[文書名] 防衛装備移転三原則の運用指針
平成26年4月1日
国家安全保障会議決定
防衛装備移転三原則(平成26年4月1日閣議決定。以下「三原則」という。)に基づき、三原則の運用指針(以下「運用指針」という。)を次のとおり定める。
(注)用語の定義は三原則によるほか、6のとおりとする。
1 防衛装備の海外移転を認め得る案件
防衛装備の海外移転を認め得る案件は、次に掲げるものとする。
(1) 平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する海外移転として次に掲げるもの(平和
貢献・国際協力の観点から積極的な意義がある場合に限る。)
ア 移転先が外国政府である場合
イ 移転先が国際連合若しくはその関連機関又は国連決議に基づいて活動を行う機関である場合
(2) 我が国の安全保障に資する海外移転として次に掲げるもの(我が国の安全保障の観点から積極的な意義がある場合に限る。)
ア 米国を始め我が国との間で安全保障面での協力関係がある諸国との国際共同開発・生産に関する海外移転
イ 米国を始め我が国との間で安全保障面での協力関係がある諸国との安全保障・防衛協力の強化に資する海外移転であって、次に掲げるもの
(ア) 物品役務相互提供協定(ACSA)に基づく物品又は役務の提供に含まれる防衛装備の海外移転
(イ) 米国との相互技術交流の一環としての武器技術の提供
(ウ) 米国からのライセンス生産品に係る部品や役務の提供、米軍への修理等の役務提供
(エ) 我が国との間で安全保障面での協力関係がある国に対する救難、輸送、警戒、監視及び掃海に係る協力に関する防衛装備の海外移転
ウ 自衛隊を含む政府機関(以下「自衛隊等」という。)の活動(自衛隊等の活動に関する外国政府又は民間団体等の活動を含む。以下同じ。)又は邦人の安全確保のために必要な海外移転であって、次に掲げるもの
(ア) 自衛隊等の活動に係る、装備品の一時的な輸出、購入した装備品の返送及び技術情報の提供(要修理品を良品と交換する場合を含む。)
(イ) 公人警護又は公人の自己保存のための装備品の輸出
(ウ) 危険地域で活動する邦人の自己保存のための装備品の輸出
(3) 誤送品の返送、返送を前提とする見本品の輸出、海外政府機関の警察官により持ち込まれた装備品の再輸出等の我が国の安全保障上の観点から影響が極めて小さいと判断される場合の海外移転
2 海外移転の厳格審査の視点
個別案件の輸出許可に当たっては、1に掲げる防衛装備の海外移転を認め得る案件に該当するものについて、
・仕向先及び最終需要者の適切性
・当該防衛装備の海外移転が我が国の安全保障上及ぼす懸念の程度
の2つの視点を複合的に考慮して、移転の可否を厳格に審査するものとする。
具体的には、仕向先の適切性については、仕向国・地域が国際的な平和及び安全並びに我が国の安全保障にどのような影響を与えているか等を踏まえて検討し、最終需要者の適切性については、最終需要者による防衛装備の使用状況及び適正管理の確実性等を考慮して検討する。
また、安全保障上の懸念の程度については、移転される防衛装備の性質、技術的機微性、用途(目的)、数量、形態(完成品又は部品か、貨物又は技術かを含む。)並びに目的外使用及び第三国移転の可能性等を考慮して検討する。
なお、最終的な移転を認めるか否かについては、国際輸出管理レジームのガイドラインも踏まえ、移転時点において利用可能な情報に基づいて、上述の要素を含む視点から総合的に判断することとする。
3 適正管理の確保
防衛装備の海外移転に当たっては、海外移転後の適正な管理を確保するため、原則として目的外使用及び第三国移転について我が国の事前同意を相手国政府に義務付けることとする。ただし、次に掲げる場合には、仕向先の管理体制の確認をもって適正な管理を確保することも可能とする。
(1) 平和貢献・国際協力の積極的推進のため適切と判断される場合として、次のいずれかに該当する場合
ア 緊急性・人道性が高い場合
イ 移転先が国際連合若しくはその関連機関又は国連決議に基づいて活動を行う機関である場合
ウ 国際入札の参加に必要となる技術情報又は試験品の提供を行う場合
エ 金額が少額かつ数が少量で、安全保障上の懸念が小さいと考えられる場合
(2) 部品等を融通し合う国際的なシステムに参加する場合
(3) 部品等をライセンス元に納入する場合
(4) 我が国から移転する部品及び技術の、相手国への貢献が相当程度小さいと判断できる場合
(5) 自衛隊等の活動又は邦人の安全確保に必要な海外移転である場合
(6) 誤送品の返送、返送を前提とする見本品の輸出、貨物の仮陸揚げ等の我が国の安全保障上の観点から影響が極めて小さいと判断される場合
仕向先の管理体制の確認に当たっては、合理的である限りにおいて、政府又は移転する防衛装備の管理に責任を有する者等の誓約書等の文書による確認を実施することとする。そのほか、移転先の防衛装備の管理の実態、管理する組織の信頼性、移転先の国又は地域の輸出管理制度やその運用実態等についても、移転時点において利用可能な情報に基づいて確認するものとする。
なお、海外移転後の防衛装備が適切に管理されていないことが判明した場合、当該防衛装備を移転した者等に対する外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号。以下「外為法」という。)に基づく罰則の適用を含め、厳正に対処することとする。
4 審査に当たっての手続
(1) 国家安全保障会議での審議
防衛装備の海外移転に関し、次の場合は、国家安全保障会議で審議するものとする。イ又はウに該当する防衛装備の海外移転について外為法に基づく経済産業大臣の許可の可否を判断するに当たっては、当該審議を踏まえるものとする。
ア 基本的な方針について検討するとき。
イ 移転を認める条件の適用について特に慎重な検討を要するとき。
ウ 仕向先等の適切性、安全保障上の懸念の程度等について特に慎重な検討を要するとき。
エ 防衛装備の海外移転の状況について報告を行うとき。
(2) 国家安全保障会議幹事会での審議
防衛装備の海外移転に関し、次の場合には、国家安全保障会議幹事会で審議するものとする。イに該当する防衛装備の海外移転について外為法に基づく経済産業大臣の許可の可否を判断するに当たっては、当該審議を踏まえるものとする。
ア 基本的な方針について検討するとき。
イ 同様の類型について、過去に政府として海外移転を認め得るとの判断を行った実績がないとき。
ウ 防衛装備の海外移転の状況について報告を行うとき。
(3) 関係省庁間での連携
防衛装備の海外移転の可否の判断においては、総合的な判断が必要であることを踏まえ、防衛装備の海外移転案件に係る調整、適正管理の在り方において、関係省庁が緊密に連携して対応することとし、各関係省庁の連絡窓口は、次のとおりとする。ただし、個別案件ごとの連絡窓口は必要に応じて別の部局とすることができるものとする。
ア 内閣官房国家安全保障局
イ 外務省総合外交政策局安全保障政策課
ウ 経済産業省貿易経済協力局貿易管理部安全保障貿易管理課
エ 防衛省経理装備局装備政策課
5 定期的な報告及び情報の公開
(1) 定期的な報告
経済産業大臣は、防衛装備の海外移転の許可の状況につき、年次報告書を作成し、国家安全保障会議において報告の上、公表するものとする。
(2) 情報の公開
4(1)の規により国家安全保障会議で審議された案件については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)を踏まえ、政府として情報の公開を図ることとする。情報の公開に当たっては、従来個別に例外化措置を講じてきた場合に比べて透明性に欠けることのないよう留意する。
6 その他
(1) 定義
「国際共同開発・生産」とは、我が国の政府又は企業が参加する国際共同開発(国際共同研究を含む。以下同じ。)又は国際共同生産であって、以下のものを含む。
ア 我が国政府と外国政府との間で行う国際共同開発
イ 外国政府による防衛装備の開発への我が国企業の参画
ウ 外国からのライセンス生産であって、我が国企業が外国企業と共同して行うもの
エ 我が国の技術及び外国からの技術を用いて我が国企業が外国企業と共同して行う開発又は生産
オ 部品等を融通し合う国際的なシステムへの参加
カ 国際共同開発又は国際共同生産の実現可能性の調査のための技術情報又は試験品の提供
(2) これまでの武器輸出三原則等との整理
三原則は、これまでの武器輸出三原則等を整理しつつ新しく定められた原則であることから、今後の防衛装備の海外移転に当たっては三原則を踏まえて外為法に基づく審査を行うものとする。三原則の決定前に、武器輸出三原則等の下で講じられてきた例外化措置については、引き続き三原則の下で海外移転を認め得るものと整理して審査を行うこととする。
(3) 施行期日
この運用指針は、平成26年4月1日から施行する。
(4) 改正
三原則は外為法の運用基準であることを踏まえ、この運用指針の改正は、経済産業省が内閣官房、外務省及び防衛省と協議して案を作成し、国家安全保障会議で決定することにより行う。