[文書名] 日印首脳会談共同記者会見
‐冒頭発言
29日、インド訪問中の鳩山総理は、日印首脳会談後、マンモハン・シン・インド首相と共同記者会見を行った。
冒頭シン首相より、鳩山総理が総選挙での歴史的な勝利の後、早期に訪印されたことを大変嬉しく思う、日印はアジア地域において価値や利益を共有し、日本は地域の繁栄についての指導力を発揮している、今回の首脳会談では二国間関係の進捗状況につき確認するとともに、2006年12月に日印間で合意された日印戦略的グローバル・パートナーシップを新段階に発展させることを双方にて確認した旨述べた。
続いて、二国間関係として、防衛、安全保障、テロ対策の分野でも協力を拡大し、昨年合意された安全保障に関する共同声明において言及された行動計画の策定を歓迎、経済の分野として、印は日本からの投資を歓迎する、都市インフラ整備、ハイテク、再生可能エネルギー、省エネ技術分野での更なる協力を期待、日印EPAについては、現在日印間において停滞している案件であるが、バランスのとれた、質の高いEPAを来年の日印首脳会談までに締結することを希望、貨物専用鉄道建設計画(DFC)については、数ヶ月内に詳細について確定させ、2010年内の実施を目指したい、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)についても前進させ、教育、文化、科学技術についての交流も促進させたい、その意味でインド工科大学ハイデラバード(IITH)校への協力の進展をうれしく思うと述べた。
グローバルな課題については、G20,コペンハーゲン合意を含む気候変動問題、エネルギー安全保障、テロ、国連安保理改革、不拡散等につき、鳩山総理と議論を行い、アジア太平洋地域においても、平和と安定のために開放的、包摂的、透明性の高い、前向きなアーキテクチャーが必要と考えている、鳩山総理の「東アジア共同体」構想を歓迎する、と発言。
最後に、新段階を迎えた日印間の戦略的グローバル・パートナーシップの下、今後日印関係を更に強固にしていくことを楽しみにしている旨述べた。
次に、鳩山総理より、自分はインドが好きであり、インドの方々も大好きである、2009年中にシン首相のお招きを受け訪印できたことを心より感謝する、デリー訪問前に訪れたムンバイでは、昨年のムンバイ・連続テロ事件において失われた命への追悼の意を表するとともに、頑張っているムンバイの姿に感動した、また、今回の訪問で、暖かいおもてなしを受け、ますますインドが大好きになった、と述べた。
本日の首脳会談については、日印の戦略的グローバル・パートナーシップが新たな段階を迎えたとの思いを日印で共有でき嬉しく思う、日印両国の関係はそれぞれ様々なレベルで強化されている、シン首相には、来年のしかるべきタイミングでの訪日を招請したが、毎年の相互訪問の実現は日印関係の発展において大きな意味を持つものであると考える。
安全保障分野では、行動計画の策定により日印安全保障共同宣言を更に深めることができた、次官級2+2対話、シーレーン、ソマリア沖での海賊対策等日印間の連携強化につき合意したことを歓迎、経済分野において、日印間の貿易は、印中貿易額の20分の1に留まる一方、昨年度の日本の対印直接投資額は、対中直接投資額を超えており、この流れに拍車をかけるためにも、日印EPAの早期の実現が必要であり、まだいくつかの論点が残っているが、それぞれ事務方にできるだけ加速化するように指示し、日印EPAの締結に導きたい、DFCについても、日本の鉄道の安全性は印にとっても利益になると考えられ、日印双方にとって裨益する大きなプロジェクトであると考える、DMICも構想を実施の段階に進めていきたい、日本としてもJBIC、JETROを通じて後押ししたい、インフラ整備は日印双方に裨益すると同時に、日本企業による対印投資の環境を整えるもの、投資促進の意味でも査証の緩和についての協力を得たい、また、人的交流、若者の交流、特にIITH校への協力を通じ若者の間での信頼関係と技術力を強化していくことは、両国関係の発展に大きく寄与すると考える、との発言があった。
地域的な協力については、シン首相より「東アジア共同体」構想に大変高い関心を示して頂き感謝している、東アジアにおいては、印も不可欠な大きな役割を果たす国であり、同地域が世界を牽引していけるようにしたい、と述べた。
グローバルな課題に関して、気候変動分野では、コペンハーゲンでの結果は大変残念であったが、早く主要国の全てが揃う新しい公明公正な合意を法的なものにしたいと考える、軍縮不拡散についても、核兵器の廃絶は日印共通の思いであり、印の不拡散の取り組みについて確認、原子力については将来的な協力の可能性がある、国連安保理改革では、G4のメンバー、アジアの二カ国として連携して改革を進め、共に安保理常任理事国のメンバーとなる環境つくりを行っていきたい、と述べた。
‐質疑応答
インド側質問者であるプレス・トラスト・インディア通信社のアジャイ・コール記者より、民生原子力協力及びハイテク貿易の促進について、またシン首相に査証の緩和についての質問があったのに対し、まず鳩山総理より、近年日本企業は印への進出に高い関心を有しており、企業としても印に協力すべきと考えている他、DMICを中心として日本企業がインドに協力しやすい環境作りを行っていきたい、ハイテク貿易における規制緩和の論点について、シン首相よりも自由化に向け大きな進展を期待する旨の発言があった、日印間でハイテク技術協力は意味のあるものと理解、首脳会談でシン首相は、印企業によるハイテク技術の転用や第三国への供与はないと確約しており、必要な情報を入手しながら早急にできれば前向きに考えてゆきたい、と発言した。
続いて、シン首相より、査証の緩和問題については鳩山総理と広範な議論を行った、自分からは、鳩山総理に対し、日印間の貿易や人と人との交流を促進するために、日本の査証制度の自由度を高める必要がある旨伝えた、印政府は、日本からの観光客について到着時の査証発給(BOI)を適用することを最近発表した、また、印側で査証の緩和につき検討するところ、日本側でも検討して欲しい、との発言があった。
日本側質問者として、NHKの藤田記者より、日印間では、核兵器廃絶への共通の思いがある様だが、現実的なアプローチには違いがあると感じられる、この違いを乗り越えて協力していこうと考えるのか、との質問があった。
シン首相よりは、民生原子力協力について、鳩山総理と広範な意見交換を行い、自分からインドの置かれている状況、自発的な核実験モラトリアムの実施について説明した。印としての不拡散へのコミットはNSGにおいて印が原子力に関連のある技術のアクセスを認められていることからも明らかである、また、日本や他の国々と、普遍的で検証可能な核軍縮について協力していきたい、旨述べた。
鳩山総理よりは、核兵器廃絶に向けて印と努力していこうという点については確認済み。NPTに対する対応には違いがあるとお互いに認識している。CTBTについては、世界的にも早期発効に向けた機運が盛り上がっているところであり、米中と共に印にも早期の署名・批准をお願いしたい、と述べた。CTBTについては、事実として米や中が署名をした場合には、新たな状況になるとのシン首相からも発言があり、世界的にCTBTの早期発効に向け努力する必要があると考えると述べた他、FMCTについても即時早期締結に向け日印で協力することを申し上げ、シン首相より同意を頂いた、究極的な核兵器の廃絶に向け、日印双方で努力することを求める旨発言した。