データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本・バングラデシュ共同プレス発表 ‐国際社会と南アジアの繁栄に向けての強固なパートナーシップ‐

[場所] 東京
[年月日] 2005年7月14日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.カレダ・ジア・バングラデシュ人民共和国首相は、日本国政府の招待により、2005年7月11日から日本国を公式実務訪問した。

2.7月14日、小泉純一郎日本国内閣総理大臣とカレダ・ジア首相は公式会談を行った。会談は、友好的な雰囲気の中で行われた。両首相は、二国間、地域的及び国際的な諸問題について、建設的な意見交換を行い、両国の緊密かつ協力的な関係の重要性を確認した。

日本とバングラデシュの関係強化

3.日本とバングラデシュは、幅広い分野で緊密かつ友好的な関係を維持し、発展させてきている。この二国間の協力関係は、両国民の間の誠実な友情に支えられてきている。

4.日本は、バングラデシュがカレダ・ジア首相の下、様々な開発上の困難を乗り越え国家建設に努力し、また、地域及び国際社会の平和と安定のために尽力していることを高く評価する。日本は、バングラデシュがイスラム教徒が多数の穏健な国であり、民主主義を堅持し、民主主義的価値と実行を尊重していることに評価の意を表明した。また、日本は、バングラデシュが、南アジアと東アジアとの架け橋として、将来のアジアの安定的発展のために重要な役割を果たし得る国と考えている。

5.バングラデシュは、日本が小泉総理の下で改革を進めていることを賞賛した。バングラデシュは、開発問題への取り組みに対する日本の支援を深く感謝する。バングラデシュは、日本を常に信頼できるパートナーと認識しており、バングラデシュが日本にとって信頼できる友であることを改めて強調した。バングラデシュは、自国が「東方外交」を展開していく上での日本の重要性について認識している。

6.両首相は、アジアの創造的変化と緊密な二国間関係を念頭に、国際社会共通の課題に協力して取り組み、以下の項目について一層の協力関係を築くことを決意した。

開発の実現と貿易・投資の促進

(i)持続可能な開発は、今日の国際社会が直面する最大の課題の一つである。バングラデシュは、最大級の途上国の一つとして、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に重要な役割を担っている。日本は、バングラデシュが独立直後の困難な課題を克服し、今日、同じ経済水準の他の途上国よりも高い社会開発指標を達成していることを賞賛する。そして、マイクロ・クレジットなどの新たな開発アプローチを生み出していることを賞賛する。日本は、道路・橋・発電所などの基幹インフラの整備、教育・保健などの社会開発イニシアティブ、そして幅広い分野での技術協力と人材育成推進を通じ、一貫してバングラデシュの自助努力を支援してきた。バングラデシュは、同国の開発に日本がこれまで果たしてきた貢献に心から感謝し、これを高く評価する。

(ii)バングラデシュ側は、日本がパドマ橋の建設に支援を行うよう要請した。日本側は、この要請をしかるべく考慮する意図を表明した。

(iii)貿易・投資の促進は、バングラデシュの経済開発に不可欠である。バングラデシュは、輸出加工区(EPZ)の活用を通じて、現在の投資・ビジネス環境を一層改善する。

(iv)バングラデシュ側は、日本からの投資を心より歓迎し、成功裏の実現のため、あらゆる支援と協力を約束した。

(v)日本側は、インフラ改善への協力等を通じて、バングラデシュの取り組みを引き続き支援することを確認する。

(vi)両国は、情報通信技術(ICT)基盤整備を含むICT分野での協力を継続し、ビジネスをより活発化する環境作りに努める。さらに双方は、日本・バングラデシュ商業・経済協力合同委員会(JBJCCEC)、日本・バングラデシュ商工会議所(JBCCI)、9月にダッカで開催予定の「ジャパン・トレードフェア2005」を通じて、経済・企業関係者間の対話と協力を促進し、両国間の経済関係の基盤を強化する。

(vii)両首脳は、バングラデシュ首相の訪日中に、バングラデシュ国民が日本の民間企業で研修・技能実習を受けることを可能とする合意議事録が、国際研修協力機構(JITCO)と海外居住者福利厚生・海外雇用省との間で署名されたことを歓迎した。

(viii)ガバナンスの改善は、バングラデシュの開発を実現し貿易・投資を促進するための主要な柱の一つである。バングラデシュ側は、よいガバナンスの促進に向けた努力継続をコミットすることを表明するとともに、法と秩序をさらに改善し、汚職対策を強化し、行政能力を向上させる政策について説明した。

(ix)日本側は、バングラデシュ政府及び他の援助国・機関と協力しながら、バングラデシュが現在取り組んでいる法執行機関のキャパシティ・ビルディングを含め、バングラデシュのガバナンス改善を支援する。

(x)日本とバングラデシュは、民主主義の堅持を再確認した。バングラデシュ側は、次期総選挙をバングラデシュ憲法にあるとおり、自由かつ公正な形で実施する決意を日本側へ伝達した。日本はその実現のためバングラデシュを支援する考えである。

国連その他の国際フォーラムにおける協力

(xi)両首脳は、あらゆる形態のテロリズムを断固として非難することを再確認した。そして、テロリズムの脅威が依然としてグローバルな安全保障上の懸念であることを認識し、テロリストが地域の平和、安全、安定及び繁栄に及ぼす脅威に対処する決意を改めて表明した。

(xii)両首脳は、国際連合が21世紀の課題に効果的に対応するためには、包括的な国連改革が必要であるとの認識を共有した。両首脳はこの目的のため緊密に連携をとり、諸改革の実現に向けて協力することを確認した。この関連で、両首脳は、国連安全保障理事会がより代表性の高いものとなることが、より広範な国連改革プロセスにとっての重要な要素であることを確認した。バングラデシュは、日本の安保理常任理事国入りに対する支持を改めて表明した。日本はバングラデシュの支持を歓迎した。また、日本は、安保理改革に関する枠組み決議案へのバングラデシュの支持を要請した。バングラデシュは、この要請に適切な考慮を払う旨述べた。

(xiii)両国は、自然災害対策をはじめとする国際的な諸課題の重要性についての認識を共有した。両国は、地震やサイクロン、津波、洪水などの自然災害への対処や事後対策に関する経験及び対策を生かす考えである。両国は、本年1月に神戸で開催された国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組2005-2015」の実施に向けて、国際的なフォーラムで国際協力を引き続き進めていく。

(xiv)バングラデシュを含むインド洋地域における津波早期警戒体制の構築への支援として、日本は、研修、津波監視情報提供、津波防災教育等の協力活動を実施している。両国は、防災体制の強化に向けて、ODAを活用した防災協力イニシアティブ、アジア防災センター等を通じた協力関係を引き続き強化する。

(xv)さらに、日本は、バングラデシュのサイクロン監視体制を強化するための気象レーダー等の整備について、無償資金協力を行うことを決定した。両国は、今般、書簡の交換を行った。

(xvi)日本は、「環境保護と経済成長は両立する」との考えである。日本は、地球温暖化対策を引き続き実施する。日本は、圧縮天然ガス(CNG)を使用した車両の導入等のバングラデシュの環境保護対策を歓迎する。

(xvii)バングラデシュは、世界第2位の国連平和維持活動(PKO)要員派遣国であり、日本は世界第2位のPKO予算拠出国である。両国は、国連PKOの重要性を認識し、PKOへの協力を継続していくことを表明した。

南アジア地域とアジアの平和と繁栄に向けての協力

(xviii)南アジア地域の繁栄と安定は、アジア全体の繁栄と安定を実現する鍵である。日本は、バングラデシュが南アジア地域協力連合(SAARC)の設立を提唱し、本年11月の第13回SAARC首脳会議を主催することを賞賛した。日本は、SAARCへの支援を通じて、地域協力を推進するバングラデシュの取り組みを支援する。

(xix)日本は、バングラデシュが南アジアと東南アジアの結節点に位置し、ベンガル湾多分野技術経済協力構想(BIMSTEC)のメンバーとして、地域の平和と安全に貢献すると認識している。

(xx)両首脳は、アジアの繁栄にとって、国際海上交通の安全を確保することが重要であることを再確認した。バングラデシュは、アジア海賊対策地域協力協定締結に向けての作業を可能な限り早期に行う意思を確認する。

(xxi)日本は、バングラデシュのASEAN地域フォーラム(ARF)参加への立候補を支持することを表明した。バングラデシュは、この支持に深く感謝した。

交流と対話の促進

(xxii)以上の協力に更に弾みをつけるために、両国は、有識者、シンクタンク及び議員間の交流を含め、幅広い分野での対話と交流を促進するよう努める。両国は、外務次官級の政務協議を継続する。

(xxiii)日本は国費外国人留学生制度、国際協力機構(JICA)、海外技術者研修協会(AOTS)等の枠組みにより、数多くのバングラデシュ青年を招聘してきた。特に、国費外国人留学生制度を通じて日本で勉強するバングラデシュ青年の数は440名に達し、これは南アジアで1位、全世界でも6位の数である。これらの留学生・研修生は、バングラデシュへの帰国後に幅広い分野で活躍し、両国間の強固な架け橋となっている。バングラデシュは、こうした人々が帰国後国造りにより活発な役割を果たせるよう、同窓会ほかのネットワークの組織化を含め、基盤整備を行う。

(xxiv)バングラデシュ首相の訪日中に、両国は、1982年に署名された日本・バングラデシュ文化協定にそって両国間の文化交流を促進する目的で、日本とバングラデシュ両政府間の文化交流行動計画に署名した。この行動計画にそって、両国は、双方にとって都合の良い時期に、両国の文化を紹介する行事として、ジャパン・フェスティバル及びバングラデシュ・フェスティバルをそれぞれ開催する。

(xxv)両首脳は、バングラデシュ首相の日本訪問により、両国間の友好・協力関係が新たな章を迎えたこと、そして、現在の両国の関係がさらに高いレベルへ引き上げられたことに留意した。

(xxvi)ジア首相は、小泉総理に対し、バングラデシュを訪問するよう、温かい心からの招待の意を表明した。小泉総理は、感謝しつつこの招待を受けた。