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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 村山首相の「日米安保堅持」国会答弁

[場所] 東京
[年月日] 1994年7月20日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,1268−1269頁.『朝日新聞』1994年7月21日,朝刊.
[備考] 
[全文]

村山首相の国会答弁

 二十日の衆院本会議で村山富市首相が答弁した安全保障問題などに関する見解は次の通り。

●日米安保

 冷戦の終結後も国際社会が依然、不安定要因を内包している中で、わが国が引き続き安全を確保していくためには、日米安保条約が必要だ。日米安保体制は、国際社会における広範な日米協力関係の政治的基盤となっており、さらにアジア・太平洋地域の安定要因としての米国の存在を確保し、この地域の平和と繁栄を促進するために不可欠となっている。維持と言おうが堅持と言おうが、このような日米安保体制の意義と重要性についての認識は、私の政権でも基本的に変わることはなく、先のナポリ・サミットでの日米首脳会談では、私からこのような認識を踏まえて、日米安保体制についてのわが国の立場を改めて明確に表明した。

 私の政権の下では、今後とも日米安保条約、関連取り決め上の義務を履行するとともに、日米安保体制の円滑かつ効果的運用を確保する。在日米軍駐留経費特別協定の有効期間の終了後については、日米安保体制の円滑かつ効果的運用を図る必要があるとの観点から自主的判断に基き、適切に対応したい。その具体的内容は米側との協議を待って判断したい。

●自衛隊

 私としては専守防衛に徹し、自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は、憲法の認めるものであると認識する。同時に、日本国憲法の精神と理念の実現できる世界を目指し、国際情勢の変化を踏まえながら、国際協調体制の確立と軍縮の推進を図りつつ、国際社会で名誉ある地位を占めることができるよう全力を傾ける。

 本来、国家にとって最も基本的な問題である防衛問題で、主要政党間で大きな意見の相違があったのは好ましいことではない。戦後、社会党は平和憲法の精神を具体化するための粘り強い努力を続け、国民の間に、文民統制、専守防衛、徴兵制の不採用、自衛隊の海外派兵の禁止、集団自衛権の不行使、非核三原則の順守、核・化学・生物兵器など大量破壊兵器の不保持、武器輸出禁止などの原則を確立しながら、必要最小限の自衛力の存在を容認するという、穏健でバランスのとれた国民意識を形成したものであろうと思う。

 国際的には冷戦構造が崩壊し、国内的にも大きな政治変革が起きている今日こそ、こうした歴史と現実認識のもと、世界第二位の経済力を持った平和憲法国家日本が、将来どのようにして国際平和の維持に貢献し、併せてどのように自国の安全を図るのかという点で、より良い具体的な政策を提示し合う、未来志向の発想が最も求められている。社会党においてもこうした認識を踏まえて、新しい時代の変化に対応する合意が図られることを期待する。

●日の丸・君が代

 長年の慣行により、日の丸が国旗、君が代が国歌であるという認識は国民の間に定着しており、私自身も尊重したい。しかし、国旗の掲揚、国歌の斉唱は本来、強制すべきものではない。