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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 税関に係る事項における協力及び相互支援に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定

[場所] 東京
[年月日] 2009年5月12日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びロシア連邦政府(以下「両締約国政府」という。)は、

 関税法令に対する違反は、それぞれの国の経済、財政、社会、文化及び商業上の利益を害するものであることを考慮し、

 関税及び租税の正確な査定を確保すること並びに物品を禁止し、制限し、及び規制する措置の適正な執行を確保することの重要性を考慮し、

 それぞれの国の関税法令の運用及び執行に関する事項における国際協力の必要性を認識し、

 両税関当局間の協力が関税法令違反に対する行動を一層効果的なものとし得ることを確信し、

 千九百五十三年十二月五日付けの相互行政支援に関する関税協力理事会の勧告を考慮して、

 次のとおり協定した。

   第一条 定義

 この協定の適用上、

 (a)「税関当局」とは、日本国にあっては財務省、ロシア連邦にあっては連邦税関庁をいう。

 (b)「関税法令」とは、両税関当局が運用し、及び執行する法令であって、物品の輸入、輸出及び通過を規律し、並びに物品をその他の税関手続の管理下に置くもの(両税関当局の権限の範囲内において物品を禁止し、制限し、及び規制する措置を含む。)をいう。

 (c)「情報」とは、データ、文書、報告その他のあらゆる形式の連絡をいう。

 (d)「関税法令違反」とは、関税法令の違反及びその未遂をいう。

 (e)「者」とは、自然人又は法人をいう。

 (f)「要請当局」とは、支援を要請する税関当局をいう。

 (g)「被要請当局」とは、支援を要請される税関当局をいう。

 (h)「監視付移転」とは、犯罪を調査するため、及び犯罪を実行し、又はその実行に関与した者を特定するため、日本国及びロシア連邦の権限のある当局が、事情を知りながら、かつ、その監視の下に、自国の法令に従い、不正な又はその疑いがある送り荷が日本国とロシア連邦との間を移動することを認めることとする方法をいう。

   第二条 この協定の適用範囲

1 両締約国政府は、関税法令の適正な適用の確保並びに関税法令違反の防止、調査及び抑止のため、この協定に従い、両税関当局を通じて相互に支援する。

2 両締約国政府は、物品の移動を迅速にするため、両税関当局を通じてそれぞれの税関手続の簡素化及び調和のための協力的な努力を払う。

3 この協定は、各締約国政府の国の法令に従い、かつ、それぞれの税関当局の権限及び利用可能な資源の範囲内で実施される。

4 この協定は、他の国際協定に基づく両締約国政府の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

   第三条 相互支援

1 両税関当局は、要請に応じ、又は自己の発意により、関税法令の適正な適用の確保並びに関税法令違反の防止、調査及び抑止のために必要な情報(関税及び租税の正確な査定及び徴収に資すると思われる情報を含む。)を相互に提供する。

2 いずれの一方の税関当局も、自己の発意により、又は要請に応じ、他方の税関当局の属する国において関税法令違反となるおそれがある行動に関して有する情報を当該他方の税関当局に提供する。

3 いずれの一方の税関当局も、その有する情報が他方の税関当局の属する国の経済、公衆衛生、公共の安全その他の重要な利益に実質的な損害を与え得る深刻な関税法令違反に関連すると考える場合には、当該一方の税関当局は、自己の発意により、当該他方の税関当局に当該情報を提供する。

   第四条 要請に基づく支援

 被要請当局は、次の情報を提供する。

 (a)物品が、日本国とロシア連邦との間でそれぞれの国の法令に従って輸送されたか否かに関する情報

 (b)物品の通関の際に用いられる税関手続がある場合には、当該手続に関する情報

 (c)物品の輸送及び船積みに関する情報であって、当該物品の価額、原産国、処分及び仕向地を示すもの

   第五条 監視

 被要請当局は、その利用可能な資源の範囲内で、次のものについて監視及び要請当局に対する情報提供を行う。

 (a)要請当局の属する国において関税法令違反を犯したことが知られており、又は疑われている者

 (b)要請当局の属する国において関税法令違反の行為のために使用されていることが知られており、又は疑われている物品

 (c)要請当局の属する国において関税法令違反の行為のために使用されていることが知られており、又は疑われている輸送手段

 (d)要請当局の属する国において関税法令違反の行為に関連して使用されていることが知られており、又は疑われている施設

   第六条 注意を要する品目

 両税関当局は、要請に応じ、又は自己の発意により、関税法令違反を構成し、又は構成する疑いがある行動が発見され、又は計画されている場合には、当該行動に関連する情報(特に次のものの移動に関するもの)を相互に提供する。

 (a)麻薬、向精神薬及び前駆物質

 (b)武器、弾薬、爆発物及び爆発装置、放射性物質並びに環境及び公衆衛生に害を及ぼすその他の物質

 (c)知的財産権を侵害する物品

 (d)両締約国政府の一方の国にとって歴史的、文化的又は考古学的に重要な価値のあるこっとう及び美術品

 (e)高額の関税が課される物品

 (f)関税以外の制限が課される物品

   第七条 監視付移転

 両税関当局は、必要な場合には関連法執行機関と協議の上、監視付移転について協力し、及び情報を交換することができる。

   第八条 要請の形式及び内容

1 この協定に基づく要請は、英語による書面にて行われる。要請には、要請される支援の実施に有益と認められる情報を添付する。緊急な事情によりやむを得ない場合には、口頭による要請であっても承認され得る。ただし、そのような要請は、速やかに書面にて確認される。

2 1の規定に従って行う要請には、次の情報を含めるものとする。

 (a)要請当局の名称

 (b)要請に関連する手続の種類

 (c)要請の目的及び理由

 (d)判明している場合には、要請に関係する者の氏名又は名称及び住所

 (e)検討されている事案の簡潔な説明及び関連する法令

3 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定に従って提供される情報は、両税関当局のそれぞれが指定する職員の間で直接伝達される。両税関当局は、指定する職員を通報する。

   第九条 要請の実施

1 被要請当局は、この協定に基づき要請された支援を実施するため、すべての合理的な措置をとる。

2 被要請当局が同意する場合には、要請当局が特別に指定する職員は、当該被要請当局が課す条件の下で、当該被要請当局が自国において行う質問に立ち会うことができる。この目的のため、当該被要請当局は、支援の要請に応じて質問を行う時期及び場所を当該要請当局に通報する。

3 要請された支援が実施できない場合には、要請当局は、速やかにその旨を通報されるものとし、また、当該要請について支援の実施を延期する理由又は支援の拒否の理由を記した書面を受領する。当該書面には、当該要請当局が当該要請を更に行うために有益となり得る関連情報を添付することができる。

   第十条 情報の使用

1 この協定に従って入手した情報は、この協定に定める目的のためにのみ使用される。当該情報は、当該情報を提供する税関当局が他の機関(仲裁裁判所を含む。)による使用を明示的に書面で承認した場合を除くほか、他の機関に伝達されない。

2 1の後段の規定にかかわらず、この協定に従って情報を提供した税関当局が別段の通報を行う場合を除くほか、当該情報を入手した税関当局は、当該情報を自国の関連法執行機関に提供することができる。当該関連法執行機関は、1の前段、3及び4並びに次条に定める条件の下で当該情報を使用することができる。

3 この協定に従って税関当局が入手した情報は、刑事の捜査、訴追又は司法上の手続において証拠として使用されてはならない。

4 この協定に従って一方の税関当局が入手した情報が刑事の捜査、訴追又は司法上の手続において証拠として必要とされる場合には、当該情報に関する要請は、外交上の経路又は他方の締約国の国内法に定める経路を通じて提出される。

5 この協定に従って税関当局が入手した情報(被要請当局によって真正な写しであることを認められた文書を含む。)は、関税法令違反に関する行政手続において、1の規定に従うことを条件として使用することができる。

   第十一条 秘密性

1 この協定に従って入手したいかなる情報も、秘密のものとして取り扱うものとし、かつ、情報を入手した税関当局の属する国の法令に基づき同種の情報に与えられている保護と少なくとも同程度の保護が与えられる。ただし、情報を提供した税関当局が当該情報の開示に事前の同意を与えた場合は、この限りでない。

2 1の規定の適用を妨げることなく、この協定に基づき要請当局及び他の機関において情報を受領する者は、当該要請当局及び他の機関の職員に限られるものとし、当該情報は、当該職員以外のいかなる者にも開示されない。

   第十二条 例外

1 第十条及び前条の規定は、情報を入手した税関当局の属する国の法令に基づき義務付けられている限度において、情報が使用され、又は開示されることを妨げない。当該税関当局は、可能な限り、情報を提供した税関当局に対し当該開示について事前に通報する。

2 締約国政府は、この協定に基づく支援がその国の主権、安全、公共政策その他の重要な利益を侵害すると考える場合には、支援を拒否し、若しくは保留することができ、又は一定の条件若しくは要件が満たされることを支援の条件とすることができる。

3 要請当局は、同様の要請が被要請当局により行われたならば支援を実施することができない場合には、要請の中でその事実について注意を喚起する。そのような要請に基づく支援の実施は、被要請当局の裁量にゆだねられる。

4 被要請当局は、要請された支援の実施が現に行われている調査、訴追又は司法上の手続を妨げることを理由として、その支援の実施を保留することができる。この場合には、被要請当局は、一定の条件を付することにより支援を行う可能性について判断するため、要請当局と協議する。

   第十三条 技術協力

1 両税関当局は、税関手続並びに税関管理のための装置及び技術の向上、税関職員の教育及び訓練並びに人的交流の分野において協力することができる。

2 両税関当局は、関税法令違反の行為の新たな傾向、手段又は方法及びその他相互に関心を有する事項について協力し、及び情報を交換することができる。

   第十四条 費用

 両締約国政府は、この協定を実施するに当たって必要となる費用の支払を請求しない。

   第十五条 協定の実施

1 両締約国政府は、必要に応じ、この協定の解釈又は適用に際して生ずるいかなる問題に関しても、外交上の経路を通じて協議することができる。

2 この協定を実施するための詳細な取決めは、必要に応じて、両税関当局間で締結される。

3 両税関当局は、その監督下において、両税関当局の中央及び地域の調査部門並びに適当な場合にはその他の部門が相互に直接連絡するよう措置をとることができる。

   第十六条 見出し

 この協定中の条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を及ぼすものではない。

   第十七条 効力の発生及び終了

1 この協定は、署名の日に効力を生ずる。

2 この協定は、無期限に効力を有する。ただし、一方の締約国政府は、他方の締約国政府に対して書面による通告を行うことにより、この協定をいつでも終了させることができる。その終了は、当該他方の締約国政府に対する通告を行った日から三箇月で効力を生ずる。この協定の終了の前に受領した支援の要請については、この協定に従って完了させるものとする。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

 二千九年五月十二日に東京で、ひとしく正文である日本語、ロシア語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

 日本国政府のために

 ロシア連邦政府のために