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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ソマリア沖・アデン湾における自衛隊法第82条に基づく海上における警備行動等及び「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」に基づく海賊対処行動等と武器輸出三原則等との関係についての内閣官房長官談話(河村建夫内閣官房長官)

[場所] 
[年月日] 2009年3月13日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

1. 日本関係船舶の主要航路の一つであるソマリア沖・アデン湾における海賊事案の急激な増加は、船舶の航行の安全に対する直接の脅威であるのみならず、海上輸送に従事する日本国民の生命及び財産、並びに我が国の経済社会及び国民生活にとって大きな障害となっている。このように、ソマリア沖・アデン湾における海賊事案への対処は我が国として早急に対応すべき課題であることから、本日、政府は、「海上における警備行動に係る内閣総理大臣の承認について」を閣議決定し、防衛大臣が自衛隊法第82条に基づく海上における警備行動を発令することにより、かかる海賊事案に対処し、海上における日本国民の生命及び財産の保護に取り組むこととした。なお、同行動による海賊事案への対処に当たって我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為に対する司法警察活動を行う必要がある場合については、自衛隊が行う同行動の円滑な遂行を考慮しつつ、同行動に従事する自衛艦に同乗するなどした海上保安官が海上保安庁法第5条第14号に基づき行うこととしている。

2. また、政府は、海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い我が国の経済社会及び国民生活にとって、船舶の航行の安全の確保が極めて重要であること、並びに海洋法に関する国際連合条約においてすべての国が最大限に可能な範囲で海賊行為の抑止に協力するとされていることにかんがみ、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」を閣議決定し、海賊行為の処罰について規定するとともに、我が国が海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な事項を定め、もって海上における公共の安全と秩序の維持を図ることとした。

3. 本日承認された自衛隊法第82条に基づく自衛隊による海上における警備行動及びこれと一体となって実施される海上保安庁法第5条第14号に基づく海上保安庁による司法警察活動並びに「海賊行為への処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」第7条第1項に基づく自衛隊による海賊対処行動及び同法案第5条第1項に規定する海上保安庁による海賊行為への対処については、自衛官、海上保安官等が携行する武器等や使用する艦船等に武器輸出三原則等における武器等に該当するものが含まれることから、これらの活動に伴う外国の領域への寄港等が武器輸出三原則等における武器等の輸出を伴うことが想定される。そこで、政府としては、その限りにおいて、武器輸出三原則等によらないこととする。もとより、この場合においても、

(1) 本日承認された自衛隊法第82条に基づく自衛隊による海上における警備行動及びこれと一体となって実施される海上保安庁法第5条第14号に基づく海上保安庁による司法警察活動は、自衛隊法及び海上保安庁法に基づき海上における日本国民の生命及び財産の保護のために行われる海賊事案への対処に限定されるものであること

(2) 「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」第7条第1項に基づく自衛隊による海賊対処行動及び同法案第5条第1項に規定する海上保安庁による海賊行為への対処は、海賊行為に適切かつ効果的に対処し、海上における公共の安全と秩序の維持を図るため、同法案の範囲に限って行われるものであること

(3) 自衛官、海上保安官等が使用するために輸出する武器等については、自衛隊、海上保安庁等により厳格に管理され、任務終了後我が国に持ち帰ることとしていること及び当該武器等の使用は、自衛隊法、海上保安庁法及び「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」に定める要件を充足する場合に限定されること

により、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよってたつ平和国家としての基本理念は確保されることとなる。

 なお、政府としては、今後とも武器輸出三原則等に関しては、国際紛争等を助長することを回避するというその基本理念を維持していく考えである。