データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定

[場所] 
[年月日] 1977年3月4日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定(その1)(議定書)

 日本国は、千九百六十八年七月一日にロンドン、モスクワ及びワシントンで署名のために開放され、かつ、千九百七十年三月五日に効力を生じた核兵器の不拡散に関する条約(以下「条約」という。)の署名国であるので、

 条約第四条1は、条約のいかなる規定も、無差別にかつ条約第一条及び第二条の規定に従つて平和的目的のための原子力の研究、生産及び利用を発展させることについてのすべての締約国の奪い得ない権利に影響を及ぼすものと解してはならないと規定しているので、

 条約第四条2は、すべての締約国は、原子力の平和的利用のため設備、資材並びに科学的及び技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束し、また、その交換に参加する権利を有すると規定しているので、

 条約第四条2は、更に、締約国は、また、可能なときは、単独で又は他の国若しくは国際機関と共同して、平和的目的のための原子力の応用、特に締約国である非核兵器国の領域におけるその応用の一層の発展に貢献することに協力すると規定しているので、

 条約第三条1は、締約国である各非核兵器国は、原子力が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するため、条約に基づいて負う義務の履行を確認することのみを目的として国際原子力機関憲章(以下「憲章」という。)及び国際原子力機関(以下「機関」という。)の保障措置制度に従い機関との間で交渉しかつ締結する協定に定められる保障措置を受諾することを約束すると規定しているので、

 条約第三条4は、締約国である非核兵器国は、同条に定める要件を満たすため、憲章に従い、個々に又は他の国と共同して機関と協定を締結するものとすると規定しているので、

 機関は、憲章第三条A5の規定に基づき、いずれかの二国間若しくは多数国間の取極の当事国の要請を受けたときは、その取極に対し、又はいずれかの国の要請を受けたときは、その国の原子力の分野におけるいずれかの活動に対して、保障措置を適用する権限を有するので、

 日本国政府は、査察を含む日本国の国内制度を通じ、特に加工、再処理並びに原子炉の設置及び運転を含むすべての原子力活動に関して必要な規制を行う用意があるので、

 この制度には、設計情報の検討、日本国についての核物質の計量を可能にする記録の保持及び報告の提出、日本国の査察員による査察並びに処罰の制度を含むので、

 日本国政府及び機関の活動の不必要な重複を避けることが日本国政府及び機関の希望であるので、

 よつて、ここに、日本国政府及び機関は、次のとおり協定した。

 第一部

基本的約束

第一条

 日本国政府は、条約第三条1の規定に従い、日本国の領域内若しくはその管轄下で又は場所のいかんを問わずその管理の下で行われるすべての平和的な原子力活動に係るすべての原料物質及び特殊核分裂性物質につき、その物質が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを確認することのみを目的として、この協定の規定に従つて保障措置を受諾することを約束する。

保障措置の適用

第二条

 機関は、日本国の領域内若しくはその管轄下で又は場所のいかんを問わずその管理の下で行われるすべての平和的な原子力活動に係るすべての原料物質及び特殊核分裂性物質につき、その物質が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを確認することのみを目的として、この協定の規定に従つて保障措置が適用されることを確保する権利及び義務を有する。

第三条

 (a) 日本国政府は、この協定に基づく保障措置の対象となるすべての核物質についての計量管理制度(その核物質についての独立の検認を含む。以下「国内制度」という。)を維持する。日本国政府は、国内制度を「国内保障措置制度」と称することができる。

 (b) 日本国政府は、日本国の領域内のすべての平和的な原子力活動に係る原料物質及び特殊核分裂性物質について国内制度を適用するに当たり、その原料物質及び特殊核分裂性物質が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを確認することについて、この協定の規定に従つて機関と協定することを約束する。

 (c) 機関は、核物質が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを確認するに当たり、この協定の規定に従い、国内制度による認定を検認することが可能となるような方法で機関の保障措置を適用する。機関の検認には、特に、機関がこの協定に規定する手続に従つて行う独立の測定及び観察を含む。機関は、その検認を行うに当たり、国内制度の技術的な実効性に妥当な考慮を払う。

日本国政府と機関との間の協力

第四条

 日本国政府及び機関は、この協定に規定する保障措置の実施を容易にするために協力し、並びに日本国政府及び機関の活動の不必要な重複を避けるものとする。


保障措置の実施

第五条

 この協定に規定する保障措置は、次の態様で実施する。

 (a) 日本国の経済的及び技術的発展又は平和的な原子力活動の分野における国際協力(核物質の国際的交換を含む。)を妨げないような態様

 (b) 日本国の平和的な原子力活動、特に施設の使用に対して不当に干渉しないような態様

 (c) 原子力活動の経済的かつ安全な実施に必要とされる綿密な管理の方法に適合するような態様

第六条

 (a) 機関は、この協定の実施を通じて知るに至つた商業上及び産業上の秘密並びに他の秘密情報を保護するためすべての措置をとる。

 (b)(i) 機関は、この協定の実施に関連して入手した情報を公表してはならず、また、いかなる国、団体又は個人にも伝達してはならない。もつとも、機関は、この協定を実施するに当たりその責任を遂行するために必要な限度において、この協定の実施に関連する特定の情報を機関の理事会(以下「理事会」という。)又は保障措置に関する公的任務のためにその情報を必要とする機関の職員に提供することができる。

  (ii) この協定に基づく保障措置の対象となる核物質に関する情報の概要は、日本国政府が同意する場合には、理事会の決定により公表することができる。

第七条

 (a) 機関は、この協定に基づく保障措置を実施するに当たり、保障措置の分野における技術的発展に十分な考慮を払うものとし、現在又は将来の技術が可能とする限度まで、最適の費用効果を確保するため、及び一定の枢要な箇所において機器その他の技術的手段を使用することによりこの協定に基づく保障措置の対象となる核物質の移動に対して効果的に保障措置を適用するという原則の適用を確保するためにあらゆる努力を払う。

 (b) 最適の費用効果を確保するため、例えば、次のような方法を用いるものとする。

  (i) 計量の目的のための物質収支区域を設定する手段としては、封じ込め

  (ii) 核物質の移動を評価するに当たつては、統計手法及びランダム・サンプリング

  (iii) 核燃料サイクル中、核兵器その他の核爆発装置を容易に製造し得るような核物質の生産、処理、使用、貯蔵等の段階への検認手続の集中及び、機関によるこの協定に基づく保障措置の適用が妨げられないことを条件として、その他の核物質に関する検認手続の最小化


機関に対する情報の提供

第八条

 (a) 日本国政府は、この協定に基づく保障措置の効果的な実施を確保するため、この協定の規定に従い、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質に関する情報及びその核物質に対する保障措置の適用上の施設の特徴に関する情報を機関に提供する。

 (b)(i) 機関は、この協定に基づく責任を遂行するために必要な最少量の情報及びデータのみを要求する。

  (ii) 施設に関する情報は、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質に対する保障措置の適用のために必要な最小限のものとする。

 (c) 機関は、日本国政府が特に機微であると認める設計情報の検討については、日本国政府が要請する場合には、日本国の建物内で行うことに応ずる。その情報は、機関が引き続き検討するために日本国の建物内で容易に利用し得ることを条件として、機関に物理的に伝達することを要しない。


機関の査察員

第九条

 (a)(i) 機関は、日本国に派遣する機関の査察員の指名について、日本国政府の同意を得るものとする。

  (ii) 機関は、日本国政府が、指名の提案に際し、又は指名が行われた後いつでも、その指名に異議を申し立てる場合には、日本国政府に対しこれに代わる一又は二以上の指名の提案を行う。

  (iii) 日本国政府が機関の査察員の指名の受諾を繰り返し拒否した結果この協定に基づいて実施される査察が妨げられる場合には、理事会は、機関の事務局長(以下「事務局長」という。)の付託により、適当な措置をとるため検討を行う。

 (b) 日本国政府は、機関の査察員がこの協定に基づく職務を効果的に遂行することができるようにするために必要な措置をとる。

 (C) 機関の査察員の訪問及び活動については、次のように取り計らう。

  (i) 日本国及び査察を受ける平和的な原子力活動に対して生ずることがある不都合及び妨害を最小にする。

  (ii) 機関の査察員が知るに至つた産業上の秘密又は他のすべての秘密情報の保護を確保する。


特権及び免除

第十条

 日本国政府は、国際原子力機関の特権及び免除に関する協定中の関係規定を機関(その財産、基金及び資産を含む。)及びこの協定に基づく職務を遂行する機関の査察員その他の職員に適用する。


核物質の消耗又は希釈

第十一条

 この協定に基づく保障措置は、核物質が消耗したこと、核物質が保障措置の観点から関係があるいかなる原子力活動にも使用することができないような態様で希釈されたこと又は核物質が実際上回収不可能となつたことを機関が決定することにより、その核物質について終了する。


核物質の日本国外への移転

第十二条

 日本国政府は、この協定の規定に従い、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質の日本国外への移転を機関に通告する。機関は、受領国がこの協定に定めるところに従いその核物質に関する責任を負つた時に、この協定に基づくその核物質に対する保障措置を終了させる。機関は、個々の移転及び、移転された核物質に対する保障措置の再適用が可能な場合には、その再適用を明示する記録を保持する。


非原子力活動に使用される核物質

第十三条

 日本国政府は、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質が合金又は窯業製品の製造のような非原子力活動に使用される場合には、核物質がそのように使用される前に、いかなる状態においてその核物質に対するこの協定に基づく保障措置を終了させることができるかにつき機関と合意する。


保障措置の適用除外

第十四条

 日本国政府が、その裁量により、この協定に基づく保障措置の適用を必要とする核物質をこの協定に基づく保障措置の適用を必要としない原子力活動に使用しようとする場合には、次の手続を適用する。

 (a) 日本国政府は、当該原子力活動を機関に通報し、次のことを明確にする。

  (i) 当該原子力活動における当該核物質の使用が、特定の核物質を平和的な原子力活動においてのみ使用する旨の日本国政府が行つた約束であつてその約束に関連して機関の保障措置が適用されるものと抵触しないこと。

  (ii) この協定に基づく保障措置の適用除外の期間中当該核物質が核兵器その他の核爆発装置の製造に使用されないこと。

 (b) 日本国政府及び機関は、当該核物質が当該原子力活動において使用されている間に限りこの協定に規定する保障措置が適用されないことについて取り決める。この取決めは、保障措置が適用されない期間又は状態を可能な限度において示すものとする。この協定に規定する保障措置は、いかなる場合にも、当該核物質が当該原子力活動において使用されないこととなるときは、直ちに再び適用される。機関は、日本国におけるこのような核物質の総量及び組成並びにこのような核物質のいかなる輸出についても随時通報を受ける。

 (c) 個々の取決めは、機関との合意により行う。この合意は、可能な限り速やかに行われ、特に期間及び手続に関する定め並びに報告に関する取決めのような事項のみにかかわるものとし、この協定に基づく保障措置の適用を必要としない活動についての承認及び当該活動についての非公開の情報を含まず、かつ、当該活動における核物質の使用にかかわらないものとする。


財政

第十五条

 日本国政府及び機関は、この協定に基づく各自の責任を遂行するに当たつて各自が負つた費用をそれぞれ負担する。もつとも、日本国政府又はその管轄の下にある者が機関による特別の要請の結果として特別の費用を負う場合には、機関が、事前の同意を条件として、その費用を償還する。機関は、いかなる場合にも、機関の査察員が要請するすべての追加的な測定又は試料の採取の費用を負担する。


原子力損害に関する第三者損害賠償責任

第十六条

 日本国政府は、日本国の法令に基づいて受けることができる原子力損害に関する第三者損害賠償責任に対する保護(保険その他の金銭上の保証を含む。)が、日本国の国民について適用されるのと同様に、この協定の実施に当たり、機関及びその職員について適用されることを確保する。


国際的な責任

第十七条

 この協定に基づく保障措置の実施から生ずる損害であつて原子力事故に起因する損害以外のものに関する日本国政府の機関に対する請求権及び機関の日本国政府に対する請求権は、国際法に従つて解決する。


不転用の確認に関する措置

第十八条

 理事会が、事務局長の報告に基づいて、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことの確認を確実にするために日本国政府の措置が不可欠かつ緊急であると決定する場合には、理事会は、紛争の解決のために第二十二条に規定する手続が援用されているかどうかを問わず、日本国政府に対し遅滞なく必要な措置をとることを要求することができる。

第十九条


 理事会は、事務局長により報告された関係情報の検討に基づき、この協定に基づく保障措置の適用を必要とする核物質の核兵器その他の核爆発装置への転用がなかつたことを機関が確認することができないと認める場合には、憲章第十二条Cに規定する報告を行うことができ、また、可能な場合には、同条Cに規定するその他の措置をとることができる。理事会は、このような行動をとるに当たり、適用された保障措置の手段によりもたらされる保証の程度を考慮するものとし、かつ、必要な追加的な保証を理事会に提示するためのあらゆる適当な機会を日本国政府に与える。


この協定の解釈及び適用並びに紛争の解決

第二十条

 日本国政府及び機関は、いずれか一方の要請により、この協定の解釈又は適用から生ずる問題について協議する。

第二十一条

 日本国政府は、理事会に対し、この協定の解釈又は適用から生ずる問題を検討するよう要請する権利を有する。理事会は、その問題の理事会による討議に参加するよう日本国政府を招請する。

第二十二条

 第十九条に規定する理事会の認定又はその認定に基づき理事会がとる行動に関する紛争を除くほか、この協定の解釈又は適用から生ずる紛争であつて、交渉又は日本国政府及び機関が合意する他の手続により解決されないものは、いずれか一方の要請により、次のように構成される仲裁裁判所に付託する。すなわち、日本国政府及び機関は、それぞれ、一人の仲裁裁判官を指名し、こうして指名された二人の仲裁裁判官は、裁判長となる第三の仲裁裁判官を選任する。仲裁裁判の要請が行われてから三十日以内に日本国政府又は機関のいずれかが仲裁裁判官を指名しなかつたときは、日本国政府又は機関は、国際司法裁判所長に対し、一人の仲裁裁判官を任命するよう要請することができる。第二の仲裁裁判官の指名又は任命が行われてから三十日以内に第三の仲裁裁判官が選任されなかつたときは、同じ手続が適用される。仲裁裁判には、仲裁裁判所の構成員の過半数が出席していなければならず、すべての決定は、二人の仲裁裁判官の合意を必要とする。仲裁裁判の手続は、仲裁裁判所が定める。仲裁裁判所の決定は、日本国政府及び機関を拘束する。


他の協定に基づく機関の保障措置の適用停止

第二十三条

機関との他の保障措置協定に基づく機関の保障措置の日本国における適用は、この協定が効力を有する間停止される。日本国政府が特定の計画について機関の援助を受けている場合には、その計画に関する協定の対象となる品目をいずれかの軍事目的を助長するような方法で利用しない旨のその協定における日本国の約束は、引き続き適用される。


この協定の改正

第二十四条

 (a) 日本国政府及び機関は、いずれか一方の要請により、この協定の改正について協議する。

 (b) すべての改正は、日本国政府と機関との合意を必要とする。

 (c) この協定の改正は、この協定の効力発生の条件と同様の条件で効力を生ずる。

 (d) 事務局長は、この協定の改正を機関のすべての加盟国に速やかに通報する。


効力発生及び有効期間

第二十五条

 (a) この協定は、機関が、日本国政府から、効力発生のための日本国の法律上及び憲法上の要件を満たした旨の書面による通告を受領する日に効力を生ずる。事務局長は、この協定の効力発生を機関のすべての加盟国に速やかに通報する。

 (b) この協定は、日本国が条約の締約国である間効力を有する。


議定書

第二十六条

 この協定の議定書は、この協定の不可分の一部をなす。この文書において「協定」とは、この協定及び議定書をいう。


第二部


第二十七条

 この部の目的は、第一部の保障措置に関する規定の実施に当たつて適用される手続を必要に応じて定めることにある。


保障措置の目的

第二十八条

 この協定に規定する保障措置の手続の目的は、有意量の核物質が平和的な原子力活動から核兵器その他の核爆発装置の製造のため又は不明な目的のために転用されることを適時に探知すること及び早期探知の危惧を与えることによりこのような転用を抑止することにある。

第二十九条

 前条に規定する目的を達成するため、核物質の計量を、基本的に重要な保障措置の手段として、重要な補助的手段としての封じ込め及び監視とともに用いる。

第三十条

 機関の検認活動の技術的な結輪には、個々の物質収支区域につき、一定期間についての不明物質量及びその量の正確さの限度を明示する。


国内制度

第三十一条

 機関は、その検認活動を行うに当たり、第三条の規定に従い、国内制度を十分に利用する。

第三十二条

 この協定に基づく保障措置の対象となるすべての核物質についての日本国の計量管理制度は、物質収支区域を基礎とする。日本国政府は、国内制度を適用するに当たり、場合に応じ、かつ、補助取極に規定するところに従つて、次のような手段を用い、及び必要な範囲内でこれらの手段について定める。

 (a) 受け入れられ若しくは生産され、又は払い出され、減損し若しくはその他の原因によつて在庫から除かれた核物質の量及び在庫に係る核物質の量を確定するための測定の体系

 (b) 測定の精密さ及び正確さの評価並びに測定の不確かさの推定

 (c) 払出し側の測定値と受入れ側の測定値との差を算定し、検討し及び評価するための手続

 (d) 実在庫を確認するための手続

 (e) 測定されない在庫及び測定されない損失の累積を評価するための手続

 (f) 物質収支区域ごとに、核物質の在庫及びその変動(その物質収支区域への受入れ及びその物質収支区域からの移転を含む。)を示す記録及び報告の制度

(

 (g) 計量の手続及び規則が正確に運用されることを確保するための規定

(

 (h) 第五十九条から第六十五条まで及び第六十七条から第六十九条までの規定に従つて行われる機関への報告の提出に関する手続


保障措置の開始点

第三十三条

 この協定に基づく保障措置は、採掘中又は製錬中の物質については適用しない。

第三十四条

 (a) 日本国政府は、ウラン又はトリウムを含む物質であつて(c)に規定する核燃料サイクルの段階に達していないものが直接に又は間接に非核兵器国に輸出される場合には、その物質が明らかに非原子力目的で輸出される場合を除くほか、その物質の量、組成及び目的地を機関に通報する。

 (b) 日本国政府は、ウラン又はトリウムを含む物質であつて(c)に規定する核燃料サイクルの段階に達していないものが輸入される場合には、その物質が明らかに非原子力目的で輸入される場合を除くほか、その物質の量及び組成を機関に通報する。

 (c) 燃料加工若しくは同位体の濃縮に適する組成及び純度を有する核物質がこれを生産する工場若しくは工程を出る時から、又は当該組成及び純度を有する核物質若しくは核燃料サイクルのその後の段階で生産された他の核物質が日本国に輸入された時から、これらの核物質は、この協定に規定する他の保障措置の手続の対象となる。

保障措置の終了

第三十五条

 (a) この協定に基づく保障措置は、第十一条の条件を満たす核物質について終了する。同条の条件が満たされない場合において、日本国政府が、残滓からこの協定に基づく保障措置の対象となる核物質を回収することが当分の間実行可能でなく又は望ましくないと認めるときは、日本国政府及び機関は、適用すべき適当な保障措置の手段について協議する。

 (b) この協定に基づく保障措置は、第十三条の条件を満たす核物質について終了する。ただし、日本国政府及び機関がその核物質の回収が実行不可能であることを合意することを条件とする。

保障措置の免除

第三十六条

 機関は、日本国政府の要請により、次の核物質についてこの協定に基づく保障措置を免除する。

 (a) 計測器の検出部分として数グラム以下の量で使用されている特殊核分裂性物質

 (b) 第十三条の規定に従つて非原子力活動に使用されている回収可能な核物質

 (c) プルトニウム二三八の同位体濃度が八十パーセントを超えるプルトニウム

第三十七条

 機関は、日本国政府の要請により、この要請がなかつたならば保障措置の対象となる核物質についてこの協定に基づく保障措置を免除する。ただし、この条の規定に基づいて日本国内において保障措置を免除される核物質の総量が、いかなる時にも次の数量又はいずれの国に対しても一律に適用するために理事会が定める一層大きい数量を超えないことを条件とする。

 (a) 次のものの一又は二以上から成る特殊核分裂性物質については、総量で一キログラム

  (i) プルトニウム

  (ii) 濃縮度が〇・二(二十パ-セント)以上のウラン(総量の算出には、当該ウランの重量に当該ウランの濃縮度を乗じた数量を用いる。)

  (iii) 濃縮度が〇・二(二十パーセント)未満であつて、天然ウランの濃縮度を超える濃縮度のウラン(総量の算出には、当該ウランの重量に当該ウランの濃縮度の二乗の五倍を乗じた数量を用いる。)

 (b) 天然ウラン及び濃縮度が〇・〇〇五(〇・五パーセント)を超える劣化ウランについては、総量で十メートル・トン


 (c) 濃縮度が〇・〇〇五(〇・五パーセント)以下の劣化ウランについては、二十メートル・トン

 (d) トリウムについては、二十メートル・トン


####


第三十八条

 保障措置を免除されている核物質がこの協定に基づく保障措置の対象となる核物質とともに処理され又は貯蔵されることとなる場合には、その核物質に対する保障措置の再適用について取り決める。

補助取極

第三十九条

 日本国政府及び機関は、この協定に規定する手続の適用に関して、機関がこの協定に基づく責任を効果的かつ効率的に遂行することを可能にするために必要な限度において詳細に規定する補助取極を作成する。補助取極は、日本国政府と機関との合意により、この協定を改正することなく、拡充し又は変更することができる。

第四十条

 補助取極は、この協定の効力発生と同時に又はその後できる限り速やかに効力を生じさせるものとする。日本国政府及び機関は、この協定が効力を生じた時から九十日以内に補助取極の効力を生じさせるためにあらゆる努力を払う。この期間を延長するには、日本国政府と機関との合意を必要とする。日本国政府は、補助取極の作成に必要な情報を速やかに機関に提供する。機関は、この協定の効力発生の後は、補助取極が効力を生じていない場合においても、次条に規定する在庫目録に記載されている核物質についてこの協定に定める手続を適用する権利を有する。

在庫目録

第四十一条

 機関は、この協定に基づく保障措置の対象となる日本国内のすべての核物質について、その原産地のいかんを問わず、単一の在庫目録を第六十二条に規定する冒頭報告に基づいて作成し、その後の報告及び機関の検認活動の結果に基づいてこの在庫目録を維持する。日本国政府は、合意される一定の期間ごとに、在庫目録の写しの提供を受ける。

設計情報

総則

第四十二条

 既存の施設に関する設計情報は、第八条の規定に従い、補助取極についての討議の間に、機関に提供する。新たな施設に関する設計情報の提供の期限は、補助取極に規定するものとし、その設計情報は、新たな施設に核物質が搬入される前のできる限り早い時期に提供する。

第四十三条

 機関に提供する設計情報には、個々の施設について、該当する場合には、次のものを含める。

 (a) 一般的性格、目的、公称能力及び地理的位置を明示する施設の同定デ-タ並びに通常の業務目的で使用する名称及び住所

 (b) 核物質の形状、所在箇所及び移動並びに核物質を使用し、生産し又は処理する重要な設備の配置の概略を可能な範囲内で示す施設の概要の記述

 (c) 核物質の計量、封じ込め及び監視に関連する施設の特徴の記述

 (d) 施設において実施され又は計画されている核物質の計量管理の手続の記述(施設の使用者が設定した物質収支区域並びに核物質の移動の測定及び実在庫の確認の手続を特記する。)

第四十四条

 この協定に基づく保障措置の適用に関連するその他の情報は、個々の施設について、補助取極に規定するところに従い、機関に提供する。日本国政府は、機関が遵守し及び機関の査察員が施設において従うべき保健上及び安全上の手続に関する補足的な情報を機関に提供する。

第四十五条

 この協定に基づく保障措置の目的に関連する変更に係る設計情報は、検討のために機関に提供するものとし、前条の規定に従つて機関に提供された情報の変更は、機関に通報するものとする。その提供及び通報は、この協定に基づいて適用される保障措置の手続を必要な場合に調整するために十分な余裕をもつて、事前に行う。

設計情報の検討の目的

第四十六条

 機関に提供される設計情報は、次の目的のために用いる。

 (a) 核物質に対する保障措置の適用に関連する施設及び核物質の特徴を、検認を容易にするため十分詳細に、同定すること。

 (b) この協定に基づく計量のために用いられる物質収支区域を設定すること並びに主要測定点として核物質の移動及び在庫を量定するために用いられる枢要な箇所を選定すること。物質収支区域を設定するに当たつては、特に次の基準を用いる。

  (i) 物質収支区域の大きさは、物質収支の算定の正確さと関連させる。

  (ii) 物質収支区域を設定するに当たり、移動の測定の完全性を確保することを容易にし、それによつて保障措置の適用を簡素化し、かつ、測定作業を主要測定点に集中するため、封じ込め及び監視をできる限り利用する。

  (iii) 検認の要件に合致すると認められる場合には、一の施設又は二以上の異なる場所で用いられている二以上の物質収支区域は、この協定に基づく計量のために用いられる物質収支区域としては、一の物質収支区域に統合することができる。

  (iv) 商業上機微な情報を含む工程については、日本国政府の要請により、これを包含する特別の物質収支区域を設定することができる。

 (c) この協定に基づく計量のために行う核物質の実在庫の確認の予定時期及び手続を定めること。

 (d) 記録及び報告の要件並びに記録の評価の手続を定めること。

 (e) 核物質の量及び所在箇所の検認のための要件及び手続を定めること。

 (f) 封じ込め及び監視の方法及び技術の適切な組合せ並びにこれらを適用する枢要な箇所を選定すること。

 日本国政府と機関との間で合意する設計情報の検討の結果は、補助取極に含める。

設計情報の再検討

第四十七条

 設計情報は、使用条件の変更、保障措置の技術の発展又は検認手続の適用の経験に照らして、前条の規定に基づいてとられた措置を修正することを目的として再検討される。

設計情報の検認

第四十八条

 機関は、第四十二条から第四十五条までの規定に従つて提供される設計情報を第四十六条に定める目的のために検認するため、日本国政府と協力して、機関の査察員を施設に派遣することができる。

施設外にある核物質に関する情報

第四十九条

 機関は、核物質が、通常、施設外で使用される場合には、該当する範囲内で、次のものについての情報の提供を受ける。

 (a) 核物質の使用の概要及び地理的位置並びに通常の業務目的のための使用者の名称及び住所

 (b) 実施され又は計画されている核物質の計量管理の手続の概要(補助取極に規定するところによる。)

 機関は、この条の規定に従つて提供された情報の変更について適時に通報を受ける。

第五十条

 前条の規定に従つて機関に提供される情報は、第四十六条(b)から(f)までに定める目的のため、その目的に関連する限度において、用いることができる。

記録の制度

総則

第五十一条

 日本国政府は、物質収支区域ごとに記録が保持されるよう取り計らう。保持すべき記録については、補助取極に規定する。

第五十二条

 日本国政府は、機関の査察員による記録の検討(特に、記録が英語、フランス語、ロシア語又はスペイン語で保持されていない場合の検討)を容易にするよう取り計らう。

第五十三条

 記録は、少なくとも五年間保存する。

第五十四条

 記録は、場合に応じ、次のものにより構成される。

 (a) この協定に基づく保障措置の対象となるすべての核物質の計量記録

 (b) この協定に基づく保障措置の対象となる核物質を保有する施設の操作記録

第五十五条

 報告の作成に用いられる記録の基礎となる測定の体系は、最新の国際的な標準に合致するもの又はこれと質的に同等なものとする。

計量記録

第五十六条

 計量記録には、物質収支区域ごとに次の事項を記載する。

 (a) 帳簿在庫の算定を常時可能にするためのすべての在庫変動

 (b) 実在庫の算定に用いられるすべての測定結果

 (c) 在庫変動、帳簿在庫及び実在庫に関するすべての調整事項及び訂正事項


第五十七条


 計量記録には、すべての在庫変動及び実在庫につき、核物質のバッチごとに、物質同定データ、バッチ・データ及びソース・データを表示する。この記録の記載に当たつては、核物質のバッチごとにウラン、トリウム及びプルトニウムについて個別に記載するものとし、在庫変動ごとに在庫変動の日及び、適当な場合には、払出し物質収支区域及び受入れ物質収支区域又は受領者を明記する。

操作記録

第五十八条

 操作記録には、物質収支区域ごとに、場合に応じ、次の事項を記載する。

 (a) 核物質の量及び組成の変化の算定に用いられる操作データ

 (b) 計量槽及び計測器の校正並びに試料の採取及び分析から得られるデータ、測定の質的管理の手続並びに偶然誤差及び系統誤差の推定値

 (c) 正確かつ完全な実在庫の確認を確保するため、その準備及び実施としてとられた一連の措置

 (d) 事故損失又は測定されない損失が生じた場合には、その原因及び程度を確認するためにとられた措置

報告の制度

総則

第五十九条  

日本国政府は、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質に関し、次条から第六十五条まで及び第六十七条から第六十九条までに規定する報告を機関に提出する。

第六十条

 報告は、補助取極に別段の規定がある場合を除くほか、英語、フランス語、ロシア語又はスペイン語で作成する。

第六十一条

 報告は、第五十一条から第五十八条までの規定に従つて保持される記録に基づくものとし、場合に応じ、計量報告及び特別報告により構成される。

計量報告

第六十二条

 機関は、この協定に基づく保障措置の対象となるすべての核物質に関する冒頭報告の提出を受ける。冒頭報告は、この協定が効力を生ずる月の最終日から三十日以内に日本国政府が機関に発送するものとし、その月の最終日における状態を反映するものとする。

第六十三条

 日本国政府は、物質収支区域ごとに次の計量報告を機関に提出する。

 (a) 核物質の在庫のすべての変動を示す在庫変動報告。この報告は、できる限り速やかに、かつ、いかなる場合にも補助取極に規定する期限までに発送する。

 (b) 当該物質収支区域に実際に存在する核物質の実在庫に基づく物質収支を示す物質収支報告。この報告は、できる限り速やかに、かつ、いかなる場合にも補助取極に規定する期限までに発送する。

 これらの報告は、報告を行う日において利用することができるデータに基づくものとし、その後必要に応じて訂正することができる。

第六十四条

 在庫変動報告には、核物質のバッチごとの同定デ-タ及びバッチ・データ、在庫変動の日並びに、適当な場合には、払出し物質収支区域及び受入れ物質収支区域又は受領者を明記する。この報告には、次の簡明な注釈を付する。

 (a) 第五十八条(a)に規定する操作記録に含まれる操作デ-タに基づいて在庫変動を説明する注釈

 (b) 補助取極に規定するところに従い、予定されている操業計画、特に実在庫の確認に係るものについて記述する注釈

第六十五条

 日本国政府は、個々の在庫変動、調整事項及び訂正事項を定期的に一括した表により又はその都度報告する。在庫変動は、バッチ単位で報告する。分析試料の移転のような核物質の在庫の少量の変動は、補助取極に規定するところに従い、一のバッチに取りまとめ、一の在庫変動として報告することができる。

第六十六条

 機関は、物質収支区域ごとに、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質の帳簿在庫についての半年ごとの報告を、当該期間の在庫変動報告に基づき、日本国政府に提出する。

第六十七条

 物質収支報告には、日本国政府と機関とが別段の合意をしない限り、次の記載事項を含める。

 (a) 期首実在庫

 (b) 在庫変動(最初に増加、次に減少を記載する。)

 (c) 期末帳簿在庫

 (d) 受払間差異

 (e) 調整済みの期末帳簿在庫

 (f) 期末実在庫

 (g) 不明物質量

 個々の物質収支報告には、すべてのバッチを列挙し、かつ、バッチごとに物質同定データ及びバッチ・データを明記した実在庫の明細表を添付する。

特別報告

第六十八条

 日本国政府は、次の場合には、遅滞なく、特別報告を行う。

 (a) 異常な出来事又は状況が生じた結果、このような場合のために補助取極に規定する限度を超える核物質の損失があり又はあり得たと日本国政府が認める場合

 (b) 封じ込めが、核物質の認められない移転が可能となる程度に、補助取極に規定する状態から予想外に変化した場合

報告の敷衍及び明確化

第六十九条

 日本国政府は、機関が要請する場合には、この協定に基づく保障措置の目的に関連する範囲内で、機関に対し、報告を敷衍し、又は明確化する。

査察

総則

第七十条

 機関は、この協定の規定に従つて査察を行う権利を有する。

査察の目的

第七十一条

 機関は、次の目的のため、特定査察を行うことができる。

 (a) この協定に基づく保障措置の対象となる核物質に関する冒頭報告に含まれる情報を検認すること及び冒頭報告の日と補助取極が個々の施設につき効力を生ずる日との間に生ずる状態の変化を確認しかつ検認すること。

 (b) この協定に基づく保障措置の対象となる核物質の日本国外への移転の前に又は日本国への移転の際に、第九十三条及び第九十六条の規定に従つてその核物質を同定すること並びに、可能な場合には、その核物質の量及び組成を検認すること。

第七十二条

 機関は、次の目的のため、通常査察を行うことができる。

 (a) 報告が記録に合致していることを検認すること。

 (b) この協定に基づく保障措置の対象となるすべての核物質の所在箇所、同一性、量及び組成を検認すること。

 (c) 不明物質量及び受払間差異の発生原因と考えられるもの並びに帳簿在庫の不確かさの発生原因と考えられるものに関する情報を検認すること。

第七十三条

 機関は、次の場合には、第七十七条に規定する手続に従い、特別査察を行うことができる。

 (a) 特別報告に含まれる情報の検認を目的とする場合

 (b) 日本国政府が提供した情報(日本国政府の説明を含む。)及び通常査察から得られた情報がこの協定に基づく機関の責任を遂行するために十分でないと機関が認める場合

 査察がこの協定に規定する通常査察業務量に追加されるものである場合若しくは特定査察及び通常査察のために第七十六条に規定する情報若しくは場所以外の情報若しくは場所への接近を含む場合又はその双方である場合には、その査察は、特別査察とみなされる。

査察の範囲

第七十四条

 機関は、前三条の目的のため、次のことを行うことができる。

 (a) 第五十一条から第五十八条までの規定に従つて保持される記録を検討すること。

 (b) この協定に基づく保障措置の対象となるすべての核物質について独立の測定を行うこと。

 (c) 計測器及び計測制御装置の作動及び校正を検認すること。

 (d) 監視及び封じ込めの手段を適用し、及び利用すること。

 (e) 技術的に可能であることが証明されたその他の客観的な方法を用いること。

第七十五条

 機関は、前条の規定の範囲内で次のことを行うことができる。

 (a) 物質収支計量のための主要測定点における試料の採取が、代表的な試料が得られるような手続に従つて行われることを観察すること、その試料の処理及び分析を観察すること並びにその試料と同じ試料を入手すること。

 (b) 物質収支計量のための主要測定点における核物質の測定が代表的なものであることを観察すること並びに使用されている計測器及び装置の校正を観察すること。

 (c) 必要な場合には、日本国政府と次のことについて取り決めること。

  (i) 追加的な測定を行うこと及び機関の使用のため追加的な試料を採取すること。

  (ii) 機関の分析用標準試料を分析すること。  

  (iii) 計測器及び装置を校正するに当たり適当な絶対標準器を用いること。  

  (iv) その他の校正を行うこと。

 (d) 独立の測定及び監視のために機関自身の装置を使用することを取り決めること及び、合意されかつ補助取極に規定する場合には、その装置を設置することを取り決めること。

 (e) 合意されかつ補助取極に規定する場合には、封じ込めに対し、機関の封印を行うこと並びにその他の同定装置及び開封表示装置を使用すること。

 (f) 機関の使用のために採取された試料の持出しについて日本国政府と取り決めること。

査察のための接近

第七十六条

 (a) 機関の査察員は、第七十一条(a)の目的のため、枢要な箇所が補助取極に規定される時まで、冒頭報告又はこれに関連して行われた査察によつてこの協定に基づく保障措置の対象となる核物質の存在が示されたいかなる場所にも近づくことができる。

 (b) 機関の査察員は、第七十一条(b)の目的のため、第九十二条(d)(iii)又は第九十五条(d)(iii)の規定に従つて機関が通告を受けたいかなる場所にも近づくことができる。

 (c) 機関の査察員は、第七十二条の目的のため、補助取極に規定する枢要な箇所及び第五十一条から第五十八条までの規定に従つて保持される記録に限つて近づくことができる。

 (d) 異常な状況が生じた結果機関による接近に対する制限を強化する必要があると日本国政府が判断する場合には、日本国政府及び機関は、機関がそのような制限の下でその保障措置の責任を遂行することができるようにするため、速やかに取決めを行う。事務局長は、その取決めを理事会に報告する。

第七十七条

 日本国政府及び機関は、第七十三条の目的のための特別査察が行われることとなる可能性がある場合には、直ちに協議する。機関は、その協議の結果として、次のことを行うことができる。

 (a) この協定に規定する通常査察業務量に追加される査察を行うこと。

 (b) 日本国政府との合意により、前条に規定する情報及び場所以外の情報及び場所に近づくこと。追加的な接近の必要性に関する意見の相違は、第二十一条及び第二十二条の規定に従つて解決される。日本国政府の措置が不可欠かつ緊急である場合には、第十八条の規定が適用される。

通常査察の頻度及び程度

第七十八条

 通常査察は、最適時期に行うものとし、その回数、程度及び期間は、この協定に規定する保障措置の手続の効果的な実施のために必要な最小限にとどめるものとする。この協定に基づいて利用することができる査察のための資源は、最適にかつ最も経済的に使用する。

第七十九条

 機関は、核物質の保有量又は年間移転量のいずれか多い方の量が五実効キログラムを超えない施設に対し及び施設外の物質収支区域に対して年一回通常査察を行うことができる。

第八十条

 核物質の保有量又は年間移転量が五実効キログラムを超える施設に対する通常査察の回数、程度、期間、時期及び態様は、最大限度の場合であるかそれ以外の場合であるかを問わず、査察制度は核物質の移動及び在庫を常時把握しておくために必要かつ十分な程度を超えるものであつてはならないという原則に基づいて決定される。当該施設に対する最大通常査察業務量は、次のようにして決定される。

 (a) 原子炉及び封印された貯蔵施設に対する年間の通常査察業務量の合計の最大値は、施設ごとに六分の一人年の査察業務量を与えることにより決定する。

 (b) 原子炉及び封印された貯蔵施設以外の施設であつて、プルトニウム又は濃縮度が五パーセントを超えるウランを取り扱うものに対する年間の通常査察業務量の合計の最大値は、施設ごとにE(実効キログラムで表された核物質の在庫又は年間移転量のいずれか多い方の量をいう。)の平方根に三十を乗じた値の人日の査察業務量を与えることにより決定する。ただし、一の施設について設定される最大値は、一・五人年の査察業務量よりも小さいものであつてはならない。

 (c) (a)又は(b)に該当しない施設に対する年間の通常査察業務量の合計の最大値は、施設ごとに三分の一人年にE(実効キログラムで表された核物質の在庫又は年間移転量のいずれか多い方の量をいう。)に〇・四を乗じた値の人日を加えた量の査察業務量を与えることにより決定する。

 日本国政府及び機関は、この条に規定する最大査察業務量の数値を修正することを合意することができる。ただし、理事会によりその修正が合理的であると決定されることを条件とする。

第八十一条

 前三条の規定に従うことを条件として、個々の施設に対する通常査察の実際の回数、程度、期間、時期及び態様を決定するために用いる基準には、次の事項を含める。

 (a) 核物質の形状(特に、ばらの状態であるか又は単位体中に含まれているかの別、化学的組成(ウランの場合には、更に濃縮度の高低)及び接近の難易)

 (b) 国内制度の実効性(施設の使用者が国内制度から機能的に独立している程度、日本国政府が第三十二条に規定する手段を用いている程度、機関に対する報告の迅速さ、その報告と機関による独立の検認との整合性並びに機関が検認した不明物質量及びその量の正確さを含む。)

 (c) 日本国の核燃料サイクルの特徴(特に、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質を取り扱う施設の数及び型式、その施設のこの協定に基づく保障措置に関連する特徴(特に封じ込めの程度)、その施設の設計が核物質の移動及び在庫の検認を容易にしている程度並びに異なる物質収支区域からの情報を相互に関連づけ得る程度)

 (d) 国際的相互依存性(特に、核物質が使用又は処理のために他の国から受け入れられ又は他の国に送付される程度、その受入れ及び送付に関連して行われる機関の検認活動並びに日本国の原子力活動が他の国の原子力活動と相互に関連する程度)

 (e) 保障措置の分野における技術的発展(核物質の移動を評価するための統計手法及びランダム・サンプリングの使用に関するものを含む。)

第八十二条

 日本国政府及び機関は、査察業務が特定の施設に不当に集中して行われていると日本国政府が認める場合には、協議する。

査察の通告

第八十三条

 機関は、機関の査察員の施設への又は施設外の物質収支区域への到着に先立つて、次の時点までに、日本国政府に対して事前の通告を行う。

 (a) 第七十一条(b)の規定に基づく特定査察については、少なくとも二十四時間前の時点、同条(a)の規定に基づく特定査察及び第四十八条に規定する活動については、少なくとも一週間前の時点

 (b) 第七十三条の規定に基づく特別査察については、日本国政府及び機関が第七十七条の規定に従つて協議を行つた後のできる限り早い時点(もつとも、到着についての通告は、通常その協議の一環として行うものとする。)

 (c) 第七十二条の規定に基づく通常査察については、第八十条(b)に規定する施設及びプルトニウム又は濃縮度が五パーセントを超えるウランを保有する封印された貯蔵施設に対するものにあつては、少なくとも二十四時間前の時点、その他のすべてのものにあつては、一週間前の時点


査察の通告には、機関の当該査察員の氏名を含めるものとし、訪問する施設及び訪問する施設外の物質収支区域並びに訪問が行われる期間を明示する。機関は、機関の査察員が日本国外から到着する場合には、その査察員の日本国への到着の場所及び日時についても事前に通告する。

第八十四条

 機関は、前条の規定にかかわらず、補足的な手段として、ランダム・サンプリングの原理に基づき、事前の通告を行うことなく、第八十条の規定に基づく通常査察の一部を行うことができる。機関は、予告されない査察を行うに当たり、第六十四条(b)の規定に従つて日本国政府が提出する操業計画を十分に考慮する。機関は、更に、可能な場合にはいつでも、この操業計画を基礎として、査察が予見されるおおよその期間を明記した予告される査察及び予告されない査察の全体計画を定期的に日本国政府に通報する。機関は、予告されない査察を行うに当たり、第四十四条及び第八十九条の規定に留意して、日本国政府及び施設の使用者に及ぼす実務上の障害を最小にするため、あらゆる努力を払う。日本国政府は、同様に、機関の査察員の任務を容易にするため、あらゆる努力を払う。

機関の査察員の指名

第八十五条

機関の査察員の指名については、次の手続を適用する。

 (a) 事務局長は、日本国に派遺する機関の査察員として指名しようとする機関の職員の氏名、資格、国籍、等級及び他の関連事項を書面により日本国政府に通報する。

 (b) 日本国政府は、(a)の提案を受領した後三十日以内に、その提案を受諾するかどうかを事務局長に通報する。

 (c) 事務局長は、日本国政府の受諾を得た職員を日本国に派遺する機関の査察員として指名することができるものとし、その指名を日本国政府に通報する。

 (d) 事務局長は、日本国政府の要請に応じて又は自己の発意により行つた日本国に派遺する機関の査察員の指名の撤回を直ちに日本国政府に通報する。

もつとも、第四十八条に規定する活動のために必要な機関の査察員及び第七十一条(a)の規定に基づく特定査察を行うために必要な機関の査察員については、指名の手続は、可能な場合には、この協定の効力発生の後三十日以内に完了する。その指名をこの期限までに行うことが不可能であると認められる場合には、これらの機関の査察員は、暫定的に指名される。

第八十六条

 日本国政府は、日本国に派遣される査察員に指名された機関の査察員に対し、必要な場合には、できる限り速やかに、適当な査証を与え、又は、これを更新する。

機関の査察員の行為及び訪問

第八十七条

 機関の査察員は、第四十八条及び第七十一条から第七十五条までの規定に基づいてその職務を遂行するに当たつては、施設の建設、操業開始若しくは使用を妨害し若しくは遅滞させること又は施設の安全性に影響を与えることを避けるような態様で活動を行う。特に、機関の査察員は、自らいかなる施設をも操作してはならず、また、施設の職員にいかなる操作をも行うことを命じてはならない。機関の査察員は、第七十四条及び第七十五条の規定に基づいて施設において使用者により特定の操作が行われる必要があると認める場合には、そのための要請を行う。

第八十八条

 日本国政府は、機関の査察員が、査察の実施に関連して、日本国内で人手し得る役務及び装置の使用を必要とする場合には、機関の査察員によるその役務の調達及び装置の使用を容易にする。

第八十九条

 日本国政府は、機関の査察員の職務の遂行を遅滞させず、かつ、妨げないことを条件として、機関の査察員が査察を行う間機関の査察員に日本国の査察員を同行させる権利を有する。

機関の検認活動に関する通報

第九十条

機関は、

 (a) 査察の結果を補助取極に規定する期間ごとに日本国政府に通報する。

 (b) 日本国におけるその検認活動から導き出した結論を、特に、実在庫の使用者による確認及び機関による検認並びに物質収支の確定が行われた後できる限り速やかに作成される物質収支区域ごとの報告の形で、日本国政府に通報する。

国際的な移転

総則

第九十一条

 日本国政府は、この協定の適用上、この協定に基づく保障措置の対象となる又は対象となることが必要となる核物質であつて国際的に移転されるものに関し、次の期間責任を有するものとする。

 (a) 日本国に輸入される場合には、輸出国に責任が無くなる時点(この時点は、核物質が仕向地に到着する時点以後であつてはならない。)以後の期間

 (b) 日本国から輸出される場合には、受領国が責任を引き受ける時点(この時点は、核物質が仕向地に到着する時点以後であつてはならない。)までの期間

 責任の移転が生ずる時点は、関係国が行う適当な取決めに従つて決定される。日本国及び他のいかなる国も、核物質がその領域を通過中であるという事実又は核物質が自国の旗を掲げる船舶若しくは自国の航空機により輸送されているという事実のみを理由としてその核物質に関する責任を有するものとされることはない。

日本国外への移転

第九十二条

 (a) 日本国政府は、次の場合には、この協定に基づく保障措置の対象となる核物質の予定される日本国外への移転を機関に通告する。

  (i) その積送量が一実効キログラムを超える場合

  (ii) 補助取極に規定する場合には、一実効キログラムを超えない量の積送を一の国に対し二回以上行うことによつて通常当該国に対し有意量の核物質を輸出する施設から移転される場合

 (b) この通告は、移転の根拠となる契約が結ばれた後に、かつ、補助取極に規定する期限までに機関に対して行う。

 (c) 日本国政府及び機関は、事前の通告の手続について別段の合意をすることができる。

 (d) この条の通告には、次の事項を明記する。

  (i) 移転される核物質の同定データ、可能な場合には予定される量及び組成並びに払出し物質収支区域

  (ii) 当該核物質の移転先国

  (iii) 当該核物質の積送の準備が行われる日及び場所

  (iv) 当該核物質の発送及び到着の予定日

 (v) 受領国がこの協定の適用上当該核物質に関する責任を引き受ける時点及びその時点に至ると予想される日

第九十三条

 前条に規定する通告は、核物質が日本国外へ移転される前に機関がその核物質を同定し並びに可能な場合にはその量及び組成を検認するため、並びに機関が希望する場合又は日本国政府が要請する場合には核物質の積送の準備が行われた後に機関がその核物質に封印を行うために必要に応じて機関が行う特定査察を可能にするようなものとする。もつとも、その核物質の移転は、この通告に基づいて機関がとり又はとることを計画しているいかなる措置によつても、遅滞させてはならない。

第九十四条

 日本国政府は、日本国から移転される核物質が受領国において機関の保障措置の対象とならない場合には、当該核物質に関する責任を受領国が引き受ける時から三箇月以内に、機関が受領国による当該移転の確認を了知し得るよう取り計らう。

日本国への移転

第九十五条

 (a) 日本国政府は、次の場合には、この協定に基づく保障措置の対象となることが必要となる核物質の予定される日本国への移転を機関に通告する。

  (i) その積送量が一実効キログラムを超える場合

  (ii) 補助取極に規定する場合には、一実効キログラムを超えない量の積送を一の国から二回以上行うことによつて通常当該国から有意量の核物質を輸入する施設に移転される場合

 (b) 機関は、当該核物質の到着の予定について、事前のできる限り早い時に、かつ、いかなる場合にも補助取極に規定する期限までに通告を受ける。

 (c) 日本国政府及び機関は、事前の通告の手続について別段の合意をすることができる。

 (d) この条の通告には、次の事項を明記する。

  (i) 当該核物質の同定データ並びに、可能な場合には、予定される量及び組成

  (ii) 日本国政府がこの協定の適用上当該核物質に関する責任を引き受ける時点及びその時点に至ると予想される日

  (iii) 到着の予定日並びに当該核物質の開梱が予定される日及び場所

第九十六条

 前条に規定する通告は、積送品が開梱される際に機関が当該核物質を同定し並びに可能な場合にはその量及び組成を検認するために必要に応じて機関が行う特定査察を可能にするようなものとする。もつとも、その開梱は、この通告に基づいて機関がとり又はとることを計画しているいかなる措置によつても、遅滞させてはならない。

特別報告

第九十七条

 日本国政府は、異常な出来事又は状況が生じた結果、国際的な移転の間に核物質の損失(著しい遅延を含む。)があり又はあり得たと認める場合には、第六十八条に規定する特別報告を行う。

定義

第九十八条

 この協定の適用上、

A 「調整事項」とは、計量記録又は報告への記載事項であつて、受払間差異又は不明物質量を示すものをいう。

B 「年間移転量」とは、第七十九条及び第八十条の規定の適用上、施設が公称能力で稼働する場合にその施設から一年間に移転される核物質の量をいう。

C 「バッチ」とは、主要測定点において計量のための単位として取り扱われる一区切りの核物質であつて、一組の仕様書又は測定によつてその組成及び量を決定することができるものをいう。核物質がばらの状態であるか又は単位体中に含まれているかを問わない。

D 「バッチ・データ」とは、核物質の種類ごとの総重量並びに、プルトニウム及びウランについては、適当な場合には、同位体組成をいう。計量すべき量は、次のとおりとする。

 (a) 含まれているプルトニウムのグラム数

 (b) 同位元素ウラン二三五及び二三三の濃縮ウランについては、ウランの総グラム数及び含まれているウラン二三五のグラム数にウラン二三三のグラム数を加えたグラム数

 (c) 含まれているトリウム、天然ウラン又は劣化ウランのキログラム数

 報告のためには、バッチ中の個々の単位体についての重量を合計し、その直近の整数を用いる。

E 物質収支区域の「帳簿在庫」とは、その物質収支区域の最新の実在庫とその実在庫の確認が行われた後に発生したすべての在庫変動との代数和をいう。

F 「訂正事項」とは、計量記録又は報告への記載事項であつて、判明した誤りを修正するもの又は計量記録若しくは報告に既に記載された量について改善された測定の結果を反映するものをいう。訂正事項は、関連する記載事項を明らかにしなければならない。

G 「実効キログラム」とは、核物質に保障措置を適用するに当たつて用いる特別の単位をいう。実効キログラムにより表示された量を得るには、次の数値を用いる。

 (a) プルトニウムについては、そのキログラム単位の重量の数値

 (b) 濃縮度が〇・〇一(一パーセント)以上のウランについては、そのキログラム単位の重量の数値に濃縮度の二乗を乗じて得られる数値

 (c) 濃縮度が〇・〇〇五(〇・五パーセント)を超え〇・〇一(一パーセント)未満であるウランについては、そのキログラム単位の重量の数値に〇・〇〇〇一を乗じて得られる数値

 (d) 濃縮度が〇・〇〇五(〇・五パーセント)以下の劣化ウラン及びトリウムについては、そのキログラム単位の重量の数値に〇・〇〇〇〇五を乗じて得られる数値

H 「濃縮度」とは、ウランの総重量に対する同位元素ウラン二三三及び二三五の重量の合計の比率をいう。

I 「施設」とは、次のものをいう。

 (a) 原子炉、臨界実験施設、転換工場、加工工場、再処理工場、同位体分離工場又は独立の貯蔵施設

 (b) 一実効キログラムを超える量の核物質が通常使用される場所

J 「在庫変動」とは、物質収支区域ごとのバッチ単位の核物質の増加又は減少をいう。在庫変動は、次のいずれか一を含む。

 (a) 増加

  (i) 輸入

  (ii) 国内からの受入れ(他の物質収支区域からの受入れ、保障措置の対象とならない原子力活動からの受入れ又は保障措置の開始点での受入れ)

  (iii) 核的生成(原子炉における特殊核分裂性物質の生成)

  (iv) 免除の取消し(用法又は量を理由として保障措置を免除された核物質についての保障措置の再適用)

 (b) 減少

  (i) 輸出  

  (ii) 国内への払出し(他の物質収支区域への払出し又は保障措置の対象とならない活動への払出し)

  (iii) 核的損耗(核反応の結果として生ずる他の元素又は同位元素への変換による核物質の損耗)

  (iv) 測定済廃棄物(測定され又は測定に基づいて推定され、かつ、その後の原子力利用に適さないような態様で廃棄された核物質)

 (v) 保管廃棄物(処理又は操作上の事故の結果当分の間回収不可能となつたと認められ、かつ、貯蔵される核物質)

 (vi) 免除(用法又は量を理由とする核物質についての保障措置の免除)

 (vii) その他の損失(例えば事故損失(操作上の事故の結果生ずる回復不可能な不測の核物質の損失)又は盗難)

K 「主要測定点」とは、核物質がその移動又は在庫を量定するために測定することができるような状態に置かれる箇所をいう。したがつて、主要測定点には、物質収支区域における入口、出口(測定済廃棄物の出口を含む。)及び貯蔵箇所を含む。ただし、これらに限らない。

L 「一人年の査察」とは、第八十条の規定の適用上、三百人日の査察をいう。「一人日」とは、一人の査察員が一の施設に、合計八時間を超えないことを条件として随時近づくことができる一日をいう。

M 「物質収支区域」とは、機関の保障措置の目的のために物質収支を算定するため、次のことを行うことができる施設内又は施設外の区域をいう。

 (a) その区域の内へ又は外への核物質の移転ごとにその量を量定すること。

 (b) 必要に応じてその区域における核物質の実在庫を定められた手続きに従って量定すること。

####

N 「不明物質量」とは、帳簿在庫と実在庫との差をいう。

O 「核物質」とは、憲章第二十条に定義する原料物質及び特殊核分裂性物質をいう。ただし、この原料物質には、鉱石及び鉱石の残滓は含まれないものとする。理事会が、この協定が効力を生じた後、同条の規定に基づき、原料物質又は特殊核分裂性物質とされる物質を追加する決定を行う場合には、その決定は、日本国政府が同意した後においてのみ、この協定上効力を有する。

P 「実在庫」とは、一定の時点において物質収支区域内に存在する核物質の量を、バッチ単位で、定められた手続に従い測定又は計算により推定したものの合計をいう。

Q 「受払間差異」とは、バッチ単位の核物質の量について、払出し物質収支区域から通報された量と受入れ物質収支区域で測定された量との差をいう。

R 「ソース・データ」とは、測定若しくは校正の間に記録されるデータ又は経験則に基づいた関係を導き出すために用いられるデータであつて、核物質を同定し及びバッチ・データの基礎となるものをいう。ソース・データには、例えば、化合物の重量、元素の重量を決定するための変換係数、比重、元素濃度、同位体比、体積と圧力計の読みとの関係及び生成されるプルトニウムと出力との関係を含む。

S 「枢要な箇所」とは、設計情報の検討の間に選定される箇所であつて、通常の状態の下で、すべてのそのような箇所からの情報を総合したときに、保障措置の手段の適用のために必要かつ十分な情報が得られ及び検認されるものをいう。枢要な箇所には、物質収支計量に関連する主要な測定が行われる箇所並びに封じ込め及び監視の手段が適用される箇所を含む。

 千九百七十七年三月四日にウィーンで、英語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために
鹿取泰衛

 国際原子力機関のために
シグヴァルド・エクランド



議定書

第一条

 この議定書は、協定中の一部の規定を敷衍し、特に、協定に規定する保障措置の適用に当たつての協力が国内制度に基づく活動との不必要な重複を避けるような方法で実施されるための条件及び方法を規定する。

第二条

 機関は、協定の実施に当たり、国内制度の機能的独立及び技術的実効性の程度が他の国又は一群の国におけるものと同等の程度に達し、かつ、その程度が維持されることを条件として、保障措置に関し、機関がこのような国又は一群の国に与える待遇よりも不利でない待遇を日本国政府に与える。

第三条

 日本国政府は、補助取極に付される合意された具体的な質問表を基礎として、協定に基づき機関に提供される施設に関する情報及び施設外にある核物質に関する情報を収集する。

第四条

 日本国政府及び機関は、協定第四十六条(a)から(f)までに規定する設計情報の検討を共同して行う。協定第四十八条に規定する設計情報の検認は、機関が、日本国政府と協力して行う。

第五条

 日本国政府は、第三条に規定する情報を機関に提供する際に、日本国政府が用いることを計画している査察方法についての情報並びに施設及び施設外の物質収支区域に関する補助取極の附属書を作成するための十分な提案(通常査察活動に係る査察業務量の推定値を含む。)を伝達する。

第六条

 補助取極の附属書の作成は、日本国政府及び機関が共同して行う。

第七条

 日本国政府は、使用者から報告を徴収し、この報告に基づいて集中的に記帳を行い、並びに受領した情報の技術的及び計量的な管理及び分析を行う。日本国政府は、一箇月単位で、協定第六十三条に規定する期限までに在庫変動報告を機関に提出する。日本国政府は、同条に規定する期限までに、かつ、補助取極に規定する実在庫の確認の頻度に従い、物質収支報告及び実在庫の明細表を機関に送付する。

第八条

 報告の様式は、日本国政府及び機関が合意するところに従い補助取極に規定する。

第九条

 日本国政府及び機関の通常査察活動(協定第八十四条に規定する査察の場合を含む。)は、協定の適用上、次条から第十六条までの規定及び補助取極に従つて調整する。

第十条

 協定第七十九条及び第八十条の規定に従うことを条件として、個々の施設に対する機関の査察の実際の回数、程度、期間、時期及び態様を決定するに当たつては、この議定書に従い日本国政府により実施される査察活動を考慮する。

第十一条

 個々の施設についての協定に基づく査察業務量は、協定第八十一条の基準を用いて決定する。この基準は、補助取極に規定する推定査察業務量の計算の原則及び方法を使用することにより用いる。この原則及び方法は、協定第七条の規定に従い、保障措置の分野における新たな技術的発展及び得られた経験を考慮に入れるため、随時検討される。

第十二条

 前条の査察業務量は、適用されるべき実際の査察業務量の合意された推定値の形で表し、日本国政府及び機関が行う検認の方法及び査察の範囲とともに補助取極に規定する。当該施設の通常の使用条件及び次に定める条件の下では、この査察業務量を当該施設についての協定に基づく実際の最大査察業務量とする。

 (a) 協定第三十二条に規定する国内制度に関する情報が、補助取極に規定するところに従つて引き続き有効なこと。

 (b) 第三条の規定に従つて機関に提供される情報が、引き続き有効なこと。

 (c) 協定第六十条、第六十一条、第六十三条から第六十五条まで及び第六十七条から第六十九条までの規定に従つて行われる報告が、日本国政府により、補助取極に規定するところに従つて引き続き提出されること。

 (d) 第九条から第十六条までの規定に従つて行われる査察についての調整措置が、補助取極に規定するところに従つて引き続き適用されること。

 (e) 日本国政府が、この条の規定及び補助取極に規定するところに従い、当該施設に対しその査察業務を行い、かつ、その技術上の目的を達成すること。

第十三条

 (a) 査察活動は、前条の条件に従うことを条件として、かつ、協定第八十九条の規定に従い、機関の査察と国内制度に基づく査察とが同時に行われるように調整する。

 (b) (a)の規定に従うことを条件として、機関の査察員は、機関が協定に規定する通常査察の目的を達成することができるときはいつでも、日本国の査察員が行う査察活動を観察することにより協定第七十四条及び第七十五条の規定を実施する。ただし、次のことを条件とする。

  (i) 日本国の査察員が行う査察活動の観察以外の方法により機関の査察員が行う査察活動であつて、予見することができるものについて補助取極に規定が置かれること及びそのような活動の例示が補助取極に含められること。

  (ii) 機関の査察員が、査察中に、不可欠かつ緊急であると認めるに至つた場合には、日本国の査察員が行う査察活動の観察以外の方法による査察活動を行うことができること。ただし、他の方法によつては機関が通常査察の目的を達成することができず、かつ、このような事態を予見することができなかつたことを条件とする。

第十四条

 協定に従つて日本国政府が行う査察の全体的な日程及び計画は、日本国政府が機関と協力して作成する。

第十五条

 日本国政府は、機関が日本国政府の行う査察の一部に立ち会うことに関して統計的サンプリングの要件に基づいて決定を行うことを可能にするため、日本国政府が入手し得る情報に従い、査察の対象となる物件の数、型式及び内容を機関に事前に通報する。

第十六条

日本国政府は、機関の査察員が立ち会つた査察についての作業書類及び協定に従つて行われた日本国のその他のすべての査察活動についての査察報告を機関に送付する。

第十七条

 機関は、日本国の査察活動を観察することにより協定に規定する特定査察の目的を達成することができるときはいつでも、日本国の査察活動を観察することにより特定査察を行う。

第十八条

 (a) 協定及びこの議定書の適用について検討し及びその適用を容易にすること並びに保障措置の分野における新たな技術的発展及び得られた経験を活用することを目的として、日本国政府及び機関の代表者から成る合同委員会を設ける。

 (b) 合同委員会は、次の目的のため、定期に会合する。

  (i) 協定及びこの議定書の実施から生ずる問題の検討(査察業務量の合意された推定値の検討を含む。)

  (ii) 保障措置の方法及び技術の発展の検討

 (c) 合同委員会は、また、保障措置の分野における研究及び開発の成果の活用に関する日本国政府と機関との間の協力を検討し、及び促進するものとし、並びに研究及び開発の成果を補助取極に反映させることに関して勧告を行うものとする。

 千九百七十七年三月四日にウィ-ンで、英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために
鹿取泰衛


国際原子力機関のために
シグヴァルド・エクランド