した。

 参加者は、両国関係は、近年様々な分野において着実な進展を見せてきている一方で、現状においては、いまだその大きな潜在力に見合う十分な水準に達しておらず、新たな次元へと関係の一層の進展を図っていくために努力すべきであると強調した。参加者は、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属の問題を解決して早期に平和条約を締結することが、両国関係の加速的発展を促進するであろうと指摘した。その関連で、参加者は、2005年初めに予定されているプーチンロシア連邦大統領の訪日は、日露間のより密接なパートナーシップ関係の構築に向けた新たな一歩となることへの期待を表明した。

 第2セッションにおいて、日本とロシアのシベリア・極東地方の間の様々な分野における交流の発展について議論が行われた。参加者は、近年、日本とシベリア・極東地方の間で活発な要人往来が行われ、日本企業の同地域への関心も著しく高まったと指摘した。

 また、2003年12月にその設立につき意見の一致をみた日露貿易投資促進機構について、本年6月の日本側機構の活動開始を歓迎するとともに、今後ロシア側機構の活動の早期開始への期待が表明された。日露間の経済分野の協力において明確な成果の見られるエネルギー分野につき、サハリン1、2プロジェクトの順調な進展が評価された。また、シベリア地域をアジア太平洋地域諸国に直結させる太平洋パイプライン・プロジェクトの日露双方にとっての戦略的重要性が確認された。

 参加者は、地方間の交流の強化が両国民の相互理解を促進することで一致し、この観点から、地方自治体間の活発な交流を高く評価した。また、地理的に近い日本海沿岸地域とシベリア・極東地域とが日露協力の拡大を進める上で重要な役割を担っている点で認識が一致した。

 第4回日露フォーラムの参加者は、日露両国国民の相互理解を促進する人的交流の拡大と観光の発展を支持した。また、参加者は、現在行われている日露青年交流事業を高く評価するとともに、将来の日露関係を築いていく青年間の交流のさらなる活発化を支持した。

 第4回日露フォーラムの参加者は、世界各地で頻発しているテロ事件、特にロシア国内において発生した一連のテロ事件に対して重大な懸念を表明し、国際テロリズムとの闘いは国際社会が一致して取り組むべき共通の課題であり、この問題での日露両国の協力強化の必要性を強調した。

 第4回日露フォーラムの参加者は、両国の世論に対し友好的な日露関係及び平和条約締結の重要性について一層の説明努力を行う必要がある点で意見の一致をみた。参加者は、相互理解を深め、両国の国民に関する正しい情報を伝える上で両国のマスコミ関係者の役割が重要であると指摘した。その関連で、第3回日露フォーラムでロシア側参加者より提言され先般実施された日本人ジャーナリスト・グループによる訪露を高く評価した。

 現在、「日露行動計画」の着実な実施を通じて日露関係があらゆる分野で発展している中、参加者は、このようなプロセスを深めていくことを支持した。

 参加者は、第5回日露フォーラムの開催の時期及び場所について今後調整していくこととした。