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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 民生用原子力イニシアティブに関するプラナーブ・ムカジー印外務大臣の声明

[場所] 
[年月日] 2008年9月5日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

軍縮・不拡散に関するインドの立場を改めて表明するため,外務大臣は,以下の声明を行った。

 インドとの完全な民生用原子力協力を認めるために原子力供給国グループのガイドラインからインドを例外化することを検討するための同グループの総会が,2008年9月4日から5日までウィーンにおいて開催されている。

 インドは,普遍的,非差別的かつ全面的な核兵器の廃絶への長年にわたる不

変のコミットメントを有している。1988年にラジブ・ガンジー氏が国連に示した核兵器のない世界へのビジョンは,今なお普遍的な共感を呼んでいる。

 我々は,相互に関心及び懸念を有している事項に関して現在行われている率直な意見交換を可能とするような協力の精神に基づいて,原子力供給国グループ及びその全ての参加国との対話に取り組んでいる。そのような対話は,今後何年にもわたり我々の関係を強化する。

 我々の民生用原子力イニシアティブは,国際的な不拡散体制を強化する。インドは,完全な民生用原子力協力の道を開くことは,インド及び世界にとって良いことであると信じている。それは,世界のエネルギー安全保障と,気候変動に対処するための国際的な取組に対して,極めて前向きな影響を与える。

 インドは,最近,核軍縮に関するイニシアティブを含む「核軍縮に関する作業文書」を国連総会に提出した。このイニシアティブには,核兵器の全面的な廃絶という目標に向けての全ての核兵器国による明確な約束の再確認,核兵器の使用又はその威嚇を完全に禁止する条約の交渉並びに特定された期間内における全世界的,非差別的かつ検証可能な核兵器の廃絶につながる,核兵器の開発,生産,貯蔵及び使用を禁止し並びにそれらの廃棄についての核兵器に関する条約交渉が含まれる。

 我々は,自発的かつ一方的な核実験に関するモラトリアムに引き続きコミットしている。我々は,核軍備競争を含むいかなる軍備競争にも参加しない。我々は,世界的な責任を自覚して,我々の戦略的な自主権の行使を常に抑制してきた。我々は,核兵器の先制不使用の政策を確認している。

 我々は,ジュネーブ軍縮会議において,普遍的,非差別的かつ検証可能な多国間の核兵器用核分裂性物質生産禁止条約の締結に向けて他国と協力することにコミットしている。

 インドには申し分のない不拡散の実績がある。我々は,効果的で包括的な国家輸出管理制度を有しており,当該制度は最高の国際基準に合致させるために常時改定されている。このことは,2005年の大量破壊兵器及びその運搬システムに関する法律の制定によって示されている。インドは,包括的な輸出管理法制や,ミサイル技術管理レジーム及び原子力供給国グループのガイドラインに調和させること及びそれらの遵守をコミットすることを通じて,核物質・技術を守るために必要な措置を講じてきた。

 インドは,濃縮及び再処理の移転を含む機微な技術の拡散源にはならない。我々は,不拡散体制の強化を支持している。我々は,濃縮及び再処理のための設備又は技術を持たない国へのそれらの拡散を規制するための国際的な取組を支持している。我々は不拡散という共通の目標を推進するために国際社会と共に取り組んでいく。これに関連して,インドは,特にトリウム・ベース燃料の供給国としての参加及びインドの利益にもなる国際燃料バンクの設立に関心がある。

インドは,IAEAの保障措置制度が果たす役割に大きな価値を置いている。我々は,IAEAと締結したインド特有の保障措置協定の実施においてIAEAと協力することを楽しみにしている。インドの民生用原子力施設に関する追加議定書の署名及び遵守という我々のコミットメントに沿って,我々は保障措置協定の追加議定書の早期締結を確保するためIAEAと緊密に協力している。

ニューデリー

2008年9月5日