データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 成果文書 日印科学技術イニシアティブ会合

[場所] 
[年月日] 2006年10月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

●2005年4月に小泉元総理が、マンモハン・シン首相の招きにより、インドを公式訪問した。両首脳は、相互依存とグローバリゼーションの到来に特徴づけられる現下の国際情勢が、日印双方にとって相互の利益のために関与を強化する新たな機会を提供するものであると認識した。

●また、両首脳は、日本とインドは、世界規模及び地域的な挑戦に対応する責任と能力を有するパートナーとして互いを認め、現下の国際情勢に鑑み、両首脳は日本とインドのグローバル・パートナーシップの戦略的焦点を強化することを確認した。

●この中で、アジア新時代におけるパートナーである日本とインドは、科学技術協力の重要性を認識し、共働して、新しい「科学技術イニシアティブ」を立ち上げるために協力し、現代生物学、バイオテクノロジー、ヘルス・ケア、農業、炭化水素燃料、環境、ICT、ロボット工学、代替エネルギー等の分野における実質的な可能性を模索するため、日印両政府は、日印科学技術合同委員会を再活性化することにつき意見が一致した。

●パートナーシップに基づき、2005年11月にデリーにおいて6年ぶりとなる第7回日印科学技術合同委員会が開催された。

●この日印科学技術合同委員会は、両政府が日印科学技術交流の全体をレビューし、また共同プロジェクト等の進捗状況につきフォローすることに意義がある。両政府は合同委員会を通して、科学技術イニシアティブ」の下で4?5分野を選択し、2006年中に日本でワークショップを開催し、これら分野に関し検討することを決定した。

●「日印科学技術イニシアティブ会合」は、これまでの日印関係者の努力により、日本国文部科学省、外務省、独立行政法人日本学術振興会、インド科学技術局の協力により2006年10月16日、17日に東京・三田共用会議所で開催された。

●イニシアティブ会合の出席者は科学技術協力の方向性を議論し、以下のように共通の観点を共有するに至った。

1.本イニシアティブ会合における政策対話を通じ、情報通信技術(ICT)、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、環境科学技術(例:排出物・廃棄物関連)、防災、宇宙の科学技術分野における日印科学技術協力から相互にもたらされる多様な利益の存在が期待された。

2.具体的な議論を通し、本イニシアティブ会合の科学者セッション出席者は、情報通信技術、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーの3グループに及ぶ分野において、次のような相互利益の存在を見出した。

(1)情報通信技術(ICT)分野においては、ICTが両国の経済社会の発展を確実とするきわめて重要なイノベーションの手段であり、また、21世紀の知識社会を支える重要な基盤技術(例えば、e-Government、減災、環境モニタリング、健康管理システム、e-learning等)であることを確認する。現状において、ハードウエアで実績のある日本と、ソフトウエアで実績のあるインドは互いに相互補完関係にある。経済社会の発展のためにサイバー基盤技術を研究することは重要であり、意見が一致した分野については、1)情報通信セキュリティー、2)センサー網技術、3)次世代インターネット、4)言語処理技術、等がある。

(2)バイオテクノロジー分野においては、21世紀のポストゲノム時代を迎え、バイオインフォマティクス、医療科学、生物化学分野の発展が期待される。genomics、transcriptomics、proteomics、metabolomics(Omics)等についても発展が期待される。新たに発見された「機能的RNA研究分野」を含む。その他、潜在性の高い医薬品や医療機器等の臨床試験(トランスレーショナル・リサーチ)も力を入れていくべき有望な分野である。

(3)クリーンエネルギー応用技術のために、ナノ構造の材料の開発は重要である。幸運なことに両国は、ナノ細孔材料、ナノハイブリッド材料、ナノ繊維材料等といった、様々な機能ナノ材料の合成や材質研究に関する強い基盤を持っている。これらの分野における日本とインドの知見の融合はさらなる進展をもたらし、持続可能な環境の実現へつながるものと期待される。

(4)上記の分野における日印の協力を促進するために、優秀な科学者の交流や、その他の方法でのネットワーク形成(合同会合、ワークショップ、フェローシップ、様々なプロジェクト等)の重要性が認識されてきた。

3.以上で指摘された科学技術協力の分野の中で、相互に関心のある特定の時限的なプロジェクトを通し、互恵主義(イコールパートナーシップ)に基づき、共同プログラムを進めることを考慮していく。そのようなプログラムの目的の一つは市民に役立つ高度で高価過ぎない新技術の創成である。

(両国の実施機関間での決定がなされた後、すぐに共同で募集を行い、活発な科学技術分野での協力が次年度に開始されるように、前向きに検討する。)

4.現存の合同委員会は、上記の協力活動に対し行政面から支持を行っていく。