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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とインドとの間の協定

[場所] ニュー・デリー
[年月日] 1960年1月5日
[出典] 外務省,条約集
[備考] 訳文
[全文]

昭和三五年一月五日ニュー・デリーで署名

昭和三五年四月二〇日国会承認

昭和三五年六月一〇日批准の内閣決定

昭和三五年六月一〇日批准書認証

昭和三五年六月一三日東京で批准書交換

昭和三五年六月一三日公布(条約第五号)

昭和三五年六月一三日効力発生

前文

 日本国政府及びインド政府は、

 所得税に対する租税に関して二重課税を回避するための協定を締結することを希望して、

 そのため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

日本国政府

 インド駐在日本特命全権大使

 農学博士 那須 皓

インド政府

 インド政府歳入歳出大臣

 ドクトル B・ゴパラ・レディ

 これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、

 次のとおり協定した。

 第一条

対象となる租税

(1)この協定の対象である租税は、次のものとする。

 (a)インドにおいては、

 千九百二十二年のインド所得税法(千九百二十二年の第十一号)に基づいて課される所得税、附加税及び加重税(以下「インドの租税」という。)

 (b)日本国においては、

 所得税及び法人税(以下「日本国の租税」という。)

(2)この協定は、所得又は利得に対する他の租税で、(1)に掲げる租税と実質的に同様の性質を有し、かつ、この協定の署名の日の後にいずれの一方の締約国によつて課されるものについても、また、適用する。

 第二条

定義

(1)この協定において、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

 (a)(i)「インド」とは、地理的意味で用いる場合には、インドの租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう。

   (ii)「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう。

 (b)「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はインドをいう。

 (c)「租税」とは、文脈により、日本国の租税又はインドの租税をいう。

 (d)「日本の法人」とは、日本国内に本店又は主たる事務所を有する法人又は法人格を有しない団体で、その事業がインドにおいて全面的に管理されず、かつ、支配されていないものをいい、「インドの法人」とは、インドにおいて設立され、又は事業がインドにおいて全面的に管理され、かつ、支配されている団体で、インドの租税の課税上法人として取り扱われるものであつて、日本国内に本店又は主たる事務所を有しないものをいう。

 (e)「日本国の居住者」とは、日本国の租税の課税上日本国の居住者であり、かつ、インドの租税の課税上インドの居住者でない個人及び日本の法人をいい、「インドの居住者」とは、自然人又はインドの租税の課税上課税単位として取り扱われるインドの法人以外の団体であつて、インドの租税の課税上インドの居住者であり、かつ、日本国の租税の課税上日本国の居住者でないもの及びインドの法人をいう。

 (f)「一方の締約国の法人」及び「他方の締約国の法人」とは、文脈により、日本の法人又はインドの法人をいう。

 (g)「日本の企業」とは、日本国の居住者が営む産業上又は商業上の企業又は事業をいい、「インドの企業」とは、インドの居住者が営む産業上又は商業上の企業又は事業をいう。

 (h)「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、文脈により、日本の企業又はインドの企業をいう。

 (i)「恒久的施設」とは、事業を行なう一定の場所で企業が事業を行なつているものをいう。

  (i)「事業を行なう一定の場所」とは、支店、事務所、工場、作業場、倉庫及び鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所を含む。

  (ii)一方の締約国の企業が他方の締約国内で建設工事若しくは組立工事又はこれらに類する工事を行なう場合には、当該一方の締約国の企業は、当該他方の締約国内に事業を行なう一定の場所を有するものとされる。

  (iii)物品又は商品の購入が行なわれる国において、それらの物品又は商品の加工のためでなく、もつぱらそれらの物品又は商品の購入のために単なる貯蔵施設を使用し、又はそのために事業を行なう場所を保有することは、恒久的施設を有することとはならない。

  (iv)一方の締約国内で他方の締約国の企業のために又はこれに代わつて行動する者は、次の場合には、当該一方の締約国内における恒久的施設とされる。

A その者が、当該一方の締約国内で、当該企業のために又はこれに代わつて契約を協議し、及び締結する包括的権限を有し、かつ、これを常習的に行使する場合。ただし、その者の行動が当該企業のために又はこれに代わつてもつぱら物品又は商品を購入することに限られる場合は、この限りでない。

B その者が、当該一方の締約国内で、当該企業に属する物品又は商品の在庫を常習的に保有し、その中から当該企業のために又はこれに代わつてそれらの物品又は商品を規則的に引き渡す場合

C その者が、当該一方の締約国内で、もつぱら又は主として当該企業自体のために、又は当該企業及び当該企業により支配されているか若しくは当該企業に支配的利益を有する他の企業のために常習的に注文を取得する場合

  (v)一方の締約国の企業と他方の締約国内における顧客となる者との間の仲介者としてのみ行動する仲立人、問屋その他の純然たる独立の地位を有する代理人は、それらの行動が(iv)Cの意義における注文の取得を含まない場合には、当該他方の締約国内における恒久的施設とはされない。

  (vi)一方の締約国の法人が他方の締約国の法人又は他方の締約国内で営業若しくは事業を行なう法人を支配しているという事実のみでは、その支配されている法人は、当該一方の締約国の法人の恒久的施設とはならない。この項において「法人」とは、法人格を有する法人をいう。

 (j)「権限のある当局」とは、日本国においては、大蔵大臣又は大蔵大臣が権限を与えた代理者をいい、インドにおいては、中央政府大蔵省歳入局又は中央政府大蔵省歳入局が権限を与えた代理者をいう。

(2)いずれの一方の締約国がこの協定の規定を適用する場合にも、この協定に特に定義されていない用語の意義は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、自国の租税に関する法令における解釈によるものとする。

 第三条

事業所得

(1)一方の締約国の企業の産業上又は商業上の利得(船舶又は航空機の運用から生ずる利得を除く。)は、その企業が他方の締約国内に恒久的施設を有しない限り、当該他方の締約国の租税を課されない。一方の締約国の企業が他方の締約国内に恒久的施設を有する場合には、その恒久的施設に帰せられる利得に対しては、当該他方の締約国の租税を課することができる。

(2)一方の締約国の企業が他方の締約国内に恒久的施設を有する場合には、その恒久的施設が独立の企業として同一又は同様の条件で同一又は同様の活動を行ない、かつ、独立の立場でその恒久的施設を有する企業と取引を行なつたと仮定した場合に当該他方の締約国内で取得しうべき産業上又は商業上の利得が、その恒久的施設に帰せられるものとする。

(3)恒久的施設の産業上又は商業上の利得を決定するに際しては、経営費及び一般管理費を含むすべての費用でその恒久的施設に合理的に配分することができるものは、その生じた場所のいかんを問わず、経費に算入することを認めるものとする。

(4)恒久的施設の産業上又は商業上の利得の正確な額の確認が困難である場合には、当該恒久的施設の活動が利得の取得に寄与した程度を考慮して、当該利得を合理的に推定することができる。

(5)この条において「産業上又は商業上の利得」には、配当、利子、賃貸料、第十条(e)にいう使用料及びこれに類する支払、資産収益、人的役務の報酬又は第十条(k)にいう技術上の役務に対する料金として取得する所得を含まない。

(6)両締約国の権限のある当局は、この協定の規定と矛盾しない範囲内で、産業上又は商業上の利得の配分に関する細目を取りきめることができる。

 第四条

他方国の企業に参加した企業の事業所得

(a)一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営上若しくは資金上の支配に直接若しくは間接に参加する場合又は

(b)同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営上若しくは資金上の支配に直接若しくは間接に参加する場合であつて、そのいずれの場合においても、両企業間に、その商業上又は資金上の関係において独立の企業間に設けられる条件と異なる条件が設けられ、又は課されるときは、それらの条件がなかつたならば一方の企業の利得となるべきもので、それらの条件のために当該一方の企業の利得とならなかつたものは、その企業の利得に算入して課税することができる。

 第五条

航空機又は船舶の運用による所得

(1)一方の締約国の企業が航空機の運用によつて取得する利得は、他方の締約国の租税を課されない。ただし、当該航空機が、全部又は主として当該他方の締約国内の隔地間に運用されている場合は、この限りでない。

(2)一方の締約国の企業が船舶の運用によつて取得する利得に対し他方の締約国により課される租税の額は、その額の五十パーセントに等しい額だけ軽減される。ただし、当該船舶が、全部又は主として当該他方の締約国内の隔地間に運用されている場合は、この限りでない。

(3)(2)の規定は、インドにおいては、船舶の一時的運航又は不定期船からの利得の査定に関するこの協定の署名の日に有効である千九百二十二年のインド所得税法(千九百二十二年の第十一号)第四十四条のA及び第四十四条のBの規定に影響を及ぼすものではない。この協定の署名の日に有効である前記の所得税法第四十四条のCの規定に基づき調整が行なわれる場合には、船舶の一時的運航又は不定期船については、(2)の規定を適用する。

 第六条

給与所得

(1)(a)インド政府、その地方政府又はインドの地方公共団体に提供された役務について、インドの国民である個人(永住のため日本国に入国することを許可された者を除く。)に対し、インド政府、その地方政府若しくはインドの地方公共団体が支払い、又はインド政府、その地方政府若しくはインドの地方公共団体が設立する基金から支払われる給料、賃金、恩給又はこれらに類する報酬は、日本国の租税を課されない。

 (b)日本国政府又は日本国の地方公共団体に提供された役務について、日本国の国民である個人(永住のためインドに入国することを許可された者を除く。)に対し、日本国政府若しくは日本国の地方公共団体が支払い、又は日本国政府若しくは日本国の地方公共団体の支出に係る基金から支払われる給料、賃金、恩給又はこれらに類する報酬は、インドの租税を課されない。

(2)(1)の規定は、当該政府又は当該地方公共団体が利得を得る目的で行なう営業又は事業に関して提供された役務につき支払う給料、賃金、恩給又はこれらに類する報酬については、適用しない。

 第七条

役務の報酬

 一方の締約国の居住者である個人に対し他方の締約国内で行なわれた人的役務に対して支払われる報酬は、次のことを条件として、当該他方の締約国の租税を課されない。

(a)その個人が課税年度又は「前年度」を通じて合計百八十三日をこえない期間他方の締約国内に滞在し、

(b)その役務が当該一方の締約国の居住者のために又はこれに代わつて行なわれ、かつ、

(c)その報酬が当該他方の締約国の租税を課される企業の利得を計算するに当たり控除されないこと。

 第八条

招請教授の受ける報酬

 他方の締約国を訪れた当初に一方の締約国の居住者である個人で、当該他方の締約国の政府又は当該他方の締約国内の大学、学校その他の教育機関の招請により、当該他方の締約国内の教育機関において教育又は研究を行なうため二年をこえない期間当該他方の締約国を訪れるものは、その教育又は研究に対する報酬について、当該他方の締約国の租税を課されない。

 第九条

留学生等の受ける海外送金等

(1)他方の締約国を訪れた当初に一方の締約国の居住者である個人で、もつぱら、

 (a)当該他方の締約国内の一般に認められた大学若しくは学校の学生として、

 (b)政府若しくは宗教、慈善、学術、文芸若しくは教育の団体からの主として勉学若しくは研究のための交付金、手当若しくは奨学金の受領者として、又は

 (c)事業修習者として、

 当該他方の締約国内に一時的に滞在するものは、次のものについて、当該他方の締約国の租税を課されない。

 (i)生計、教育、勉学又は研究のための海外からの送金

 (ii)交付金、手当又は奨励金

 (iii)当該他方の締約国における人的役務に対する報酬で、課税年度又は「前年度」を通じて三十六万円又はインド通貨のその相当額をこえないもの

 この項において、「事業修習者」とは、技術上、職業上又は事業上の経験を若干有するか又は全く有しない個人をいう。

(2)他方の締約国を訪れた当初に一方の締約国の居住者である個人で、当該一方の締約国の企業若しくは(1)(b)に掲げる団体の使用人として又はこれらの企業若しくは団体との契約に基づき、もつぱらこれらの企業又は団体以外の者から技術上、職業上又は事業上の経験を習得するため、十二箇月をこえない期間当該他方の締約国内に一時的に滞在するものは、その期間中にその経験の習得に直接関係のある役務に対して海外から受け取るか又は当該他方の締約国内において支払われる報酬の金額が、課税年度又は「前年度」を通じて百万円又はインド通貨のその相当額をこえないときは、その報酬について、当該他方の締約国の租税を課されない。

(3)他方の締約国を訪れた当初に一方の締約国の居住者である個人で、当該他方の締約国の政府又はその機関との取極に基づき、もつぱら訓練、研究又は研修のため当該他方の締約国内に一時的に滞在するものは、その訓練、研究又は研修に直接関係のある役務に対して海外から受け取るか又は当該他方の締約国内において支払われる報酬の金額が、課税年度又は「前年度」を通じて百万円又はインド通貨のその相当額をこえないときは、その報酬について、当該他方の締約国の租税を課されない。

(4)(1)、(2)及び(3)の特典は、重複しては与えられないものとする。

 第十条

源泉課税の対象となる所得

 この協定の適用上、

(a)物品又は商品を売却することによつて取得する産業上又は商業上の利得で(b)に掲げる利得以外のものは、一部分はその物品又は商品が購入された国から、一部分はその物品又は商品が売却された国から生ずるものとして取り扱う。

(b)企業が一方の締約国内で全部又は一部を製造し、又は生産した物品を他方の締約国内で売却することによつて取得する産業上又は商業上の利得は、一部分はその物品が製造され、又は生産された国から、一部分はその物品が売却された国から生ずるものとして取り扱う。

(c)(i)一方の締約国の政府、地方公共団体若しくは法人が発行する債券若しくは社債又は一方の締約国内で預入された預金の利子は、その締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

  (ii)一方の締約国の政府、地方公共団体又は居住者に対して貸し付けられた貸付金の利子は、その締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

  (iii)一方の締約国内の他方の締約国の企業の支店その他の施設に対して貸し付けられた貸付金の利子は、当該一方の締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

(d)配当について、

  (i)インドにおいては、インド内で配当宣言が行なわれた配当は、インド内の源泉から生ずる所得として、

  (ii)日本国においては、日本の法人が支払う配当は、日本国内の源泉から生ずる所得として、

取り扱う。

(e)著作権、芸術上又は学術上の著作物又は設備、特許権、意匠権、秘密工程及び秘密方式、商標権、映画フィルム(テレビジョンに使用されるフィルムを含む。)その他これらに類する財産の一方の締約国内における使用又は使用の権利の対価として支払われる使用料及びこれに類する料金並びにそれに関連して行なわれた技術上の役務に対する料金は、当該締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

(f)(e)に掲げる財産の売却、移転又は交換によつて生ずる利得又は収益は、その財産が使用される締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

(g)不動産から生ずる所得(不動産の売却、移転又は交換によつて生ずる利得又は収益を含む。)及び鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所の運用に関する使用料は、当該不動産又は鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所が存在する締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

(h)船舶又は航空機の売却、移転又は交換によつて生ずる利得又は収益は、それらの船舶又は航空機が登録されている締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

(i)一方の締約国内にある他方の締約国の企業の支店その他の施設の動産(株券、債券、社債及びこれらに類する資産を除く。)の売却、移転又は交換によつて生ずる利得又は収益(産業上又は商業上の利得を除く。)は、当該一方の締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

(j)人的役務及び自由職業の役務に対する給料、賃金又はこれらに類する報酬は、それらの報酬が支払われる役務が行なわれた締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱われ、また、一方の締約国の企業が運用する船舶又は航空機において行なわれた役務は、当該締約国において行なわれたものとみなされる。

(k)企業に対して支払われる技術上の役務に対する料金は、その料金が支払われる役務が行なわれた締約国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。

 第十一条

税額控除

(1)いずれか一方の締約国において有効である法令は、この協定において反対の規定が設けられている場合を除き、それぞれの締約国において、引き続き所得の課税を規制するものとする。

(2)日本国内の源泉から生じ、かつ、日本国及びインドの両国の租税を課される所得について日本国の法令に基づき、かつ、この協定の規定に従つてインド・の居住者によつて支払われる(直接にであると源泉徴収によるとを問わない。)日本国の租税の額は、その所得について支払われるインドの租税から、インドの租税が課される全所得に対する当該所得の割合をインドの租税の額に乗じて得た額を限度として、控除されるものとする。

(3)(a)インド内の源泉から生じ、かつ、日本国及びインドの両国の租税を課される所得についてインドの法令に基づき、かつ、この協定の規定に従つて日本国の納税者によつて支払われる(直接にであると源泉徴収によるとを問わない。)インドの租税の額は、その所得について支払われる日本国の租税から、日本国の租税が課される全所得に対する当該所得の割合を日本国の租税の額に乗じて得た額を限度として、控除されるものとする。

 (b)(a)の控除の適用上、インドの租税が、千九百二十二年のインド所得税法(千九百二十二年の第十一号)の次の各条に定めるインドの経済開発を促進するための特別奨励措置により軽減された額は、この協定の署名の日に有効である前記の措置により納税者に与えられる特典の範囲が拡張されないことを条件として、納税者によつて支払われたものとみなす。

(i)第四条(3)(XVIIb)(海外からの借入金について支払われる利子に対する租税の免除に関するもの)

(ii)第十条(2)(VIb)(開発割りもどし控除に関するもの)

(iii)第十五条のC(新たに設立した産業的事業に対する租税の免除に関するもの)

(iv)第五十六条のA(一定の基幹的な産業的事業に従事するインドの会社から法人が受領する配当に対する附加税の免除に関するもの)

 第十二条

情報の交換

 両締約国の権限のある当局は、この協定の規定を実施するために必要な情報で両締約国のそれぞれの税法に基づいて行政の通常の運営において入手することができるものを交換するものとする。こうして交換された情報は、秘密として取り扱わなければならず、租税の賦課及び徴収に関与し、又はこれらに関する異議についての処理に関与する者(裁判所を含む。)以外のいかなる者にも漏らしてはならない。営業上、事業上、産業上若しくは職業上の秘密又は取引の過程を明らかにするような情報は、交換してはならない。

 第十三条

異議の申立

(1)納税者は、いずれか一方の締約国の税務当局の行為によりこの協定の規定に反して二重課税の結果が生じたか又は生ずるに至るときは、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対し申立てを行なうことができる。当該締約国の権限のある当局は、この申立てに理由があると認め、かつ、これに関連して当該二重課税を回避するため他方の締約国の権限のある当局と合意に達することを必要と認めるときは、他方の締約国の権限のある当局と合意に達するように努めるものとする。

(2)この協定の解釈又は適用に関して困難又は疑義が生じた場合には、両締約国の政府又は権限のある当局は、合意によつて問題を解決することができる。

(3)この協定の実施に関する手続その他の細目は、両締約国の政府間又は権限のある当局間で協議により合意することができる。

 第十四条

国内法の減免規定を制限せず

 この協定の規定は、一方の締約国が租税を決定するに際し、自国の法令によつて現在認められているか又は将来認められることがある免除、減額、控除その他の減免をいかなる形においても制限するものと解してはならない。

 第十五条

内国民待遇

 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の国民が課される租税よりも重い租税を課されない。

 第十六条

批准、発効、有効期間

(1)この協定は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかに東京で交換されるものとする。

(2)この協定は、批准書の交換の日に効力を生じ、かつ、

 (a)インドにおいては、批准書の交換が行なわれた年の一月一日以後に開始する各「前年度」において生ずる所得について、

 (b)日本国においては、批准書の交換が行なわれた年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得について、

適用するものとする。

(3)いずれの一方の締約国も、この協定の効力発生の日から三年の期間を経過した後はいつでも、他方の締約国に対して終了の予告を与えることによつてこの協定を終了させることができる。その予告は、六月三十日以前に与えなければならず、その場合には、この協定は、

 (a)インドにおいては、その終了の予告の翌年の一月一日以後に開始する各「前年度」において生ずる所得について、

 (b)日本国においては、その終了の予告の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得について、

効力を失うものとする。

末文

 以上の証拠として、下名の全権委員は、この協定に署名した。

 千九百六十年一月五日にニュー・デリーで、英語により本書二通を作成した。

日本国のために

 那須 皓

インドのために

 B・ゴパラ・レディ