[文書名] バンダラナイケ・スリランカ共和国首相訪日に際しての日本とスリランカの共同コミュニケ
1.スリ・ランカ共和国首相スィリマヴォ・R・D・バンダラナイケ閣下は,日本国政府の招待により1976年11月12日から18日まで日本を公式訪問した。
2.バンダラナイケ首相は,天皇・皇后両陛下に謁見を賜わつた。
3.バンダラナイケ首相は,三木日本国総理大臣と11月15日及び17日に会談を行つた。
4.また,バンダラナイケ首相は,鳥羽及び京都を訪問した。
5.両国首相の会談は,親密かつ友好的な雰囲気の中で行われた。両者は国際的,地域的及び2国間の関心を有する問題について意見を交換した。
6.両国首相は,相互依存関係がますます深まりつつある今日の世界において,世界平和と進歩を促進するためには,各国がたゆまぬ対話を通じ,相互に平和的かつ協調的な関係を発展させることが肝要である旨重ねて表明した。
7.両国首相は,先進国と開発途上国間の格差拡大が今日の世界の直面する最も緊要かつ重要な問題の1つであることを再確認した。
両者は,建設的な南北間の対話をそれぞれ促進するためにあらゆる努力を行うとの決意を表明した。
8.バンダラナイケ首相は,1976年8月にコロンボにおいて開催された第5回非同盟諸国首脳会議の成果に言及し,非同盟運動の意義及び役割を説明した。
三木総理大臣は,同会議においてスリ・ランカが果した重要な役割に賛辞を呈するとともに非同盟諸国の国際問題における重要性に鑑み,日本としてはこれら諸国との相互理解を一層増進したいとの願望を表明した。
9.両国首相は,最近のアジア情勢について討議した。両者は,アジアにおける平和,安定及び発展が世界平和の維持にとつて最も重要であることを再確認した。
両者は,この関連で,同地域における関係改善への最近の積極的な動きを歓迎した。
三木総理大臣は,ASEAN諸国が自立と相互協力の強化のために努力している旨述べるとともに,かかる努力は東南アジア地域全体の平和と繁栄の確保に貢献するであろうとの確信を表明した。
バンダラナイケ首相は,東南アジア地域の永続的平和と安定に貢献するいかなる進展をも歓迎する旨述べた。
10.バンダラナイケ首相は,国連におけるインド洋平和地帯提案に言及し,日本国政府の支持に対し謝意を表明した。
三木総理大臣は,バンダラナイケ首相が本問題のために払つている努力を評価する旨表明した。
11.両国首相は,両国の関係を討議した。両者は,両国が従来より友好的な関係にあることに満足の意をもつて留意するとともに,かかる結びつきを一層強化することに合意した。
12.バンダラナイケ首相は,スリ・ランカの経済発展に向けての努力を支援するためこれまで日本から与えられた協力につき謝意を表明した。
三木総理大臣は,スリ・ランカ政府及び国民が経済発展のために払つている真剣な努力に対して深甚な敬意を表明するとともに,かかる努力を支援するため,日本国政府としては,今後とも対スリ・ランカ援助国グループの一員として応分の援助を行ない,もつて両国間の経済協力を推進したい旨述べた。
バンダラナイケ首相は,三木総理大臣に対し,インギニミチャ貯水池計画,コロンボ郊外電話網拡充計画及び漁網工場計画の3案件に対する日本からの資金供与についての願望を表明した。三木総理大臣は,日本国政府としては,早急に調査団を派遣する等の適当な方法で実施可能性が確認されればこれらの案件に対する借款の供与のために措置をとる用意がある旨述べた。
13.バンダラナイケ首相は,食糧援助規約に基づく1976年度分の援助として,日本国政府からスリ・ランカ政府に対し,200万米ドル相当の肥料と米とを無償供与するための公文が近く両国政府代表により交換される運びとなつていることを感謝の念をもつて留意した。
14.両国首相は,両国間の貿易と投資の一層の拡大が両国の利益に沿うものであること,また,そのために両国は一層の努力と協力を続けていくことに合意した。バンダラナイケ首相は,民間資本の投資を通じて日本がスリ・ランカの経済開発に参加していることに対し感謝するとともに,スリ・ランカにおける投資の増大のために日本の投資家に対し必要な便宜と保証が与えられるであろうと述べた。
15.両国首相は,両国国民の間の相互訪問が近年増大していることを歓迎した。両者は,相互理解を深め,伝統的に緊密で友好的な両国間の結びつきを強化するため,このような交流の幅を広げることの必要性を再確認した。両者は,両国間の文化交流を促進するために引続き努力を払うことに合意した。
16.両国首相は,バンダラナイケ首相の今回の訪問が,日本とスリ・ランカの間に既に存在する友好関係の促進に大きく寄与したことを満足の意をもつて確認した。
バンダラナイケ首相は,同首相及びその一行が日本滞在中に受けた心からの歓迎と暖かいもてなしにつき,日本国政府及び国民に対して深甚な謝意を表明した。
17.バンダラナイケ首相は,三木総理大臣夫妻に対しスリ・ランカ共和国を公式訪問するよう心からの招請を行つた。三木総理大臣は,この招請を喜んで受諾した。