データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本及びパキスタン外相会談の際の共同プレス・ステートメント

[場所] 東京
[年月日] 1998年11月18日
[出典] 外交青書42号,370−371頁.
[備考] 
[全文]

1.サルタージ・アジズ・パキスタン外務大臣は、1998年11月17日から20日にかけて東京を訪問した。高村正彦日本国外務大臣は、本年9月23日、ニュー・ヨークにおける国連総会の場で行われた会談に続き、今回再び緊密な意見交換の機会が得られたことを歓迎した。両外相は、1998年11月18日に会談を行った。

2.両外相は、二国間関係のほか、広範囲にわたる国際問題についても踏み込んだ意見交換を実施した。両外相は、伝統的有効関係に満足の意を示すとともに、二国間の緊密な協議の維持・強化の重要性を強調した。

3.両外相は、南アジアにおける核実験後の地域・国際情勢につき協議した。両外相は、パキスタンが直面する経済的困難をレビューし、パキスタンの経済的安定を維持することの重要性を再確認した。

4.アジズ外相は、パキスタンの経済的困難について日本が懸念していることを評価し、国際金融機関、就中IMFによる対パキスタン支援プログラムの速やかな策定作業を日本政府が支持し、またパキスタンに対する二国間援助を再開することへの期待を述べた。同外相は、自国の安全保障のため、核実験を行わざるを得なかった状況を説明した。高村外相は、核不拡散に関する日本政府の基本政策を強調し、核実験後に日本政府が講じた措置はかかる基本政策に基づくものであることを説明した。アジズ外相は、パキスタン政府の長年にわたる核不拡散政策を強調し、パキスタンが不拡散問題に係る国際社会の関心に対し敏感であり続ける旨強調した。この関連で、同外相は、パキスタンは強制や圧力のない雰囲気の下でのみ行動する旨強調した。アジズ外相は、核実験の一方的モラトリアムやカットオフ条約交渉への参加決定という、パキスタン政府が核実験後に講じた一連の措置につき説明した。同外相は、1998年9月23日の国連総会でのパキスタン首相による1999年9月までにCTBTへ参加するとのコミットメントを再確認した。アジズ外相はさらに、核兵器や大量破壊兵器を運搬可能なミサイルの開発につながり得る物質・資機材及び技術をいかなる第三国又は団体に対しても移転しないとのコミットメントを繰り返した。同外相は、パキスタン政府は厳格な輸出管理体制を有しており、今後適切な行政的及び立法的な措置により一相の厳格化を図る意向である旨述べた。

5.高村外相は、パキスタンが現在抱える経済的困難を克服することを支援する緊急の必要性があること、及び同国が核不拡散の目標に向け進展を示していることに鑑み、日本政府として、他のG8メンバーとの緊密な協議の下、現在交渉中のパキスタン向けIMFプログラムを支援するために必要な国際金融機関による融資を支持するであろう旨述べた。また、高村外相は、日本政府は前項で言及されたパキスタンのコミットメントに留意しつつ、二国間経済協力の部分的な再開を検討しうるであろう旨述べた。

6.アジズ外相は、高村外相に対し、南アジアにおける永続的な平和と安全の確立のため諸問題の解決を目指すパキスタン・インド間の対話の再開につき説明した。高村外相は、対話の再開を歓迎するとともに、この対話が具体的な成果を達成するよう希望を表明した。