データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ファクト・シート2.0: 日印経済安全保障協力

[場所] 
[年月日] 2026年7月2日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 日本とインドは、民間部門が経済安全保障に寄与するものを含む多様な活動に従事していることを評価の意をもって認識する。両国は、この分野において両国の協力が高まっていることを示す以下の取組を歓迎する。

1. 民間部門の投資関連

半導体

・ルネサスエレクトロニクスは、グジャラート州サナンドにおけるCGパワー社のOSATプロジェクトに投資を行い、2026年の量産開始を支援している。このプロジェクトは、大規模な投資を計画し、自動車・産業機器・先端分野向けの大量生産能力を有する大規模なOSATプラントに関わる。これと並行して、ルネサスは、半導体研究、人材育成、スタートアップ・エコシステムを支援するため、先端コンピューティング開発センター(C-DAC)及びIITハイデラバードとの連携を通じてインドにおける取組を拡大した。

・東京エレクトロン(TEL)とタタ・エレクトロニクスは、インドにおける半導体エコシステムを構築するための戦略的パートナーシップを立ち上げた。TELは、タタ・エレクトロニクスの新たな前工程半導体製造工場を支援するために、グジャラート州ドレラ工業団地に事務所を開設する計画である。さらに、2026年4月、現地企業や教育機関と連携し人材育成のためのエコシステムの構築を進めるため、インドに新たな人材育成・サービス拠点の設立計画を発表した。

・富士フイルムインドは、グジャラート州ドレラ工業団地において半導体材料を製造するプロジェクトへの投資意向を表明しており、2028年頃の操業開始を想定している。2026年6月には、本プロジェクトに関して富士フイルムインドとグジャラート州政府との間で了解覚書が作成された。

・みずほ銀行は、経済産業省の委託を受け、日本とインドの半導体産業を育成するためのマスタープランを策定した。2025年10月には、みずほ銀行とグジャラート州政府が、同州への進出を目指す日本の半導体関連企業等を支援するための、半導体投資支援に関する協力覚書を署名した。

・ロームは、現地企業との提携を通じて、同社がインドで設計した半導体を含む製造体制の構築を推進している。2025年12月には、タタ・エレクトロニクスと了解覚書を署名し、同社の後工程技術を活用したパワー半導体の製造基盤整備を推進。2026年3月には、スチ・セミコンと、パワー半導体やICの後工程委託及び量産化を検討するための了解覚書を署名した。ロームは製造に加え、両社とのマーケティング面での連携も強化している。

・ミネベアミツミは、インドにおいて半導体及び関連部品のサプライチェーン構築に向けた実現可能性調査を実施している。また、鉄道用高耐圧パワー半導体他電子部品の製造・R&D拠点の設立に向けた投資の実現を目指して協力するため、インド・タミル・ナドゥ州政府との間で了解覚書を署名した。

・NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社は、インドのグジャラート州及びアッサム州において、半導体の輸送に関する実現可能性の検討を進めしている。

情報通信技術

・楽天シンフォニーとテジャス・ネットワークスは、オープンRANネットワーク・ソリューションの開発のためのパートナーシップを作成した。こうした展開を踏まえ、楽天シンフォニーはさらに、インドの電気通信事業者やその他のステークホルダーとの協働により、AI及び機械学習技術に関する統合的な取組を拡大する計画を発表した。

・1FINITYはインドに現地子会社を設立し、オール光ネットワーク分野におけるインドとの協力を更に進める計画である。

・AeterlinkとSoftdel Systemsは、Aeterlinkのワイヤレス給電技術を活用したPhysical AI実装に関するパートナーシップを開始した。

・NTTは、MIST国際海底ケーブルシステムにおけるインドでの運用に従事している。

・Preferred NetworksとSarvam AI社は、生成AIの開発及び研究開発における協力に関する了解覚書に署名した。

・NECとCanara Bankは、NECのデータ統合プラットフォーム及びAIベースの分析ソリューションの活用を開始した。NECと年金基金規制開発庁(PFRDA)は、TRACEと呼ばれるデータプラットフォームの活用を開始した。NECとJumbotailは、最先端のAI技術の統合を通じてキラナ小売エコシステムを強化・拡大するための戦略的協業を発表した。両者は将来的なAIの一層の活用の機会を模索する。

・インド政府とJBICが設立したNational Industrial Corridor Development Corporation社(NICDC)は、NECとの合弁会社であるNICDC Logistic Data Services社でAIの適用を探索するロジスティック・データバンクを運営している。・NTTはJICT及びJBICによる投資及び融資を通じてそのデータセンター事業を継続的に拡大する計画である。

・総務省は、インドにおけるオープンRAN関連のエコシステムの共創という観点で、プロジェクト及びその他のイニシアティブの実証を通じて日本及びインド企業間の連携を支援することで二国間協力を一層深化させていく。

・NECとリライアンス・ジオは、特に5G技術及びオープンRANに関して、情報通信技術インフラ・技術に関する協力のための戦略的パートナーシップを開始した。

・NECは、チェンナイのセンター・オブ・エクセレンス(CoE)を通じて、エンドツーエンドのオープンRANシステム開発を推進した。

・日本とインドは、V2Xシステムに関するテクニカルワークショップを開催し、両国のV2X技術に関する制度、技術動向及び活用事例等に関する知見を共有するとともに、V2X技術及びITS(高度道路交通システム)分野における連携・協力を一層深化させた。

・Yaqumoとインド理科大学院は、量子技術分野における戦略的パートナーシップを推進するため、意向表明書に署名した。量子ハードウェア、フォトニクス・光制御技術、量子システムエンジニアリング、量子ソフトウェアを含む幅広い分野における共同研究開発及び商業化の協力を促進する。

クリーンエネルギー

・IHIとACMEは、日印クリーンエネルギー協力の旗艦プロジェクトとして、ラジャスタン州由来の再生可能エネルギーを活用し、オディーシャ州で年間約40万トンのグリーンアンモニアを生産するプロジェクトで協力している。両政府は、同プロジェクトの長期的な持続可能性、投資適格性、融資適格性を確保するための財政支援を行ってきている。・山梨県とウッタル・プラデーシュ州は、グリーン水素分野での協力強化に向けたパートナーシップを開始した。この文脈で、カナデビアとInfistar Energyは、ウッタル・プラデーシュ州におけるグリーン水素生産に関する了解覚書に署名した。

・伊藤忠商事とL&Tエナジー・グリーンテックは、グジャラート州からグリーンアンモニアを供給する計画を検討しており、長期パートナーシップ契約に署名した。

・JBICは、日本の金融機関と連携し、POWERR Asiaイニシアティブの一環として、インド電力送電公社と800億円の融資契約を作成し、HVDC(高電圧直流)送電システムを通じて、エネルギー源の多角化と再生可能エネルギー供給体制の強化を支援した。

・出光興産とUPL社は、合成燃料及びバイオ燃料に関する検討を目的とする提携を作成した。・三井物産、中部電力、本田技研工業、関西電力送配電は、1GWの再生可能エネルギーポートフォリオを構築しているOMCパワーに投資した。・エア・ウォーターは、ジャールカンド州のタタ・スチール・ジャムシェードプル製鉄所における大規模産業用ガスプラントを取得した。またエア・ウォーターは、ハリヤナ州政府の機関であるハリヤナ企業振興センター(HEPC)と、産業ガス分野における既存拠点拡大及びバイオメタン施設の円滑な事業化促進を目的とする協力の枠組み構築に関するパートナーシップを作成した。

・NEXIは、太陽光発電、蓄電池システム及び関連事業における日印企業間の協力を通じて、強靱なサプライチェーンを構築することを目指し、リライアンス・インダストリーズと連携している。

・JBICとインド政府により設立されたIndia-Japan Fundは、インドにおける電動バス及び小型商用車の製造・販売を行う、Pinnacle Mobility Solutions Private Limited(EKAMobility)に投資した。

・住友商事及びAMPIN Energy Transitionは、大規模産業需要家に対する再生可能エネルギーを直接供給するグリーン電力プラットフォームの構築で連携した。

・JBICは、北東インドのアッサム州でAssam Bio Ethanol Private Limitedが実施する竹由来バイオエタノール製造プロジェクトを支援するため、Power Finance Corporation Limitedと600億円の融資契約を作成した。

医薬品

・エーザイは、アンドラ・プラデーシュ州ビザーグ工場で、年間80トンの原薬(API)と20億錠の錠剤を生産し、医薬品製造の研究開発拠点も運営している。エーザイは、AIを活用した創薬、臨床解析、デジタル研究開発に特化したグローバル・ケイパビリティ・センターをビザーグに設立することを目指している。

・大塚製薬は、アーメダバード(グジャラート州)で、静脈内注射液、経腸・非経口栄養製品、抗感染症薬、腫瘍学、疼痛管理といった治療分野の製品を製造し、インド各州で販売している。

・武田薬品工業は、グローバルなデータ分析を実施する「イノベーション・ハブ」を運営し、現地大手ザイダスとの合弁で原薬(API)及び中間体の製造を行っている。同社は、生物製剤及びワクチン製造でバイオロジカルEと提携している。

・Meiji Seikaファルマはメドライクを完全子会社化し、受託製造(CMO)、受託開発・製造(CDMO)、ジェネリック医薬品の製造・販売に従事している。

・Sysmexは、診断薬・機器の製造拠点をグジャラート州サナンドIIに設立するため、インドに投資を行った。

2. 政府及びその他機関の取組

総論

・経済産業省とインド商工省産業政策・振興総局は、第7回日印産業競争力パートナーシップ(IJICP)次官級会合を開催し、「日印デジタル・パートナーシップ2.0に関する協力覚書」、「クリーン水素・クリーンアンモニアに関する共同意向表明」といった枠組みに基づく協力について議論した。・在京インド大使館は、重要技術に関する日本・インドイノベーション対話を開催した。

・オブザーバー・リサーチ財団(ORF)は、日印経済安全保障対話を主催し、「インド太平洋地域におけるエンゲージメントと経済的強靱性のための政策努力」、「半導体及び重要鉱物の強靱なサプライチェーン」、「産業協力と政策協調:クリーンエネルギー、製造、サプライチェーン促進」、「重要新興技術における日印協力:優先分野と将来の方向性」といったテーマで議論を行った。

半導体

・日印商工会議所半導体委員会は、日本の半導体関連企業による9回の会合を開催し、日印の半導体関連企業間の情報交換、ネットワーキング、及びインドの中央政府・州政府との協議を促進した。

・経済産業省とインド電子情報技術省(MeitY)は、両国の関係企業、教育機関、政府機関の参加の下、「日印半導体サプライチェーン・パートナーシップに関する協力覚書」に基づく「半導体政策対話」を開催した。直近の会合では、半導体製造に不可欠な化学材料及びガスに焦点を当てたワークショップを実施した。

・JICAは、岩手県などの地方自治体と連携し、インド政府関係者及び大学教員を日本の半導体人材育成拠点に招へいし、インドにおける半導体製造人材の育成を行っている。さらに、JICAは、日印両政府の協力に基づき、日本での研修プログラムの実施に向けて取り組んでいる。

重要鉱物

・経済産業省とインド鉱山省間の鉱物資源分野における協力覚書に基づき、両国政府は2026年4月に第1回合同作業部会を開催し、重要鉱物のサプライチェーン強化について意見交換を行った。

・GSIとJOGMECは、鉱物資源探査と技術に関する情報交換を促進するための協力覚書に署名した。・在インド日本国大使館及び環境省は、「インドにおける重要鉱物サプライチェーン/e-wasteリサイクルに関するセミナー」を共催した。在インド日本国大使館は、政府関係者、大学関係者、専門家、企業関係者の参加を得て、リサイクルを通じた重要鉱物サプライチェーン強化をテーマとするラウンドテーブル及びマッチングイベントを開催する。

・日米豪印重要鉱物イニシアティブ枠組みの下で、日本とインドは、投資とプロジェクト開発、規制の整合化と全般的な環境整備、重要鉱物のリサイクル・回収などの分野で協力を進めている。

情報通信技術

・経済産業省とインド電子情報技術省(MeitY)は、日本のGENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)とインドのAI Missionの協力促進に関する協力覚書に署名した。

・内閣府とインド科学技術庁は、量子科学技術に関する協力趣意書(LoI)に署名した。また、量子、科学、技術、イノベーション分野における日印協力の現状と今後の展望について意見交換を行った。

・外務省とインド外務省は、関係省庁の参加の下、日印AI協力イニシアティブ(JAI)の下で具体的協力を進めるため、第1回日印AI戦略対話を開催した。両者はまた、両国の関連企業間のマッチメイキングを促進するためのネットワーキング・セッションを実施した。

・JICAは、インド電子情報技術省によるAIKoshの整備を支援した。IT産業が集積するテランガナ州において、JICAはAIデータ連携基盤(TGDeX)の設計、開発、利用促進を支援してきた。

・JICAは、インド工科大学ハイデラバード校(IITH)におけるAI研究センターの設置及びAI研究設備の導入を支援した。JICAはまた、テランガナ州政府が建設・運営するインドのスタートアップ拠点「T-Hub」の運営支援を行っている。

・JICAは、円借款事業の中でAIとデータを活用した実証(PoC)を実施しており、森林管理のための統合デジタル公共インフラ(DPI)構築を目指すラジャスタン州のフォレストスタック、人とゾウの軋轢(HEC)を緩和するためにAIカメラを用いる西ベンガル州でのPoC、メトロ及びバスの交通データを活用するデリーのトランポートスタックなどがある。

・総務省とインド通信省は、日印ICT協力枠組みの下で第8回ICT政策対話を開催した。・総務省は、インド太平洋地域において、海底ケーブル、データセンター、オープンRAN、オール光ネットワーク(APN)など、AI・データ駆動時代に不可欠なデジタルインフラの整備を促進することで、FOIPデジタル回廊構想の実現に向けたインドとの協力を一層強化する方針を決定した。・在京インド大使館は、総務省とともにAI分野における両国間の協力について

議論するセミナーを開催した。

クリーンエネルギー

・経済産業省とインド重工業省は、既存の財政支援の効果的活用の促進、知的財産及び機密情報の保護など、バッテリー・サプライチェーン強化のための措置に協力し、事業機会を拡大するための協力覚書に署名した。

・経済産業省、JETRO及びインド太陽エネルギー連盟(NSEFI)は、太陽電池サプライチェーン強靱化のため、両国の主要企業が参加するマッチングイベントを開催した。

・日本とインドは、二国間クレジット制度(JCM)構築のための協力覚書に署名した。両政府は、パリ協定第6条に整合するJCM実施のためのルール(RoI)を採択した。

・日本政府とJETROは、70以上の企業・政府機関の参加を得て、蓄電池及び重要鉱物サプライチェーンに関するマッチングイベント及びラウンドテーブルを開催した。

・経済産業省とインド新・再生可能エネルギー省(MNRE)は、閣僚級の共同意向表明に基づき、第1回水素・アンモニア・タスクフォース会合を開催した。

・経済産業省とインド協同組合省は、国内で生産可能なバイオ燃料などのエネルギー源を活用し、バイオ燃料生産の副産物として得られる有機肥料の利用拡大を通じて、農村開発を促進し、多様な道筋でのアプローチを実現するための協力覚書に署名した。

・JICAは、全国酪農開発機構(NDDB)と連携し、牛糞由来のバイオガスの利用拡大(酪農家の生計向上にも寄与)を目指し、プラント導入やバイオガス残渣からの有機肥料製造における課題を特定し、効果的な協力手法を検討するため、基礎情報調査を開始する予定である。

・JICAは、国産太陽光発電パネルの製造能力強化及び新規設備導入の促進を通じて、インドの再生可能エネルギー供給体制を強化するための支援を検討している。

・在京インド大使館は、経済産業省及び外務省の参加を得て、日本の主要な電池製造企業の関係者を招いて、電池に関するラウンドテーブルを開催した。

・在京インド大使館、インベスト・インディア、及び電池サプライチェーン協議会(BASC)は、2026年6月から、電池製造エコシステムにおける日印協力をテーマとした、複数回にわたる「バッテリー・コホート」セミナーを主催している。

医薬品

・内閣官房健康・医療戦略室とインド保健・家庭福祉省は、第3回日・インドヘルスケア合同委員会を開催し、医薬品を含むヘルスケア分野におけるサプライチェーン強靱化などについて議論した。厚生労働省は、インド化学肥料省の医薬品局に対し、日本での供給確保が必要と指定された医薬品及びワクチンのリストを提供した。

・日本医療研究開発機構(AMED)、インド科学技術庁(DST)、インド医学研究評議会(ICMR)は、科学技術・医療分野に関する研究協力に係る覚書に署名した。