[文書名] 「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話
政府は、「平成二十三年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成二十二年十二月十七日閣議決定。以下「新大綱」という。)を踏まえ、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策について慎重に検討を重ねた結果、次の結論に達し、本日の安全保障会議における審議を経て閣議において報告を行った。今後、防衛装備品等の海外への移転については、以下の基準によることとする。
一. 政府は、これまで武器等の輸出については武器輸出三原則等によって慎重に対処してきたところである。
二. 他方、これまでも、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念を堅持しつつ、我が国が行う国際平和協力、国際緊急援助、人道支援、国際テロ・海賊問題への対処といった平和への貢献や国際的な協力(以下「平和貢献・国際協力」という。)、弾道ミサイル防衛(BMD)に関する日米共同開発等の案件については、内閣官房長官談話の発出等により、武器輸出三原則等によらないこととする措置(以下「例外化措置」という。)を個別に講じてきた。
三. 新大綱においては、近年の防衛装備品をめぐる国際的な環境変化について、「平和への貢献や国際的な協力において、自衛隊が携行する重機等の装備品の活用や被災国等への装備品の供与を通じて、より効果的な協力ができる機会が増加している。また、国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実現しつつ、コストの高騰に対応することが先進諸国で主流になっている。」としており、政府は、こうした認識の下、平和国家としての基本理念を堅持しつつこのような大きな変化に対応するための方策について検討を行ってきた。
四. 今日の国際社会においては、国際平和協力、国際緊急援助、人道支援、国際テロ・海賊問題への対処等を効果的に行うことが各国に求められており、我が国は、平和国家として、国際紛争等を助長することを回避するとの基本理念を堅持しつつ、こうした平和貢献・国際協力への取組に、より積極的・効果的に取り組んでいく必要がある。同時に、国際社会の平和と安定を損なうおそれがある防衛装備品等の不正な流通及び拡散を防止するため、途上国等の輸出管理能力の強化に向けた支援などにも積極的に取り組んでいくべきである。また、我が国は、これまで米国との間で安全保障に資する防衛装備品等の共同研究・開発を行ってきたところであるが、国際社会が大きく変化しつつある中で、我が国の平和と安全や国際的な安全保障を確保していくためには、米国との連携を一層強化するとともに、我が国と安全保障面で協力関係にある米国以外の諸国とも連携していく必要があり、これらの国との間で防衛装備品等の国際共同開発・生産を進めていくことで、最新の防衛技術の獲得等を通じ、我が国防衛産業の生産・技術基盤を維持・高度化するとともに、コストの削減を図っていくべきである。
五. こうした観点から、政府としては、防衛装備品等の海外への移転については、平和貢献・国際協力に伴う案件及び我が国の安全保障に資する防衛装備品等の国際共同開発・生産に関する案件は、従来個別に行ってきた例外化措置における考え方を踏まえ、包括的に例外化措置を講じることとし、今後は、次の基準により処理するものとする。
(1)平和貢献・国際協力に伴う案件については、防衛装備品等の海外への移転を可能とすることとし、その際、相手国政府への防衛装備品等の供与は、我が国政府と相手国政府との間で取り決める枠組みにおいて、我が国政府による事前同意なく、<1>当該防衛装備品等が当該枠組みで定められた事業の実施以外の目的に使用されること(以下「目的外使用」という。)及び<2>当該防衛装備品等が第三国に移転されること(以下「第三国移転」という。)がないことが担保されるなど厳格な管理が行われることを前提として行うこととする。
(2)我が国の安全保障に資する防衛装備品等の国際共同開発・生産に関する案件については、我が国との間で安全保障面での協力関係がありその国との共同開発・生産が我が国の安全保障に資する場合に実施することとし、当該案件への参加国による目的外使用や第三国移転について我が国政府による事前同意を義務付けるなど厳格な管理が行われることを前提として、防衛装備品等の海外への移転を可能とすることとする。なお、我が国政府による事前同意は、当該移転が我が国の安全保障に資する場合や国際の平和及び安定に資する場合又は国際共同開発・生産における我が国の貢献が相対的に小さい場合であって、かつ、当該第三国が更なる移転を防ぐための十分な制度を有している場合でない限り、付与しないこととする。
(3)もとより、武器輸出三原則等については、国際紛争等を助長することを回避するという平和国家としての基本理念に基づくものであり、上記以外の輸出については、引き続きこれに基づき慎重に対処する。
{文中の<1>はマル1、<2>はマル2}