[文書名] 小規模工業のための原型製造及び訓練センターの設立に関する日本国政府とインド政府との間の協定
昭和三五年一月二五日ニュー・デリーで署名
昭和三五年一月二五日効力発生
前文
日本国政府及びインド政府は、両国間の経済的及び技術的協力を推進し、かつ、両国間の伝統的に存在する友好関係を一層強化することを切望し、次のとおり協定した。
第一条
訓練センターの設立、センターの業務
小規模工業のための原型製造及び訓練センター(以下「センター」という。)を、西ベンガル州のハウラに設立する。センターは、次の業務を行なう。
(a)小規模工場のための熟練工及び技術者並びにインドの州工業省及び中央政府小規模工業機関の技術職員の実際的及び理論的訓練
(b)小規模工場が商業的採算に基づいて複製生産することができるようにするために小規模工場に供給される機械、工具及び附属品の原型の研究開発及び生産
(c)小規模工場における生産技術を改善することに資する特殊な機械の型の研究開発
以上の機能を妨げない限り、センターは、小規模工場が生産することができないある特殊部品の生産の注文を商業的採算に基づかないで引き受けることができる。
第二条
日本人職員の役務の供与並びに同職員に与えられる特権、免除及び便宜
(1)日本国政府は、日本国において施行されている法令に従い、第三条に定める機械及び設備の設置に必要な技術顧問の役務のほか附表Ⅰに掲げる日本人の理事長並びに必要な日本人の指導職員及び技術職員の役務を自己の負担において供与するため必要な措置を執るものとする。
(2)日本人の理事長並びに指導職員及び技術職員は、附表Ⅱに掲げる特権、免除及び便宜を与えられ、かつ、同様の状況の下において第三国の専門家に与えられるよりも不利でない特権、免除及び便宜を与えられるものとする。
第三条
日本政府による必要物品の供与
日本国政府は、日本国において施行されている法令に従い、附表Ⅲに掲げるセンターの各部門の設立に必要な教材、機械、設備、工具及び予備部品を自己の負担において提供するため必要な措置を執るものとする。
第四条
善意の職務遂行に関し生じた請求に対する責任
インド政府は、この協定に定めるインドにおける職務の善意の遂行に起因し、又はその遂行中に発生し、若しくはその遂行に関連する日本人の理事長並びに指導職員及び技術職員に対する請求が生じた場合には、その責任を負うものとする。
第五条
インド政府による供与及び支払
(1)インド政府は、自己の負担において次のものを供与するものとする。
(a)附表Ⅳに掲げるインド人の理事長並びに必要な技術職員及び事務職員
(b)附表Vに掲げる必要な建物並びにこれに要する土地及び附帯施設
(c)原材料並びに機械、設備及び工具の補充品並びにセンターの運営に必要なその他の材料
(d)日本人の理事長並びに指導職員及び技術職員のための適当な家具付宿舎及び交通手段
(2)インド政府は、次の支払を行なうものとする。
(a)第三条に掲げる物品についてインドにおいて課される関税、内国税その他類似の課徴金
(b)第三条に掲げる物品のインド内における輸送並びにそれらの物品の設置、操作及び維持に必要な経費
(c)研修生の給与
(d)センターの運営に必要なその他の運営費
第六条
日・印両国人理事長の責任
日本人の理事長は、第一条に掲げるセンターの業務に関する技術的事項につき責任を有するものとする。インド人の理事長は、それらの技術的事項につき日本人の理事長に対応して職務を行なうとともに、センターの業務に関する事務的事項につき責任を有するものとする。
第七条
両国政府の協議
両国政府は、センターの目的を推進し、かつ、センターの運営についての日印協力を成功裡{裡にりとルビ}に促進するため、協議を行なうことに合意する。
第八条
発効、有効期間
(1)この協定は、署名の日に効力を生ずる。
(2)この協定は、その効力発生の日から三年の期間効力を有し、その後も効力を存続する。ただし、この協定は、いずれか一方の政府が他方の政府に対しこの協定を終了させる意思を少なくとも六箇月の予告をもつて書面により通告した場合には、前記の三年の期間の終了の日に又はその後に終了する。
末文
千九百六十年一月二十五日にニュー・デリーで、英語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
那須 皓
インド政府のために
L・K・ジャー