[文書名] 日本国とインドとの間の安全保障協力に関する共同宣言
日本国とインドの両首脳は、
日印関係は、両国が地域及び世界全体の情勢に対して同様の認識を有していることに基づいていると確認し、
民主主義、開かれた社会、人権、法の支配に対する共通の決意を認識し、
アジアそして国際社会の平和と安定及び発展の促進に向けた相互の貢献に対する深い尊敬の念を確認し、
日印両国が相互の発展と繁栄に利害を有するパートナーであること、そして、強くかつ繁栄するインドは日本の利益であり、強くかつ繁栄する日本はインドの利益であることを認識し、
日印両国が海上交通路の安全に対して共通の利益を有していることを認識し、
テロとの闘いに対する共通のコミットメントを確認するとともに、日本の海上自衛隊によるインド洋における補給支援活動を含む日印双方のテロ対策の取組が、テロリズムの根絶に向けた国際社会の取組の中で重要な位置を占めていることを認識し、
核兵器のない平和な世界を求めるパートナーとして軍縮と不拡散を追求し、拡散に共に対抗していくとの共通のコミットメントをあらためて表明し、
常任・非常任双方の議席における国連安全保障理事会の拡大を含む、国連の包括的改革への共通のコミットメントを再確認し、
両国間の長期にわたる政治的、経済的、戦略的な利益と熱望そして関心の収斂によって促進される戦略的グローバル・パートナーシップが確立されたことを確認し、
相互協力の着実かつ質的な向上の必要性を認識し、
両国の外交当局間、防衛当局間及びその他の関係当局間における実践的な協力の増進を通じて将来にわたって協働していくことを決意し、
両国間の安全保障協力を促進するための包括的な枠組みを構築することを決定した。
協力の要素
日本国とインドの安全保障協力には次の分野が含まれる。
1.アジア太平洋地域情勢、長期的戦略及び国際的課題に関する情報交換及び政策調整
2.アジアにおける多国間枠組、特に東アジア首脳会議、アセアン地域フォーラム及びアジア海賊対策地域協力協定における二国間協力
3.2006年5月に防衛首脳間で署名された共同発表の枠組みにおける防衛対話・協力
4.海上保安当局間の協力
5.輸送の安全
6.テロ及び国境を越える犯罪との闘い
7.平和維持及び平和構築に関する経験の共有
8.災害対策
9.軍縮・不拡散
協力のメカニズム
二国間における上記の協力を具体化するためのメカニズムには次のものが含まれる。
1.以下の枠組みによる外交当局間の協議が実施される。
a.外相間戦略対話
b.外務次官間の会合
c.局長級による軍縮・不拡散協議
d.日印官民戦略対話
2.以下のような様々な枠組みによる防衛当局間の協力が実施される。
a.防衛大臣間の会合
b.防衛政策対話を含む日本の防衛事務次官とインドの国防次官間の会合
c.局長級による防衛当局間協議
d.各軍種の長の間の交流
e.海上自衛隊・インド海軍間におけるスタッフ・トークス
f.二国間及び多国間の訓練を含む軍種間の交流
g.双方の防衛関連機関への留学生及び研究者の相互派遣(例 インド国防大学、防衛研究所)
3.インド国家安全保障顧問と日本のカウンターパートの間における協議が実施される。
4.両国の海上保安当局は、両国の海上保安当局間で署名された協力に関する覚書に基づき、連携訓練や会合を通して、引き続き海上の安全、海上治安、海洋環境の保護等にかかる協力を推進する。
5.輸送の安全に関連し、両国の海事当局及び民間セクターによる海運政策フォーラム、鉄道実務者協議が実施される。
6.局長級による安全保障対話が実施される。
7.両国の外務省を含む政府機関の間で、日印テロ協議等のテロ対策協力を促進するための二国間の協議が実施される。
8.マネー・ローンダリング及びテロリストへの資金供与が疑われる取引に関する金融情報当局(FIU)間における情報共有の仕組みが検討される。
9.インドにおける津波防災地図の作成に関する協力が実施される。
10.双方は、それぞれが有する知見の共有を通じて、防災、災害への備えに関する能力構築を促進する。
11.宇宙航空研究開発機構(JAXA)とインド宇宙研究機関(ISRO)の間で災害管理分野において協力が実施される。
実施
日本国とインドは、上記の分野における安全保障協力を促進するため、具体策を盛り込んだ行動計画を作成し、早期に両首脳に報告する。
2008年10月22日
日本国内閣総理大臣
麻生 太郎
インド共和国首相
マンモハン・シン