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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] パキスタン支援国会合開会セッションにおける中曽根外務大臣ステートメント

[場所] 東京
[年月日] 2009年4月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

ザルダリ・パキスタン大統領閣下、

 クレーシ外相、タリーン財務顧問、

 ゲレロ世界銀行副総裁、

 各国政府並びに国際機関の代表者の皆様、

 本日、世界銀行との共催によるパキスタン支援国会合の開会にあたり、日本政府を代表して一言申し上げます。まず、本会合にご出席いただいております各国閣僚、各国政府・国際機関の代表者の皆様に対する歓迎の意を表明いたします。そして、共催者である世界銀行に対して、そのご協力につき心から御礼を申し上げたいと思います。

 100年に一度とも言われる経済・金融危機の中、国際社会は深刻な経済問題に直面しているだけではなく、世界各地で発生するテロという人間の平和な生活と幸福を脅かす深刻な問題に取り組まなければなりません。パキスタンは、この国際社会が取り組むテロ撲滅のための取組において、極めて重要な役割を担っており、また、その安定はアフガニスタンを含む周辺地域、ひいては国際社会の安定と平和に直結しています。

 本日午前、パキスタン政府主催によるパキスタン・フレンズ閣僚級会合が開催されました。フレンズ会合では、ザルダリ大統領から、パキスタン政府が取り組むテロ対策や経済改革に向けた固い決意が表明され、パキスタンによる具体的な取組について説明がなされました。参加した諸国は、一致してこの決意を歓迎するとともに、パキスタンが、自国のテロ対策と経済対策・経済改革の両方に着実に取り組めるよう国際社会が支援していくことを確認いたしました。

 パキスタン支援国会合においては、フレンズ会合で表明されたパキスタンの様々な取組の実施に向けた決意を踏まえて、パキスタンが直面している経済的な課題、短期的な開発ニーズについて議論がなされます。

 ご承知のとおり、パキスタン経済は、国際的な食料価格や石油価格の高騰に加え、金融危機に伴う世界経済の減速により昨年より困難な状況に直面し、パキスタン政府は、国内経済を立て直すために、昨年末からIMFをはじめとする開発パートナーの支援を得て、経済改革に取り組んできています。先日のIMFプログラムの第1回目のレビューの結果を踏まえて、我が国は、これまでのパキスタン政府の改革努力を評価しています。

 しかしながら、パキスタン政府は、経済の問題とともに、テロ対策にも取り組まなければならず、教育、保健といった社会セクターに必ずしも十分な開発資金を充当できていない状況にあります。

 パキスタンの人々が安心して生活を営むことができ、子供たちが安全に学校にも通えるようにするためにも、今後数年のパキスタン政府の取組が非常に重要だとの考えが、国際社会及びドナー・コミュニティーの間で共有されています。我が国は、このような認識を踏まえ、パキスタンにとってこの重要な時期に、支援国会合を開催することは非常に時宜を得たものと考え、世界銀行の協力を得て本件会合を東京で開催することにいたしました。

 我が国は、従来からパキスタンに対して積極的な支援を実施してきています。昨年5月には、パキスタンのインフラ整備を支援するため約480億円の有償資金協力を実施しました。また、4月7日には、パキスタンにおけるテロ対策の影響を受けて発生した国内避難民の方々の困難を少しでも和らげられるよう緊急支援を行うことを決定しました。

 日本政府は、今般、パキスタンによる経済改革やテロ対策に関する決意が示されたことも踏まえ、昨年11月からのIMFプログラムの履行が今後も着実に行われることを前提に、10億ドルの支援を行うことに決定いたしました。我が国の支援においては、経済改革の影響を受ける貧困層に対する迅速でより効果的な支援を実施していくとともに、パキスタン政府の経済改革努力を支援するため、能力向上等にも支援を行っていきたいと考えています。

 パキスタンにとって、様々な課題を乗り越えていくために、国際社会が一致団結して支えていくことが必要です。本日ここにおられる各国政府・国際機関の皆様は、会議の意義に賛同してご参加を頂きました。本日の支援国会合において、パキスタンが今後2年間で必要な40億ドルとされる支援ニーズを満たすことが、パキスタンの経済改革の遂行、対テロ対策の推進を下支えし、パキスタン国民の平和と繁栄ひいては地域及び国際社会の安定に繋がります。本日、各国政府・国際機関が一致団結して、パキスタンを支援するという世界に向けたメッセージを発信できるものと私は確信しております。

 ありがとうございました。