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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日スリランカ首脳会談 −メディア・ステートメント−

[場所] 
[年月日] 2016年5月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 2016年5月28日、安倍総理及びマイトリーパーラ・シリセーナ・スリランカ民主社会主義共和国大統領は、伊勢志摩G7首脳会合におけるアウトリーチ会合後に名古屋において二国間首脳会談を行った。

 両首脳は、スリランカがインド洋の戦略的な位置にあることを考慮し、同国の発展と地域連結性の強化は、地域全体の繁栄に不可欠との認識で一致した。両首脳は、日・スリランカ包括的パートナーシップ及び「質の高いインフラパートナーシップ」の実施のための協力を強化することを再確認した。

1. 経済協力

 安倍総理は、スリランカの経済社会開発を一層促進するため、北中央州及び東部州における送電線整備、並びに北中央州における上水道整備のために総額約380億円の円借款を供与する意図を表明した。送電線の整備計画は、スリランカが東部州において建設を計画している発電所で発電される電力をコロンボ市に送ることを可能にする。

 また、安倍総理は、国家開発に関するスリランカの取組に貢献することを切望し、マクロ経済及び国家財政の管理に係る政策及び制度改革、並びに民間セクター振興を支援するための開発政策借款(DPL)の供与を前向きに検討する意図を表明した。

 両首脳は、地域における需要の高まりと急速な成長を踏まえ、インド洋の重要なハブとしてスリランカの港湾開発の重要性を認識した。この点において、シリセーナ大統領は、これまでの日本の支援に謝意を表明した。安倍総理は、コロンボ港及びその周辺の開発について、日本が官民協力の下で積極的な協力を継続する旨言及するとともに、コロンボ北港及び周辺地域のハブ開発のニーズ及び物流の調査並びにトリンコマリー港開発に関するニーズ調査のための調査団を派遣する意図を表明した。

 安倍総理は、文化遺産保護を十分に考慮した古都の都市開発を可能とするキャンディ市のマスタープラン策定に係る支援を決定した旨伝達した。更に、安倍総理は、そのための詳細計画策定調査団を派遣する意図を表明した。

 シリセーナ大統領は、これらの日本の協力に謝意を表明した。

 両首脳は、地デジ日本方式の導入に係るスリランカ側の決定を歓迎し、同計画の実施促進のための二国間合同委員会の設置及び6月に同委員会の第1回会合を実施することを含め、地デジ日本方式の円滑な導入を確保するための両国間の作業が進展していることを歓迎した。シリセーナ大統領は、地上アナログテレビのデジタル化は議会改革・マスメディア省の所掌に指定された旨言及した。

2. 海洋協力

 両首脳は、2016年1月にコロンボにおいて「外務省高級事務レベル政策対話」の第1回会合が開催されるとともに、初めての「海洋安全保障・海上保安及び海洋に関する対話」が開催され、共に海洋国家として、公海の自由、及び法の支配に基づく海洋秩序維持の重要性を再確認したことを歓迎した。また、両首脳は、二国間の海洋協力を強化する一環として、巡視艇2隻の供与を含む「海上安全能力向上計画」(約18億円)の着実な進展の重要性を確認した。

3. 国民和解・平和構築

 両首脳は、スリランカにおける現行の国民和解プロセスの重要性を認識し、5月18日に、「ジャフナ大学農学部研究研修複合施設設置計画」(約17億円)に関する書簡が交換されたことを歓迎した。安倍総理は、野口元郎氏による貢献を含め、国民和解に係るスリランカの取組を日本が引き続き支援する旨表明した。

 両首脳は、「日・スリランカ包括的パートナーシップに関する共同宣言」の迅速な実施を確保するための両国政府間の合同委員会を設置し、経済発展、海洋安全保障、国民和解・平和構築等の各分野での具体的な協力を進展させることを決定した。

(了)