データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 通商に関する日本国とインドとの間の協定

[場所] 
[年月日] 1958年2月4日
[出典] 外交青書3号,201−203頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びインド政府は、

 両国間の通商を容易にし、及び発展させることを希望して、次のとおり協定した。

 第一条

1 すべての種類の関税及び課徴金で輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連する規則手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ無条件に与えられるものとする。

2 前項の規定は、日本国に対し、インドが英連邦諸国に与える特恵若しくは利益又はインドが国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益の享受を要求する権利を与えるものではない。

 第二条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における直接又は間接の支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、他方の締約国において随時有効な法令に従つていかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの禁止又は制限をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に禁止され、又は制限されている場合は、この限りでない。

3 前二項の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、その対外財政状態及び国際収支を擁護するため必要な措置を執ることができる。

 第三条

1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域に入り、同領域に滞在し、同領域内を旅行し、又は同領域に居住することを許される。ただし、この権利の享有は、一般的にすべての外国人に同様に適用される当該他方の締約国の法令に従うことを条件とする。

2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判を受けること、契約の締結及び履行、財産権(有体財産及び無体財産に関するもの)、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項について、最恵国待遇を与えられる。

 前記の規定にかかわらず、締約国は、相互主義に基き、又は二重課税の回避若しくは歳入の相互的保護のための協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。

 第四条

 両締約国は、相互の利益のため、両国間の貿易を発展させ、及び経済関係を強化すること並びに、特にそれぞれの領域内における経済の発展及び生活水準の向上に資するため、科学及び技術に関する知識の交換及び利用を促進することを目的として協力することを約束する。

 第五条

1 各締約国は所在地のいかんを問わず国家企業を設立し、若しくは維持し、又いずれかの企業若しくは機関に対して排他的の若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは、それらの企業又は機関を、輸入又は輸出を伴う購入又は販売に際し、この協定に基いて他方の締約国に与えられる利益を無効にし、又は侵害するような方法で行動させないことを約束する。この目的のため、第二条の規定に従うことを条件として、それらの企業又は機関は、すべての購入又は販売を商業上考慮される事項(価格、品質、入手可能性、市場性その他購入又は販売の条件をいう。)に従つてのみ行わなければならず、また、他方の締約国の企業に対し、前記の購入又は販売に参加するために競争する適当な機会を通常の商慣行に従つて与えなければならない。

2 前項の規定は、再販売するため又は販売のための貨物の生産に使用するためではなく、直接に又は最終的に政府として消費する産品の輸入には、適用しない。各締約国は、そのような輸入に関しては、他方の締約国の貿易に対して公正かつ衡平な待遇を与えなければならない。

 第六条

1 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の商船及び第三国の商船と均等の条件で、外国との間における通商及び航海のため開放されている他方の締約国のすべての港、場所及び水域に旅客及び積荷とともに入ることができる。これらの船舶は、当該他方の締約国の港、場所及び水域において、すべての事項に関して最恵国待遇を与えられる。

2 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の領域に又はその領域から船舶で輸送することができるすべての貨物及び人を輸送する権利に関して、当該他方の締約国によつて最恵国待遇を与えられる。これらの貨物及び人は、関税その他すべての課徴金及び手数料、奨励金及び関税の払いもどしその他この種の特権並びに税関事務に関して、当該他方の締約国の商船で輸送される同様の貨物及び人が与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

3 各締約国は、沿岸貿易に従事する権利を自国の船舶のみに留保することができる。ただし、この制限がすべての第三国の船舶に適用されることを条件とする。

 もつとも、いずれの一方の締約国の商船も、外国で積載した旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を陸揚し、又は外国向けの旅客若しくは貨物の全部若しくは一部を積載する目的をもつて、他方の締約国の領域内のいずれかの港から他の港に向つて航海を続けることができる。

4(1) いずれの一方の締約国も、他方の締約国の船舶に対し、難破、海上損害又は不可抗力による寄航の場合には、同様の場合に自国の船舶に与えると同一の援助、保護及び免除を与えるものとする。それらの船舶から救い上げられた物品は、すべての関税を免除される。ただし、それらの物品が適当な期間内に保税地域から国内消費のため搬出されない場合に限る。

 (2) いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の沿岸で座礁し、又は難破した場合には、当該他方の締約国の当局は、もよりの地にある船舶所属国の権限がある領事官にそれを通告するものとする。

 第七条

 各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施から又はそれに関連して生ずる問題に関して行う申入れに対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。

 第八条

1 この協定は、批准されなければならず、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかにニュー・デリーで行われるものとする。

2 この協定は、効力発生の日から二年の期間効力を有し、その後も効力を存続する。ただし、この協定は、いずれか一方の政府が他方の政府に対しこの協定を終了させる意思を少くとも三箇月の予告をもつて書面により通告した場合には、前記の二年の期間の終了の日に又はその後に終了する。

 以上の証拠として、このために正当に委任された両政府の代表者は、この協定に署名した。

  千九百五十八年二月四日に東京で、英語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために  藤山愛一郎

 インド政府のために  チャンドラ・シェクハール・ジャー