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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定

[場所] 
[年月日] 1959年7月2日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定


 日本国政府及びカナダ政府は、

 原子力の平和的用途への利用によつて生ずることが期待されるエネルギー供給の増加、農業及び工業の生産の向上、疾病を克服する知識及び方法の入手可能性の拡大並びに健全な、かつ、有益な目的のための研究の増進を含む多くの利益を認め、

 原子力の開発が両国国民の福祉及び繁栄のために貢献することを促進し、かつ、増大することを希望し、

 原子力の平和的利用の促進及び開発についての効果的な協力が両国にもたらす利益を認め、

 したがつて、これらの目的のために相互に協力することを意図し、

 次のとおり協定した。

第一条

1 この協定が意図する協力は、原子力の平和的利用に関連し、かつ、次に掲げることを含むものとする。

 (a) 次のことに関する情報を含む公開の情報の供給

  (i) 研究及び開発

  (ii) 保健上及び安全上の問題

 (iii) 設備及び施設(設計、図面及び仕様書の供給を含む。)並びに

  (iv) 設備、施設、資材、原料物質、特殊核物質及び燃料の使用

 (b) 設備、施設、資材、原料物質、特殊核物質及び燃料の供給

 (c) 特許権の移転

 (d) 設備及び施設へ近づくこと並びに設備及び施設の使用

 (e) 技術援助及び役務の提供

2 この条に定める協力は、合意される条件に基いて、かつ、それぞれ日本国及びカナダにおいて有効な関係法令及び許可要件に従つて行われるものとする。

3 各当事国政府は、他の当事国政府に対して、この協定により又はこれに基いて許可された自己の政府企業及び自己の管轄の下にあるすべての者によつてこの協定の規定が受諾され、かつ、遵守されることを確保する責任を負うものとする。

第二条

1 両当事国政府は、この協定の範囲内の事項について、可能な限り、相互に援助を与える。両当事国政府は、この協定の範囲内の事項について、それぞれの政府企業及び同政府の管轄の下にある者の間の協力を促進し、かつ、容易にする。

2 いずれか一方の当事国政府、その政府企業又は同政府の管轄の下にある者は、この協定の範囲内の事項についての情報を、他方の当事国政府又はいずれか一方の当事国政府の政府企業若しくは同政府の管轄の下にある者に供給し、又はこれらから受領することができる。

3 いずれか一方の当事国政府の政府企業又は同政府の管轄の下にある者は、自国政府の一般的又は個別的許可を得て、設備、施設、資材、原料物質、特殊核物質及び燃料を、商業的条件又は他に合意されるところに従つて、他方の当事国政府、その政府企業又は同政府の管轄の下にある許可された者に供給し、又はこれらから受領することができる。

4 いずれか一方の当事国政府の政府企業又は同政府の管轄の下にある者は、必要がある場合には自国政府の一般的又は個別的許可を得て、この協定の範囲内の事項について、他方の当事国政府、その政府企業又は同政府の管轄の下にある許可された者と直接に取引し、及び他方の当事国政府、その政府企業又は同政府の管轄の下にある許可された者のために役務を行い、又はこれらから役務を受けることができる。

第三条

 この協定に基くいかなる供給も、この協定の規定及び特に次の条件に従うものとする。

(a) 各当事国政府がこの協定に基いて入手した情報は、供給の時又はその前に別段の指定がない限り、第三者に移転することができる。

(b)(i) この協定に基いて入手した設備及び資材並びに特定物質は、最初の供給の時又はその前に供給当事国政府の別段の指定がない限り、受領当事国政府の個別の許可に従うことを条件として、受領当事国政府の政府企業又は同政府の管轄の下にある者に移転することができる。

 (ii) この協定に基いて入手した設備(原子炉を除く。)及び資材は、最初の供給の時又はその前に供給当事国政府の別段の指定があるときは、受領当事国政府の管轄外に移転してはならない。

 (iii) 特定物質及びこの協定に基いて入手した原子炉は、供給当事国政府の文書による事前の同意がないときは、受領当事国政府の管轄外に移転してはならない。

(c) 原料物質、特殊核物質又は燃料は、供給当事国政府に対し、特定物質の使用から生じ、かつ、受領当事国政府、その政府企業又は同政府の管轄の下にある者の使用に必要な量をこえる特殊核物質のいかなる量をも平和的目的にのみ使用するため購入する優先権を与えることを条件として、供給されるものとする。

(d) この協定に基いて入手した原料物質、特殊核物質及び燃料は、照射を受けた後、その形状及び内容を処理し、又は変更してはならないものとする。ただし、供給当事国政府の書面による許可がある場合は、この限りでなく、このように許可された処理及び変更は、供給当事国政府が承諾する施設において行われるものとする。

(e) 両当事国政府の代表者は、特定物質を保管するに当り払うべき注意に関する問題について相互に協議するものとする。

第四条

1 該当する保障措置が3に定めるところに従い国際原子力機関によつて実施されるまでの間、各供給当事国政府は、この協定の規定が遵守されていること、特に特定物質が平和的目的のためにのみ利用されていることを確認することを許されるものとし、このため、供給当事国政府は、次のことを行う権利を有する。

 (a) 特定物質がいかなる軍事的目的をも助長するものでなく、かつ、この協定に定める保障措置が実効的に適用されるものであることを確保するという見地から、特定物質が使用され、又は貯蔵される設備(原子炉を含む。)又は施設の設計を検討すること。

(b) 特定物資の計量性の確保に役だつ適当な記録の維持及び提出を要求すること並びにこの記録に基く定期的報告を要求し、及び受領すること。

(c) 照射を受けた後の特定物質の化学処理のため用いられる方法が特定物質の軍事的用途への転用に役だてられるものでないことを確認すること。

(d) 供給当事国政府が他方の当事国政府との協議の後指名した代表者を他方の当事国政府の管轄の下にある領域に派遣すること。この代表者は、特定物質の計量を行うため及び特定物質が平和的目的のためにのみ使用されているかどうかを決定するため必要であるときは、特定物質が使用され、貯蔵され、又は置かれているすべての場所、設備及び施設、特定物質に関連するすべての資料並びに職掌上特定物質又は資料を取り扱うすべての人にいつでも近づくことができる。この代表者は、他方の当事国政府の要請を受けたときは、自己の職務の執行を遅滞させられ、又は妨げられないことを条件として、他方の当事国政府の代表者を伴わなければならない。

2 いずれか一方の当事国政府の代表者その他の職員は、この条の規定から生ずる自己の公的任務により産業上の秘密又は他の秘密の情報を入手したときは、それらの情報を漏らしてはならない。ただし、この条に基く自己の政府に対する責任に従う場合は、この限りでない。

3 国際原子力機関が創設した保障機構を可能な限りすみやかに利用することが両当事国政府の意図であるので、両当事国政府は、この協定に関し、両当事国政府が随時合意する点において及び合意する範囲まで、保障措置を原子力機関憲章第十二条の規定に従つて適用することを同機関に要請することができる。いずれか一方の当事国政府の要請があつたときは、前記の合意に達するための協議を行うものとする。

4 各当事国政府は、特定物質が軍事的目的を助長していると決定したときは、他方の当事国政府に対し是正措置を執ることを要求する権利を有するものとし、また、この措置が妥当な期間内に執られない場合は、予定された原料物質、特殊核物質及び燃料の引渡を停止し、又は取り消す権利並びに他方の当事国政府の管理下又は管轄内にあるすべての特定物質の返還を要求する権利を有するものとする。

第五条

1 次に掲げることは、この協定の範囲から除外されるものとする。

(a) 当事国政府が主として軍事上の意義を有するものであると認める情報、設備、施設又は資材の供給及び同設備又は施設へ近づくこと並びにこの協定に基いて入手した情報、設備、施設若しくは資材又は特定物質の軍事的目的のための使用

(b) 第三者から受領した情報又は所有権若しくは特許権で、その供給又は移転を禁止する条件が付されているものの供給又は移転

(c) 供給当事国政府の管轄の下にある者が開発し、又は所有する情報の供給及びその者が所有する所有権又は特許権の移転。ただし、その者の同意に基き、かつ、その者の指定した条件に従う場合は、この限りでない。

(d) 供給当事国政府が商業的価値のあるものと認める情報の供給。ただし、同政府の指定した条件に従う場合は、この限りでない。

2 この協定のいかなる規定も、供給の時に別段の指定がない限り、この協定に基いて供給される情報の正確性又はこの協定に基いて供給される設備、施設、資材原料物質、特殊核物質若しくは燃料の特定の使用に対する適合性若しくはそれらの仕様書の正確性に関し、いかなる責任をも課するものと解してはならない。

第六条

 両当事国政府の代表者は、この協定の適用から生ずる事項について、随時協議するものとする。

第七条

 この協定に別段の定のある場合を除き、この協定の適用上、

(a) 「設備」とは、原子力活動に関連する研究、開発利用、処理又は貯蔵に特に有用な器具、装置又は機械をいう。

(b) 「施設」とは、(a)に定める設備を含むか、若しくはこれと合体しているか、又は他に特に原子力活動に適しているか、若しくは利用される工場、建物又は建造物をいう。

(c) 「資材」とは、すべての放射性物質、原子力活動について特殊の適用性又は重要性を有するその他の物質(たとえば重水及びジルコニウム)及び当事国政府の間で合意することがあるその他の物質をいう。ただし(g)に定める特定物質を含まない。

(d) 「原料物質」とは、次のものをいう。 ウランの同位元素の天然の混合率からなるウラン 同位元素ウラン二三五の劣化ウラン トリウム 金属、合金、化合物又は高含有物の形状において前掲のいずれかの物質を含有する物質 他の物質で当事国政府の間で合意することがある含有率において前掲の物質の一または二以上を含有するもの 当事国の間で合意することがあるその他の物質

(e) 「特殊核物質」とは、プルトニウム、ウラン二三三、ウラン二三五、同位元素ウラン二三三又は二三五の濃縮ウラン、前記のものの一又は二以上を含有している物質及び両当事国政府の間で合意することがあるその他の物質をいう。ただし、「特殊核物質」には、原料物質を含まない。

(f) 「燃料」とは、核連鎖反応を生じさせ及び維持するために原子炉に導入することを目的とし、又はこれに適合した形状及び量の原料物質若しくは特殊核物質又はその両方をいう。

(g) 「特定物質」とは、この協定に基いて入手された原料物質、特殊核物質若しくは燃料又はこの協定に基いて入手された原料物質、特殊核物質若しくは燃料から生じたか若しくはこの協定に基いて入手された原子炉で生産された特殊核物質をいう。

(h) 「政府企業」とは、カナダ原子力会社及びエルドラド鉱業精練会社(カナダ政府についていう。)並びにいずれか一方の当事国政府の管轄の下にあるその他の企業で両当事国政府の間で合意することがあるものをいう。

(i) 「者」とは、個人、商会、社団、会社、組合、協会その他の団体(民間のであると政府のであるとを問わない。)並びにそれらの代理人及び地方代表者をいう。ただし、「者」には、(h)に定める政府企業を含まない。

(j) 「公開の情報」とは、部外秘、秘又は極秘の秘密指定を受けていない情報をいう。

第八条

1 この協定は、各当事国政府によりその国内法上の手続に従つて承認されなければならない。この協定は、その承認を通知する外交上の公文の交換の日に効力を生ずる。

2 この協定は、十年の期間効力を有し、この十年の期間が満了する六箇月前に一方の当事国政府が他方の当事国政府に対し廃棄通告を行わない限り、その後は廃棄通告を行つた後六箇月まで効力を有する。

 以上の証拠として、下名は、このため各自の政府から正当に委任を受け、この協定に署名調印した。

千九百五十九年七月二日にオタワで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために

萩原徹

カナダ政府のために

H・C・グリーン



議定書


 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当り、下名は、このため各自の政府から正当に委任を受け、さらに、協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

 協定の規定は、協定の署名の日の後協定の効力発生の日の前に日本国政府の許可に基きカナダから日本国の原子燃料公社に供給されるいかなる原料物質にも適用する。

 以上の証拠として、下名は、この議定書に署名調印した。

 千九百五十九年七月二日にオタワで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために

萩原徹

カナダ政府のために

H・C・グリーン



 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定に関する合意議事録


 原子力の平和的利用における協力のための協定を作成するため、千九百五十九年七月二日に日本国政府及びカナダ政府の代表者の間で開催された最終的会合において、両政府の代表者は、次の了解に到達した。

(1) この協定は、第五条2に掲げる事項についていずれの政府又はその政府企業に対してもいかなる責任をも負わすものでないが、この協定に基いて各自の政府又はその政府企業により提供される情報、設備、施設、資材、原料物質、特殊核物質及び燃料が不正確な又は不完全なものでないことを確保するために、各自の政府又はその政府企業は、それぞれ最善の努力を払う。

(2) 第三者に対する責任についての適当な措置は、燃料供給のために必要であり、また、第三者に対する責任について相互に満足すべき取極が行なわれるまでは、燃料供給の取引のために特別の取極が必要となる場合がある。

(3) 第四条4に定めるところに従つて特定物質が返還される場合には、両政府の代表者は、返還される特定物質の価格について適当な解決をするため、相互に協議するものとする。

(4)(a) 第三条(b)(iii)、(c)若しくは(d)又は第四条1若しくは4に含まれる規定の実際の適用が、国際原子力機関憲章、千九百五十八年六月十六日にロンドンで署名された原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定又は千九百五十八年六月十六日にワシントンで署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の類似の規定に抵触する結果となるときは、そのような抵触を解決するために必要な取極を締結するため、関係当事者の間で協議が行なわれる。

(b) 受領当事国政府が、前記の抵触の解決に関する他の関係当事者の間の合意の不成立に附随したか又はその合意の不成立から生じたと合理的に認められるような程度又は態様において、第三条(b)(iii)、(c)若しくは(d)又は第四条1若しくは4の規定を遵守しえないことは、この協定の違反となるものと解釈してはならない。

(5) 供給当事国政府が、特定物質の使用から得られた特殊核物質を購入する優先権を第三条(c)の規定に従つて行使した場合には、そのようにして購入された物質については、その購入された物質がこの協定に基いて優先権を行使した当事国政府に返還された後に、第四条に定める保障措置が適用される。

 日本国政府のために
萩原徹

 カナダ政府のために
H・C・グリーン