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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インド及びパキスタンの核実験及び北朝鮮ミサイルの発射に関する資料,インド及びパキスタンの核実験に関する安保理決議1172(日本,スウェーデン,コスタ・リカ,スロヴェニア共同提案)

[場所] ニューヨーク
[年月日] 1998年6月6日
[出典] 外交青書42号,362−364頁.
[備考] 
[全文]

安保理は、

 1998年5月14日の議長声明(S/PRST/1998/12)及び1998年5月29日の議長声明(S/PRST/1998/17)を改めて確認し、

 特に、全ての大量破壊兵器の拡散が国際の平和と安全に対する驚異を構成することを述べた1992年1月31日の議長声明(S/23500)に改めて言及し、

 インド及びパキスタンにより実施された核実験という、核兵器の不拡散のためのグローバルな体制を強化することを目的とする国際的な努力に対する挑戦を深く憂慮し、ま た、地域の平和と安定に対する危険を深く憂慮し、

 南アジアにおける核軍備競争の危険を深く憂慮し、また、このような競争を防ぐことを決意し、

 核不拡散及び核軍縮に向けたグローバルな努力にとって、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)と包括的核実験禁止条約(CTBT)が決定的に重要であることを改めて確認し、

 1995年のNPT再検討・延長会議において採択された核不拡散及び核軍縮の原則及び目的、さらに同会議が成功裡に終了したことを想起し、

 NPTの全ての規定の完全な実施と効果的な履行に向けて、決意をもって行動し続ける必要性を確認し、また、NPT第6条の下での核軍縮に関するコミットメントを達成するという5核保有国の決意を歓迎し、

 国連憲章の下で負っている国際の平和と安全の維持に関する主要な責任に留意し、

1.インドが1998年5月11日及び13日に、また、パキスタンが1998年5月28日及び30日に実施した核実験を非難する。

2.1998年6月4日のジュネーブにおける会合で発出された中、仏、露、英、米の外相による共同コミュニケ(S/1998/473)を支持する。

3.インド及びパキスタンに対し、これ以上核実験を実施しないよう要求するとともに、この関連で、全ての国に対し、CTBTの規定に従って、いかなるものであれ、核兵器の実験的爆発又はその他の核爆発を実施しないよう求める。

4.インド及びパキスタンに対し、情勢の悪化を防ぐために、最大限の自制を行使し、また、威嚇的な軍事行動、越境侵犯、又はその他の挑発行動を行わないよう求める。

5.インド及びパキスタンに対し、両国間の緊張を除去するために、全ての未解決の問題、特に平和と安全に関する全ての問題について、両国間で対話を再開することを求めるとともに、カシミールを含む緊張の根本的原因に対処するための相互に受け入れ可能な解決策を見出すよう奨励する。

6.インド及びパキスタンが対話を開始するよう奨励する事務総長の努力を歓迎する。

7.インド及びパキスタンに対し、核兵器開発計画を注視し、核軍備化及び核配備を行わず、核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの開発及び核兵器のための核分裂物質のいかなる生産をも中止し、大量破壊兵器及びこれらを搭載可能なミサイルに貢献しうる設備、物質又は技術を輸出しないとの方針を確認し、この関連で適切なコミットメントを行うことを求める。

8.全ての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器及び核兵器搭載可能な弾道ミサイルの開発計画に何らかの形で資することのある設備、物質及び関連技術の輸出を防止するよう奨励し、このような観点から採択され宣明された国家の方針を歓迎する。

9.インド及びパキスタンの実施した核実験が、南アジア及びその他の地域の平和と安定に与える悪影響への深い憂慮を表明する。

10.国際的な核不拡散体制の礎としての、また、核軍縮推進のために不可欠の基礎としての、NPT及びCTBTへの完全なコミットメント、並びにこれらの条約の決定的な重要性を改めて確認する。

11.国際的な核不拡散体制派{前1文字ママ}維持され、強化されるべきであるとの確固たる確信を表明し、NPTに照らし、インドもパキスタンも核兵器保有国としての地位は認められないことを想起する。

12.インド及びパキスタンが行った実験は、核不拡散及び核軍縮に向けたグローバルな努力に対する深刻な脅威を構成することを認識する。

13.インド及びパキスタン、並びにNPT及びCTBTに未加入のその他の全ての国に対し、これらの条約に地帯{前2文字ママ}なく無条件で加入することを求める。

14.インド及びパキスタンに対し、ジュネーブ軍縮会議における核兵器その他の核爆発装置のための核分裂性物質の生産禁止に関する条約(カット・オフ条約)の早期合意を目指し、前向きな精神でかつ既に合意されたマンデートに基づき、同条約の交渉に参加するよう求める。

15.事務総長に対し、この決議を履行するためにインド及びパキスタンがとった措置につき、早急に安保理に報告するように求める。

16.この決議の履行を確保するための最善の方法につき、更に検討する用意があることを表明する。

17.引き続き本件に積極的に関与する。