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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定

[場所] 
[年月日] 1972年2月21日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定

 日本国政府及びオーストラリア連邦政府は、

 原子力の平和的利用を促進し及び開発するために協力することを希望し、

 この協定に基づいて供給された情報、資材、設備及び施設が平和的目的にのみ使用されることが両国政府の意図するところであることを確認し、

 日本国がウラン資源を必要としていること、及びオーストラリアがそのウラン産業を発展させることを希望していることを認識して、

 次のとおり協定した。

第一条

(1) 両締約国政府は、この協定並びにそれぞれの国において当該時に効力を有する法令、許可要件及び行政上の手続に従うことを条件として、両国における原子力の平和的利用を促進し及び開発するため、次の方法で相互に協力する。

(a) 両締約国政府は、専門家(科学技術の分野における専門家を含む。)の交換による両国の公私の組織の間における協力を助長する。日本国の組織とオーストラリアの組織との間におけるこの協定に基づく取決め又は契約の実施に伴いそのような専門家の交換が必要となる場合には、両締約国政府は、それぞれ自国の領域へのそれらの専門家の入国及びその領域における滞在を容易にする.

(b) 両締約国政府は、その相互の間、その管轄の下にある者の間又はいずれか一方の締約国政府と他方の締約国政府の管轄の下にある者との間において、合意によつて定める条件で公開の情報を提供し及び交換することを容易にする。

(c) 一方の締約国政府又はその管轄の下にある認められた者は、供給者と受領者との間の合意によつて定める条件で、原子力の平和的利用のための資材、設備、施設その他の必要な物を、他方の締約国政府若しくはその管轄の下にある認められた者に供給し又はこれらから受領することができる。

(d) 一方の締約国政府又はその管轄の下にある認められた者は、この協定の範囲内において、提供者と受領者との間の合意によつて定める条件で、他方の締約国政府若しくはその管轄の下にある認められた者に役務を提供し、又はこれらから役務の提供を受けることができる。

(2) 両締約国政府は、また、原子力の平和的利用を促進し及び開発するため、(1)の方法以外の方法で協力することができる。

第二条

(1) 各締約国政府は、自己又はその管轄の下にある認められた者がこの協定に基づいて入手した資材、設備及び施設並びに回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質につき、次のことを確保する。

(a) 平和的目的にのみ使用されること。

(b) 各締約国政府の管轄内では、当該各締約国政府によつて認められた者にのみ移転されること。

(2) 各締約国政府は、自己又はその管轄の下にある認められた者がこの協定に基づいて入手した原料物質若しくは特殊核分裂性物質又は回収され若しくは副産物として生産された特殊核分裂性物質が、国際原子力機関(以下「機関」という。)の保障措置の下に置かれる場合又は供給締約国政府の事前の同意がある場合を除くほか、自己の管轄外に又はいかなる国際機関にも移転されないことを確保する。

第三条

(1) 両締約国政府は、前条の規定に基づく義務の履行を確保するため、機関との間に、その同意を得ることを条件として、かつ、その憲章の関係規定に従い、次条の規定に適合する保障措置に関する三者間協定を締結することを約束する。その三者間協定は、できる限りこの協定の効力発生の時に締結する。

(2) この協定の保障措置は、この協定に基づいて入手した原料物質、特殊核分裂性物質、設備若しくは施設、回収され若しくは副藍物として生産された特殊核分裂性物質又はこの協定に基づいて入手した原料物質若しくは特殊核分裂性物質若しくは回収され若しくは副産物として生産された特殊核分裂性一物質を使用し若しくは処理する設備若しくは施設であつて、受領締約国政府がこの協定の効力発生の日において締結している国際協定に従い当該受領締約国の領域において機関の保障措置の下に置かれるものについては、適用しない。

(3) いずれか一方の締約国政府が核兵器の不拡散に関する条約第三条4にいう協定を機関との間に締結する場合には、その協定が適用されている期間中、当該一方の締約国に関する限り、(1)の三者間協定の保障措置の適用は、停止する。

第四条

 前条の保障措置が適用されない場合には、

(a) 供給締約国政府は、第二条の約束が遵守されていることを確認するため、次のことを行なう権利を有する。

(i) この協定に基づき他方の締約国政府若しくはその管轄の下にある認められた者に供給された設備及び施設又はこの協定に基づいて供給された原料物質若しくは特殊核分裂性物質若しくは回収され若しくは副産物として生産された特殊核分裂性物質を使用し若しくは処理する設備及び施設の設計を検討すること。ただし、その検討は、この協定が遵守されていることを確保するために必要な最小限度において行なう。

(ii) 他方の締約国政府と協議のうえ、この協定に基づいて供給された原料物質若しくは特殊核分裂性物質又は回収され若しくは副産物として生産された特殊核分裂性物質の計量の正確性を検認し及び第二条の規定に対する違反の有無を決定する目的のため、すべての場所及び資料並びにこの協定に基づいて供給された資材、設備又は施設に職掌上関係するすべての人に必要な場合に近づき、かつ、その目的のため自ら計測を行なうことができる代表者を任命すること。その代表者は、いずれか一方の締約国政府の要請があるときは、その職務の遂行が遅滞させられ又は妨げられないことを条件として、受領締約国政府が任命する代表者を伴わなければならない。

 (i)及び(ii)の目的のため供給締約国政府によつて任命された代表者は、その政府に対する保障措置に関する自己の責任に従うことを条件として、その公的任務により知るに至つた産業上の秘密又は他の秘密の情報を漏らしてはならない。

(b) 受領締約国政府は、(a)(ii)の原料物質及び特殊核分裂性物質の正確な計量が常時維持されることを確保するために必要な記録が保持されること、並びにその記録が供給締約国政府の要求に応じてその政府に提出されることを約束する。

(c) 両締約国政府は、(a)及び(b)に定める保障措置の適用を容易にすることを約束する。

(d) 両締約国政府は、(a)及び(b)の規定を適用するにあたり、機関の保障措置制度の原則及び手続を尊重する。

第五条

(1) 第一条の規定に基づいて締結される取決め及び契約は、必要があるときは、その当事者の責任についての条件を定めることができる。

(2) 締約国政府が負うものとしてこの協定に明記する義務に従うことを条件として、この協定のいかなる規定も、(1)にいう取決め及び契約の実施に伴う責任を締約国政府に課するものと解してはならない。

第六条 

 両締約国政府の代表者は、この協定の適用から生ずる問題について協議するため随時会合する。

第七条

 この協定の適用上、

(a) 「設備」とは、原子力計画における使用のために特に設計され又は製造された主要な機械、プラント若しくは器具又はその主要な構成部分をいう。

(b) 「施設」とは、原子力計画における使用のために特に設計され又は建設された建物又は構築物をいう。

(c) 「資材」とは、原料物質、特殊核分裂性物質及び両締約国政府の間の合意によつて定めるその他の物質をいう。

(d) 「者」とは、人の団体(法人であるかどうかを問わない。)及び法令によつて設立された公的機関を含むが、日本国政府及びオーストラリア連邦政府を含まない。

(e) 「原料物質」とは、次のものをいう。ウランの同位元素の天然の混合率からなるウラン同位元素ウラン二三五の劣化ウラントリウム金属、合金、化合物又は高含有物の形状において前記のいずれかの物質を含有する物質他の物質であつて両締約国政府の間の合意によつて定める含有率において前記の物質の一又は二以上を含有するもの両締約国政府の間の合意によつて定めるその他の物質

(f) 「特殊核分裂性物質」とは、次のものをいう。プルトニウムウラン二三三ウラン二三五同位元素ウラン二三三又は二三五の濃縮ウラン前記の物質の一又は二以上を含有する物質両締約国政府の間の合意によつて定めるその他の物質「特殊核分裂性物質」には、原料物質を含まない。

(g) 「回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質」とは、この協定に基づいて供給された原料物質、特殊核分裂性物質、設備又は施設の使用から一又は二以上の処理によつて生じた特殊核分裂性物質をいう。

(h) 「公開の情報」とは、部外秘、秘又は極秘の秘密指定を受けていない情報をいう。

第八条

(1) いずれの締約国政府も、自己が国際関係について責任を有する領域にこの協定を適用することができる。その適用は、当該締約国政府が外交経路を通じて書面で通告する。

(2) (1)の規定に該当する領域にこの協定が適用されるまでの間は、第二条(2)の規定は、その領域への移転についても適用する。

第九条

(1) (2)の規定が適用される場合を除くほか、この協定は、二十五年間効力を有するものとし、その後は、一方の締約国政府が他方の締約国政府からこの協定を終了させることを希望する旨の書面による通告を受領した日の後百八十日を経過するまで引き続き効力を有する。

(2) 一方の締約国政府は、第四条の規定が適用されている場合において、他方の締約国政府が第二条の約束を履行しなかつたときは、当該他方の締約国政府に対し是正措置をとるよう要求する権利を有する。その是正措置が適当な期間内にとられなかつたときは、その是正措置を要求した当該一方の締約国政府は、書面による通告によつてこの協定を終了させる権利を有する。

(3) この協定が(2)の規定に基づいて終了した場合には、一方の締約国政府は、この協定に基づいて締結された取決め及び契約の廃棄並びにこの協定に基づいて供給された特殊核分裂性物質でその時に他方の締約国政府の管轄の下にあるものの返還を要求することができる。ただし、返還される特殊核分裂性物質につき時価による支払を行なうことを条件とする。

(4) この協定のいずれかの規定を不適当にするといずれかの締約国政府が認める事情が生じた場合に、又はいかなる場合にもこの協定の効力発生の後十年以内に、両締約国政府は、この協定を改正すべきかどうかを決定するため協議する。

第十条

 この協定は、両締約国政府が、この協定の効力発生に必要なそれぞれの憲法上の及びその他の要件が満たされた旨を相互に通告する公文を交換する日に効力を生ずる。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、この協定に署名した。

 千九百七十二年二月二十一日にキャンベラで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために
斉藤鎮男

 オーストラリア連邦政府のために
ナイジェル・ボーウェン

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定に関する交換公文



(日本側書簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日署名された原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定に言及するとともに、同協定の締結のための交渉において到達した次の了解を確認する光栄を有します。

 協定第四条(a)(i)の規定に従い設計が検討される設備及び施設は、同条(d)の規定に照らし、国際原子力機関の文書INFCIRC-六六-Rev・二に定める同機関の保障措置制度及び同機関の理事会が採択するその追加又は修正において定義される主要な原子力施設に限定する。

 本使は、オーストラリア連邦政府が同意されるときは、この書簡及び閣下の返簡が前記の了解を記録するものであるとみなすことを提案いたします。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 千九百七十二年二月二十一日にキャンベラで

 斉藤鎮男

オーストラリア連邦外務大臣ナイジェル・ボーウェン閣下



(オーストラリア側書簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、閣下が、本日署名された原子力の平和的利用における協力のためのオーストラリア連邦政府と日本国政府との間の協定に関し、同協定の締結のための交渉において到達した次の了解を述べられた本日付けの閣下の書簡に言及する光栄を有します。

 協定第四条(a)(i)の規定に従い設計が検討される設備及び施設は、同条(d)の規定に照らし、国際原子力機関の文書INFCIRC-六六-Rev・二に定める同機関の保障措置制度及び同機関の理事会が採択するその追加又は修正において定義される主要な原子力施設に限定する。

 本大臣は、さらに、オーストラリア連邦政府が前記の了解に同意する旨を閣下に通報するとともに、閣下の書簡及びこの返簡が前記の了解を記録するものであるとみなすことを確認する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 千九百七十二年二月二十一日にキャンベラで

 ナイジェル・ボーウェン

 日本国特命全権大使 斉藤鎮男閣下