データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] エネルギーの個別分野における協力に関する細目

[場所] 東京
[年月日] 2005年11月21日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 日本側においては日本国経済産業省及び外務省、ロシア側においてはロシア連邦産業エネルギー省(以下「双方」という。)は、「エネルギー分野における日本国政府とロシア連邦政府との間の長期協力の基本的方向性」を実施する目的で、この「エネルギーの個別分野における協力に関する細目」(以下「細目」という。)を作成した。

1.油田の探鉱・開発、石油の輸送及び精製に関する協力

1.1. 双方は、自然環境に配慮しつつ、サハリン1・2プロジェクトの進展並びに関連する生産物分与協定及びビジネスの円滑な実施のための環境の整備に引き続き努力する。

1.2. 双方は、ロシア国内におけるロシア企業との共同での石油資源開発への日本企業の参加について検討する。

1.3. 「東シベリア-太平洋」パイプライン・システム建設プロジェクトにおける協力

 双方は、ロシアのタイシェット市(イルクーツク州)-スコヴォロジノ市(アムール州)-ペレヴォズナヤ湾(沿海地方)をルートとする石油パイプライン・システムの建設プロジェクトの早期かつ完全な実現が両国の戦略的利益に合致し、ロシア連邦の東シベリア及び極東地域の経済発展、並びにアジア太平洋地域のエネルギー市場の安定化を促進すると考える。

 ロシア側は、上記パイプライン・システムの第一段階の建設終了後ペレヴォズナヤ湾から相当量の石油及び石油製品が輸出されることを表明した。ロシア側は、プロジェクトの第二段階の実現に早期に移行するよう追求する。日本側はこのようなアプローチを歓迎する。

 双方は、上記パイプライン・システムの第二段階の建設の実現に関連する可能な協力についての両国の企業及び機関間の交渉が開始されることを歓迎し、その加速化を支援する。双方は、これらの企業及び機関による互恵的合意の達成及びその実施のための条件について協議する。双方は、この協議の結果、2006年のできるだけ早い時期までに相互了解に達することを目指す。このことは、上記パイプライン・システムの第二段階建設の実現を加速する。

2.ガス田の探鉱・開発、ガスの輸送及び加工における協力

2.1. 双方は、日本国経済産業省資源エネルギー庁と公開株式会社「ガスプロム」との間の協力に関する枠組みが合意されたことを歓迎し、その実施にあたり支援を行う。

2.2. 双方は、エネルギー分野、産業、公共事業におけるガスの利用に関する先端技術分野について、エネルギー資源を節約する目的でのガス供給及びガス消費の自動的管理監督システムについて、新しい種類の燃料の開発並びにガス輸送システムへの新しい素材及び機材の応用の可能性の研究についての協力が目下の課題であることを認識する。

2.3. ロシア側は日本側に対して、サヤンスク市におけるガス加工コンプレクスの建設プロジェクトへの日本からの投資の可能性を検討するよう提案した。

3.炭田の探鉱・開発、石炭の輸送及び加工における協力

 双方は、ロシア国内における大規模で有望な石炭プロジェクトへの両国企業の共同参加問題につき検討する。

4.電力、再生可能及び新しいエネルギー源、エネルギー分野でのハイテクの発達に向けた協力

4.1. 双方は、以下の分野における協力の可能性を検討する。

○複合火力化の方法等によるガス火力発電所の近代化及び拡張、並びに発電所の新設

○再生可能エネルギー源の利用に関する情報交換

○潮力発電、風力発電、風力ディーゼル発電、地熱発電を含めた近代的な発電所の建設

4.2. 日本側は、ロシア側によって提案された下記のプロジェクトに関し、ロシア側の提案を具体的に聞いた上で、協力の可能性を検討する意向を表明した。

○沿海地方、マガダン州、サハリン及びカムチャツカにおけるシステマティックな風力エネルギー及び風力ディーゼル発電所の建設

○カムチャツカの第一及び第二火力発電所の技術的更新

○ヴェルフネ・ムトノフスカヤ地熱発電所における第4発電ユニットの建設

○ヴェルフネ・パラトゥンスコエ鉱床の地熱資源の温熱供給システムにおける利用

5.エネルギー効率の向上と省エネルギー推進に向けた協力

5.1. 双方は、以下を実施する意向を有している。

○エネルギー効率の向上のための研究プロジェクトに関する情報交換

○エネルギーの効率的な利用のメカニズム形成についての協力

○省エネルギー分野におけるロシアの専門家育成に関する協力

5.2. 日本側は、ロシア側によって提案された下記のプロジェクトに関し、ロシア側の提案を具体的に聞いた上で、協力の可能性を検討する意向を表明した。

○カムチャツカ州の電力自動料金管理システム及びエネルギー消費者向け周波制御送電線の設置を含む省エネルギー事業の実現

○カムチャツカ州におけるボイラーの「沸騰層」内での固体燃料燃焼への移行による再建

この細目は、双方の決定により、修正ないし追加することができる。

日本国外務大臣

麻生太郎

日本国経済産業大臣

二階俊博

ロシア連邦

産業エネルギー大臣

V.B.フリステンコ

東京 2005年11月21日