[文書名] 第16回SAARC(南アジア地域諸国連合)首脳会議 西村外務大臣政務官ステートメント
ティンレイ議長、
SAARC加盟国及びオブザーバー国・機関代表の皆様、
ご参集の皆様、
本日、第16回目となるSAARC首脳会議の開催をお慶び申し上げますとともに、スピーチの機会を与えていただきましたことに感謝いたします。
(気候変動)
昨日、ブータンの地に降り立ってから、私が幾度となく目を引かれたのは、自然との調和の中で穏やかに生活を営むブータンの人々の姿です。同時に、私は、地球温暖化によるヒマラヤの氷河の後退や氷河湖決壊洪水がブータンの生態系や山岳地に住む人々の生活にいかに大きな影響を与えるかについても思いを馳せました。ティンレイ議長のリーダーシップにより、今次首脳会議において気候変動をテーマとした域内協力の対話の場が設けられたことは、この問題に対する南アジア諸国の危機感の高さを表すものであり、危機感を共有する我が国としても、SAARCのイニシアティブを高く評価いたします。
COP15において、最終的に「コペンハーゲン合意」がまとめられ、この合意に留意するとの決定が採択されたことは、有意義な成果でした。「コペンハーゲン合意」は包括的な合意であり、法的文書の作成に向けた重要な一歩です。既に110カ国以上の締約国が、「コペンハーゲン合意」に賛同することを表明しており、SAARC諸国でも多くの国が既に賛同しておられます。我が国は、「コペンハーゲン合意」を踏まえ、すべての主要国が参加する公平かつ実効的な国際的枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書の速やかな採択を目指すべきとの立場を追求していきます。来るべきCOP16で有意義な成果が出せるよう、議長国メキシコを支えながら、最大限の貢献を行う決意です。
南アジア各国は、既に表れている以上に更なる成長と発展への高い潜在力を秘めています。この地域の広大で豊かな自然を損なうことなく、持続可能な成長を実現するためには、低炭素社会を構築していくことが不可欠です。この点で、南アジア地域のみならず、アジア全体の成長を牽引するインドの役割が重要であり、この地域における低炭素成長の実現を大いに期待しております。
気候変動による海面上昇の危機に直面するモルディブが海中で閣議を開く、あるいは、ヒマラヤ系の氷河の融解による影響に直面するネパールが、エベレストの麓で閣僚会議を開催しています。我が国は南アジア諸国の深い懸念を共有するとともに、自ら直面する危機として、同諸国が気候変動問題に真剣に取り組んでいることを歓迎します。
気候変動問題に対応するには、大規模な資金の動員が必要であり、我が国は、「鳩山イニシアティブ」の具体化として、2012年末までの短期資金手当として、約150億ドルの支援を表明しました。このイニシアティブの下で、我が国は既に南アジア地域の複数の国を対象に太陽光発電をはじめとする低炭素エネルギー導入計画を支援してまいりました。我が国は、この地域が一体となった気候変動対策への取組を引き続き支援するとともに、南アジア諸国と緊密に協力しながら、この問題に関する国際社会の議論を一層後押ししていく所存です。
(結語)
南アジア地域が、その潜在力に相応しい成長と発展を達成するためには、幅広い分野での域内協力の推進が必要不可欠です。このため、我が国としても、本日お手元にお配りさせていただいたリーフレットでご覧いただけるとおり、様々な方法でSAARC加盟国に対する積極的な支援を行ってきております。
我が国は、今後も南アジア地域の安定と繁栄のために、3つの協力の柱に加えて、気候変動分野でのSAARC諸国による域内協力への取組を積極的に支援してまいります。アジアの隣人として、アジアにおける自然の営みを将来の世代に受け継ぎ成長・発展していく責任を私たちは共有しています。今回の首脳会議で、国際社会をリードするような有意義な声明が採択されることを期待して、私の挨拶を締め括ります。
御清聴ありがとうございました。