[文書名] 日本・バングラデシュ共同声明 国際社会と南アジアの平和と繁栄にむけての強固なパートナーシップの拡大
1.シェイク・ハシナ・バングラデシュ人民共和国首相は、菅総理の招待を受け、2010年11月28日から公式実務訪問を行っている。
2.両首脳は、2010年11月29日に、二国間、地域的及び地球規模の課題について建設的な対話を行った。両首脳は、民主的価値を共有する両国が、長年にわたる緊密かつ協力的関係を更に拡大させていく重要性を改めて確認するとともに、グローバルな平和及び安全保障並びに国際社会及び南アジア地域の繁栄を強化するために更に協力することで一致した。
3.両首脳は、両国外相間で本年行われた有意義な会談で得られた実質的な成果に満足の意を表明するとともに、ハイレベルの政策対話を強化し、オピニオンリーダーや国会議員間の交流を含め、要人往来や様々なレベルでの対話を拡大すべく更に努力していくことを決定した。
4.両首脳は、バングラデシュが独立50周年にあたる2021年までに中所得国入りすることを目指す「ビジョン2021」の下、同国が着実に経済発展を遂げていることを歓迎し、日本企業のバングラデシュへの関心の高まりを満足の意を持って留意した。この関連で、菅総理はバングラデシュにおける投資環境の向上の必要性を強調し、ハシナ首相はバングラデシュによる魅力的な投資インセンティブに言及するとともに、バングラデシュ政府はバングラデシュにおける日本の投資が円滑に実施されるようあらゆる支援と協力を行うことを表明した。ハシナ首相は更に、バングラデシュが同国における日本の投資の更なる強化に向けた行動計画を策定し、実施する用意があることを表明した。菅総理は、この目的にむけて、バングラデシュと協働するとの日本の意思を表明した。この文脈で、両首脳は、貿易、投資やインフラ整備の分野を含め、経済連携強化の方途を特定するため、緊密かつ定期的な経済協議を高級事務レベルで開始することを決定した。また、両首脳は、両国の民間セクターが主導する日バングラデシュ商業・経済協力合同委員会会議が両国間の経済関係強化に貢献してきていることを歓迎した。
5.両首脳は、持続可能な経済成長及びミレニアム開発目標(MDGs)達成のためには、同国のインフラ整備、社会開発及び人材育成が重要であることを認識した。ハシナ首相は、大型橋梁、道路、鉄道、発電所及び送配電施設等の基幹インフラ整備や、教育・保健分野における日本の支援に改めて心からの感謝の意を表明した。これに関連して、菅総理は、新たにパドマ橋建設計画に対して4億ドル相当の円借款を供与する意向を表明し、ハシナ首相はこれに対して深甚なる謝意を表明した。両首脳は、同計画が、同国の首都圏及び東部と南西部の連結性の向上を通じて、同国の経済発展と貧困削減に大きく貢献するとの強い期待を表明した。
6.ハシナ首相は、繊維貿易の促進を通じて二国間の経済関係を強化するため、ニット製品の一般特恵関税の原産地規則の緩和を提案した。菅総理は、本件については既に日本政府内で検討を開始している旨述べるとともに、提案を積極的に検討し、可能な限り早期に結論を出すことを約束した。
7.両首脳は、環境の側面に配慮し、官民が連携しながら電力インフラ整備を促進していくことの重要性を強調した。また、両首脳は、情報通信技術インフラの向上は、両国間の民間セクターの活動を促進し、バングラデシュの発展に向けた好ましい環境を生み出すことを強調するとともに、通信ネットワークの改善のための両国間の協力の円滑な進展を期待した。
8.両首脳は、貧困削減と持続可能な開発、とりわけミレニアム開発目標(MDGs)の達成が今日の国際社会が直面する重要な課題であることで一致した。菅総理は、バングラデシュが、特に乳幼児の死亡率削減に関してMDGs達成に顕著な成果を挙げていることを高く評価し、ハシナ首相が第65回国連総会においてMDGs賞を受賞したことに祝意を表した。ハシナ首相は、母子保健分野での日本の継続的な支援に感謝し、菅総理は、 特にこの分野においてMDGsを達成するためにバングラデシュを支援していくとのコミットメントを改めて表明した。この文脈で、ハシナ首相は、国連首脳会合で表明された、2011年からの5年間で保健分野に50億ドル及び教育分野に35億ドルの支援を提供する「菅コミットメント」、並びに"EMBRACE"、「スクール・フォー・オール」といった効果的な支援モデルを高く評価した。両首脳は、バングラデシュ国民が主導するマイクロ・クレジットや包括的ビジネスなどの革新的な開発アプローチが世界の貧困削減に効果的に貢献していることを評価した。
9.両首脳は、気候変動の影響により高まっている自然災害の潜在的脅威にかんがみ、バングラデシュにおける防災対策の重要性について強調した。ハシナ首相は、2007年のサイクロン・シドルの際に、日本及び国際社会の支援により、早期警戒システムやサイクロンシェルターを整備していたことが、人的被害の軽減に貢献したことを高く評価し、気象レーダー整備や多目的サイクロンシェルター建設、防災啓発活動、関係省庁間の意見交換をはじめとする防災分野における日本の支援に改めて謝意を表した。菅総理は、バングラデシュの気候変動への顕著な脆弱性を踏まえ、引き続き同国の防災対策の強化を支援していくことを伝えた。
10.両首脳は、両国のNGOが国際社会において果たしている重要な役割及び両国のNGO間の協力関係の進展を満足の意をもって留意した。また、ハシナ首相は、バングラデシュにおける日本のNGOの活発な活動を評価した。
11.両首脳は、両国間の文化、学術及び人的交流を強化することの重要性を認識し、これらの交流の更なる発展に努めていくとの決意を表明した。菅総理は、バングラデシュの人材育成分野における取組を支援するため、日本政府として国費外国人留学生制度や人材育成支援無償のスキームの下で、バングラデシュの青年及び公務員の招へいを継続して実施することを表明した。また、両首脳は、2012年の両国の外交関係樹立40周年を適切な形で祝うことで一致した。
12.両首脳は、南アジア地域における平和と繁栄はアジア全体及び世界の平和と繁栄を実現する上で極めて重要であることを改めて確認した。菅総理は、南アジア地域協力連合(SAARC)の設立を提唱したバングラデシュのイニシアチブを評価するとともに、地域協力を促進させるために同機関を支援していくとのコミットメントを表明した。
13.両首脳は「核兵器のない世界」の実現に向けた共通のコミットメントを再確認した。両首脳は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効並びに兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約:FMCT)に関する交渉の即時開始及び早期妥結の重要性を強調した。両首脳は,関連国際フォーラムにおいて両国が核軍縮・不拡散における協力を強化していくことを決定した。
14.両首脳は、気候変動問題を解決する喫緊の必要性及びこの問題に関する対話を様々な場で強化することの重要性を確認した。両首脳は、メキシコでの国連気候変動枠組条約第16回締約国会議での成功に向け、建設的に協働していく決意を再確認した。両首脳は、気候変動に対処するため、コペンハーゲン合意を踏まえ、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書の早急な採択を目指すことが必要不可欠であるという考えを共有した。
15.両首脳は、韓国で最近開催されたG20の結果をレビューし、世界経済の持続的成長を達成するためには、引き続き国際協力が不可欠であることを改めて確認した。両首脳は、開発問題に対するG20のコミットメントを歓迎するとともに、特に、最も深刻な開発課題を有する後発開発途上国(LDC)、内陸開発途上国(LLDC)、小島嶼開発途上国(SIDS)のニーズを考慮する重要性を強調した。ハシナ首相はイスタンブールで開催される第4回国連LDC会議への日本の積極的な参加を要請した。菅総理はハシナ首相に対し、日本政府によるLDCへの継続的な支援を約束した。
16.両首脳は、国連安全保障理事会をより代表性、正統性及び実効性が備わったものにし、21世紀の国際社会の現実により応えたものにするため、常任理事国及び非常任理事国双方の拡大を含む安全保障理事会の早期改革に向けた協力を強化する決意を再確認した。日本の国連安保理常任理事国入りへのバングラデシュの支持に対し、菅総理は謝意を表明した。
17.両首脳は、国連平和維持活動(国連PKO)は紛争後の平和構築プロセスにおける不可分の一部をなすものであるとの認識を共有した。両首脳は、それぞれ最大の要員派遣国及び第2位の財政貢献国として、国連PKOの全体的な実効性を高めるために、種々の国際的なフォーラムにおいて、引き続き緊密に協力していく決意を再確認した。
18.両首脳は、あらゆる形態及び主張によるテロリズムを断固として非難することを再確認した。両首脳は、テロリズムの脅威が依然としてグローバルな安全保障上の懸念であることを認識し、テロリストが地域の平和、安全、安定及び繁栄に及ぼす脅威に対処する決意を改めて表明した。
19.ハシナ首相は、菅総理の温かいもてなしに謝意を表した。ハシナ首相は、菅総理のバングラデシュ訪問を心より招請した。菅総理は、この招待を受け、深甚なる感謝の意を表した。
2010年11月29日、東京
日本国内閣総理大臣
菅直人
バングラデシュ人民共和国首相
シェイク・ハシナ