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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約

[場所] イスラマバード
[年月日] 2008年1月23日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びパキスタン・イスラム共和国政府は、

所得に対する租税に関し、二重課税を回避し、及び脱税を防止するための新たな条約を締結することを希望して、

 次のとおり協定した。

  第一条 対象となる者

 この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者に適用する。

  第二条 対象となる租税

1 この条約が適用される現行の租税は、次のものとする。

(a)日本国については、

 (i)所得税

 (ii)法人税

 (以下「日本国の租税」という。)

(b)パキスタンについては、所得税

 (以下「パキスタンの租税」という。)

2 この条約は、1に掲げる租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって、1に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するものについても、適用する。両締約国の権限のある当局は、各締約国の租税に関する法令について行われた重要な改正を、その改正後の妥当な期間内に、相互に通知する。

  第三条 一般的定義

1 この条約の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a)「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域(領海を含む。)及びその領域の外側に位置する区域であって、日本国が国際法に基づき主権的権利を有し、かつ、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての区域(海底及びその下を含む。)をいう。

(b)「パキスタン」とは、地理的意味で用いる場合には、パキスタン・イスラム共和国の領域をいい、パキスタンの領海の外側に位置する区域であって、パキスタンの法令及び国際法に基づき、パキスタンが海底並びに海底の下及び上部水域の天然資源に関して主権的権利及び排他的管轄権を行使する区域を含む。

(c)「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はパキスタンをいう。

(d)「租税」とは、文脈により、日本国の租税又はパキスタンの租税をいう。

(e)「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。

(f)「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

(g)「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。

(h)「国際運輸」とは、一方の締約国の企業が運用する船舶又は航空機による運送(他方の締約国内の地3点の間においてのみ運用される船舶又は航空機による運送を除く。)をいう。

(i)「国民」とは、次の者をいう。

 (i)一方の締約国の国籍を有するすべての個人

 (ii)一方の締約国の法令に基づいて設立され、又は組織されたすべての法人

 (iii)法人格を有しないが、租税に関し、一方の締約国の法令に基づいて設立され、又は組織された法人として取り扱われるすべての団体

(j)「権限のある当局」とは、次の者をいう。

 (i)日本国については、財務大臣又は権限を与えられたその代理者

 (ii)パキスタンについては、連邦歳入庁又は権限を与えられたその代理者

2 一方の締約国によるこの条約の適用に際しては、この条約において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するものとする。当該一方の締約国において適用される租税に関する法令における当該用語の意義は、当該一方の締約国の他の法令における当該用語の意義に優先するものとする。

  第四条 居住者

1 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいい、当該一方の締約国及び当該一方の締約国の地方政府又は地方公共団体を含む。ただし、「一方の締約国の居住者」には、当該一方の締約国内に源泉のある所得のみについて当該一方の締約国において租税を課される者を含まない。

2 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人については、次のとおりその地位を決定する。

(a)当該個人は、その使用する恒久的住居が所在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある締約国)の居住者とみなす。

(b)その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、その有する常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。

(c)その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、当該個人が国民である締約国の居住者とみなす。

(d)当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により当該事案を解決する。

3 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する者で個人以外のものについては、両締約国の権限のある当局は、その者の本店又は主たる事務所の所在地、事業の実質的な管理の場所その他関連するすべての要因について考慮した上で、合意により、この条約の適用上その者が居住者とみなされる締約国を決定する。

  第五条 恒久的施設

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っているものをいう。

2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

(a)事業の管理の場所

(b)支店

(c)事務所

(d)工場

(e)作業場

(f)倉庫

(g)鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所

3 建築工事現場若しくは建設、組立て若しくは据付けの工事又はこれらに関連する監督活動については、これらの工事現場、工事又は活動が六箇月を超える期間存続する場合には、恒久的施設を構成するものとする。

4 1から3までの規定にかかわらず、次のことを行う場合は、「恒久的施設」に当たらないものとする。

(a)企業に属する物品又は商品の保管又は展示のためにのみ施設を使用すること。

(b)企業に属する物品又は商品の在庫を保管又は展示のためにのみ保有すること。

(c)企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。

(d)企業のために物品若しくは商品を購入し、又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(e)企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(f)(a)から(e)までに規定する活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。ただし、当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。

5 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国内において企業に代わって行動する者(6の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が、次のいずれかの活動を行う場合には、当該企業は、その者が当該企業のために行うすべての活動について、当該一方の締約国内に恒久的施設を有するものとされる。

(a)当該一方の締約国内で、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使すること。ただし、その者の活動が4に規定する活動(事業を行う一定の場所で行われたとしても、4の規定により当該一定の場所が恒久的施設であるものとされないようなもの)のみである場合は、この限りでない。

(b)(a)に規定する権限は有しないが、当該一方の締約国内で、物品又は商品の在庫を恒常的に保有し、かつ、当該在庫から当該企業に代わって物品又は商品を反復して引き渡すこと。

6 企業は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人を通じて一方の締約国内で事業を行っているという理由のみでは、当該一方の締約国内に恒久的施設を有するものとはされない。

7 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業(恒久的施設を通じて行われるものであるか否かを問わない。)を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設とはされない。

  第六条 不動産所得

1 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得(農業又は林業から生ずる所得を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「不動産」とは、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。「不動産」には、いかなる場合にも、これに附属する財産、農業又は林業に用いられる家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(変動制であるか固定制であるかを問わない。)を受領する権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

4 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得及び独立の人的役務を提供するために使用される不動産から生ずる所得についても、適用する。

  第七条 事業利得

1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 3の規定に従うことを条件として、一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、当該恒久的施設が、同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行う別個のかつ分離した企業であって、当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行うものであるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得が、各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする。

3 恒久的施設の利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用であって当該恒久的施設のために生じたものは、当該恒久的施設が存在する締約国内において生じたものであるか他の場所において生じたものであるかを問わず、控除することを認められる。

4 2の規定は、恒久的施設に帰せられるべき利得を企業の利得の総額の当該企業の各構成部分への配分によって決定する慣行が一方の締約国にある場合には、租税を課されるべき利得をその慣行とされている配分の方法によって当該一方の締約国が決定することを妨げるものではない。ただし、用いられる配分の方法は、当該配分の方法によって得た結果がこの条に定める原則に適合するようなものでなければならない。

5 恒久的施設が企業のために物品又は商品の単なる購入を行ったことを理由としては、いかなる利得も、当該恒久的施設に帰せられることはない。

6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によって決定する。ただし、別の方法を用いることにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。

7 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、当該他の条の規定は、この条の規定によって影響されることはない。

  第八条 国際運輸

1 一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 第二条及び第三条1(d)の規定にかかわらず、いかなるパキスタンの地方政府又は地方公共団体も日本国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき日本国における住民税又は事業税に類似する租税を課さないことを条件として、パキスタンの企業は、船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき日本国において住民税及び事業税を免除される。

3 1及び2の規定は、共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加していることによって取得する利得についても、適用する。

  第九条 関連企業

1 次の(a)又は(b)の規定に該当する場合であって、そのいずれの場合においても、商業上又は資金上の関係において、双方の企業の間に、独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ、又は課されているときは、その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては、これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる。

(a)一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配又は資本に直接又は間接に参加している場合

(b)同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配又は資本に直接又は間接に参加している場合

2 一方の締約国が、他方の締約国において租税を課された当該他方の締約国の企業の利得を1の規定により当該一方の締約国の企業の利得に算入して租税を課する場合において、両締約国の権限のある当局が、協議の上、その算入された利得の全部又は一部が、双方の企業の間に設けられた条件が独立の企業の間に設けられたであろう条件であったとしたならば当該一方の締約国の企業の利得となったとみられる利得であることに合意するときは、当該他方の締約国は、その合意された利得に対して当該他方の締約国において課された租税の額について適当な調整を行う。この調整に当たっては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払う。

  第十条 配当

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。2 1に規定する配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、次の額を超えないものとする。

(a)当該配当の受益者が、当該配当の支払を受ける者が特定される日をその末日とする六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の五十パーセント以上を直接に所有する法人である場合には、当該配当の額の五パーセント

(b)当該配当の受益者が、当該配当の支払を受ける者が特定される日をその末日とする六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の二十五パーセント以上を直接に所有する法人である場合には、当該配当の額の七・五パーセント

(c)その他のすべての場合には、当該配当の額の十パーセント

 この2の規定は、当該配当を支払う法人のその配当に充てられる利得に対する課税に影響を及ぼすものではない。

3 2(a)及び(b)の規定は、日本国における課税所得の計算上受益者に対して支払う配当を控除することができる法人によって支払われる配当については、適用しない。

4 この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及びその分配を行う法人が居住者とされる締約国の租税に関する法令上株式から生ずる所得と同様に取り扱われる所得をいう。

5 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者とされる他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十五条の規定を適用する。

6 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国内から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、当該法人の支払う配当及び当該法人の留保所得については、これらの配当及び留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内において生じた利得又は所得から成るときにおいても、当該配当(当該他方の締約国の居住者に支払われる配当及び配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該他方の締約国内にある恒久的施設又は固定的施設と実質的な関連を有するものである場合の配当を除く。)に対していかなる租税も課することができず、また、当該留保所得に対して租税を課することができない。

  第十一条 利子

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1に規定する利子に対しては、当該利子が生じた一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国内において生ずる利子であって、次のいずれかの場合に該当するものについては、他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a)当該利子の受益者が、当該他方の締約国の政府、当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行又は当該他方の締約国の政府が全面的に所有する機関である場合

(b)当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者であって、当該利子が、当該他方の締約国の政府が全面的に所有する機関によって保証された債権又は保険の引受けが行われた債権に関して支払われる場合

4 3の規定の適用上、「中央銀行」及び「政府が全面的に所有する機関」とは、次のものをいう。

(a)日本国については、

 (i)日本銀行

 (ii)国際協力銀行

 (iii)独立行政法人国際協力機構

 (iv)独立行政法人日本貿易保険

 (v)日本国政府が資本の全部を所有するその他の機関で両締約国の政府が外交上の公文の交換により随時合意するもの

(b)パキスタンについては、

 (i)パキスタン国立銀行

 (ii)パキスタン政府が資本の全部を所有するその他の機関で両締約国の政府が外交上の公文の交換により随時合意するもの

5 この条において、「利子」とは、すべての種類の信用に係る債権(担保の有無及び債務者の利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)及び他の所得で当該所得が生じた締約国の租税に関する法令上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。

6 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益者が、当該利子の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十五条の規定を適用する。

7 利子は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、利子の支払者が、一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該支払者がいずれかの締約国の居住者であるか否かを問わず、当該利子は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

8 利子の支払の基因となった債権について考慮した場合において、利子の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該利子の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

  第十二条 使用料

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1に規定する使用料に対しては、当該使用料が生じた一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該使用料の額の十パーセントを超えないものとする。

3 この条において、「使用料」とは、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物(映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領されるすべての種類の支払金をいう。

4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である使用料の受益者が、当該使用料の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該使用料の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十五条の規定を適用する。

5 使用料は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、使用料の支払者が、一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該使用料を支払う債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該使用料が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該支払者がいずれかの締約国の居住者であるか否かを問わず、当該使用料は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

6 使用料の支払の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該使用料の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

  第十三条 技術上の役務に対する料金

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる技術上の役務に対する料金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1に規定する技術上の役務に対する料金に対しては、当該技術上の役務に対する料金が生じた一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該技術上の役務に対する料金の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該技術上の役務に対する料金の額の十パーセントを超えないものとする。

3 この条において、「技術上の役務に対する料金」とは、経営上、技術上又はコンサルタントの役務(技術者その他の人員による役務を含む。)の提供の対価として受領されるすべての種類の支払金をいう。ただし、「技術上の役務に対する料金」には、次のものとして受領されるいかなる種類の支払金も含まない。

(a)建設、組立て若しくは据付けの工事その他これらに類する工事又はこれらに関連する監督活動の対価

(b)第十五条に規定する独立の人的役務の提供の対価

(c)第十六条に規定する勤務の対価

4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である技術上の役務に対する料金の受益者が、当該技術上の役務に対する料金の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該技術上の役務に対する料金の支払の基因となった契約が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

5 技術上の役務に対する料金は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、技術上の役務に対する料金の支払者が、一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該技術上の役務に対する料金を支払う債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該技術上の役務に対する料金が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該支払者がいずれかの締約国の居住者であるか否かを問わず、当該技術上の役務に対する料金は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

6 技術上の役務に対する料金の支払の基因となった契約について考慮した場合において、技術上の役務に対する料金の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該技術上の役務に対する料金の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

  第十四条 譲渡収益

1 一方の締約国の居住者が第六条に規定する不動産であって他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国の居住者が法人の株式又は組合若しくは信託財産の持分の譲渡によって取得する収益に対しては、その法人、組合又は信託財産の資産の価値の五十パーセント以上が第六条に規定する不動産であって他方の締約国内に存在するものにより直接又は間接に構成される場合に限り、当該他方の締約国において租税を課することができる。

3 2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の発行した株式の譲渡によって取得する収益に対しては、譲渡者が所有する株式(当該譲渡者の特殊関係者が所有する株式であって当該譲渡者が所有するものと合算されるものを含む。)の数が、当該譲渡が行われた課税年度中のいずれかの時点において当該法人の発行済株式の総数の二十五パーセント以上である場合には、当該他方の締約国において租税を課することができる。

4 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産を構成する財産(不動産を除く。)の譲渡又は一方の締約国の居住者が独立の人的役務を提供するため他方の締約国内においてその用に供している固定的施設に係る財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(当該恒久的施設の譲渡、企業全体の譲渡の一部としての当該恒久的施設の譲渡又は当該固定的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

5 一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶若しくは航空機又はこれらの船舶若しくは航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によって当該企業が取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

6 1から5までに規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者とされる締約国においてのみ租税を課することができる。

  第十五条 独立の人的役務

1 一方の締約国の居住者が自由職業その他の独立の性格を有する活動について取得する所得に対しては、次の(a)又は(b)の規定に該当する場合を除くほか、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a)その者が、自己の活動を行うため通常その用に供している固定的施設を他方の締約国内に有する場合

(b)その者が、当該課税年度において開始し、又は終了するいずれかの十二箇月の期間において、合計百八十三日以上の期間当該他方の締約国内に滞在する場合

 その者がそのような固定的施設を有する場合又は前記の期間当該他方の締約国内に滞在する場合には、当該所得に対しては、当該固定的施設に帰せられる部分又は前記の期間を通じ当該他方の締約国内において取得した部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、芸術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。

  第十六条 給与所得

1 次条及び第十九条から第二十一条までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに規定する要件を満たす場合には、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a)当該課税年度において開始し、又は終了するいずれの十二箇月の期間においても、報酬の受領者が当該他方の締約国内に滞在する期間が合計百八十三日を超えないこと。

(b)報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。

(c)報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機内において行われる勤務に係る報酬に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

  第十七条 役員報酬

 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

  第十八条 芸能人及び運動家

1 第十五条及び第十六条の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者である個人が演劇、映画、ラジオ若しくはテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人又は運動家として他方の締約国内で行う個人的活動によって取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国内で行う芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の他方の締約国の居住者である者に帰属する場合には、当該所得に対しては、第七条、第十五条及び第十六条の規定にかかわらず、当該個人的活動が行われる当該一方の締約国において租税を課することができる。

  第十九条 退職年金

 次条2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

  第二十条 政府職員

1(a) 政府の職務の遂行として一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対し提供

される役務につき、個人に対し、当該一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われる給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(b)もっとも、当該役務が他方の締約国内において提供され、かつ、当該個人が次の(i)又は(ii)の規定に該当する当該他方の締約国の居住者である場合には、その給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 (i)当該他方の締約国の国民

 (ii)専ら当該役務を提供するため当該他方の締約国の居住者となった者でないもの

2(a) 1の規定にかかわらず、一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われ、又は当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体が拠出し、若しくは設立した基金から支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 (b)もっとも、当該個人が他方の締約国の居住者であり、かつ、当該他方の締約国の国民である場合には、当該退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

3 一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体の行う事業に関連して提供される役務につき支払われる給料、賃金、退職年金その他これらに類する報酬については、第十六条から前条までの規定を適用する。

  第二十一条 学生

1(a) 専ら教育を受けるため一方の締約国内に滞在する学生であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育、勉学又は研究のために受け取る給付については、次の(i)又は(ii)に規定する要件を満たす場合には、当該一方の締約国においては、租税を課することができない。

 (i)当該給付が、当該一方の締約国外から支払われるものであること。

 (ii)当該給付が、当該一方の締約国の政府機関又は宗教、慈善、教育、科学、芸術、文化その他公の目的のために運営され、かつ、当該一方の締約国の法令によりその所得の全部又は一部に対する租税が免除される団体からの交付金、奨学金、手当又は奨励金として支払われるものであること。

 (b)(a)に規定する学生が当該一方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、当該報酬の額の合計が当該暦年において百五十万日本円又はパキスタン・ルピーによるその相当額を超えない場合には、当該一方の締約国においては、租税を課することができない。

 (c)(b)の規定は、当該学生が当該一方の締約国内において最初に教育を受け始めた日から三年を超えない期間についてのみ適用する。

2(a) 専ら訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計又は訓練のために受け取る給付(当該一方の締約国外から支払われるものに限る。)については、当該一方の締約国においては、租税を課することができない。

 (b)(a)に規定する事業修習者が当該一方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、当該報酬の額の合計が当該暦年において百五十万日本円又はパキスタン・ルピーによるその相当額を超えない場合には、当該一方の締約国においては、租税を課することができない。

 (c)(a)又は(b)の規定は、当該事業修習者が当該一方の締約国内において最初に訓練を受け始めた日から一年を超えない期間についてのみ適用する。

  第二十二条 その他の所得

1 一方の締約国の居住者の所得(源泉地を問わない。)であって前各条に規定がないもの(以下この条において「その他の所得」という。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 1の規定は、一方の締約国の居住者であるその他の所得(第六条2に規定する不動産から生ずる所得を除く。)の受領者が、他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該その他の所得の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、当該その他の所得については、適用しない。この場合には、第七条又は第十五条の規定を適用する。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者の所得のうち、他方の締約国内において生ずるものであって前各条に規定がないものに対しては、当該他方の締約国においても、当該他方の締約国の法令に従って租税を課することができる。

  第二十三条 二重課税の除去

1 日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の規定に従い、

(a)日本国の居住者がこの条約の規定に従ってパキスタンにおいて租税を課される所得をパキスタン内において取得する場合には、当該所得について納付されるパキスタンの租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、日本国の租税の額のうち当該所得に対応する部分を超えないものとする。

(b)パキスタン内において取得される所得が、パキスタンの居住者である法人により、当該法人の議決権のある株式又は発行済株式の二十五パーセント以上を配当の支払義務が確定する日に先立つ六箇月の期間を通じて所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には、日本国の租税からの控除を行うに当たり、当該配当を支払う法人によりその所得について納付されるパキスタンの租税を考慮に入れるものとする。

2 パキスタンについては、二重課税は、次の方法により回避される。

(a)パキスタンの居住者がこの条約の規定に従って日本国において直接に又は源泉徴収によって租税を課される所得を取得する場合には、パキスタンは、日本国において納付される所得に対する租税の額を当該居住者の所得に対するパキスタンの租税から控除する。この(a)の規定に従って控除される日本国の租税の額は、パキスタンにおいて適用される租税の率により同一の所得に対して課されたとみられるパキスタンの租税の額を超えないものとする。

(b)パキスタンの居住者がこの条約の規定に従って日本国においてのみ租税を課される所得を取得する場合には、パキスタンは、当該所得を、パキスタンにおいて租税を課される当該所得以外の所得に対する租税の率を決定するためにのみ、パキスタンの租税の課税標準に含めることができる。

  第二十四条 無差別待遇

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、租税若しくはこれに関連する要件であって、特に居住者であるか否かに関し同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外のもの又はこれらよりも重いものを課されることはない。この1の規定は、第一条の規定にかかわらず、いずれの締約国の居住者でもない者にも、適用する。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行う当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。この2の規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として当該一方の締約国の居住者に認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に認めることを義務付けるものと解してはならない。

3 第九条1、第十一条8、第十二条6又は第十三条6の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者に支払った利子、使用料、技術上の役務に対する料金その他の支払金については、当該一方の締約国の居住者の課税対象利得の決定に当たって、当該一方の締約国の居住者に支払われたとした場合における条件と同様の条件で控除するものとする。

4 一方の締約国の企業であってその資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者により直接又は間接に所有され、又は支配されているものは、当該一方の締約国において、租税若しくはこれに関連する要件であって、当該一方の締約国の類似の他の企業に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外のもの又はこれらよりも重いものを課されることはない。

  第二十五条 相互協議手続

1 一方の又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受けたと認める者又は受けることになると認める者は、当該事案について、当該一方の又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して又は当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には自己が国民である締約国の権限のある当局に対して、申立てをすることができる。当該申立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る措置の最初の通知の日から三年以内に、しなければならない。

2 権限のある当局は、1に規定する申立てを正当と認めるが、自ら満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によって当該事案を解決するよう努める。成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。

3 両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努める。両締約国の権限のある当局は、また、この条約に定めのない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

4 両締約国の権限のある当局は、2及び3に規定する合意に達するため、直接相互に通信することができる。

  第二十六条 情報の交換

1 両締約国の権限のある当局は、この条約の規定又はこの条約が適用される租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)の規定の実施に関連する情報を交換する。情報の交換は、第一条の規定による制限を受けない。

2 1の規定に基づき一方の締約国が受領した情報は、当該一方の締約国がその法令に基づいて入手した情報と同様に秘密として取り扱うものとし、1に規定する租税の賦課若しくは徴収、これらの租税に関する執行若しくは訴追又はこれらの租税に関する不服申立てについての決定に関与する者又は当局(裁判所及び行政機関を含む。)に対してのみ、開示される。これらの者又は当局は、当該情報をそのような目的のためにのみ使用する。これらの者又は当局は、当該情報を公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。

3 1及び2の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

(a)当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

(b)当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

(c)営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反することになる情報を提供すること。

  第二十七条 外交使節団及び領事機関の構成員

 この条約のいかなる規定も、国際法の一般原則又は特別の協定に基づく外交使節団又は領事機関の構成員の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

  第二十八条 見出し

 この条約中の条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この条約の解釈に影響を及ぼすものではない。

  第二十九条 発効

1 この条約は、両締約国のそれぞれの国内法上の手続に従って承認されなければならない。この条約は、その承認を通知する外交上の公文の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

2 この条約は、次のものについて適用する。

(a)日本国においては、

 (i)源泉徴収される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

 (ii)源泉徴収されない所得に対する租税及び事業税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得(b)パキスタンにおいては、

 (i)源泉徴収される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

 (ii)その他のすべての租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の七月一日以後に開始する各課税年度のもの

3 千九百五十九年二月十七日に東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタンとの間の条約(以下この条において「旧条約」という。)は、2の規定に従ってこの条約が適用される租税につき、この条約の適用の日以後、適用しない。

4 旧条約は、この条の規定に従って適用される最後の日に終了する。5この条約の効力発生の時において旧条約第十一条の規定により認められる特典を受ける権利を有する個人は、この条約が効力を生じた後においても、旧条約がなお効力を有するとした場合に当該特典を受ける権利を失う時まで当該特典を受ける権利を引き続き有する。

  第三十条 終了

 この条約は、一方の締約国によって終了させられる時まで効力を有する。いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に開始する各暦年の末日の六箇月前までに、外交上の経路を通じて、他方の締約国に対し終了の通告を行うことにより、この条約を終了させることができる。この場合には、この条約は、次のものにつき適用されなくなる。

(a)日本国においては、

 (i)源泉徴収される租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

 (ii)源泉徴収されない所得に対する租税及び事業税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(b)パキスタンにおいては、

 (i)源泉徴収される租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

 (ii)その他のすべての租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の七月一日以後に開始する各課税年度のもの

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

二千八年一月二十三日にイスラマバードで、英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために

 小島誠二

パキスタン・イスラム共和国政府のために

 アブドゥラー・ユースフ