[文書名] 模範農場の設置のための日本国政府とインド政府との間の協定
昭和三七年四月二三日ニュー・デリーで署名
昭和三七年四月二三日効力発生
前文
日本国政府及びインド政府は、両国間の経済的及び技術的協力を推進し、かつ、両国間に伝統的に存在する友好関係を一層強化することを真摯{しとルビ}に希望して、次のとおり協定した。
第一条
模範農場の設置
(1)両政府は、相互に協力して模範農場(以下「農場」という。)を設置するものとする。農場は、日本側の技術者により農業技術の模範を示すことを目的とし、インド側の農民に対する実地訓練のためのセンターとして役立つものとする。
農場の業務
(2)農場は、人力、畜力及び動力によつて操作される改良農機具がインドの諸条件の下で適しているかどうか及び採用できるかどうかを測るため、それらの農機具の実地操作を行なうものとする。
農場の設置場所
(3)農場は、西ベンガル州のナディア、オリッサ州のサンバルプール、ビハール州のシャハバード及びグジャラート州のスラートにそれぞれの州政府の機関として所在する独立した四つのものからなるものとする。
第二条
日本側職員の役務の供与並びに同職員に与えられる特権、免除及び便宜
(1)日本国政府は、日本国において施行されている法令に従い、各農場における日本側の理事長及び農業職員(以下「日本側職員」と総称する。)の役務を自己の負担において供与するために必要な措置を執るものとする。
(2)日本側職員は、コロンボ計画に基づいてインドに派遣されている専門家に認められている特権、免除及び便宜を与えられるものとする。
第三条
日本国政府による必要物資の供与及びその使用
(1)日本国政府は、日本国において施行されている法令に従い、農場の設置及び運営に必要な、附表Ⅰに概略を掲げる機械、設備、工具、予備部品その他の材料を自己の負担において供与するため必要な措置を執るものとする。
(2)前記の物品は、カルカッタ又はボンベイの港においてc・i・f建てでインドの関係当局に引き渡された時に、インド政府の財産となるものとする。
(3)前記の物品は、各農場における日本側の理事長の監督の下に農場の目的のためのみに使用されるものとする。
第四条
職務遂行により生じた請求に関する責任
インド政府は、日本側職員のこの協定に定める職務のインドにおける善意の遂行に起因し、その遂行中に発生し、又はその他その遂行に関連がある、日本側職員に対する請求が生じた場合には、その請求に関する責任を負うことを約束する。
第五条
インド政府による供与及び負担
(1)インド政府は、自己の負担において次のものを供与することを約束する。
(a)各農場におけるインド側の農場長(以下「農場長」という。)
(b)附表Ⅱに掲げる必要な建物及び農地並びにこれらに必要な附帯施設及び土地
(c)日本側職員のための家具付きの適当な宿舎
(2)インド政府は、次のものを負担することを約束する。
(a)第三条に掲げる物品についてインドにおいて課されることがある関税、内国税その他類似の課徴金
(b)第三条に掲げる物品のインド内における輸送及び設置に必要な経費
第六条
インド政府による経費の負担
(1)各農場の運営のために必要な運営費は、インド政府が供与するものとする。
(2)インド政府は、各農場に対し、農場の運営のための必要に応じて追加の財政援助を供与するものとする。
(3)農場の円滑な運営を促進するため、インド政府は、農場長の管理の下に置かれる十分な資金を各農場に適時に設けるよう必要な措置を執るものとする。
第七条
理事長及び農場長の責任
日本側の各理事長は、第一条に掲げる各農場の業務に関するすべての技術的事項について責任を有するものとする。各農場長は、各農場の事務及び財政について全面的責任を有するものとする。
第八条
両政府間の協議
農場の目的を推進し、かつ、農場の運営における両国間の密接な協力の促進の成果をあげるため、両政府間で協議を行なうものとする。
第九条
発効
(1)この協定は、その署名の日に効力を生ずるものとする。
有効期間
(2)この協定は、その効力発生の日から三年の期間効力を有し、相互の合意によつてさらに特定の期間延長することができる。
末文
千九百六十二年四月二十三日にニュー・デリーで、英語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
松平康東
インド政府のために
L・K・ジャー
附表Ⅰ 農場のために供与される機械、設備、工具、予備部品その他の材料
(1)農機具及び予備部品
(2)農作のために当初必要な殺虫剤、肥料等の材料
(3)実験作業用の工具及び器具
(4)実験作業に必要な材料(化学薬品及び肥料を含む。)
(5)気象観測用の工具及び器具
(6)車両
(7)その他必要な小規模の設備
附表Ⅱ 農場のために供与される建物及び土地の明細
(Ⅰ)各農場における次の部屋及び施設のための建物
(1)事務所
(2)化学薬品、肥料及び種子のための倉庫
(3)収納舎
(4)機械及び設備の置場
(5)家畜舎
(6)鶏舎
(7)収穫物倉庫
(8)燃料倉庫
(9)車庫
(Ⅱ)各農場において灌漑施設{灌漑にかんがいとルビ}を有する面積十エーカーから二十五エーカーまでの土地