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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インド外務大臣の来日に関する共同プレス・リリース

[場所] 東京
[年月日] 2007年3月
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 インドのプラナーブ・ムカジー外務大臣は、日本の麻生外務大臣の招待を受けて、日本を公式訪問している。ムカジー外務大臣は3月22日に麻生外務大臣と会談を行い、日印間で初となる閣僚レベルの戦略的対話を実施し、ムカジー外務大臣は、安倍総理大臣を表敬訪問したほか、甘利経済産業大臣、冬柴国土交通大臣、塩崎官房長官と会談を行った。また、3月23日に久間防衛大臣と会合した。

 以上の会談の中で、両首脳が日印戦略的グローバル・パートナーシップの構築を決意したことを受けて、二国間関係の水準を更に高めることに向けて新たな機運が得られたことが満足の意をもって留意された。双方は、昨年12月15日に両首脳間で署名された共同声明に盛り込まれた合意事項の実施を通じ、共通の価値と共通利益に基づいて、二国間関係を強化するための取組を加速していく決意を表明した。

1.地域的・国際的課題

(1)両外務大臣は、地域、多国間及び国際社会における諸課題に対する協力を高めていく方法について意見交換を行った。両外務大臣は、日印両国が地域的・国際的課題に対応する責任を有していること、そしてアジアと世界全体の平和と安定の促進に向けて積極的な役割を果たさなければならないことについて共通の理解に達した。

(2)アジア地域情勢の現状を踏まえ、両外務大臣は、アジア地域の平和と繁栄に向けた日印協力の方向性について広範な議論を行った。また、日本が提唱する「自由と繁栄の弧」の理念とインドが提唱する「優位と繁栄の弧」の理念の間には共通の目標や価値が存在することを確認するとともに、この共通理念の実現が、日印両国ひいてはアジア地域全体の利益であることを確認した。日印両国は、様々なチャネルを通じて、アジアについての対話を深めていく。

(3)両外務大臣は、大きな潜在性を有する南アジア地域の更なる発展がアジアひいては世界全体の平和と繁栄に多大な貢献を果たすという認識を共有した。また、両外務大臣は、南アジアの地域協力と統合のために南アジア地域協力連合(SAARC)が重要な役割を果たすべきことを確認するとともに、4月にニューデリーにて開催される次回のSAARC首脳会議は、日本が初めてオブザーバー参加する機会であり、SAARC諸国と東アジア地域の国際的なつながりを高める契機になるとの認識を共有した。

(4)両外務大臣は、エネルギー安全保障、環境問題、自然災害、テロや大量破壊兵器の拡散といった地域の様々な課題に対処していくためには、アジアにおける地域協力の枠組みを強化していくことが重要との認識を共有した。両外務大臣は、アジア地域における共同体構築の過程において協力していく意思をあらためて確認するとともに、東アジア首脳会議(EAS)を将来的な東アジア共同体の柱として発展させていくことが重要との認識で一致した。両外務大臣は、この目的のため、第2回EASにおける進展に基づいて両国が協力していくことを確認した。

(5)両外務大臣は、両国が、共通に有しているが差異のある責任に応じて、気候変動という国際社会の喫緊の課題に対して共に取り組むべく、気候変動とエネルギー効率の分野で協力を深める重要性を強調した。また、両国は、「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」の枠組みにおいても協力する。

(6)両外務大臣は、国連安保理改革の早期実現という共通目標に向け、引き続き緊密に連携していくことを確認した。また、日本、インド、ブラジル、ドイツによるG4の取組は、この目標に向けて重要な役割を果たしてきたことを確認し、引き続き、G4の枠組みとともに重要なパートナーとの緊密な対話を活用していくことを確認した。

(7)両外務大臣は、朝鮮半島における最近の動きについて意見交換を行い、北朝鮮が実施した核実験について、地域の安全保障環境を極めて複雑化させ、秘密裏の拡散の広がりの実態を示すものとして深刻な懸念を共有した。両外務大臣は、国連安保理決議1718の完全な履行の重要性を強調し、同決議の履行という目的に向け、実践的な協力を進めていくことを確認した。両外務大臣は、朝鮮半島の非核化を六者会合を通じて実現することの重要性を強調し、2月13日の合意の実施を求めた。また、両外務大臣は、人道上の懸念である拉致問題の可能な限り早期の解決を強く求めた。

(8)双方は、両国が、責任あるメンバーとして、G6を含む取組を通じて、バランスの取れたWTOドーハ合意の早期妥結に向けて共に取り組むことを再確認した。

2.二国間関係の更なる強化に向けた取組

(1)ハイレベルの往来、二国間の対話:

 ムカジー外務大臣は安倍総理に対して、双方にとって都合の良い早期にインドを訪問していただきたいとのインド首相からの招待をあらためて伝達し、安倍総理は、インド訪問を楽しみにしていると述べた。両外務大臣は、外務次官級政務協議、軍縮・不拡散局長級協議、テロ協議等の既存の枠組みを通じて定期的に対話を行っていくことの重要性をあらためて強調した。これらの協議は、2007年中に実施される。

(2)防衛及び安全保障分野での協力:

 双方は、防衛と安全保障分野における協力と交流の着実な進展を評価した。この関連で、双方は、インド海軍艦艇の日本への親善訪問、防衛政策対話、協力と交流の年間計画を通じた軍種間の協力の進展を歓迎し、次回の安全保障対話を2007年中の相互に都合の良い時期に実施するよう指示した。

 また、双方は、日印両国及び地域の経済的繁栄の不可欠な要素である国際海上交通の安全確保のために、海上保安当局間の定期的な交流を含め、両国が緊密に協力しなければならないとの考えを確認した。

(3)包括的な経済パートナーシップ:

 双方は、経済パートナーシップ・イニシアティブの下で行われている二国間の経済交流全体についてあらためて意見交換を行った。また、質が高く、双方にとって有益な合意の形成を目指して、経済連携協定交渉が本年1月に開始されたことに満足の意を表明した。第2回交渉は本年4月に東京にて開催される。麻生外務大臣は、インドが4年連続で日本の円借款の最大の受取国になる見込みであることを伝え、ムカジー外務大臣は日本の支援に感謝した。ムカジー外務大臣は、日本側に対し、幹線貨物鉄道建設計画を実行に移すとのインド政府の決定を伝達し、日本側は、この計画の重要性に対して理解を示すとともに、現在行われている開発調査に基づいて、このプロジェクトに対する支援の可能性を積極的に検討していく旨述べた。

(4)日印エネルギー対話:

 ムカジー外務大臣は甘利経済産業大臣と会談を行い、エネルギー分野における協力を促進するための日印エネルギー閣僚級対話の枠組みについて共通の理解に達した。協力のためのプロジェクトを特定するため、1)電力と発電、2)エネルギー効率、3)石炭、4)再生可能エネルギー、5)石油と天然ガスという5つの分野に関するワーキング・グループが設置される。この対話を開始すべく、インド計画委員会副委員長が4月に来日する。

(5)ハイテク貿易に関する協議枠組み:

 ムカジー外務大臣と甘利経済産業大臣は、ハイテク貿易のための二国間の協議枠組みについて共通の理解に達した。この協議枠組みは、二国間のハイテク貿易を円滑化し両国の輸出管理制度に関する事項を扱う。第1回協議は本年5月に東京にて開催される。

(6)人の交流:

 両外務大臣は、両首脳による指示を想起し、関係当局に対し、外交旅券所持者の査証免除と双方向の渡航を円滑化するための査証手続きの簡素化に関する協議の継続を指示した。また、福岡県とデリー準州が友好交流関係に関する覚書に署名したことが双方により歓迎された。両外務大臣は、「インドにおける日本年」の開会式典が成功裡に開催されたことを歓迎するとともに、「麻生プログラム」が着実に進展していることを歓迎した。また、両外務大臣は、インド情報技術大学(設計・製造)ジャバルプール校(IIITDM・J)を発展させるための支援を行うためのコンソーシアムの立ち上げに向けた進展を歓迎した。このコンソーシアムには日本の高名な大学と企業が参加する。また、両外務大臣は、IIITDM・Jを発展させる計画を実現すべく取り組む必要性を再確認した。

 ムカジー外務大臣は麻生外務大臣に対し、次回の外相間戦略的対話のため、2008年の双方に都合の良い時期にインドを訪問するよう招請し、麻生大臣はこれを受け入れた。