[文書名] 離島等に対する武装集団による不法上陸等事案に対する政府の対処について
政府は、離島又はその周辺海域(以下「離島等」という。)において、武装した集団又は武装している蓋然性が極めて高い集団が当該離島に不法に上陸するおそれが高い事案又は上陸する事案(以下「離島等に対する武装集団による不法上陸等事案」という。)が発生した場合、我が国の主権を守り、国民の安全を確保するとの観点から、関係機関がより緊密に協力し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するため、下記により対応することとする。
記
1.事態の的確な把握
離島等に対する武装集団による不法上陸等事案が発生した場合、事態を把握した別紙1に掲げる関係省庁(以下「関係省庁」という。)は、内閣情報調査室を通じて内閣総理大臣、内閣官房長官、内閣官房副長官、内閣危機管理監及び国家安全保障局長(以下「内閣総理大臣等」という。)への報告連絡を迅速に行うとともに、相互に協力して更なる事態の把握に努める。
なお、上記報告ルートに加え、関係省庁による内閣総理大臣等への報告がそれぞれのルートで行われることを妨げるものではない。
2.対策本部の設置等
政府は、離島等に対する武装集団による不法上陸等事案が発生し、政府としての対処を総合的かつ強力に推進する必要がある場合には、内閣総理大臣の判断により、内閣に、内閣総理大臣を本部長とし、内閣官房長官その他必要により本部員のうち国務大臣である者の中から本部長が指定する者を副本部長とする対策本部を速やかに設置する。対策本部の本部員は別紙2のとおりとし、その運用については、「重大テロ等発生時の政府の初動措置について」(平成10年4月10日閣議決定)による対策本部に準ずるものとする。
3.事態緊迫時の対処
事態が緊迫し、海上警備行動(自衛隊法第82条に規定する海上における警備行動をいう。以下同じ。)命令又は治安出動(自衛隊法第78 条に規定する命令による治安出動をいう。以下同じ。)命令の発出が予測される場合には、対策本部の下、内閣官房、外務省、海上保安庁、警察庁及び防衛省を中心に、あらかじめ、海上警備行動命令又は治安出動命令の発出に係る、対処方針の検討、自衛隊と海上保安庁、警察等との間の役割分担及び連携の確認、国際法との整合性の確認、必要な情報の共有等について、相互に最大限の協力を行い、海上警備行動命令又は治安出動命令が発出された際には速やかに強力な対処を行うことができる態勢を整える。
4.迅速な閣議手続等
(1)海上警備行動
海上保安庁のみでは対応できないと認められ、海上警備行動命令の発出に係る内閣総理大臣の承認等のために閣議を開催する必要がある場合において、特に緊急な判断を必要とし、かつ、国務大臣全員が参集しての速やかな臨時閣議の開催が困難であるときは、内閣総理大臣の主宰により、電話等により各国務大臣の了解を得て閣議決定を行う。この場合、連絡を取ることができなかった国務大臣に対しては、事後速やかに連絡を行う。
(2)治安出動等
警察機関による迅速な対応が困難である場合であって、かつ、事態が緊迫し、治安出動命令の発出が予測される場合における防衛大臣が発する治安出動待機命令及び武器を携行する自衛隊の部隊が行う情報収集命令に対する内閣総理大臣による承認、一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる事態が生じた場合における内閣総理大臣による治安出動命令の発出等のために閣議を開催する必要がある場合において、特に緊急な判断を必要とし、かつ、国務大臣全員が参集しての速やかな臨時閣議の開催が困難であるときは、内閣総理大臣の主宰により、電話等により各国務大臣の了解を得て閣議決定を行う。この場合、連絡を取ることができなかった国務大臣に対しては、事後速やかに連絡を行う。
(3)上記(1)又は(2)の命令発出に際して国家安全保障会議における審議等を行う場合には、電話等によりこれを行うことができる。
5.事案発生前からの緊密な連携等
上記のほか、内閣官房及び関係省庁は、事案が発生する前においても連携を密にし、離島等に対する武装集団による不法上陸等事案に発展する可能性がある事案に関する情報を収集、交換し、事案への対応について認識を共有するとともに、訓練等を通じた対処能力の向上等を図り、事案が発生した場合には迅速に対応することができる態勢を整備することとする。
別紙1
<関係省庁>
警察庁
法務省
公安調査庁
外務省
海上保安庁
防衛省
その他本部長が必要と認める省庁
別紙2
<対策本部の本部員>
関係省庁の長たる国務大臣(国家公安委員会委員長を含む。)
内閣官房副長官
内閣危機管理監
国家安全保障局長
警察庁長官
海上保安庁長官
その他本部長が必要と認める者