[文書名] ジア・バングラデシュ首相歓迎晩餐会における細川内閣総理大臣の挨拶
ジア首相閣下並びに御列席の皆様
本日ここに、バングラデシュ人民共和国のジア首相閣下の御一行をお迎えし、また、これまで日本・バングラデシュ関係に様々な形で関わって来られた皆様方をお迎えして、この席を設けさせて頂きますことは、私の大きな喜びとするところであります。
首相閣下
我が国と貴国は、貴国の国歌「黄金のベンガル」の作者である詩聖ロビンドロナート・タゴールと、我が国の明治の文人岡倉天心との今世紀初めの交流以来、伝統的に友好関係を保って来ております。南アジアの大自然と情緒をうたい上げたタゴールの高貴で優美な詩集は日本人にも広く親しまれてきておりますが、タゴールは、特に、一九一六年を皮切りに三回我が国を訪問し、日本の俳句や短歌に倣った短い詩のフォームを用いて、我が国の自然美をうたったと聞いております。
タゴールの時代を経て、インドとパキスタンは独立を果たし、その後、バングラデシュが独立を勝ち取りましたが、貴国の独立以来、故早川崇衆議院議員をはじめとする私共の諸先輩、そして、故ジアウル・ラーマン大統領をはじめとする貴国の多くの方々が両国友好関係の増進に情熱をかたむけられました。これら先人の熱意を受け継いで、現在も両国間の要人の往来は活発で、両国の友好の絆が強固なものとなっております。閣下は、既に大統領夫人として二度にわたり訪日しておられますが、このたび首相としてのご来日が実現しましたことは、このような友好関係を一層発展させるものと確信致します。
首相閣下
閣下は、貴国に民主的な政治をもたらすため、九年間にわたり政治闘争を続けられ、九一年に首相の座に就かれてからも、民主化及び自由市場経済の一層の進展のため尽力しておられます。更に、閣下は、国内の経済開発や教育等国造りに努力を傾けておられるほか、現在、南アジア地域協力連合の議長として、域内協力の推進に大きな指導力を発揮し、また、人々に最低限の生活を与えようと「ダール・バハット運動」を世界に主唱して、貧困軽減のため積極的に活躍しておられます。私は、閣下がこのような強い決意と情熱をもって国造りに邁進しておられることに対し敬意を表しますと共に、貴国の国造りを支援するため、我が国として可能な限りの協力を引き続き進めていくことをお約束したいと存じます。
御列席の皆様
それでは、ここに、ジア首相閣下の御健康をお祈り申し上げますと共に、バングラデシュ人民共和国及び国民の一層の発展と繁栄を、また、我が国・バングラデシュの末永き友好及び更なる友情を願って杯を上げたいと存じます。