データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 海洋基本計画(第3期)

[場所] 
[年月日] 2018年5月15日
[出典] 内閣府
[備考] 平成30年5月15日 閣議決定
[全文] 

目次

はじめに・・・1

1. 海洋基本法施行後10年の総括・・・1

2. 最近の情勢を踏まえた現状認識・・・2

  (1)最近の情勢・・・2

  (2)現在の我が国の取組状況・・・4

  (3)海洋に関する施策を推進するに当たっての政府の体制・・・7

  (4)第3期海洋基本計画の構成・・・7

第1部 海洋政策のあり方・・・8

1. 今後の10年を見据えた海洋政策の理念及び方向性・・・8

 (1)理念・・・8

 (2)方向性・・・12

2. 海洋に関する施策についての基本的な方針・・・15

 2-1. 「総合的な海洋の安全保障」の基本的な方針・・・15

  (1)海洋の安全保障・・・16

  (2)海洋の安全保障の強化に貢献する基層・・・17

 2-2. 海洋の主要施策の基本的な方針・・・19

  (1)海洋の産業利用の促進・・・19

  (2)海洋環境の維持・保全・・・22

  (3)科学的知見の充実・・・23

  (4)北極政策の推進・・・24

  (5)国際連携・国際協力・・・25

  (6)海洋人材の育成と国民の理解の増進・・・26

第2部 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策・・・28

1. 海洋の安全保障・・・28

  (1)我が国の領海等における国益の確保・・・28

  (2)我が国の重要なシーレーンの安定的利用の確保・・・33

  (3)国際的な海洋秩序の強化・・・35

2. 海洋の産業利用の促進・・・36

  (1)海洋資源の開発及び利用の推進・・・36

  (2)海洋産業の振興及び国際競争力の強化・・・40

  (3)海上輸送の確保44

  (4)水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化・・・46

3. 海洋環境の維持・保全・・・49

  (1)海洋環境の保全等・・・49

  (2)沿岸域の総合的管理・・・54

4. 海洋状況把握(MDA)の能力強化・・・56

  (1)情報収集体制・・・56

  (2)情報の集約・共有体制・・・57

  (3)国際連携・国際協力・・・58

5. 海洋調査及び海洋科学技術に関する研究開発の推進等・・・59

  (1)海洋調査の推進・・・59

  (2)海洋科学技術に関する研究開発の推進等・・・61

6. 離島の保全等及び排他的経済水域等の開発等の推進・・・65

  (1)離島の保全等・・・65

  (2)排他的経済水域等の開発等の推進・・・67

7. 北極政策の推進・・・69

  (1)研究開発・・・69

  (2)国際協力・・・70

  (3)持続的な利用・・・71

8. 国際的な連携の確保及び国際協力の推進・・・72

  (1)海洋の秩序形成・発展・・・72

  (2)海洋に関する国際的連携・・・73

  (3)海洋に関する国際協力・・・74

9. 海洋人材の育成と国民の理解の増進・・・76

  (1)海洋立国を支える専門人材の育成と確保・・・76

  (2)子どもや若者に対する海洋に関する教育の推進・・・78

  (3)海洋に関する国民の理解の増進・・・79

第3部 海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項・・・81

1. 計画を着実に推進するための方策・・・81

  (1)施策の進捗状況の点検及び見直しによる着実な実施・・・81

  (2)参与会議の検討体制の充実・・・82

  (3)事務局機能の充実・・・82

2. 関係者の責務及び相互の連携・・・83

3. 施策に関する情報の積極的な公表・・・83

おわりに・・・85




はじめに

1.海洋基本法施行後10年の総括

 四方を海に囲まれ、その面積が国土面積の約12倍に相当する世界有数の広大な管轄海域を有する我が国には、国土の保全と国民の安全を確保すべく海を守っていくこと、経済社会の存立・成長の基盤として海を活かしていくこと、貴重な人類の存続基盤として海を子孫に継承していくこと等が強く求められている。また、海洋に関する施策には、幅広い分野に及ぶ多種多様な個別の施策が含まれる一方で、海洋という共通の「場」に関わることから、個別の施策を相互に連携・調整しながら政府全体として総合的に調整をしながら進めていくことが必要となる施策も多い。このため、平成19年7月に新たな海洋立国日本の実現を目指して、海洋に関する諸施策を総合的かつ計画的に推進することを目的として「海洋基本法」(平成19年法律第33号)が制定された。

 これを受け、同法に基づき、内閣総理大臣を本部長とする総合海洋政策本部を設置し、同本部の事務局機能を担うため、内閣官房に総合海洋政策本部事務局(現内閣府総合海洋政策推進事務局)を設置した。併せて、内閣総理大臣が任命する有識者からなる参与会議を置いた。以降、平成20年3月に第1期海洋基本計画、平成25年4月に第2期海洋基本計画を閣議決定するとともに、海洋基本計画の個別施策の進捗状況を、毎年公表している。

 第1期海洋基本計画の下では、大陸棚限界委員会へ我が国の大陸棚の延長申請を提出(平成20年11月)したほか、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」(平成21年法律第55号。以下「海賊対処法」という。)、「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律」(平成22年法律第41号。以下「低潮線保全法」という。)等の海洋関係法令が制定された。また、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の策定(平成21年3月)及び同計画に基づく海底熱水鉱床開発に向けた海底での掘削試験(平成24年9月)やメタンハイドレート開発の商業化に向けた海洋産出試験の実施(平成25年3月)、「海洋情報クリアリングハウス」の運用開始(平成22年3月)、「我が国における海洋保護区の設定のあり方」の策定(平成23年5月)など、第1期海洋基本計画に基づく施策を着実に推進してきた。

 また、第2期海洋基本計画の下では、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の改定(平成25年12月)及び同計画に基づくメタンハイドレート開発の商業化に向けた海洋産出試験の実施(平成29年4~6月)や海底熱水鉱床開発に向けた採鉱・揚鉱パイロット試験の実施(平成29年8~9月)、国境離島の名称付与(平成26年8月)、無主の国境離島の国有財産化(国有財産台帳への登載)(平成29年3月)、「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域の地域社会の維持に関する特別措置法」(平成28年法律第33号。以下「有人国境離島法」という。)に基づく地域社会維持に関する施策を推進するための交付金による措置の実施(平成29年4月~)、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」の閣議決定(平成30年3月)等の施策を実施したほか、「大陸棚の延長に向けた今後の取組方針」(平成26年7月)や「海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針」(平成27年6月)、「我が国の北極政策」(平成27年10月)、「我が国の海洋状況把握の能力強化に向けた取組」(平成28年7月)など、関係府省にまたがる横断的な施策について総合海洋政策本部決定を行った。

 さらに、これらの施策の実施段階においても実施状況等の評価に基づき効果的に施策を推進していくことが重要であることから、第2期海洋基本計画の下では、総合海洋政策本部参与会議の検討体制の充実を図り、参与会議が海洋基本計画に掲げる諸施策の実施状況を定期的にフォローアップし、その実施状況を評価することやテーマごとにプロジェクトチームを設置し集中的に評価・検討できる体制を整えることなど総合海洋政策本部の見直しを行った。これに伴い、海洋産業を始め各分野でプロジェクトチームによる具体的な施策の検討等を行った。

 第2期海洋基本計画に掲げられた施策はおおむね実施され、施策を計画的に実施するための工程表の作成や評価も行っている。また、関係府省にまたがる横断的な施策について総合海洋政策本部による検討や決定等を行うなど、総合海洋政策本部の下で各府省にまたがる施策を束ねる仕組みは定着、拡大している。

 一方で、進捗が十分でない施策も一部にあるため、現在行われている工程表の作成という手法や計画に掲げられた施策の実施状況の評価を施策の着実な進展につなげる手法を導入・強化していく必要がある。さらに、総合海洋政策推進事務局において関係府省の関連施策を取りまとめた「海洋の状況及び海洋に関して講じた施策」を毎年発行しているほか、青少年向けのパンフレットの発行等に取り組んでいるが、海洋政策を国民に広く知ってもらうための発信力には、依然として改善の余地がある。


2.最近の情勢を踏まえた現状認識

(1)最近の情勢

 近年の海洋分野全体に共通する情勢変化としては、人口減少・少子高齢化、グローバル化の進展そしてIT*1*分野等における技術革新の加速化が挙げられる。このほか、分野ごとの情勢変化のうち主要なものは、以下のとおりである。

ア 海洋をめぐる安全保障上の情勢変化

 我が国の領海や排他的経済水域を含め我が国周辺海域を取り巻く情勢は一層厳しさを増し、我が国の海洋権益はこれまでになく深刻な脅威・リスクにさらされている状況にある。例えば、外国公船による領海侵入、外国軍艦による領海内の航行等の活動の活発化及び活動範囲の拡大、外国漁船等の違法操業及び漂着・漂流、外国調査船による我が国の同意を得ていない排他的経済水域内での海洋調査活動、我が国を飛び越える弾道ミサイル発射や我が国の排他的経済水域への弾道ミサイル発射を始めとする北朝鮮の挑発行動、大量破壊兵器・弾道ミサイル関連物資の輸送活動等が挙げられる。

 また、我が国にとって重要なシーレーンは、我が国から中東、欧州、豪州、米大陸に至るものであるが、近年、当該シーレーンの安定的な利用に対する脅威・リスクが生じている。例えば、海洋における一方的な現状変更の試みやその既成事実化の試み、社会環境の変化等に伴う海賊及び武装強盗、テロ組織その他の国際的犯罪組織による不法行為、地域紛争等に起因する我が国関係船舶等の円滑かつ安全な運航への影響といった例が挙げられる。

 加えて、国際場裡では、国際法上の根拠が必ずしも明らかではない、海洋権益等に関する主張が展開されるなど、国際的な海洋秩序を動揺させかねない動きも見られる。

 こうした状況は、中期的に見ても改善される見通しは低く、むしろ現状を放置すれば益々悪化していく可能性が高いと考えられる。

 海洋に由来する自然災害については、将来さらに甚大化が懸念される台風に伴う高潮、高波等による災害や、南海トラフ地震等の広域な地震や津波による災害も海洋における大きなリスクであり、これらに対する備えも必要である。また、地震・火山活動等が活発な地理的位置、自然災害による人命・財産の喪失、大規模海難等への対応も重視すべきである。

イ 海洋の産業利用を取り巻く情勢変化

 近年、新たな可能性を有する海洋資源開発や海洋エネルギー開発への期待が高まり、欧州等では海洋を活用した再生可能エネルギーの導入拡大の動きが見られる。また、我が国の海洋産業をめぐっては、油価の低迷、船腹量の過剰傾向の持続など厳しい事業環境にある。さらに、世界的な水産物の需要が高まる中で、水産資源の減少が懸念されている。

ウ 海洋環境の維持・保全を取り巻く情勢変化

 気候変動や海洋酸性化、海洋生物多様性の保全とその持続可能な利用、マイクロプラスチック*2*を含む海洋ごみへの対応等様々な課題が顕在化し、国内外における海洋環境の保全に対する関心は、これまでになく高まっている。そして、これらの地球規模課題等に対して国際連合の場を始めとする国際枠組づくりが進められている。

エ 海洋人材の育成と国民の理解増進を取り巻く情勢変化

 海洋人材の確保・育成を取り巻く環境として、人口減少・少子高齢化やグローバル化等が大きな影響を与えている。また、昨今国民が海水浴、海洋レジャーを含め、海を訪れることが減少するなど、いわゆる「国民の海離れ」という傾向が見られる。

オ 科学的知見の充実、北極政策の推進及び国際連携・国際協力を取り巻く情勢変化

 科学的知見の充実については、平成28年のG7茨城・つくば科学技術大臣会合では「海洋の未来」が主要議題とされ、科学的知見に基づく政策の確立に向けて議論が行われたほか、平成28年のG7伊勢志摩サミットにおいて科学的知見に基づく海洋資源の管理等のための科学的取組が支持された。また、2030年までの国際社会全体の開発目標である持続可能な開発目標(SDGs*3*)において、「海洋・海洋資源の保全及び持続可能な利用」に焦点を当てた持続可能な開発目標14(SDG14)が設定され、その達成に向けて、海洋観測に基づく科学的知見の充実が必要であるとの国際的な認識が高まっている。

 北極域については、近年の急激な海氷の減少に伴い、北極環境の急速な変化という地球規模課題への対応、その一方で、北極海航路の利活用や資源開発等の可能性に対する世界的な注目を集めている。

 国際連携・国際協力については、幅広い海洋政策に関する課題についての大規模国際会議が定期的に開催され、平成29年の第72回国連総会により「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」(2021~2030)が宣言されてその重要性の認識が高まっているのは好ましい動きである一方、上記アの国際的な海洋秩序を動揺させかねない動きも見られる。

(2)現在の我が国の取組状況

 現在行われている我が国における主要な取組は、以下のとおりである。

ア 海洋の安全保障

 我が国は、「国家安全保障戦略」(平成25年12月国家安全保障会議決定・閣議決定)に基づき、海洋国家として、各国と緊密に連携しつつ、力ではなく、航行・飛行の自由や安全の確保、国際法に則した紛争の平和的解決を含む「法の支配」といった基本ルールに基づく秩序に支えられた「開かれ安定した海洋」の維持・発展に向け、主導的な役割を発揮してきた。具体的には、シーレーンにおける様々な脅威に対する海賊対処等の必要な措置をとり、海上交通の安全を確保するとともに、各国との海洋安全保障協力を推進する等の海洋安全保障の取組を進めてきた。

 防衛省・自衛隊では、益々厳しくなる我が国周辺海空域の安全保障環境に対応して、防衛体制の強化を図っている。また、海上保安庁では、直面する多岐にわたる課題に適切に対応するための海上保安体制の強化を進めている。加えて、平和安全法制を整備し、各種事態に際し切れ目なく対応する取組を行っている。

 また、我が国は、同盟国である米国や、友好国、関係国と緊密に連携し、脅威の出現の未然防止を図るとともに、日米の抑止力・対処力の強化に努めている。

 我が国の重要なシーレーンでは、ソマリア沖・アデン湾における海賊対策や、シーレーン沿岸国に対する能力構築支援等を行ってきている。「法の支配」に基づく自由で開かれた海洋秩序は、国際社会の安定と繁栄の礎であり、インド太平洋地域の自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することにより、この地域をいずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす国際公共財とすべく、政府において、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進している。

 さらに、海洋由来の災害に備え、海岸保全施設等の整備、国による港湾の管理・航路の確保、津波災害警戒区域等の指定など、ハード・ソフトの施策を組み合わせた多重防護による津波防災地域づくり等も進めている。

イ 海洋の産業利用

 海運、造船、舶用工業、エンジニアリング、建設、情報通信等海洋開発を支える多様な産業や海上輸送の拠点となる港湾において、国際競争力強化に向けた取組が行われている。また、海洋資源・鉱物資源の開発に関しては、海底熱水鉱床の複数の新鉱床発見やレアアース泥の資源量調査、メタンハイドレートの海洋産出試験の実施等の取組を着実に進めている。さらに、洋上風力発電の導入促進に向けて、平成28年7月に施行された「港湾法」(昭和25年法律第218号)の改正(以下「改正港湾法」という。)により、占用公募制が導入されるとともに、一般海域の海域占用ルールの制度化に向けた取組を進めている。このほか、国際的な水産資源管理の強化に向けた動きが進んでいる。

ウ 海洋環境の維持・保全

 SDG14、気候変動に関する国際連合枠組条約第21回締約国会議で採択された「パリ協定*4*」等に基づいて、国際的な取組が進められている。こうした国際動向等も踏まえ、

「生物多様性国家戦略2012-2020」(平成24年9月閣議決定)、「気候変動の影響への適応計画」(平成27年11月閣議決定)等を策定するとともに、海洋環境の保全に関する様々な取組を推進している。

エ 海洋人材の育成と国民の理解増進

 平成29年に公示された小・中学校学習指導要領では、海洋に囲まれ多数の島からなる我が国の国土に関する指導についての充実を図った。また、全ての市町村で適切に海洋教育を実践することを目指して、「ニッポン学びの海プラットフォーム*5*」の形成を進めている。

 また、海洋産業を牽引する戦略的な人材の育成に向けて「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム*6*」が設置され、産官学が連携した国際的なネットワークの構築等に向けた取組が進められている。

このほか、海洋に関する国民の理解と関心を喚起するため、「海の日」や「海の月間」等の機会を通じた理解増進の取組を実施している。

オ 科学的知見の充実、北極政策の推進及び国際連携・国際協力

 科学的知見の充実については、海洋資源開発や気候変動等の地球規模課題への対応等に資する研究開発や海洋調査等を推進してきた。

 北極政策については、「我が国の北極政策」(平成27年10月総合海洋政策本部決定)を策定し、特に我が国の強みである科学技術を活かして、研究開発、国際協力、持続的な利用の3つの分野を中心に、取組を進めている。

 国際連携・国際協力については、海洋立国に相応しい形で多様な分野でこれを進めるとともに、国際会議等を活用し「法の支配」の重要性を国際社会に訴求し、新たな枠組やルールの形成に主導的役割を果たしている。また、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進している。

(3)海洋に関する施策を推進するに当たっての政府の体制

 海洋に関する施策の推進に当たっては、個別の施策について権限、識見を有する関係府省の責任ある取組が行われるとともに、双方向の議論を行う等により相互に連携・調整を図りながら政府全体として総合的に施策を進めていくことが重要である。また、海洋における様々な情勢の急速な変化に、政府全体としての一体性を確保し、より迅速かつ柔軟に対応していくことも求められている。このような観点を踏まえ、総合海洋政策本部がその実務を担う総合海洋政策推進事務局と一体となって政府の司令塔としての機能を発揮していくことが必要である。

 また、施策の着実な実施を確保するため、総合海洋政策本部の下で、海洋基本計画に基づいて実施される関係府省の諸施策を踏まえた工程表の作成とその実施状況の評価を一体的かつ継続的に行う手法を導入・強化するとともに、講じられている施策について関係者が連携してより分かりやすく国民に発信していくことが重要である。

(4)第3期海洋基本計画の構成

 第3期海洋基本計画(以下「本計画」という。)第1部においては、「はじめに」で述べた現状認識等を踏まえ、海洋政策のあり方として、今後の10年を見据えた海洋政策の理念及び方向性と、海洋に関する施策についての基本的な方針として、「総合的な海洋の安全保障」及び海洋の主要施策の基本的な方針について定める。

 また、第2部において、第1部の基本的な方針を踏まえながら、今後おおむね5年間に、集中的に実施すべき施策、関係機関の緊密な連携の下で実施すべき施策等、総合的・計画的推進が必要な海洋施策を具体的に定める。

 さらに、第3部において、本計画を着実に推進するための方策として、施策の進捗状況の点検及び見直しによる着実な実施、参与会議の検討体制及び事務局機能の充実を定めるとともに、関係者の責務、相互の連携及び情報の積極的な公表など、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を定める。


第1部 海洋政策のあり方

1.今後の10年を見据えた海洋政策の理念及び方向性

(1)理念

ア 海洋基本法上の基本理念

 海洋基本法第1条は、国際的な協調の下に新たな海洋立国を実現することの重要性に鑑みて、我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上を図るとともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的として定めている。その上で、同法第2条から第7条までに掲げる6つの基本理念(「海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和」、「海洋の安全の確保」、「海洋に関する科学的知見の充実」、「海洋産業の健全な発展」、「海洋の総合的管理」及び「海洋に関する国際的協調」)に則し、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、実施することとされている。これらの基本理念は、同法施行後10年経過した今日においても、引き続き踏襲すべきものである。

イ 本計画の策定及び実施に関する理念の構築

 本計画の策定及びその実施に関する理念は、海洋基本法に定める6つの基本理念を前提・根幹としつつ、「はじめに」で述べたとおり、これまでの海洋政策の実施状況とその評価を踏まえ、最近の情勢の変化を勘案したものとすべきである。

 その上で、本計画の策定及びその実施に関する理念としては、以下(2)及び2.並びに第2部及び第3部に述べる海洋政策の方向性及び各施策の基本方針等を定める際の指針となり、かつ、本計画に基づく施策の実施に当たっての道標となるものとすべきである。

 この場合、この理念は、海の豊かさ、厳しさ等の不変な事象、経済社会基盤及び国際公共財としての海洋の固有性、気候等に起因する海洋環境の変動性、海洋の汚染や海洋由来の自然災害への脆弱性等の認識に加えて、海洋基本法施行後のこの10年の状況の変化や最近の情勢等を踏まえることはもとより、将来に向けて、世界及び我が国周辺の海洋の状況、海洋に関わる産業、技術、人材等の状況がどのように推移していくか等も見据えた広範で長期的な視点に立ったものとすべきである。

 このような考え方に立ち、海洋基本法の基本理念を踏まえるとともに、以下に掲げる事項を十分に認識して海洋政策を進めていくことを本計画の策定及び実施に関する理念と位置づける。

 ①自由、民主主義、基本的人権の尊重及び法の支配は、世界の平和、安全及び繁栄をもたらす基盤であること。「開かれ安定した海洋」の実現に際し、我が国にとって好ましい情勢や環境を能動的に創出すべく、一層努力していくこと。

 我が国は、原油、石炭、鉄鉱石といった主要資源、衣食住を含む国民生活の根幹をなす原材料のほとんどを海外からの輸入に依存している。また、日本の貿易量において99.6%を海上輸送が占める。さらに、こうした海上輸送ルートは、東南アジア、インド洋、太平洋を含む広大な海域にまたがっている。一方で、グローバル化が進み、様々な脅威が容易に国境を越える現在の国際社会では、もはやどの国も一国のみでは自国の平和と安全を守り、繁栄を達成することができない。

 このような状況の下、海上貿易と海洋資源の開発を通じて経済発展を遂げ、自由、民主主義、基本的人権の尊重、「法の支配」といった普遍的価値を堅持し、「開かれ安定した海洋」を希求してきた海洋国家たる我が国は、我が国の平和と安全を自らの力により守る努力を続けることは当然であるが、同時に、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を始め、世界をより平和で安定したものとする努力を積極的に果たしてこそ、我が国自身の平和と安全、そして繁栄を確保することができる。また、海上輸送ルートの確保に向けては、シーレーン沿岸国等の主要な港湾の運営への参画のみならず、港湾拠点の後背地の都市基盤・産業基盤、それらを結ぶ交通基盤の整備等も視野に入れた戦略的な取組が重要である。その場合、我が国として透明性の確保や相手国の経済状況への配慮を図ることが長期的に我が国の国益に資するとともに、「法の支配」に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することが国際社会の安定と繁栄の礎となる点を認識すべきである。

 このような目的を長い将来にわたり確実かつ効果的に果たすに当たり、情勢の変化を受けて対応することから更に進んで、我が国にとって好ましい情勢や環境を能動的に創出することを目指していくことが肝要である。

 ② 将来の人口減少のもとにあっても我が国の国力を持続的に維持する。このため、海洋権益の確保のための取組の重要性も念頭に置き、海洋の有する豊かさ、潜在力を最大限に利活用することが重要であり、技術力の向上と、それを通じた産業の国際競争力の強化がその源泉となること。

 我が国の人口は、2050年頃には、約1億人まで減少するとの予測*7*がなされている一方、世界の人口は同年に約100億人に達するとの推計*8*がある。特に、アフリカ、インド、東南アジア等の地域における人口の大幅な増加、経済発展等により、食料やエネルギーを始めとする様々な資源確保のリスクは一層高まることが見込まれる。加えて、周辺諸国における海洋権益への意識の高まり等を背景に我が国の経済安全保障上の脅威、リスクも高まっている。このような状況において、食料・資源の供給安定性の確保、自国内でのそれらの確保を目指し、産業基盤の強化や成長の維持等を図り、

 我が国の国力を維持し、国民の生命身体の安全と豊かな生活を確保していくことが重要である。

このためには、世界有数の広大な管轄海域*9*を活かし、海洋資源の開発や再生可能エネルギーの利用拡大等豊かな海の恵みの活用を進めるべきであり、このため、我が国自身の力で国力の源泉となる資源やエネルギーの確保、産業の振興、それらを可能にする研究及び技術開発を着実に図るとともに、広大な海域でこれらの活動の基盤となる拠点機能の維持・強化を図る必要がある。

この場合、海洋権益の確保に当たっては、国際法上正当な根拠を持つことは当然であり、それを脅かす動きには毅然として対応すべきであるが、そのことに安住してはならない。国際社会においては、国際法に基づき、海洋の開発・利用・保全に地道かつ着実に注力し、関連する自国の権利を的確かつ継続的に行使していくことが海洋権益を確保していく上で重要な要素であること、それが国際社会からも尊重される傾向にあることに留意しなければならない。

 ③ 人類共通の貴重な財産である海洋を子孫に継承すること。このため、環境保全に向けた取組を世界の中でリードすること及び健全な海洋産業の育成による海洋の持続可能な開発・利用と環境保全を統合的に推進していくことが重要であること。

 生態系と生物多様性の破壊、気候変動、海洋酸性化など、人間が地球のシステムの機能に大きな変化を引き起こしており、こうした影響を客観的に評価する方法の一例として、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー*10*)という注目すべき研究がある。このような地球の限界の中で、人類共通の財産である美しく豊かな海を子孫に継承していくためには、人口が約100億人に達すると見込まれる地球全体の持続可能性を高めていく視点が重要である。

 気候変動に伴う海水温上昇や、海洋酸性化は、異常気象やサンゴの白化といった地球規模の環境問題を引き起こしている。将来の海面水位上昇の予測では、島嶼{しょとルビあり}国や沿岸地域に海岸線の後退や島の水没等が大きく危惧されている。マイクロプラスチックを含む海洋ごみ等が生態系に悪影響を与えることも懸念されている。

 このような事態に対し、国際社会の中で海洋国家として重要な地位を占める我が国が、かつて経済発展の過程で海洋汚染を引き起こしつつも、それを乗り越えるための努力を積み重ねてきた経験を活かし、海洋環境保全に向けた国際的な取組において主体的・先導的な役割を果たし、世界をリードしていくべきであることは言うまでもない。また、海洋は海流等により大きく循環しており、個々の国・地域における対応には限界があることから、海の豊かな恵みを地球全体で持続的に享受していくためには、国・地域の枠を超えた価値観の共有や力の結集が求められている。

 さらに、海洋の持続可能な開発・利用・保全等を総合的かつ一体的に行うとする海洋の総合的管理は、最も基本的な取組の一つである。個々の環境施策の重要性はもとより、健全な海洋産業による海洋の持続可能な開発・利用を進め、海洋産業を含め経済・社会的な安定・発展を図ることが、環境保全を持続的に推進するという重要な側面があるとの認識の下、海洋の開発・利用と環境保全との調和の新たな展開を図っていく必要がある。この場合、単に環境に留意して海洋の開発・利用を進めるだけではなく、持続可能な開発・利用と環境保全とをWin-Win*11*の関係で発展させていくことを模索・追求し、環境保全の実効性を高めていく必要がある。このことは、国民の理解や支持につながるものでもある。このため、海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。)等関連する国際法に基づき、かつ、SDG14の実施促進を目的に開催されたSDG14実施支援国連会議で採択された成果文書(Call for Action)における海域管理に係る行動要請や各国の海域管理の取組動向も認識しながら、自国の海域管理と持続可能な開発・利用の推進を同時に達成していくことが重要である。

 ④ 我が国の強みである科学技術を将来にわたり進展させ、世界最先端の革新的な研究開発を進めることが、海洋を知るための継続的な観測・調査の充実を含め海洋政策の不可欠の前提となること。

 古来より、丸木舟、手漕{ことルビあり}ぎ船、帆走船、蒸気船へと技術を進化させ、近年の省エネ船やLNG*12*船の開発、船舶の高速化・大型化、航海術の向上、安全性の向上、さらに、深海探査艇、ボーリング技術の開発等の海洋資源開発技術、環境保全技術、海洋浄化技術、調査・観測技術等の向上等を実現してきた。これらにより海洋分野の利便性と有用性を高め、海洋の未開拓分野を開発し、人類の進歩に貢献し、海洋の将来性を高めてきたという一例からも明らかなように、海洋技術開発は、海洋に関する施策の効果を飛躍的に増進させる。

 現在、北極海や深海を含め、未踏のフロンティアである海洋分野での優位性をめぐ

り、海洋科学技術の開発に向けたグローバルな競争や権益をめぐる争いが始まっており、これらの中で我が国も優位ある地位を占めなければならない。ものづくり大国である我が国の強みを発揮し、海洋開発・利用や海洋調査・観測など様々な活動において、省人化・無人化、衛星の活用等を始めとする世界最先端の革新的な技術開発、イノベーション、エンジニアリング力の強化を進め、海洋産業における技術開発等の分野で世界をリードするレベルを維持することが枢要な課題となっている。

 海洋科学技術に関する研究開発の進展は、海洋に関する諸施策の基盤であることから、これらを果たせなければ、我が国の安全や安定の確保も、繁栄の享受も、国力の維持もおぼつかなくなり、また海洋環境保全への貢献も叶わないものであることを十分認識することが重要である。

 ⑤ 子供や若者を始めとして国民全体が、海にあこがれ、親しみ、海で遊び、体験する機運を盛り上げ、海洋に関する施策の推進への国民の理解を得ることが、全ての施策の底流にあるべき重要な課題であること。

 かつて、多くの国民は子供時代に「宝島」や「海底二万里」等の海洋冒険小説に胸を躍らせ、臨海学校で楽しい思い出を作るなど、海はロマンであり、冒険や体験の対象であった。また、国民にとって、海水浴や潮干狩り、魚釣りを楽しみ、優雅な帆船の姿に胸打たれるなど、海は楽しく親しむ場であった。さらに、豊かな恵みをもたらす一方で時として荒々しい海への畏敬や海洋と共生した生活は、日本各地において伝統や文化として引き継がれてきた。しかしながら、最近は、海を訪れ、海を見た経験のある国民が減少しているとする調査結果*13*が出るなど、いわゆる「国民の海離れ」の傾向もあると言われている。

 このような状況が続くと、人口が減少する中で、海洋分野を職業とする人材の確保はもとより、国民にとって重要な海洋に関する諸施策に関する国民の理解にも悪影響を及ぼしかねない。海の重要性、恩恵と脅威、さらに、海洋の有する潜在力や新たな可能性について、子供や若者も含めて国民一人一人が的確にその認識を持てるようにしていかなくてはならない。「海の日」等の活用の強化、学校における海洋教育の充実や海洋に関する遺産や伝統・文化の継承にも一層力を注がなければならない。何よりも、海洋に関する国民理解の礎に立ってこそ海洋国家として持続的に繁栄していくことが可能であることを、海洋分野に関わる全ての関係者は肝に銘ずるべきである。

(2)方向性

 本計画は、上記(1)に掲げた理念に基づき、海洋に関する施策を総合的及び計画的に進めるに当たって、「新たな海洋立国への挑戦」と銘打って、以下のとおり、海洋政策の方向性を定め、その上で、この方向性に沿った施策の基本的な方針を2.において確立する。

ア 新たな海洋立国への挑戦

 海洋政策の方向として、以下の事項を主柱として取り組む。

 我が国の平和及び安全、国民の生命、身体及び財産並びに漁業及び海洋開発等の海洋権益を含め領海等(我が国内水・領海・接続水域・排他的経済水域・大陸棚をいう。以下同じ。)の主権及び主権的権利を断固として守り抜く。そのためにも、法の支配と国際連携・協力に基づく海洋秩序の確立を維持・強化していく。また、海洋の産業利用の推進を礎として海の恵みを最大限に活かすことにより、国民が将来にわたり持続的に繁栄を享受できるように不断に国民生活を向上させる。さらに、海洋環境の保全に努め、人類共通の財産である美しく豊かな海を子孫に継承することができるように、海洋政策を強力かつ効果的に推進する。

 このため、国民の理解、優れた海洋人材と世界を先導する海洋科学技術に支えられ、国際ルールに基づき、我が国の国益に資する広大な海域の有効利用や海洋の総合的管理を進め、持続可能な開発・利用を念頭に海洋の開発利用と環境保全との調和の新たな展開を進め、それらを確実に成し遂げる新たな海洋国家へと飛躍を図る。

 これらの実現に向けて、これまで以上に、政府一丸となって総合的かつ計画的な政策展開を図り、地方公共団体、海洋産業の事業者等の関係者の意欲と相互の連携及び協力を得て、海洋に関する施策を統合的な形で着実に実施するとともに、今一度、我が国が四方を海に囲まれた海洋国家であることを思い起こし、国民の理解と支援の下に「海洋立国」の実現を成し遂げる。

イ 理念に照らした海洋政策の方向性の明確化

 アに掲げた海洋政策の方向性に関し、海洋基本法の6つの基本理念に照らし、その明確化の観点から整理すると、次のとおりである。

 まず、我が国周辺をめぐる厳しい安全保障環境を踏まえ、「海洋の安全の確保」について、海洋の安全保障について幅広く捉えた上で、これまでの取組を一層強化する方向で政策を展開する。

 次に、「海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和」、「海洋産業の健全な発展」及び「海洋の総合的管理」は相互に関連する理念であることから、これらを一体的に推進することにより、効果的な政策展開に努める。

 また、科学的知見に基づき海洋を規律していく重要性への国際的な認識の高まり等を踏まえ、「海洋に関する科学的知見の充実」を重要な政策として取り組む。

 さらに、諸外国の海洋権益に関する意識が高まる中、「法の支配」を国際社会の普遍的な基準として活動していくため、「法の支配」と「科学的知見の充実」を両輪とする取組を進めるべく、「海洋に関する国際的協調」に係る政策を着実に展開する。

 このほか、上記(1)に掲げた本計画の理念を踏まえ、人口減少・少子高齢化、グローバル化、IT分野等における技術革新の加速化等を踏まえ、重要な社会基盤である人材の確保・育成を確実に進めるべく取組を強化するとともに、本計画に基づく海洋に関する施策について関係者が連携して分かりやすく、広報戦略の視点をもって効果的に国民に発信していくことに重点を置くことにより、国民の理解の増進に向けた施策の展開を進める。

ウ 海洋政策の方向性についての具体的な内容

 アに掲げる海洋政策の方向性に関し、その内容を端的なキャッチフレーズを用いて示すと、次のとおりである。

 ○「開かれ安定した海洋へ。守り抜く国と国民」

 海洋をめぐる安全保障上の情勢及び我が国の海洋権益の広がりを踏まえ、海洋の安全保障に関する施策と海洋の安全保障の強化に貢献する基層となる施策を一体として幅広く捉え、後述する「総合的な海洋の安全保障」として、必要な政策を実施する。

 この方針の下で、我が国の安全を確保し、領海等における我が国の利益を守り抜くとともに、シーレーンの安全を確保する。同時に、「法の支配」に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化するため、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の具体化を始めとする各種取組を進め、我が国にとって好ましい海洋をめぐる環境を創出していく。加えて、周辺国等との間で排他的経済水域、大陸棚等の境界が未画定である中、我が国の法的立場や海洋権益が損なわれることのないよう、外交努力を積み重ねていく。また、国際スタンダードに則した質の高いインフラや海上輸送ルートの整備等による連結性の向上を通じて我が国の経済的繁栄を追求する。さらに、海洋由来の災害に対する備えを徹底し、災害に強い国となることを目指す。

 これらにより、国民の生命・身体・財産を守り、国民生活や経済活動の維持・発展に大きく寄与する。

 ○「海を活かし、国を富ませる。豊かな海を子孫に引き継ぐ」

 我が国周辺海域等における海洋の持続可能な開発・利用を進め、海洋に関わる多様な産業について、生産性向上を含む活性化を通じて振興・創出を図る。また、海洋環境の保全に当たっては、これまでの様々な経験を活かし発展させ、世界をリードし主体的・先導的な役割を果たす。そして、高い生産性と生物多様性が維持され、持続的かつ計画的な利用が可能な海域の形成を図る。

 さらに、海洋産業の振興、海洋の産業利用の促進を通じた海洋の持続可能な開発・利用と、海洋環境の保全のより一層強力かつ有効な推進とを統合的に展開していくことを目指し、海洋の総合的管理の観点を十分に考慮し、海洋の持続可能な開発・利用と環境保全との調和の新たな展開を図るべく海洋政策を展開する。その際、国連海洋法条約等関連する国際法に基づき、海域管理の取組に係る動向も認識しながら、自国の海域管理と持続可能な開発・利用の推進を同時に達成すべく政策展開を図る。

 これらにより、海洋環境の保全を図り、美しく豊かな海を子孫に的確に継承しつつ、海洋権益確保の観点を重視し、海洋の有する経済的・社会的な潜在力を最大限引き出し、成長による富の創出や豊かで潤いのある生活の実現に大きく寄与する。

 ○「未知なる海に挑む。技術を高め、海を把握する」

 深海を始め、海洋の未知なる領域の研究等による人類の知的資産の創造や国家戦略上重要な科学技術力の向上のための取組を強化し、新たなイノベーション創出に資する研究開発を進める。また、我が国が有する科学技術を最大限活用して、海洋由来の自然災害や気候変動等の地球規模課題の解決に長期的な視野を持って継続的に取り組む。さらに、科学技術を活かした効率的・効果的な海洋観測網の維持・強化に努め、海洋の状況を適切に把握する。

 これらにより、海洋科学の分野で世界を主導し、また世界に貢献することを目指す。

 ○「先んじて、平和につなぐ。海の世界のものさしを作る」

 「先んずれば即ち人を制し、後るれば即ち人の制する所と為る。」の言葉がある。情勢の変化を受けて対応することから更に進んで、我が国にとって好ましい環境を創出することを国際連携・国際協力の目標とする。そのため、海洋の秩序維持・強化や地球規模の海洋問題の解決に当たっては、国連海洋法条約を中心とした国際ルールに則して対処し、我が国が海における「法の支配」の確立を主導する。また、新たな枠組やルール等の形成に際して、「海における法の支配」と「科学的知見に基づく政策の実施」を国際社会の普遍的な基準として浸透させるべく活動する。

 ○「海を身近に。海を支える人を育てる」

 海洋立国を支える多様な人材の育成及び確保に取り組むとともに、学校等における海洋に関する教育を推進する。さらに、国民が海を身近に感じられるよう海に実際に触れ合う機会を充実させるとともに、海洋に関する諸施策の内容と実施状況、海洋産業の重要性、科学技術の意義、遺産や伝統・文化の魅力を含む情報発信を広報戦略的な視点をもって拡大する。

 これらにより、海洋産業の基盤となる人材育成を図るとともに、国民の海洋についての理解増進と関心を深め、海洋に関する施策の効果的な推進を万全にし、将来にわたり海洋と人類の共生に大きく寄与する。


2.海洋に関する施策についての基本的な方針

2-1.「総合的な海洋の安全保障」の基本的な方針

 海洋をめぐる安全保障上の情勢及び我が国の海洋権益の広がりを踏まえると、海洋の安全保障に関しては、様々な分野に横断的にまたがる海洋政策を幅広く捉え、我が国が海洋国家として平和と安定、そして繁栄を達成していくために必要な政策を提示していく必要がある。そのため、本計画においては、中核である海洋の安全保障に関する施策に加え、以下(2)に詳述するとおり、安全保障が必ずしも唯一の、又は主たる目的となっていない施策であっても、海洋の安全保障に資する側面を有するものを、海洋の安全保障の強化に貢献する基層となる施策と位置づける。政府としては、両者を包含して「総合的な海洋の安全保障」とし、この考え方の下、政府全体として一体となった取組を進めることとする。

(1)海洋の安全保障

 「国家安全保障戦略」が示すとおり、グローバル化が進み、脅威が容易に国境を越える現在の国際社会では、もはやどの国も一国のみでは自国の平和と安全を守ることができない。海洋分野では特にこうした傾向が顕著である。

 こうした中、我が国は、海洋の安全保障について、我が国の平和と安全を自らの力のみならず国際社会との協力により守り、繁栄と経済的存立の基盤となる海洋権益を長期的かつ安定的に確保するとともに、我が国及び国際の平和と安定に資する海洋秩序を形成し、我が国にとって有利な国際戦略環境を創出するべく、必要な施策を進めてきた。政府としては、「国家安全保障戦略」における海洋安全保障を含む安全保障に関連する幅広い施策を海洋の安全保障に関する施策として整理し、これを既に述べた

 「総合的な海洋の安全保障」の中核的概念として捉え、様々な施策を推進していく。また、関係各国と連携・協力しながら「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進していく。

 かかる観点から、今後10年程度の期間を見据え、我が国の海洋の安全保障上、念頭に置くべき方向性として、以下の三点を掲げる。

ア 我が国の領海等における国益の確保

 我が国の領海等における平和と安定を維持し、国民の生命・身体・財産の安全の確保及び漁業、海洋開発等の海洋権益の確保、ひいては国民の安心の確保といった国益を長期的かつ安定的に確保するために、海洋に関連する情報収集・分析・共有体制を構築するとともに、主として我が国自身の努力によって必要な抑止力・対処力を強化する。また、「海上保安体制強化に関する方針」(平成28年12月海上保安体制強化に関する関係閣僚会議決定)に基づき、海上保安体制を着実に強化するとともに、不測の事態の未然防止やエスカレーション防止を図るため、海上法執行能力を強化する。さらに、同盟国や友好国等との平素からの緊密な連携によって脅威の出現を未然に防止し、万が一脅威が及ぶ際には、これを排除すると同時に被害を最小化する。

 加えて、外国漁船等の違法操業及び漂着・漂流については、国民の安全・安心の確保の観点から、政府として重要な課題と認識し、引き続き取り組んでいく。自然災害発生のリスクに備え、省庁横断的な連携体制の整備や被害の防止・軽減を図る対策を着実に推進する。

イ 我が国の重要なシーレーンの安定的利用の確保

 主として同盟国や友好国等や、我が国にとって重要なシーレーンの沿岸に所在する各国(以下「シーレーン沿岸国」という。)との連携強化を通じ、我が国の重要なシーレーン沿岸における安全保障環境の改善に取り組み、もって我が国の重要なシーレーンの安定的利用を確保する。

ウ 海洋利用の自由の確保のための国際的な海洋秩序の強化

 我が国にとって安定的な海洋利用の自由が確保できる海洋の安全保障の環境を維持するために、普遍的価値を共有する各国と連携しつつ、外交努力や人的貢献など能動的な行動によって、法とルールが支配する海洋秩序を形成・強化する。

(2)海洋の安全保障の強化に貢献する基層

 上述のとおり、本計画では、安全保障が必ずしも唯一の、又は主たる目的となっていない施策であっても、海洋の安全保障に資する側面を有するものを、海洋の安全保障の強化に貢献する基層と位置づけて取り組んでいく。

 その上で、この基層を、海洋の安全保障との関係がより密接であり、その施策の遂行が、海洋の安全保障の強化のための基盤整備に直結する「海洋の安全保障の強化の基盤となる施策」と、これまで海洋の安全保障との関係についての認識がより間接的であったものであるが、その施策の遂行が海洋の安全保障を補強する「海洋の安全保障の補強となる施策」に整理し、取組を強化していく。

ア 海洋の安全保障の強化の基盤となる施策

 ① 海洋状況把握(MDA*14*)体制の確立

 MDAは、海洋に関連する多様な情報を海洋の安全保障のみならず、海洋環境保全、海洋産業振興、科学技術の発展等の海洋政策の推進に活用する包括的な取組である。MDAの前提となる海洋に関連する多様な情報を適時適切に収集・集約することは、海洋の安全保障の面での脅威の早期察知につながるものであり、この重要性に鑑み、本計画において重点的に取り組んでいく。

 ② 国境離島の保全・管理

領海及び排他的経済水域等*15*の外縁を根拠付ける国境離島については、低潮線を含めた保全及び活動拠点機能の強化等によりその保全・管理を行うことが、我が国の広大な排他的経済水域等における海洋資源の利用等の利益をもたらすこととなる。同時にそれは、我が国の領域保全の観点からも重要な施策であり、本計画において重点的に取り組んでいく。

 ③ 海洋調査、海洋観測

 海洋調査及び海洋観測には、多様な目的及び効果があり、海洋の安全保障のみならず、海洋環境の保全等、海洋資源の利用といった多様な目的での活用が可能であり、総体として海洋の安全保障の強化に貢献するものである。

 ④ 科学技術、研究開発

 科学技術の促進を図ることは、海洋の産業振興に直結するだけではなく、海洋の安全保障に関連する様々な分野における基盤としての意義がある。安全保障分野及び民生分野の両方で活用可能な技術の研究開発の促進を図ることは、長期的な観点からも重要である。

 ⑤ 人材育成、理解増進

 海洋に関する様々な活動が、海洋の安全保障が確保された上に成り立つという認識を広く国民に周知するとともに、海洋の安全保障に関する知見を持つ人材を育成していくことは、海洋の安全保障の強化に貢献するものである。また、こういった人材育成、理解増進は、海洋に関する様々な情報を国内外へ向けて発信するためにも重要である。

イ 海洋の安全保障の補強となる施策

 ① 経済安全保障

 我が国の排他的経済水域等で海洋資源の利用等を促進することは、我が国のエネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に貢献することに加えて、海洋権益を確保していく観点から重要である。また、水産業の振興を図ることは、漁業者や漁業協同組合を中心とした国境監視機能の強化や、海難発生時の漁業者を中心としたボランティア組織等による支援体制の構築につながる。

 日本船舶・日本人船員を中核とした安定的な海上輸送体制を確保し、また日本商船隊の国際競争力の維持・強化を図ること、さらに、シーレーン沿岸国等の主要な港湾等のインフラ整備や運営に関与するとともに、我が国港湾等を戦略的に整備していくことは、我が国経済安全保障上重要である。また、災害時における海上輸送の確保という点から、安全保障にも資する側面がある。

 海運業・造船業といった海洋産業の振興及び国際競争力の強化は、経済力・防衛力の基盤となる技術力の向上につながるものであり、海洋の安全保障をめぐる環境を維持・改善する効果も有する。

 ② 海洋環境の保全等

 我が国の管轄海域について海洋環境の保全等に関する取組を確実に実施することは、我が国の管轄権の管理能力を国内外に示すことにつながる。気候変動等に関連し、我が国が収集したデータ等を共有することで、他国の自然災害等の影響を低減することは、我が国にとって望ましい安全保障環境を作り出すことになる。


2-2.海洋の主要施策の基本的な方針

(1)海洋の産業利用の促進

ア 海洋の産業利用の促進に関する基本方針

 「海洋の産業利用の促進」とは、海洋環境の保全との調和を図りながら、海域において行われる海運、水産、資源開発等の様々な経済活動及びそこに製品・サービスを提供する産業の活動を拡大することで、「海洋の開発・利用による富と繁栄」を目指すものである。

「海洋の産業利用の促進」には以下の3つの重要な政策的な意義がある。

  ① 海運、水産、資源開発等の海域において行われる様々な経済活動の活性化等は、経済安全保障の確保に貢献する。

  ② 海域でのビジネスが拡大することにより、経済成長の実現に貢献する。

  ③ 我が国の海域における経済活動が拡大することは、国際交渉の場等において我が国の交渉力を向上させ、海洋権益の確保に貢献する。

 この3つの意義はそれぞれ独立した政策領域において発現するものであるが、相互に関連し依存しあうことで、一層の効果を発揮するものである。そこで、この3つの政策領域における取組の連携を強化し、一体的に推進することを「海洋の産業利用の促進」政策の基本方針とする。今後は、各施策の推進に際しては、関係府省はこの点を考慮し、進捗状況を共有しつつ連携して施策の推進に取り組む。

イ 海洋エネルギー・資源の開発の推進

 我が国の領海等に賦存するメタンハイドレート、海底熱水鉱床、レアアース泥等の海洋由来のエネルギー・資源は、我が国にとって貴重な国産資源であり、商業化がなされれば我が国の自給率の向上に資する重要なエネルギー・鉱物資源である。

 海洋エネルギー・資源の開発に当たっては、将来的には民間企業が営利事業として投資判断を行い参入する、いわゆる「商業化」の実現を目指す。そのための政府の役割としては、商業化のために必要な基盤の整備、すなわち「産業化」を行うことであり、これを着実に推進する。ここでは産業化を「民間企業が事業参入を判断する際に必要となる技術、知見、制度等を利用可能にすること」と定義する。また、商業化の段階にあっては、適切な官民役割分担の下、事業の進展に応じた必要な支援が行えるよう、制度の充実を図る。

 メタンハイドレート、海底熱水鉱床やレアアース泥の開発は、世界的に見ても例が少ない、日本が世界に誇るべき先端的かつ基礎的な技術開発であると同時に、不確実性が高く極めて難度の高いプロジェクトである。したがって、国際市況や需給の状況、経済社会情勢等の外部環境の動向を注視しながら、プロジェクトをステップごとに管理し、適切なタイミングでPDCAサイクル*16*を回していくことにより、効率的・効果的なプロジェクトの実施に努める。

 国産のエネルギー・資源の開発には、供給力の確保としての意義のほかに、海外からのエネルギー・資源調達の際のバーゲニングパワーとなるなど交渉力としての意義もある。このような意義の重要性に鑑みて、技術の確立、資源量の把握等の産業化の取組を確実に進めていくことにより、経済安全保障に貢献していく。

 再生可能エネルギーについては、特に洋上風力発電について、第2期海洋基本計画に基づいて行われた技術実証や改正港湾法に基づく占用公募制度の導入等の成果により、国の研究開発により技術面での実用性を実証するフェーズが終わり、民間企業による洋上風力発電事業への参入を促進するフェーズに入ってきている。特に、着床式の洋上風力発電については、複数の民間主体の発電事業計画が動き出しており、一層の低コスト化を図ることで事業採算性の向上や固定価格買取制度下における国民負担を抑制させるとともに、漁業を始めとする先行利用者との関係や事業者の予見可能性の向上を考慮した海域利用ルール等の制度整備を加速し、民間企業による事業投資を円滑化していく。

ウ 海洋産業の国際競争力の強化

 造船や舶用工業等の、いわゆる「海洋産業」は、海洋の産業利用を促進するために不可欠な基盤的な産業であり、地場の産業から海外市場まで幅広いレベルで経済成長への貢献が期待されている産業である。この分野では、情報通信技術を使った生産性の向上や環境・IoT*17*等の先端技術を活用した製品の高付加価値化を強力に進め、国際競争力の一層の強化に取り組む。

 また、海洋資源開発分野への参入については、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP*18*)「次世代海洋資源調査技術」等の従来からの取組の成果を活用するとともに、公的な支援制度を最大限に活用し、将来見込まれる石油・ガス開発市場の拡大に向けて企業が技術力を高めることができるよう支援を続けていく。

 また、海洋産業をめぐる様々な課題を解決していくため、平成29年6月に、総合海洋政策本部参与会議参与の主宰において創設された「海洋資源開発技術プラットフォーム*19*」における企業間交流の活動を支援していく。その際には、官民を挙げた戦略的な取組を促進するため、国立研究開発法人等の知見を活用して、同プラットフォームにおけるシンクタンク機能を強化する。

エ 海洋における産業利用の拡大

 海域における経済活動を拡大していくためには、海洋を使う新たな産業分野を開拓していく必要がある。折しも、クルーズ船の寄港拡大など海洋分野においても大きなビジネス・チャンスが現れている。また、大学発ベンチャー企業が異業種との連携で低コストな水中を探査するロボットを開発し、海外市場に打って出るという事例も出てきている。このような新しい活力を海洋産業に取り込んでいくことにより新たな産業分野を開拓し、海域における経済活動を拡大していく必要がある。さらに、我が国の離島における経済振興も、海洋産業にとっては重要な機会であり、また海洋エネルギー等を活用した新たな経済振興策の実現なども期待される。

オ 海上輸送の確保

 外航海運は、四方を海に囲まれた我が国の経済・国民生活を支える重要な基盤であり、安定的な海上輸送の確保が重要である。また、我が国外航海運企業は世界単一市場の中でし烈な競争にさらされており、国際競争力の更なる強化が重要である。

 現下の内航海運をめぐる諸課題を踏まえ、内航海運が目指すべき将来像を明確化した上で対策を講ずる。また、地域住民の移動手段等において不可欠な交通インフラである国内旅客船についても、航路の維持・活性化を図るために必要な取組を推進する。

 さらに、我が国全体と地域の経済・産業・生活を物流面から支える港湾は重要であり、国際競争力の強化に資する国際コンテナ・バルク戦略港湾等の海上輸送拠点の整備を推進する。

カ 水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化

 水産業については、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と年齢バランスのとれた漁業就労構造を確立することを目指す。このため、「水産基本計画」(平成29年4月閣議決定)等に従って取組を進めることとし、具体的には、資源評価の精度向上を図り、国内における資源管理の高度化と国際的な資源管理を推進する。また、自らの経営能力の向上や企業の技術・知識・資本等の活用を通じて、漁業操業や養殖事業の効率化を図り、「浜」単位での所得の向上とともに、漁船漁業の国際競争力の強化に取り組む。さらに、水産業の生産活動が活発化することによって、国境監視機能を始め水産業・漁村の持つ多面的機能が十全に発揮されるよう取組を進める。

(2)海洋環境の維持・保全

 海洋は、地球上の多様な生物の生息や我々の豊かで潤いのある生活を支えるかけがえのないものであり、このような恩恵は、複雑かつ多様で、常に変動する海洋環境に支えられている。海洋は、大気と相互に影響を及ぼしあうなど気候に大きな影響を与えており、また、気候変動の要因である二酸化炭素を吸収する機能がある一方で、気候変動に伴う海水温上昇や、海洋酸性化等の影響を受けている。海洋環境は、海洋のみならず陸域における社会経済活動の拡大により、沿岸域のみならず海洋全体において様々な影響を受けており、一旦海洋汚染等により海洋環境が損なわれるとその回復を図ることが非常に困難である。以上を踏まえて海洋環境を保全していくことが必要である。

ア SDGs等国際枠組を活かした海洋環境保全

 かけがえのない海洋環境を保全していくため、SDGs等を始めとする様々な国際枠組の下で、適切な海洋保護区の設定、脆弱な生態系の保全、海洋汚染の防止、海洋ごみ対策、気候変動への対応等を推進していく。その際には、予防的アプローチの考え方も取り入れ、科学的な知見に基づく海洋の持続可能な開発・利用と保全を基本とする我が国の考え方を適切に反映させつつ、海洋環境保全に積極的に貢献していく。

イ 海洋環境の保全を前提とした海の恵みの持続的な享受

 我が国は海洋との共生を原点とする海洋国家として、自然生態系と調和しつつ人手を加えることにより、古くから高い生産性と生物多様性を持続的に維持している海域を形成してきており、こうした海域は「里海」と呼ばれている。こうした「里海」の経験も活かしつつ、沿岸域の海洋環境の保全・再生、自然災害への対応、地域住民の利便性向上等を図る観点から、関係者の理解と協働の下で陸域と海域を一体的かつ総合的に管理する取組を展開していく。また、閉鎖性海域においては、水質等の保全のみならず、自然景観及び文化的景観の保全、水産資源の持続的な利用等も考慮した豊かな海づくりを推進していく。

 また、海洋の状態が常に変動し、学術的にも未解明な点が多いということを踏まえ、継続的かつ的確に海洋の状況を把握し、その結果を取組の検証やその後の対策の選択や改善に活かすなど、PDCAサイクルを活用した順応的管理を推進していく。

(3)科学的知見の充実

ア 海洋科学技術に関する研究開発の推進等

 海洋科学技術は、海洋資源開発・再生可能エネルギー利用等による我が国の経済・社会の発展、激化する気象災害や地震・津波災害への対策等の国民の安全・安心の確保、気候変動等の地球規模課題への対応に貢献するものである。また、アクセスが困難な深海や、地球環境にとり重要な北極域・南極域は、人類のフロンティアであり、それらの研究開発の推進は、これら海洋、地球、生命に関する統合的な理解を進めることにより、人類の知的資産を創造し、青少年に科学への興味と関心を抱かせ、我が国の国際社会におけるプレゼンス向上に資するものである。

 海洋科学技術を国家戦略上重要な科学技術として捉え、科学技術の多義性を踏まえつつ、長期的視野に立って継続的に取組を強化していく。

その際、オープンイノベーション*20*の取組等を推進し、海洋科学分野の研究開発で得られた知見・技術・成果の社会還元を目指す。

イ 海洋調査・観測・モニタリング等の維持・強化

 海洋調査・観測・モニタリング等の活動により収集した海洋の科学的情報を活用し、海洋の状況を把握し、これを適切に共有するMDAの取組は、多様な海洋政策の実施や海洋における脅威・リスクの早期察知に有効であり、その意味においても、海洋調査等の活動は、2-1.で示した「総合的な海洋の安全保障」の全体に資するものである。

 こうした観点から、我が国がこれまでに構築してきた海洋観測網を貴重な資産と捉え、その維持・強化を図るとともに、先進的な観測システム構築に係る技術開発の推進や取得した海洋情報の一元化に関する取組の強化を図る。

 また、広大な海洋の情報を効果的に取得するためには、海洋調査船等による現場観測に加え、宇宙技術の活用や国際連携・国際協力が不可欠である。したがって、海洋と宇宙の政策連携を一層強化し、海洋分野における衛星による地球観測や通信技術等の活用を更に推進するとともに、国際的な海洋観測体制の構築・強化や観測技術の国際標準化等の議論においても主導的な役割を果たしていく。

 さらに、人口減少・少子高齢化など人的リソースに起因する課題を克服するため、無人航空機、自律型無人探査機(AUV*21*)、洋上中継器等の無人装備に係る技術開発やそれらの連携に係る技術開発など海洋調査・観測・モニタリング等の省人化・無人化に向けた取組の強化を図る。

ウ 海洋と宇宙の連携及びSociety5.0の実現に向けた研究開発

 海洋の科学的知見の充実には、船舶だけではなく、衛星を効果的に活用することが有益であり、意義深いものである。さらに、海洋の状況を適切に把握することは、海洋政策を推進するに当たり極めて重要である。MDAの能力強化においても、衛星による海洋情報の収集は有効な手段である。これらの観点から、宇宙を活用することにより、広範な海洋の科学的知見を充実させ、海洋の観測や船舶航行の状況の把握を進めるために、海洋における衛星情報の利活用を引き続き推進していく必要がある。

 また、「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月閣議決定)では、ネットワーク技術や人工知能(AI*22*)、ビッグデータ解析技術等を活用した「Society5.0*23*」の実現や科学技術イノベーション創出が強く打ち出されている。調査・観測により収集される膨大な海洋情報を海洋政策に有効に活用するためには、これら膨大なデータや情報の集約、解析、予測に係る技術等が不可欠であることから、Society5.0の実現に向けて、海洋ビッグデータの整備・活用、気候・海洋変動の予測等に係る研究開発を推進する。

(4)北極政策の推進

 我が国は北極の気候変動の影響を受けやすい地理的位置にあり、北極域における環境変化の影響は我が国にとっても無関係ではない。他方、アジア地域において最も北極海に近いことから、北極海航路の利活用、資源開発を始めとして経済的・商業的な機会を大きく享受し得る環境にある。こうした状況を背景に、我が国が北極をめぐる課題への対応における主要なプレイヤーとして国際社会に貢献していくことを目指して、平成27年10月に、基本方針となる「我が国の北極政策」を総合海洋政策本部において策定した。また、我が国民間企業において、ヤマルLNGプロジェクト*24*に関連して北極海航路を利用するなど、具体的な動きが出てきている。こうした状況を受け、同基本方針に基づき、我が国にとっての北極の重要性を十分に認識し、観測・研究活動の推進を通じた地球規模課題の解決による我が国のプレゼンスの向上、国際ルール形成への積極的な参画、我が国の国益に資する国際協力の推進等の観点を踏まえ、研究開発、国際協力、持続的な利用に係る諸施策を重点的に推進する。その際、北極に潜在する可能性と環境変化の脆弱性を適切に認識し、北極圏に居住する先住民の伝統的な経済社会基盤の持続性を尊重する。

 まず、我が国は、長年にわたり、北極の環境変化について観測・研究開発を継続しており、国際的な科学技術協力にも積極的に貢献してきた。平成30年度には、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所のノルウェー・ニーオルスン基地がノルウェー政府の協力を得て整備される予定であり、我が国が一層国際共同研究等を進める体制が整う。科学技術は、北極政策を主導する上で我が国の最大の強みであり、国際ルール形成への参画、国際協力の推進を実現していく上でも、極めて重要な手段となる。諸外国において、北極政策に係る取組が活発化している情勢を踏まえ、我が国としても、切迫感を持って、観測・研究体制や成果発信、国際連携の一層の強化を図り、地球規模課題の解決に貢献し、その中で国際社会におけるプレゼンスの向上を図る。

 また、北極海を含む海洋においても、国連海洋法条約等関連する国際法が遵守されるという「法の支配」の確保及び科学的根拠に基づく議論が重要であり、これを前提として、公海部分における水産資源の保存管理等に関する国際ルール形成や北極海航路の利活用等に関する環境整備において、我が国及び国際社会の利益を確保していく。

 さらに、北極域における環境変化の影響は、北極圏、非北極圏を問わず国際社会に様々な課題をもたらしており、その対応には二国間及び多国間での国際協力が不可欠であり、北極域における環境変化は、我が国周辺のみならず国際社会全体に影響を及ぼし得るため、国際協調を基調とする北極政策を切り口に、様々な外交機会を捉えて協力関係を築き、我が国の国益に資する国際環境を創出していく。

(5)国際連携・国際協力

 国際連携・国際協力は、平和で安定した国際社会の確立を基盤とした我が国国益の実現のために行われるべきものである。したがって、国際協調主義を掲げる我が国は、海洋分野においても、国際ルール形成を主導していかなければならない。

 海洋分野には、長年にわたって多くの国が議論と実践を積み重ねてきた、国連海洋法条約を中心とした国際ルールが存在する。我が国は、これらのルールを尊重し、そこに規定された海洋における権利を享受するとともに、「法の支配」に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化するための連携や協力をシーレーン沿岸国を始め各国とともに進め、また、このような秩序が国際社会全体の平和と繁栄に不可欠であるとの国際的な認識を形成・定着させていくために主導的な役割を果たしていく。

 特に、海洋における紛争や利害の対立等に際しては、海洋の秩序形成・発展の観点からも、これらの国際ルールに則して対処し、主張を通すために力や威圧を用いず、平和的な事態収拾を徹底する。

 さらに、地域や地球規模の海洋問題を解決するためには、国際ルールの遵守に加え、海洋の状況を適切に把握し、海洋の諸現象をよりよく理解することも欠かせない。我が国は、二国間での取組に加え、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO/IOC*25*)を始めとする多国間の国際的な枠組の下、包括的な海洋観測網の構築に貢献するとともに、これらの観測を通じて科学的知見を得るように努め、科学的知見が得られる限りは、それに基づき決定される政策によって海洋の諸課題に対処していく。また、「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」(2021~2030)の宣言を踏まえ、当該10年の実行計画策定及びその実施に積極的に関与し、SDGsの達成に向けて我が国として貢献する。

 我が国は、これら「海における法の支配」及び「科学的知見に基づく政策の実施」といった原則を、自国のみならず、国際社会全体の普遍的な基準として浸透させるべく活動し、これらの取組を通じて我が国の国益の実現を図る。

(6)海洋人材の育成と国民の理解の増進

 海の恵みを子孫に引き継ぎ、海洋立国を実現するためには、その基盤となる海洋人材の育成が重要である。

ア 子どもや若者に対する海洋に関する教育の推進

 海洋人材の育成は、幼少期から小学校・中学校・高等学校(以下「高校」という。)の初等中等教育段階における国土や産業の理解、気候に関する科学的理解、我が国の歴史と海との関わりについての理解を深めるなど、体験活動を含めた海洋に関する教育を推進することを通じて、海に親しみを持ってもらう中で、海に関わる産業の存在や、その重要性を認識すること等により関心を持つところから始まる。

 このため、小学校、中学校、高校の学習指導要領において、海洋に関する教育についての指導の充実が図られたことも踏まえ、引き続き、学校における海洋に関する教育を推進する。

イ 海洋立国を支える専門人材の育成と確保

 多くの若者が高校、高等専門学校(以下「高専」という。)、大学等の進路選択をする際に重視するのは、卒業後のキャリアパスである。このため、優秀な人材を確保する上で、海洋人材を目指す若者が、海洋に関連する高校、高専、大学等に進学することを通じ、魅力ある就職先を明確にしていくことが必要である。

 また、海洋産業は世界に拡がっており、その振興については、世界中の技術・人材を活用して進めていく必要があることから、世界のネットワーク上での技術・ビジネス情報の集積を図りながら、研究開発・教育・人材育成を同時に中長期的な視点を持って進める。さらに、海洋人材の育成は、受け皿である海洋産業の振興と併せて取組を進めることが必要であり、海洋資源開発関連産業においては、世界各地のグローバルな環境で業務が行われることに留意して、国際的に通用する技術者等の人材の育成が急務である。その際、海洋産業を牽引する人材として、産業政策の企画立案・執行に係る能力、国際政治・国際経済・国際法に係る知識、契約や交渉等に係る専門的知識、産業投資マインド等を含む文系的素養を有する人材の育成も図るとともに、海洋産業の無人化・省人化、生産性革命の実現に向けて、海洋分野におけるIoT、ビッグデータ等を取り扱える人材の育成・確保も推進していく。

 さらに、女性の活躍を見据えた意識改革及び施設・設備の整備を進め、海洋産業を志す若者が働きやすい労働環境を実現することが、持続可能な産業として発展させる鍵となる。

ウ 海洋に関する国民の理解の増進

 海洋に関する国民の理解増進に当たっては、「海洋」、すなわち活躍の舞台は「世界」であるという外向きの海洋国家観が、学生や青少年に広く浸透することが重要である。その際、「海の日」制定の意義を踏まえ、海の日の更なる活用方策を検討するとともに、国民が海を身近に感じられるよう、安全への配慮等も含め、海洋に実際に触れ合う機会を充実させる。また、「海に親しむ」のみならず、海と人との共生や地政学の観点も踏まえ、海洋に係る我が国の位置付けについても体系的にその知識の普及を図る。


第2部 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

1.海洋の安全保障

(1)我が国の領海等における国益の確保

ア 我が国自身の抑止力・対処力及び海上法執行能力の向上

 ○防衛省・自衛隊については、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に基づき防衛力整備を着実に実施していく。特に、南西諸島を含む島嶼{しょとルビあり}部への部隊配備等により、島嶼{しょとルビあり}部における防衛態勢・体制の充実・強化を図る。(防衛省)

 ○海上保安庁については、「海上保安体制強化に関する方針」に基づき、着実に海上法執行能力の強化を図っていく。特に、尖閣領海警備体制の強化等については、緊急的に整備を進める。(国土交通省)

 ○水産庁については、漁業取締本部を設置し、本部体制の下、漁業取締能力の強化を図っていく。さらに、海上保安庁と水産庁の連携を強化し、悪質・広域化する外国漁船等の違法操業への対応能力を高めていく。(農林水産省)

 ○弾道ミサイル等の発射の際に、日本近海で航行・活動する船舶への自動化等を通じた迅速な情報伝達手段の整備を進める。(農林水産省、国土交通省)

 ○不審船・工作船対応能力を維持・向上するため、情報収集分析体制の強化や不審船対応訓練を継続的に実施するとともに、不測の事態へのシームレスな対応が可能となるよう防衛省・自衛隊と海上保安庁の連携を一層強化する。(国土交通省、防衛省)

 ○海上犯罪を未然に防止するため、引き続き監視・取締りを行う。特に、国内密漁事犯・外国漁船等の違法操業、海域への廃棄物の投棄等の海上環境事犯、薬物・銃器等の密輸・密航事犯に対する監視・取締り、外国人活動家等による領海侵入事案及び不法上陸事案の対応に引き続き取り組む。また、これらに的確に対応するため、海上保安庁の巡視船艇・航空機、水産庁取締船等及び警察用船舶・航空機等の整備を含め、必要な人員、体制の確保及び輸送手段を含む装備資機材等の整備を推進する。加えて、海上保安庁と水産庁の連携を強化するなど海上犯罪取締りに関する関係機関間での連携を強化する。(警察庁、法務省、財務省、農林水産省、国土交通省)

 ○諸外国等が関与する我が国の同意を得ていない海洋調査活動の活発化に対し、現場海域における海上保安庁の巡視船等による中止要求や外交ルート等を通じた抗議・申入れを行うなど、適切に対処していく。(外務省、国土交通省)

 ○漂着・漂流船の監視・警戒等を適切に実施することも含め、我が国の沿岸や離島の安全を確保するため、治安維持活動等に従事する要員の増員、装備資機材等の整備、海上保安庁・警察等の円滑かつ緊密な情報共有等による連携体制の構築等をより一層着実に推進する。併せて、漂着者を介した感染症のまん延の恐れを踏まえ、検疫の面で適切に対応するとともに、地方公共団体・関係機関等との連携の強化により、関係者による迅速な情報共有体制を確保する。このほか、北朝鮮籍と見られる漂着木造船等の処理が円滑に行われるよう対応する。(警察庁、財務省、厚生労働省、国土交通省、環境省)

 ○海上におけるテロ対策として、関係機関が連携し、テロ関連情報の収集・分析、我が国に入港する船舶の安全確認、水際におけるテロ対策、臨海部の原子力発電所、石油コンビナート等の危険物施設及び米軍施設等の重要施設に対する監視警戒を適切に実施するとともに、核燃料輸送船に対する警備体制の強化を図る。特に、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に当たり、海上におけるテロや犯罪行為の未然防止等の不測の事態へ適切な対応が可能な体制を整備する。(警察庁、法務省、財務省、国土交通省)

 ○国際法及び国内法に基づき、国際航海船舶及び国際港湾施設における保安対策を着実に実施する。(国土交通省)

イ 外交的取組を通じた主権・海洋権益の確保

 ○脅威の出現を未然に防ぐための外交的取組を強化していくとともに尖閣諸島周辺海域における中国公船等の領海侵入、排他的経済水域における中国等が関与する我が国の同意を得ていない海洋調査活動、北朝鮮による弾道ミサイルの発射といった我が国の主権及び海洋権益が脅かされる事態が発生した場合には、我が国は外交ルート等を通じて、迅速な抗議・申入れを行っており、今後とも問題の平和的解決のために粘り強い外交努力を行っていく。(外務省)

 ○我が国の主権に関連して、ロシアにより法的根拠のない形で占拠されている北方領土及び韓国による不法占拠が続いている竹島をめぐる問題に関し、引き続き外交的解決を目指し取り組んでいく。(外務省)

 ○我が国を取り巻く海洋の安全保障に関する環境を安定させ、不測の事態を防ぐため、沿岸国との海洋の安全保障に関する対話・協議・協力のチャンネルを重層的に構築していく。(外務省)

 ○周辺国等との間で排他的経済水域、大陸棚等の境界が未画定である中、相手国の国民及び漁船に対して取締り等の措置をとらないこととしている日韓・日中漁業協定上の暫定水域等において資源管理が適切に行われるようにすることを含め、我が国の法的立場や海洋権益が損なわれることがないよう、外交努力を積み重ねていく。

(外務省、農林水産省)

ウ 同盟国・友好国との連携強化

 ○同盟国である米国に対しては、平素における各種交流や情報共有、演習等を通じ、幅広い海洋の安全保障の分野における日米間の更なる連携強化に努め、長期的かつ安定的な米軍のプレゼンスを確保するとともに、友好国との連携を強化していく。

(外務省、防衛省)

エ 情報収集・分析・共有体制の構築

 ○海洋監視体制の充実を図るため、衛星による情報収集の取組や省人化・無人化を考慮した装備品等の研究や導入を推進していく。(内閣官房、国土交通省、防衛省)

 ○主として防衛省・自衛隊、海上保安庁及び内閣官房(内閣情報調査室)等が保有する艦艇、巡視船艇、測量船、航空機、情報収集衛星等や沿岸部設置のレーダー等の効率的な運用と着実な増強に加え、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA*26*)の先進光学衛星(ALOS-3*27*)、先進レーダー衛星(ALOS-4)、超低高度衛星技術試験機(SLATS*28*)等の各種衛星及び民間等の小型衛星(光学衛星・SAR*29*衛星)等の活用も視野に入れ、また、同盟国や友好国等と連携し、我が国領海等における海洋監視情報収集体制を強化していく。(内閣官房、内閣府、外務省、財務省、文部科学省、国土交通省、防衛省)

 ○我が国の排他的経済水域・大陸棚を始め、我が国周辺海域における海洋権益確保の戦略的観点から、我が国の海域の総合的管理に必要なものや境界画定交渉に資するものを含め、必要な情報の調査・収集に努める。(内閣府、外務省、国土交通省)

 ○海洋監視情報共有体制に関しては、防衛省・自衛隊と海上保安庁との間の情報共有システムの整備を進め、両者間の情報共有体制を充実させていく。(国土交通省、防衛省)

 ○平素における脅威・リスクの増大傾向に対応する観点から、「海上保安体制強化に関する方針」に基づき、海上保安庁の海洋監視体制を重点的に強化していく。(国土交通省)

 ○重要な離島及びその周辺海域における監視・警戒を強化する。(国土交通省、防衛省)

オ 海上交通における安全の確保

 ○船舶安全性の向上、航行安全確保、海難等の未然防止のための適切な体制・制度の整備や、船舶検査や外国船舶の監督(PSC*30*)の着実な実施、海運事業者に対する運輸安全マネジメント評価の継続的な実施による安全管理体制の構築、事故や災害の発生した際の救助等、さらに、航行に関する安全情報等の周知や航路標識の整備・管理・運用といった、船舶交通の安全確保を始めとする海上安全のための施策や、事故や災害等が発生した際の対応のための施策に取り組む。また、民間団体・関係行政機関と緊密に連携し、安全指導を含め、海難防止に関する意識の向上等、海難防止対策を推進する。(国土交通省)

 ○船舶など海上交通の安全に資するため、海上風・濃霧等の気象の状況、波浪・海面水温等水象の状況を観察し、これらに関する実況、あるいは予報・警報等の情報を適時・的確に発表するための体制、施設及び設備の維持・充実を図る。(国土交通省)

 ○社会的影響が著しい大規模海難の発生を未然に防止するため、海上交通センター等による航行船舶の安全に必要な情報提供、船舶に対する指導等を行う。また、これらを適切かつ効果的に実施するため、同センターの機能充実を図る。さらに、発生時に迅速かつ的確に対応するため、海難救助体制、海上防災体制の充実・強化を図り、対応に万全を期す。また、民間組織との連携を図るとともに、近隣諸国との協議・訓練を的確に実施し、連携を強化する。(国土交通省)

 ○船舶事故や自然災害により救助の必要が生じた際に、遭難者の位置特定に多くの時間を要するという現状に鑑み、位置情報の把握が難しい小型船舶を含む船舶等の位置を把握できる体制を構築する。また、こういった事案への適切な対応のための、関係府省間の情報共有体制を確立する。(内閣府、農林水産省、国土交通省、防衛省)

 ○海上交通の安全を確保するため、「海洋速報」として海況情報をインターネットで提供するとともに、船舶交通が輻輳{ふくそうとルビあり}する狭水道における潮流の観測体制と情報提供体制を強化する。(国土交通省)

 ○電子海図・航海用刊行物を活用した船舶交通の安全性を向上するため、国際水路機関(IHO*31*)における国際ルールの策定に積極的に参画し、利便性の高い航海安全情報の提供方法を検討するとともに、電子海図等の情報充実と高機能化に取り組む。(国土交通省)

 ○海難事故の発生した際の巡視船や航空機による捜索救助活動や流出油の防除活動を迅速かつ的確に実施するため、関係省庁連携の下、海象データの不足海域の解消、データを管理するシステムの強化、予測モデルの改良等による漂流予測手法の改善を進め、漂流予測を正確に行う。(国土交通省)

カ 海洋由来の自然災害への対応

 ○津波・高潮等の海洋由来の大規模な災害の発生時等の非常事態等に備えて、過去の教訓に基づき適切な司令塔のあり方について検討を行う。特に、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に当たり、大規模な自然災害へ適切な対応が可能な体制を整備する。(内閣府、国土交通省、防衛省)

 ○海洋由来の自然災害については、未然にこれら全てを防ぐことは難しいため、平素からの被害軽減のための観測・調査を継続するとともに、被害軽減のための施策に取り組む。(内閣府、文部科学省、農林水産省、国土交通省)

 ○海洋由来の自然災害への対策については、災害の未然防止、災害の被害予測、災害発生時における被害の拡大防止、被災者の救助活動の強化及び災害の復旧等の観点から、必要な対策・措置に取り組む。(内閣府、文部科学省、農林水産省、国土交通省)

 ○津波・高潮等による被害をできる限り軽減するため、海岸堤防の整備や耐震化、水門等の統廃合や自動化・遠隔操作化等の海岸保全施設等の整備を推進するとともに、施設の適切な維持管理、海岸防災林の整備等を推進する。また、大規模津波に対しても減災機能を発揮する「粘り強い構造」を有する堤防の整備を推進する。さらに、国土保全の観点から、砂浜保全等の侵食対策を推進する。(農林水産省、国土交通省)

 ○最大クラスの津波・高潮等から人命を守るため、津波災害警戒区域の指定等による津波防災地域づくりを推進し、国において関係部局が一体となって都道府県や市町村への支援体制を構築する。また、三大湾等における最大クラスの高潮浸水想定区域等の指定を推進する。(農林水産省、国土交通省)

 ○気候変動に伴い想定される高潮偏差の増大、波浪の強大化や海面水位上昇といった災害リスク増大に備えるため、沿岸域における国土の保全についての適応策を検討する。(農林水産省、国土交通省)

 ○大規模地震や津波等の影響により、倒壊、損傷が生じるおそれのある航路標識等の耐震・耐波浪対策を図るとともに、災害情報等の提供の充実強化を図る。(国土交通省)

 ○大規模地震時の緊急物資輸送等を確保するため、港湾における岸壁及び護岸等の耐震化を図る。(国土交通省)

 ○非常災害時における国による港湾施設の管理制度等を踏まえた訓練や基幹的広域防災拠点の運用体制の強化を図るとともに、港湾事業継続計画(BCP*32*)の改善や広域港湾BCPの策定を推進する。さらに、港湾の堤外地等における高潮対策を推進する。(国土交通省)

 ○迅速に緊急支援物資等の海上輸送を行うための体制の強化を図る。また、大規模災害時の輸送等に重要な役割を果たす民間船舶について、地方公共団体と事業者等が連携して、緊急輸送活動等に船舶を活用するための環境整備を進める。(国土交通省)

 ○東日本大震災を踏まえた港内における船舶の津波等に対する安全対策を始め、災害対策について検討を行い、港則法による避難の勧告等を効果的に運用していく。今後、より早く確実な情報伝達体制の構築に取り組むとともに、実践的な訓練の実施に基づく見直しを推進する。(国土交通省)

 ○津波、高潮等の状況を観測し、これらに関する実況あるいは予報・警報等の情報を適時・的確に発表する。また、情報の内容の改善、情報を迅速かつ適切に収集・伝達するための体制及び施設、設備の充実を図る。(国土交通省)

(2)我が国の重要なシーレーンの安定的利用の確保

ア 我が国の重要なシーレーンにおける取組

 ○シーレーン沿岸国に対する能力構築支援や、国際機関への要員派遣等の取組のほか、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動等の国際協力活動への参加、その他の平素の交流を通じてシーレーン沿岸国等との信頼関係や協力関係を構築するとともに、海上法執行能力向上支援、様々な機会を捉えた海上自衛隊の艦艇による寄港や巡視船の派遣、共同訓練等を全省庁横断的に連携して進めていく。(外務省、国土交通省、防衛省)

 ○国際社会と連携し、ソマリア沖・アデン湾での海賊対処行動を引き続き実施する。また、現在、我が国の海賊対処行動部隊が拠点を置くジブチは、西インド洋及び紅海を臨む要衝であることに鑑み、これまでの活用実績も踏まえつつ、同拠点を一層活用するための方策を検討していく。連合海上部隊(CMF*33*)と連携した情報収集や、ソマリア沖海賊対策コンタクト・グループ(CGPCS*34*)、第151連合任務部隊(CTF151*35*)等の国際的な協力枠組を通じて、関係国との連携の強化を図る。さらに、ソマリア及びソマリア周辺国の海上保安機関の能力向上及び海賊訴追・取締能力向上のため、国際機関を通じた支援及び二国間での支援を引き続き実施する。(外務省、国土交通省、防衛省)

 ○日本の国際海事機関(IMO*36*)を通じた支援により建設されたジブチ地域訓練センター(DRTC*37*)を、地域の海上法執行能力向上等を目的とした拠点として積極的に活用していく。(外務省)

 ○海賊対処法の適切な執行を実効的に行うとともに、「海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法」(平成25年法律第75号)に基づく民間武装警備員による所要の乗船警備を推進する。また、諸外国の海上法執行機関等との連携・協力の強化やシーレーン沿岸国の海上法執行機関に対する能力構築支援等に取り組む。(外務省、国土交通省、防衛省)

 ○アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP*38*)に基づく海賊情報の共有及び関係国と引き続き連携した航行援助施設の維持管理に関する協力並びに人材育成等を通じて、マラッカ・シンガポール海峡等における海賊対策、航行安全対策を実施する。また、近年、スールー海・セレベス海における船員誘拐事案が頻発しており、同海域を航行する船舶の脅威となっているところ、沿岸国の監視能力向上支援や海上法執行能力向上支援を行っていく。(外務省、国土交通省)

 ○太平洋島嶼{しょとルビあり}国においても違法漁業対策や組織犯罪対策等を念頭に海上法執行能力

の向上支援を推進する。(外務省、国土交通省)

 ○我が国にとって、重要なシーレーンにおける脅威・リスクの存在を踏まえ、シーレーンを航行する我が国関係船舶の安全確保のあり方について、海上交通の要素も含め、平素から関係省庁間で検討していく。(外務省、国土交通省、防衛省)

イ 情報収集・集約・共有体制の強化

 ○我が国が単独でシーレーンの情報を網羅的に収集することは極めて困難であることから、我が国自身の努力に加え、同盟国、友好国等との協力体制を構築し、各国との連携やシーレーン沿岸国の海洋監視情報収集に係る能力向上に資する協力を推進する。(内閣府、外務省、国土交通省、防衛省)

 ○優先度を付けつつ、二国間、多国間の取組への関与を積極的に進めるために、我が国としても各国への海洋監視情報提供のあり方等の検討を進めるとともに、保全措置を含めた海洋監視情報提供に係る適切な体制を構築していく。(内閣府、外務省、国土交通省、防衛省)

ウ 能力構築支援等

 ○同盟国・友好国・国際機関とも連携して、シーレーン沿岸国に対する能力構築支援等、装備・技術協力を含め、海洋における規律強化の取組を推進していく。(外務省、国土交通省、防衛省)

 ○同盟国・友好国と連携しつつ、能力構築支援、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力を始めとしたビエンチャン・ビジョン(日ASEAN防衛協力の指針)に沿ったASEAN全体の能力向上に資する協力を推進していく。(防衛省)

 ○シーレーン沿岸国の海上法執行能力の向上を図るため、海上保安庁は、アジア地域における対話と連携の場として「アジア海上保安機関長官級会合」を主導するとともに、海上保安庁モバイルコーポレーションチーム*39*を活用し、同盟国・友好国等と連携した能力向上支援等を推進していく。(国土交通省)

 ○シーレーン沿岸国の能力向上のための支援を行うに当たっては、その具体化に向けて、対象となる沿岸国の能力及び当該国のニーズを適切に調査・評価し、関係国・機関が強化すべき能力分野を明らかにした上で支援を行う等、政府全体として、より戦略的・効率的な支援を追求していく。そのため、関係省庁が行っている支援の現状を適切に共有できる体制を構築する。(外務省、国土交通省、防衛省)

 ○上記関連支援の具体的な実施に際しては、同盟国である米国や、友好国、関係諸国との実務レベルでの連携強化の上、支援の調整を行い、不必要な重複を避け、効果的かつ効率的な支援を継続的に追求する。(外務省、国土交通省、防衛省)

(3)国際的な海洋秩序の強化

ア 「法の支配」の貫徹に向けた外交的取組の強化

 ○G7、東アジア首脳会議(EAS*40*)、ASEAN地域フォーラム(ARF*41*)、拡大ASEAN国防相会議(ADMM*42*プラス)といった国際的な枠組を活用した関係国・機関との連携に引き続き積極的に取り組んでいく。(外務省、防衛省)

 ○国際的な海洋秩序の形成に初期段階から積極的に関与するとの観点から、海洋関連の国際機関におけるトップを含む幹部ポストの確保及び日本人職員増加のための取組を引き続き行っていく。(外務省、国土交通省)

 ○国際法に基づく我が国の主張の効果的展開のため、我が国が主催する国際会議や国際法模擬裁判等の実施を通じ、諸外国の法律家と連携を強化し、人材育成に貢献していく。(外務省)

 ○アジア諸国の海上保安機関の相互理解の醸成と交流促進により、海洋の安全確保に向けた各国の連携・協力、認識共有を図ることを目的とした「海上保安政策課程」を通じ、アジア諸国の海上保安機関職員の能力向上支援を行っていく。(国土交通省)

イ 戦略的な情報発信の強化

 ○我が国の海洋の安全保障の政策に関して、政府としての統一的なメッセージを出すべく関係省庁の連携を密にし、効果的かつ戦略的な情報発信を強化していく。(外務省)

 ○国際的な港湾は、開放的で、透明で、非排他的な運営の確保という国際スタンダードに適合的なものであるべきとの発信を積極的に行っていく。(外務省)

 ○日本海呼称問題については、我が国領海等における安全保障を確保する前提として、当該海域の呼称に対する正しい理解と我が国の立場への支持を確実に広めるべく、情報発信の強化等の外交努力を引き続き行っていく。(外務省)

ウ 政府間の国際連携の強化

 ○法とルールが支配する海洋秩序に支えられた「自由で開かれた海洋」の維持・発展に向け、防衛当局間においては、二国間・多国間の様々なレベルの安全保障対話・防衛交流を活用して各国との海洋の安全保障に関する協力を強化し、海上保安機関間においては、地域の枠組を超えた「世界海上保安機関長官級会合」等の多国間の枠組を活用し、基本的な価値観の共有を推進していく。また、拡散に対する安全保障構想(PSI*43*)を始めとする大量破壊兵器等の拡散防止に係る国際協力に積極的に参画する。(警察庁、外務省、財務省、国土交通省、防衛省)

 なお、第1部で述べた海洋の安全保障の強化に貢献する基層となる施策については、以下の各項において、記載する。


2.海洋の産業利用の促進

(1)海洋資源の開発及び利用の促進

ア メタンハイドレート

 ○日本周辺海域に相当量の賦存が期待されるメタンハイドレートについて、我が国のエネルギー安定供給に資する重要なエネルギー資源として、将来の商業生産を可能とするための技術開発を進める。その際、平成30年代後半に民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指して、国は産業化のための取組として、民間企業が事業化する際に必要となる技術、知見、制度等を確立するための技術開発を行う。(経済産業省)

 ○メタンハイドレート開発の持つエネルギー安全保障上の意義に鑑み、外部環境の変化を考慮しながらも、産業化に向けた持続的な開発の推進及び成果の蓄積・維持に努める。その際、技術課題、方法論、スケジュール等の開発の具体的な計画及びその長期的な見通し等については、従来どおり海洋基本計画に基づき策定された「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定することにより、明らかにする。(経済産業省)

 ① 砂層型メタンハイドレート

 ○砂層型のメタンハイドレートについては、これまでの研究成果を適切に評価した上で、長期間の安定生産を実現するための生産技術の確立、経済性を担保するための資源量の把握、商業化を睨んだ複数坑井での生産システムの開発等について取り組む。その際には、国が行う研究開発の内容については情報開示に努め、オープンイノベーションの観点から、民間企業の優れた知見を最大限取り込むことができる体制を構築する。さらに、研究内容をステージごとに区分し、次のステージに移行する条件を明確にすることで、プロジェクト管理のPDCAサイクルを確立する。(経済産業省)

 ② 表層型メタンハイドレート

 ○表層型のメタンハイドレートについては、広く技術的な可能性に機会を与え、回収・生産技術の調査研究を引き続き行うとともに、有望な手法が見つかった場合には研究対象を絞り込み、商業化に向けた更なる技術開発を推進する。(経済産業省)

 ○海底下の地層における表層型メタンハイドレート分布、形態の特徴等を解明するための海洋調査を実施する。(経済産業省)

イ 石油・天然ガス

 ○日本周辺の海域における探鉱活動を推進するため、平成31年度からも引き続き、三次元物理探査船を使用した国主導での探査(おおむね5万km2/10年)を機動的に実施する。併せて、民間企業による探査にも同船を積極的に活用するなど、より効率的・効果的な探査を実現し市場での競争力を高めるため、世界水準の機器・技術の導入も含めた体制構築を進める。また、有望な構造への試掘機会を増やすための検討を行う。(経済産業省)

ウ 海洋鉱物資源

 ① 海底熱水鉱床

 ○国際情勢を睨みつつ、平成30年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう、資源量の把握、生産技術の開発、環境影響評価手法の開発、経済性の評価及び法制度のあり方の検討を行う。(経済産業省)

 ○資源量については、事業者が参入の判断ができるレベルとして5000万トンレベルの資源量把握が必要である。これに関して、SIP「次世代海洋資源調査技術」では、活動的な海底熱水鉱床周辺の潜頭性鉱体等、現在の探査技術では発見が困難な鉱床に適用可能な技術を開発している。このような技術の活用も含めて、民間企業とも協力しながら、資源量把握に積極的に取り組む。(内閣府、経済産業省)

 ○生産技術については、これまでの取組において採鉱・揚鉱・選鉱・製錬の各段階で、深海という特性に起因する陸上鉱山開発と異なる困難性が明らかになってきた。この困難性を克服するための技術課題について、将来の商業化システムをイメージしながら課題の解決に取り組み、今後の採鉱・揚鉱分野における試験の見通しについても「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定して明確にしつつ、技術面での課題の解決に一定の目処をつける。(経済産業省)

 ○環境影響評価など民間企業が商業化を判断するに際して必要となる法的枠組については、国際ルールとの整合性を確保する観点から、SIP「次世代海洋資源調査技術」での成果も考慮に入れて、関係機関とも連携しながら国際ルールの策定作業に貢献していく。(内閣府、経済産業省)

 ○平成30年度以降の取組について、国際ルールの策定作業の進捗や経済性・市況等の外的要因も考慮に入れた総合的な検証・評価を行い、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定して明らかにする。(経済産業省)

 ② コバルトリッチクラスト及びマンガン団塊並びにレアアース泥

 ○コバルトリッチクラストについては、国際海底機構(ISA*44*)の規則に定められた期限までに鉱区の絞込みを行う。マンガン団塊については、ISAの規則に定められたルールに従った調査を行う。また、採鉱及び揚鉱等の要素技術の検討を行うとともに採鉱システム及び揚鉱システムの概念設計の検討を行う。(経済産業省)

 ○南鳥島周辺海域で賦存が確認されているレアアース泥については、将来の開発・生産を念頭に、まずは、各府省連携の推進体制の下で、SIP「革新的深海資源調査技術」において、賦存量の調査・分析を行うとともに、広く海洋鉱物資源*45*に活用可能な水深2000m以深の海洋資源調査技術、生産技術等の開発・実証の中で取組を進める。(内閣府、文部科学省、経済産業省、国土交通省)

 ○平成30年度以降の取組について、国際ルールの策定作業の進捗や経済性・市況等の外的要因を考慮に入れた総合的な検証・評価を行い、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定して明らかにする。(経済産業省)

 ○SIP「革新的深海資源調査技術」において、広く海洋鉱物資源45に活用可能な水深2000m以深の海洋資源調査技術、生産技術等の開発・実証に向けた取組を進める。(内閣府、文部科学省、経済産業省、国土交通省)

エ 海洋由来の再生可能エネルギー

 ① 洋上風力発電

 ○陸上風力の導入可能な適地が限定的な我が国において、洋上風力発電の導入拡大が不可欠である。一般海域において洋上風力発電の整備に係る海域の利用の促進を図るため、関係者との調整の枠組を定めつつ、事業者の予見可能性の向上により事業リスクを低減させる等の観点から、海域の長期にわたる占用等を可能とする制度整備を行い、円滑な制度の運用に努める。そのため、まず、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域利用の促進に関する法律案」を平成30年3月に閣議決定し、国会に提出したところであり、引き続き適切に取組を進めていく。また、洋上風力発電事業の円滑な建設・維持・管理・運営の見地から、系統制約の克服、事業支援体制の確保等必要に応じた環境整備を行う。(内閣府、経済産業省、国土交通省)

 ○洋上風力発電の最大限の導入拡大と国民負担の抑制を両立するため、発電コストを一層低減させつつ、長期エネルギー需給見通しの水準の実現を目指して、更なる導入拡大を図る。(経済産業省、国土交通省、環境省)

 ○我が国の洋上風力発電の導入拡大、発電コストの低減を図るため、一般海域や大規模な港湾区域で洋上ウィンドファームの開発を行う事業者に対し、風況調査や設計等の支援を行い、発電コストに係るデータを取りまとめる。また、専用船等を用いた施工手法を確立する。さらに、軽量な浮体・風車等による浮体式洋上風力発電システムの実証研究や、我が国の海底地形・地盤に適した施工技術等の実証研究を行うとともに、低コスト化につながる構造設計及び維持管理等の確立に向けた取組を行う。(経済産業省、国土交通省、環境省)

 ○環境影響評価の円滑な実施に向けて、必要な環境情報等を収集・整理し、既に公表・運用している環境基礎情報データベースの更なる拡充を図る。また、洋上風力発電の導入の円滑化のため、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルに関する情報の整備に引き続き取り組んでいく。(環境省)

 ○港湾における洋上風力発電設備の審査手続の合理化による事業者の負担軽減のため、洋上風力発電設備に関する技術基準、工事実施及び維持管理の方法に関する基準類を充実・深化させるとともに、民間機関と連携して円滑な審査を促進する。(経済産業省、国土交通省)

 ○洋上風力発電事業を目的とした海域利用の調整に当たっては、漁業者等との調整が円滑に図れるよう情報提供を行う。(農林水産省)

 ② 波力・潮流・海流等の海洋エネルギー

 ○これまでの研究開発の成果を踏まえて、実用化の見通しが高い技術を見極めながら、引き続き、経済性の改善、信頼性の向上等の技術開発、実証試験及び環境整備に取り組む。(経済産業省、環境省)

 ○電力供給コストが高い離島において、長期連続運転に係る性能や信頼性、コストデータ等の検証等を行うための実証研究に取り組みつつ、離島振興策との連携を図る。(内閣府、経済産業省、環境省)

(2)海洋産業の振興及び国際競争力の強化ア 海洋産業の国際競争力の強化

 ① 高付加価値化・生産性向上、及び産業構造の転換等

 ○造船の輸出拡大・海運の効率化を図る「i-Shipping*46*」と、海洋開発市場の獲得を目指し、資源の確保にも貢献する「j-Ocean*47*」からなる「海事生産性革命」を強力に推進する。(国土交通省)

 ○「i-Shipping」については、IoT活用船、LNG燃料船等の先進船舶の開発と普及を促進するとともに、船舶の設計や建造にもIoT、自動化技術等を取り入れ、造船業の生産性の向上を図る。また、自動運航船の実現に向けた取組を強力に推進する。(国土交通省)

 ○「j-Ocean」については、ユーザーニーズに応じた高付加価値製品の開発支援やAUVのような我が国が先進性を有する技術の普及に向けた環境整備を行うとともに、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN*48*)等の政策金融ツールを活用して海洋開発分野への進出をファイナンス面から支援する。(国土交通省)

 ○我が国造船業が世界市場におけるトップシェアを獲得するため、更なる生産性の向上と国内における業界再編など、事業基盤の強化を進める。また、新たな市場・ビジネスに対応できる技術・人材を確保するため異業種との連携により産業構造の変革を加速する。そのため、国内における造船業の合併・統合等に向けた動きや異業種との連携に対し、各社の経営戦略に応じて「産業競争力強化法」(平成25年法律第98号)に基づく税制上の措置等を活用して支援する。また、我が国造船事業者の海外進出や海外造船事業者との連携等の国境を越えた事業展開については、これまで我が国造船業が輸出拡大や地方創生に果たしてきた役割等を勘案しつつ、今後のあり方を検討する。(国土交通省)

 ○我が国造船・舶用工業の受注力を強化するため、新たな船舶の排ガス規制に対応して、船舶からの二酸化炭素、排出ガス(NOx及びSOx)等の環境負荷低減等に取り組み、船舶の高付加価値化を図る。(国土交通省)

 ○健全な造船市場の構築、公正な競争条件の確保等のため、OECD*49*造船部会において規律の制定に努める。(国土交通省)

 ○我が国全体と地域の経済・産業・生活を物流面から支えるため、海上輸送拠点となる港湾の整備を行うとともに、川上(計画策定段階)から川中(整備段階)、川下(管理・運営段階)に至るまで、我が国の経験、技術、ノウハウを活かし、官民連携による質の高い港湾インフラシステムの海外展開を推進する。特に、港湾の運営については、シーレーンの安全確保の観点からも重要であるため、我が国の港湾運営企業によるノウハウを活かした運営参画が進むよう、案件発掘体制の強化等の取組を行う。(国土交通省)

 ○港湾工事における建設現場の生産性向上等に向けて、測量から施工、検査、維持管理に至る建設プロセス全体に3次元データを活用するほか、水中施工機械の遠隔操作化などICT*50*等の新技術の活用を促進し、「i-Construction*51*」の取組を推進する。(国土交通省)

 ○我が国の熟練技術者が誇る世界一の本船荷役能力を最大限活かしつつ、AI、IoT、自働化技術を組み合わせることで、コンテナターミナル全体の生産性を飛躍的に向上させ、世界最高水準の生産性を有し、労働環境の良い「AIターミナル」の実現を推進する。(国土交通省)

 ○地震・津波に対する脅威やインフラの老朽化に対しては、港湾施設の定期的な点検を通じた戦略的な維持管理・更新を推進するとともに、海象情報の観測技術の向上や耐震強化岸壁など港湾施設における技術開発が不可欠であり、国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所等を通じた取組を推進する。(国土交通省)

 ○日本企業の実績不足を補うため、「海洋資源開発技術プラットフォーム」や技術開発支援制度を活用して技術力の蓄積に努める。(国土交通省)

 ○我が国造船業・舶用工業・海運業の新市場・新事業への展開を図るため、政府開発援助(ODA*52*)、国際協力銀行、JOIN等を活用しつつ、新興国における船隊整備、海洋開発等の取組を支援する。(外務省、国土交通省)

 ② 海洋資源開発関連産業の戦略的展開

 ○SIP「次世代海洋資源調査技術」で開発した統合海洋資源調査システムを、平成30年度までに未調査海域の実証運用等により実用レベルで確立させるとともに、民間への技術移転を完了し、SIP「次世代海洋資源調査技術」終了後に技術移転を受けた民間企業等が、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC*53*)や新規事業参入者を含む国内資源探査案件及び海外資源探査案件を受注できるよう、民間企業等の体制を構築する取組を進める。(内閣府)

 ○海洋鉱物資源の調査に用いる基盤技術の開発や海底熱水鉱床の成因解明と調査手法の構築など、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC*54*)が行う海洋鉱物資源関係の研究開発を着実に推進するとともに、その成果の産業界への移転を促進する。(文部科学省)

 ○海洋産業は理学や工学を含めた広範な総合的研究開発型産業であることに鑑み、世界とともに研究開発を効率的に進めるとともに総合的な技術力を強化するため、大学・国立研究開発法人等の研究機能を強化する。(文部科学省、国土交通省)

 ○民間企業等への技術移転につながる取組及び民間企業等との共同研究開発を推進し、国際標準化を見据え、調査の効率化・精緻化を図るためのセンサー開発やAUV・遠隔操作型無人探査機(ROV*55*)等の機器開発に取り組む。(文部科学省)

 ○深海・深海底等の極限環境下における未知の有用な機能、遺伝資源等について研究開発を推進するとともに、イノベーション創出を加速させるため、JAMSTEC等での調査で得られた深海泥等の試料については積極的に民間企業等への提供を推進する。(文部科学省)

 ○民間企業のニーズと研究開発現場におけるシーズをつなぐため、分野を超えたオープンイノベーションの取組が重要であり、コーディネータ機能、サービス提供機能、知的財産・契約業務体制等を強化し、分野横断的な研究開発を推進する。

(文部科学省)

 ○SIP「次世代海洋資源調査技術」で取り組んできた海洋資源に関する研究開発の成果の活用の観点から、開発途上国との海洋資源に関する科学技術協力の促進につき検討する。(内閣府)

 ○我が国の海洋産業が世界の海洋資源開発市場へ参入できるよう、「海洋資源開発技術プラットフォーム」における海洋産業、資源産業及びその他関連産業の間での異業種連携を支援する。また、同プラットフォームにおける戦略的な取組を充実させるため、国立研究開発法人等の知見を活用して、同プラットフォームにおけるシンクタンク機能を強化する。(内閣府、経済産業省、国土交通省)

イ 海洋の産業利用の拡大

 ○明日の日本を支える観光ビジョン構想会議(議長:内閣総理大臣)において平成28年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」に掲げる「訪日クルーズ旅客を2020年に500万人」の目標実現に向け、既存ストックを活用し、ハード・ソフト両面の取組により、クルーズ船の受入環境の整備を推進するとともに、官民連携により国際クルーズ拠点の形成を図る。また、みなとオアシスや港湾協力団体を通じて、地域住民の交流や観光の振興による地域の活性化、近年増加する訪日クルーズ旅客の受入れなど多様なニーズに対応し、「みなと」を核とした魅力ある地域づくりを促進する。(国土交通省)

 ○「観光立国推進基本計画」(平成29年3月閣議決定)に掲げる「訪日外国人旅行者を2020年に4000万人」の目標実現に向け、クルーズ船受入の更なる拡充による訪日外国人旅行者の増加を図るため、関係者と協力・連携した訪日プロモーションを促進する。(国土交通省)

 ○マリン産業に関する長期成長戦略として産業界が掲げている「おおむね10年後を目途にボート・ヨット参加人口を100万名、ボート免許取得者を10万名へと倍増させる」という目標*56*の実現を支援するため、マリンレジャーの普及や理解増進等の多様な取組を、産学官等の連携・協力の下、実施する。(国土交通省)

 ○マリン産業の市場拡大と国民の接点を拡大していくため、「CtoSeaプロジェクト*57*」、ボートショー等を通じた海洋レジャーに関する情報発信、「海の駅」等を中心とした体験機会の拡大、気軽に楽しめる仕組みづくり等を支援する。(国土交通省)

 ○マリン産業事業者とその他関連事業者等との連携強化を支援するとともに、「海の駅」を拠点とした海洋観光及び海洋性レクリエーションの普及促進に努める。(国土交通省)

 ○離島における海洋深層水等の地域資源を活用した産業の振興を通じて、海洋産業の振興を図るとともに、再生可能エネルギーの利用の促進を図る。(内閣府、経済産業省、環境省)

 ○海洋に関する魅力ある地域資源を活用した観光地の魅力の向上を図る地域の取組と、それらの観光地を結びつける広域の取組を合わせて支援する。(国土交通省)

 ○二酸化炭素の回収・貯留(CCS*58*)については海洋環境の保全・管理を前提としつつ、事業者が円滑に事業を実施できる制度の下、技術の確立及びコストの低減に向けた分離、輸送、貯留及びモニタリング等の技術開発及び実証を着実に進める。(経済産業省、環境省)

 ○CCSの技術開発・実証と並行して、関係省庁は貯留適地の確保に努める。(経済産業省、環境省)

 ○CCSのコスト、環境保全、安全等様々な面での社会的受容性を獲得するため、関係省庁・事業者等は社会的認知向上に取り組む。(経済産業省、環境省)

 ○沿岸海底下におけるCCSは世界に先駆けた取組であることに鑑み、海外市場の獲得も視野に入れながら国際展開に取り組む。(経済産業省)

 ○海洋産業への参入促進を図るため、大学や国立研究開発法人発のベンチャー企業の創出促進に向けた支援を行う。(文部科学省)

(3)海上輸送の確保

ア 外航海運

 ○日本商船隊の国際競争力の確保及び安定的な国際海上輸送の確保を図るため、トン数標準税制の実施等を通じ、日本船舶・日本人船員を中核とした海上輸送体制の確保(外航日本船舶を平成30年度から5年間で1.2倍に増加させるとともに、事業者に対して日本人外航船員を平成30年度から10年間で1.5倍に増加させるための取組の促進)を図るとともに、最近の国際海運市場における一層の競争激化及び諸外国の外航海運政策も踏まえ、これまで以上に国際的な競争条件の均衡化等の取組を進める。また、この前提となる自由で公平な競争環境を確保するため、二国間対話等の場を通じて、諸外国の競争を阻害する規制政策の是正等を推進する。(国土交通省)

 ○訪日外国人旅行者を2020年に4000万人とする政府目標の達成に向けて、外航旅客船を利用する外国人旅行者が、ストレスフリーで快適に旅行できる環境整備等の推進に取り組む。(国土交通省)

イ 内航海運

 ○「内航未来創造プラン-たくましく日本を支え進化する-」(平成29年6月国土交通省公表)に従い、目指すべき将来像として「安定的輸送の確保」と「生産性向上」の2点を軸として位置づけ、これらの実現に向け「内航海運事業者の事業基盤の強化」、「先進的な船舶等の開発・普及」及び「船員の安定的・効果的な確保・育成」の3つの視点から整理された具体的施策を、今後、関係者が連携して推進し、本プラン全体の指標(内航貨物船の平均総トン数(2015年度715トンから2025年

度858トン)等)の達成状況を常に意識し、各施策について不断の見直しを図りつつ、その達成に向けて取り組む。(国土交通省)

 ○地域住民の移動手段や観光立国推進等の観点から、不可欠な交通インフラである国内旅客船・フェリーについても、離島航路の維持・確保はもとより、訪日外国人旅行者を始めとした観光需要の取り込みによる旅客船事業の活性化及び利用者の利便向上を図るために必要な取組(「船内Wi-Fiの整備」、「案内標識等の多言語化」等の導入)を推進する。(国土交通省)

 ○安定的な国内海上輸送を確保するため、国際的な慣行であるカボタージュ制度を維持する。(国土交通省)

ウ 海上輸送拠点の整備

 ○コンテナ船の大型化や船社間の連携による基幹航路の再編等、海運・港湾を取り巻く情勢が変化する中、我が国に寄港する基幹航路の維持・拡大を図るため、「国際コンテナ戦略港湾政策推進委員会最終取りまとめ」(平成26年1月)に基づき、「集貨」「創貨」「競争力強化」の3本柱の施策を総動員し、ハード・ソフト一体の国際コンテナ戦略港湾政策を深化・加速する。(国土交通省)

 ○資源・エネルギー等の安定的かつ効率的な海上輸送網の形成のため、国際バルク戦略港湾において大型船が入港できる岸壁等の整備を推進するとともに、企業間連携による大型船での共同輸送を促進する。(国土交通省)

 ○国際的な船舶の排出ガス規制の強化が進展し、排出ガスのクリーンなLNGを燃料とする船舶の増大が見込まれている。我が国は、世界最大のLNG輸入国であり、既存のLNG基地が多数立地していることから、シンガポールと連携しつつ、アジアにおけるLNGバンカリング*59*拠点を我が国港湾に戦略的に形成する。これにより、我が国港湾へのコンテナ船、自動車専用船等の寄港を維持・拡大し、我が国経済の国際競争力の強化を図る。(国土交通省)

 ○地域の経済・産業・雇用を支える自動車産業、農林水産業等の基幹産業の特性や輸送ニーズに応じた国際物流ターミナル、内貿ターミナル等の整備を推進する。(国土交通省)

 ○循環型社会構築の推進のため、リサイクルポート*60*を活用した循環資源利用のさらなる拡大のための取組を進める。(国土交通省)

 ○安全かつ安定的な海上輸送を確保するため、我が国の国際・国内海上輸送ネットワークの根幹を形成している開発保全航路*61*について、国が一体的に開発、保全及び管理に取り組む。(国土交通省)

(4)水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化

ア 水産資源の適切な管理

 ○国際的にみて遜色のないレベルでの国内における資源管理の高度化と国際的な資源管理を推進するため、その基礎となる資源調査を抜本的に拡充し、資源評価の精度向上を図る。その際、関係省庁・機関が収集している水産資源に関連する海洋データについて、情報共有を図りつつ、積極的な活用を図る。また、資源評価を受託実施している国立研究開発法人水産研究・教育機構の役割を資源評価の独立性の観点から明確化するとともに、評価手法や結果の透明性の確保に努める。(文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○漁獲量や漁獲金額等が多い主要な資源や広域資源及び資源状況が悪化している資源については、国が積極的に資源管理の方向性を示し、関係する都道府県とともに資源管理の効率化・効果的な推進を図る。(農林水産省)

 ○主要水産資源ごとに、維持すべき水準(目標管理基準)や下回ってはならない水準

(限界管理基準)といった、いわゆる資源管理目標等の導入を順次図る。(農林水産省)

 ○沖合漁業等の国際競争力の強化が喫緊の課題となっていることから、我が国漁業の操業実態や資源の特性に見合った形で、可能な限りIQ*62*(個別割当)方式を活用する。(農林水産省)

 ○遠洋・沖合漁業については、数量管理等の充実を通じて、既存の漁業秩序への影響も勘案しつつ、漁船の大型化等による生産性の向上を阻害せず、国際競争力の強化につながる制度に見直す。(農林水産省)

 ○太平洋クロマグロについては、資源の回復を着実に図るための制度・体制の充実に取り組むとともに、ニホンウナギ、ナマコ等を含む沿岸域の密漁については、悪質・巧妙な事例や広域での対応が必要となる事例もあることから、都道府県、警察、海上保安庁及び流通関係者を含めた関係機関との緊密な連携等を図る。また、資源管理措置の遵守を担保するため、取締体制の強化や海上保安庁等との連携を通じた取締りの重点化・効率化を図る。(農林水産省)

 ○商業捕鯨の早期再開を目指すため、国際捕鯨委員会のあり方に関する議論を関係国と進めるとともに、「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律」

(平成29年法律第76号)に基づき、鯨類科学調査を確実に実施する。また、我が国の立場に対する理解の拡大に引き続き取り組む。(農林水産省)

イ 水産業の成長産業化

 ○多様化する消費者ニーズに即した水産物の供給や持続可能な収益性の高い操業体制への転換等の課題に取り組む者を、効率的かつ安定的な漁業経営体となるべく育成し、今後の漁業生産を担っていく主体として位置づけることとし、これらの経営体に経営施策を重点化し、その国際競争力の強化を図る。(農林水産省)

 ○資源管理・収入安定対策に加入する担い手が、限られた水産資源を管理しつつ将来にわたって効率的に利用して、漁業生産の大宗(我が国漁業生産額のおおむね9割に相当)を担い、多様化する消費者ニーズに即し、安定的に水産物を供給し得る漁業構造を達成する。(農林水産省)

 ○各地域の実情に即した形で、自ら足りない部分を明確化し、それを克服し所得向上や競争力強化を示す具体的な行動計画である「浜の活力再生プラン」の実施により各浜の漁業所得を5年間で10%以上向上させることを目指す。その実施に当たっては、所得の向上に向けて着実にPDCAサイクルを回していくことが重要であり、優良事例や取組に当たっての課題を浜にフィードバックする。(農林水産省)

 ○漁業者が、必要とされる技術・ノウハウ・資本・人材を有する企業との連携を図っていくことは重要である。このため、国として、企業と「浜」*63*との連携、参入を円滑にするための取組を行うとともに、浜の活性化の観点から必要な施策について引き続き検討する。(農林水産省)

 ○漁船の高船齢化による生産性の低下等が問題となっており、高性能化、安全性の向上等が必要となっている。造船事業者の供給能力が限られている現状も踏まえ、今後、高船齢船の代船を計画的に進めていくため、漁業者団体が代船のための長期的な計画を示すとともに、国としても、このような計画の円滑な実施と国際競争力の強化の観点から、必要な支援を行う。(農林水産省)

 ○漁船等における居住環境の改善のため、高速インターネットや大容量データ通信等が可能となる高速通信の整備について、関係省庁等が連携して、効率的な普及に向けた検討を行う。(総務省、農林水産省、国土交通省)

ウ 流通機構の改革と水産物輸出の促進

 ○現在、既存の流通機構の枠を超えて消費者や需要者のニーズに直接応える形で水産物を提供する様々な取組が広がっている。今後は、流通機構の改革が進むよう、品質・衛生管理の強化、情報通信技術の活用、トレーサビリティ*64*の取組など、国として、水産物の取引や物流のあり方を総合的に検討する。(農林水産省)

 ○海外市場の拡大のため、日本産水産物について全国の関係者が一体となったオールジャパンでの輸出促進に取り組むとともに、HACCP*65*認定施設数の増加を図るため、水産加工施設の改修、研修会、現地指導等に対し支援を行うなど、輸出先国・地域の規制・ニーズに応じた輸出環境の整備に向けた取組を行う。(農林水産省)

エ 漁港・漁場・漁村の総合的整備

 ○我が国水産業の基盤整備における課題に的確に対応する観点から、重点的に取り組むべき4つの課題として、水産業の競争力強化と輸出促進に向けた漁港等の機能向上、豊かな生態系の創造と海域の生産力向上に向けた漁場整備、大規模自然災害に備えた対応力強化、漁港ストックの最大限の活用と漁村のにぎわいの創出を掲げ、漁港・漁場・漁村の整備を総合的に推進する。(農林水産省)

オ 国境監視機能を始めとする多面的機能の発揮の促進

 ○国境監視、自然環境の保全、海難救助による国民の生命・財産の保全、保健休養・交流・教育の場の提供等の、水産業・漁村の持つ水産物の供給以外の多面的な機能が将来にわたって発揮されるよう、一層の国民の理解の増進を図りつつ効率的・効果的な取組を促進する。(農林水産省)

 ○国境監視に関しては、「海洋の安全保障の強化の基盤となる施策」である「MDA体制の確立」の一環として、漁業者からの情報提供を受けるなど民間機関との連携を強化する。(農林水産省)

カ 漁業・漁村の活性化を支える取組

 ○生態系の構成要素であり、限りあるものである水産資源の持続的な利用を確保し、水産業の健全な発展を図るため、資源調査の高度化や漁業・養殖業の競争力強化等の課題を速やかに解決するための調査・研究・技術開発を効率的に推進する。(農林水産省)

 ○海洋への理解増進、海洋教育の推進に資する海との触れ合いや新鮮な水産物を食すことができるという機会を観光資源として積極的に活用し、農山漁村滞在型旅行をビジネスとして実施できる地域の創出に向け、ソフト・ハードの取組を一体的に支援する。(農林水産省)


3.海洋環境の維持・保全

(1)海洋環境の保全等

ア 生物多様性の確保等の推進

 ○SDGs、生物多様性条約(CBD*66*)等の国際約束、国連持続可能な開発会議(RIO+20*67*)成果文書等を適切に実施するため、「生物多様性国家戦略2012-2020」等に従い、生物多様性の保全及び持続可能な利用に向けた取組を実施する。(外務省、環境省)

 ① 海洋保護区の適切な設定及び管理の質的充実の推進

 ○「生物多様性の観点から重要度の高い海域」(平成28年4月環境省公表)を踏まえ、海域の生態系の特性や社会的・経済的・文化的要因を考慮し、また、気候変動の影響への適応策としての重要性も念頭に置き、関係省庁が連携し、2020年までに管轄権内水域の10%を適切に保全・管理することを目的として、「海洋生物多様性保全戦略」(平成23年3月環境省策定)も踏まえ、海洋保護区の設定を推進する。(農林水産省、環境省)

 ○これまで設定が進んでいない沖合について、今後の海洋の産業による開発・利用という面も考慮しつつ、具体的な設定のあり方について検討を行い、その結果を10%の目標達成に活かして、海洋保護区の設定に関係省庁が連携して取り組む。

(農林水産省、環境省)

 ○海洋保護区の設定を推進するとともに、保護区における海洋生態系の保全に資する管理の質的な充実に重点を置いて取り組むこととし、管理の実効性や効果に関する検証を踏まえた順応的管理を推進する。(農林水産省、環境省)

 ○海洋保護区は漁業資源の持続的利用に資する管理措置の一つであり、漁業者の自主的な管理によって、生物多様性を保存しながら、資源を持続的に利用していくような海域も効果的な保護区となり得るという基本認識の下、漁業者等への海洋保護区の必要性の浸透を図りつつ、海洋保護区の適切な設定と管理の充実を推進する。(農林水産省)

 ② 脆弱な生態系の保全への取組

 ○サンゴ礁、藻場、干潟、砂浜・砂州・砂堆、マングローブ林等に形成される生態系は、気候変動に伴う海水温上昇や、海洋酸性化等の影響を受けて、脆弱性が高まっており、また、これらの生態系は、生物多様性の確保や水産資源を含む多様な生物の生息・生育の場として重要な機能を有していることから、そうした場の衰退要因を的確に把握しつつ、その保全や再生に向けて積極的に取り組む。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○サンゴ礁においては、「サンゴ礁生態系保全行動計画2016-2020」(平成28年3月環境省策定)及び「サンゴの大規模白化現象に関する緊急宣言」(平成29年

4月サンゴ大規模白化緊急対策会議取りまとめ)に基づき、サンゴ礁生態系の回復のための人為的圧力の低減を始めとした適応策の実施に取り組むとともに、その劣化の状況を把握するためのモニタリングを推進し、その成果も適応策に活かしていく。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○希少動植物の保全のための基礎的な資料であるレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)について、関係省庁が連携し、レッドリストの統合や対象種の拡充を検討しつつ、改訂作業を進める。(農林水産省、環境省)

 ③ 国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用の推進

 ○国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ*68*)の保全及び持続可能な利用の重要性に鑑み、新協定の作成に係る政府間会議等の議論に積極的に参加していく。(内閣府、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省)

イ 気候変動・海洋酸性化への対応

 ○海水温上昇、海洋酸性化等の海洋環境や海洋生態系に対する影響を的確に把握するため、海洋における観測・監視を継続的に実施する。また、気候変動及びその影響の予測・評価に関する取組を進めるとともに、海洋における適応策に関する各種取組を実施する。(文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○海洋観測データの充実、更なる精緻化を目指すとともに、効率的な海洋観測の実現のため、観測の自動化技術の開発向上に取り組むとともに、その国際標準化に取り組む。(文部科学省、国土交通省)

 ○「気候変動の影響への適応計画」において、おおむね5年程度を目途に気候変動の影響の評価を実施するとされていること等を踏まえ、気候変動及びその影響に関する新たな知見の蓄積に努め、気候変動影響評価にその知見を反映する。(環境省)

 ○海洋における気候変動及びその影響についての情報を含め、様々な気候リスク情報を集約し、各主体の適応の取組を支える情報基盤である「気候変動適応情報プラットフォーム」を充実させる。(環境省)

 ○脆弱な生態系が海水温上昇、海洋酸性化等により深刻な状況にあることを踏まえ、パリ協定の目標達成に向けた気候変動の緩和の取組を実施する。(環境省)

 ○温室効果ガスや大気汚染物質の排出抑制による環境負荷の低減への取組として、我が国が主導する船舶からの温室効果ガス排出抑制に係る国際ルールの策定、船舶の省エネ技術の実証やIoTの活用による運航の効率化、港湾における省エネ化の推進、二酸化炭素吸収源拡大対策等を通じた「カーボンフリーポート*69*」の実現、LNG燃料船の普及やLNGバンカリング拠点の形成等に取り組んでいく。(国土交通省)

 ○海洋生態系により蓄積される炭素であるブルーカーボンを活用した二酸化炭素吸収に係る取組を推進する。(国土交通省)

 ○温室効果ガスの排出増大により、気候変動に伴う海水温上昇や、海洋酸性化といった海洋環境問題を引き起こしていくということについて、広く国民の理解を得ていく努力を行う。(文部科学省、国土交通省、環境省)

 ○地球全体の海洋変動を把握するための国際的プロジェクトである「アルゴ計画*70*」を含め、国際枠組の下で実施される観測データ等の共有に参画・貢献するとともに、UNESCO/IOC等を通じた科学研究の支援を積極的に推進し、科学的根拠に基づいた国際的な合意形成に貢献していく。(文部科学省、国土交通省)

ウ 海洋ごみへの対応

 ○海洋ごみ(漂着ごみ、漂流ごみ、海底ごみ)について、良好な景観や環境の保全等を図るため、実態等が未解明で実質的な回収が困難なマイクロプラスチックへの対応も含め、その削減に向け、多様な主体の参画や連携の下、実態把握、回収処理や発生抑制対策、国際連携を総合的に推進していく。(外務省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○マイクロプラスチックを含む海洋ごみについて、海洋中の分布状況や有害物質の吸着状況、海洋生物や生態系への影響等の調査研究を継続的に実施する。(文部科学省、環境省)

 ○マイクロプラスチックを含む海洋ごみのモニタリング方法の高度化等の研究開発を推進する。(文部科学省、環境省)

 ○地方公共団体や事業者等による地域の実情に応じた海洋ごみの回収・処理や、海洋ごみの処理に必要な廃棄物処理施設の整備等を支援する。(農林水産省、環境省)

 ○災害時等における海岸管理者等による緊急的な流木等の処理を支援する。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○海洋環境の保全を図るため、漂流ごみや油の回収・処理を実施する。(国土交通省)

 ○国外起因の廃ポリタンク等の海岸漂着物について、実態把握を行うとともに、必要に応じて発生国への申入れ等の対応を行う。(外務省、環境省)

 ○陸域から河川等を通じて海域に流入するごみを含めた海洋ごみの発生抑制の更なる推進のため、使い捨てプラスチック容器包装等の廃棄物の発生抑制(リデュース)や再資源化(リサイクル)、いわゆるポイ捨てを含む不法投棄の防止、河川美化等について、教育やライフスタイルの観点も念頭に置きつつ、関係機関が連携して、普及啓発を含めて総合的に対策を講ずる。(国土交通省、環境省)

 ○G7での取組等を踏まえ、マイクロプラスチックに関するモニタリング手法の国際的な調和の推進等を通じて、地球規模での分布状況の解明に貢献する。(環境省)

 ○国際枠組等における海洋ごみに関する調査研究、人材育成等に関する協力を通じて、特にアジア地域における海洋ごみの実態把握や排出削減に貢献する。(環境省)

エ 海洋汚染の防止

 ○「ロンドン条約1996年議定書」を国内担保する「海洋汚染等及び海上災害の防止

に関する法律」(昭和45年法律第136号)に基づき、廃棄物の海洋投入処分及び特定二酸化炭素ガスの海底下廃棄等に係る許可制度を適切に運用するとともに、法令の遵守に係る適切な監視・モニタリング等を実施する。(環境省)

 ○「船舶汚染防止国際条約(MARPOL条約*71*)」(改正議定書を含む。)及び「船舶バラスト水規制管理条約」等の国際約束を遵守する観点から、船舶からの油、有害液体物質、廃棄物等の排出に係る規制、廃油処理施設の確保、バラスト水処理装置の確認など、適切な対応を図る。(国土交通省、環境省)

 ○油、有害液体物質等による海洋汚染に関しては、「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」(平成18年12月閣議決定)等に基づき、油等防除活動等を効果的に行うための沿岸海域に係る環境情報の整備、油防除・油回収資機材の整備、関係機関に対する研修・訓練の実施など、流出油等の防除体制を充実する。また、船舶事故等で発生する流出油による海洋汚染の防止等を図るため、関係機関と連携し、大型浚渫兼油回収船を活用するなど、流出油の回収を実施する。さらに、国際油濁補償基金に対する世界有数の拠出国の一つとして、その健全な運営等のために引き続き積極的に参画するほか、「船舶油濁損害賠償保障法」(昭和50年法律第95号)に基づく保障契約締結の確認及び保障契約を証する書面の発給、放置船からの油流出への適切な対応等を通じ、我が国へ入港する外航船舶に対して、油汚染事故損害への的確な対応を図る。危険物質及び有害物質の海上輸送に伴って生じる損害への対応のあり方についての検討を進める。(国土交通省)

オ 放射線モニタリング等

 ○海洋における放射線モニタリングについて、関係省庁・機関の連携の下、海水、海底土、海洋生物のモニタリングを引き続き実施する。特に、東京電力福島第一原子力発電所事故に係るモニタリングについては、長期的な視点を踏まえ、総合モニタリング計画に沿って、関係機関連携の下、同発電所近傍海域や沿岸海域、沖合海域、外洋海域における、海水、海底土及び海洋生物に含まれる放射性物質の濃度の測定を実施する。また、陸地から河川を通じて海へ流出した放射性物質の経路や、広がりの状況等も考慮し、モニタリングの充実・強化を図る。さらに、これらモニタリングの結果、必要となる対策を実施する。(農林水産省、国土交通省、環境省)

カ 海洋の開発・利用と環境の保全との調和

 ○海洋の開発・利用に当たっては、環境影響の程度に応じた適切な環境への影響評価を行うことが重要であり、「環境影響評価法」(平成9年法律第81号)に基づく環境アセスメントを適切に実施する。(環境省)

 ○今後の沖合や深海における海洋の開発・利用に関して、国内外での取組状況や国際的な議論も考慮しつつ、環境への影響を評価する上で必要となるデータを収集するとともに、事業開始後の事後調査を含めて、環境への影響の評価のあり方に関する検討を行う。(経済産業省、環境省)

 ○洋上風力発電について、導入と環境の保全との両立の観点から、ゾーニング(保全するエリア、再生可能エネルギーの導入を推進するエリア等の設定を行う取組)手法検討モデル事業を進めているところであり、その取りまとめ結果を踏まえた今後の導入促進のあり方を関係省庁と連携しつつ検討する。(環境省)

 ○CCSについて、事業者が実施する環境影響評価や監視の結果の妥当性を適正に判断するため、日本近海における生態系並びに海水及び底質の科学的特性の調査を実施するとともに、適切な事業実施に向けた監視技術の適用方策について検討する。(環境省)

 ○環境影響評価に資する生物化学的データの観測を強化するため、観測機器の整備やセンサーの開発に取り組むとともに、環境影響の評価のあり方に関する検討及びその成果を踏まえ、関係機関との協力の下で国際ルール形成に貢献する。(文部科学省)

 ○港湾整備に伴い発生する土砂類や、一般廃棄物等を最終処分するための海面最終処分場について、廃棄物の適正な処理の推進と港湾の秩序ある発展に資する観点から海域環境に配慮しつつ、整備を進める。(国土交通省)

(2)沿岸域の総合的管理

ア 沿岸域の総合的管理の推進

 ○沿岸域の総合的管理に当たっては、森・里・川・海のつながり、流域全体の水循環や生態系管理を意識し、問題解決に必要な一定の広がりにおいて、人が関わって、より良い海をつくって豊かな恵みを得るという「里海」づくりの考え方を積極的に取り入れつつ、自然災害への対応、生物多様性の保全や海洋ごみ対策等を含めて総合的に取り組む。こうした取組の推進において中心的な役割を果たすことが期待される協議会活動の普及拡大等に向けて、関係府省が連携して、自治体や協議会組織に対する支援のあり方について検討を行い、具体化を図る。(内閣府、農林水産省、国土交通省、環境省)

イ 陸域と海域との一体的・総合的な管理の推進

 ① 総合的な土砂管理の取組の推進

 ○陸域から海域への土砂供給の減少や沿岸構造物による沿岸漂砂の流れの変化等による国土の減少や自然環境への影響を軽減するため、関係機関が連携して、砂防施設による流出土砂の調整、ダムにおける堆砂対策やダム下流への土砂還元、侵食海岸におけるサンドバイパス*72*や養浜の実施など、総合的な土砂管理に取り組むとともに、土砂移動の実態把握や予測手法の向上に係る研究開発に取り組む。(国土交通省)

 ② 自然に優しく利用しやすい海岸づくり

 ○海岸域において、「海岸法」(昭和31年法律第101号)に基づく「海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本的な方針」(平成12年5月農林水産大臣、運輸大臣(当時)、建設大臣(当時)策定)を踏まえ、全国を71の沿岸域に分割し、地域の意見を反映した「海岸保全基本計画」を策定している。この計画に基づき、災害からの防護に加え、海岸協力団体制度の活用等を通じ、地域住民による利用の促進や環境の維持に係る取組等が調和するよう海岸空間の保全を行う。(農林水産省、国土交通省)

 ○新技術を活用した海岸保全施設等の点検・モニタリング手法等の開発やその普及に取り組み、適時・的確なモニタリングを通じた順応的な海岸侵食対策等の海岸整備を推進することで良好な海岸環境の保全・創出に努める。(農林水産省、国土交通省)

 ○優れた自然の風景地について、自然公園として適切に保全を図る。(環境省)

 ○海岸防災林を含む海岸林、湿地、砂浜、サンゴ礁等が有する非常時における防災・減災の機能及び平時における生態系保全等の機能を評価し、各地域の特性に応じて、自然生態系や地形等を積極的に活用した防災・減災対策を推進する。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ③ 栄養塩類*73*及び汚濁負荷の適正管理と循環の回復・促進

 ○陸域から流入する汚濁負荷を削減するため、未普及地区での下水道等汚水処理施設の整備や合流式下水道の改善を進めるとともに、農業用排水施設や河川における水質浄化を推進する。(国土交通省、環境省)

 ○栄養塩類の削減が必要な海域においては、水質を改善するため、下水道等汚水処理施設の整備や高度処理の導入を進めるとともに、関係機関連携の下、陸域と海域が一体となった栄養塩類の循環システムの検討、構築を進める。また、栄養塩濃度が環境基準を達成している海域においては、環境への影響等を考慮しつつ、環境基準値の範囲内で栄養塩類を管理する順応的な取組の事例を積み重ねつつ、きめ細やかな水質管理の方策を検討する。(農林水産省、国土交通省、環境省)

ウ 閉鎖性海域での沿岸域管理の推進

 ○閉鎖性海域では、環境負荷の適正管理や保全・再生に向け、「全国海の再生プロジェクト」や海洋環境整備事業等の諸施策を展開する。また、「きれいで豊かな海」の実現に向けて、水質、海水温上昇、生物生息場の変化等と生物多様性や生物生産性の関係性についての調査及び研究に努めるとともに、科学的な知見を踏まえて方策について検討し、地域における多様な主体が海の将来像を議論し、連携・協働した計画的かつ総合的な取組を推進する。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○栄養塩類の削減が必要な海域においては下水道の高度処理を推進するとともに、港湾における汚泥場への覆砂等を実施する。(国土交通省)

 ○海水交換の悪い閉鎖性海域における陸域からの栄養塩類の負荷を抑制するため、窒素及びりんについて排水規制を実施するとともに、陸域からの汚濁負荷量の把握や水質等の調査を実施する。(環境省)

 ○海域環境の保全・再生に向け、関係者間の連携による推進体制の強化、環境モニタリング、情報共有システムの活用等の包括的な取組と、汚泥浚渫、浚渫土砂等を有効に活用した干潟や藻場等の保全・再生・創出、覆砂、深掘跡の埋め戻し、生物共生型港湾構造物の普及等の個別の取組を総合的に推進する。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○広域的な閉鎖性海域である東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海において、第8次水質総量削減*74*の削減目標量(目標年度:2019年度)の達成に向けた取組を実施する。(環境省)

 ○瀬戸内海の更なる環境保全・再生のため、平成27年の「瀬戸内海環境保全特別措置法」(昭和48年法律第110号)の改正及び「瀬戸内海環境保全基本計画」の変更(平成27年2月閣議決定)に基づき、生物多様性及び生物生産性が確保された

「きれいで豊かな海」の観点から、従来からの水質総量削減に加え、藻場及び干潟の保全・再生、底質改善等を組み合わせ、地域の多様な主体が連携した総合的な取組となるよう必要な検討・施策の推進を図る。また、上記改正法の附則に規定されている、栄養塩類の減少、偏在等が水産資源に与える影響に関する調査・研究等を加速化し、「きれいで豊かな海」の確保に向けた方策について検討を進める。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○有明海及び八代海等の再生の観点から、「有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律」(平成14年法律第120号)に基づく「有明海及び八代海等の再生に関する基本方針」(平成15年2月総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省策定)を踏まえ、再生のための施策を進める。また、有明海・八代海等総合調査評価委員会における検討を踏まえつつ、再生に係る評価に必要な調査や科学的知見の収集等を進める。(総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)

エ 沿岸域における利用調整

 ○沿岸域における地域の実態も考慮した海面の利用調整ルールづくりを推進する。また、地域の利用調整ルール等の情報へのアクセスを改善するとともに、海洋レジャー関係者を始めとする沿岸域利用者に対する周知・啓発を進める。(農林水産省)

 ○小型船舶の安全・環境対策として、小型船舶の海難等による死亡・行方不明者の減少及び環境問題の解消・低減並びに健全な利用振興及び関連産業の活性化を図る。また、小型船舶の利用適正化に向けた利用環境の整備を進めるため、「海の駅」の設置等を推進する。さらに、プレジャーボートの適正な管理を実現させるため、係留・保管能力の向上と規制措置を両輪とした放置艇対策を推進する。(国土交通省)


4.海洋状況把握(MDA)の能力強化

(1)情報収集体制

 ○主として防衛省・自衛隊、海上保安庁及び内閣官房(内閣情報調査室)等が保有する艦艇、巡視船艇、測量船、航空機、情報収集衛星等や沿岸部設置のレーダー等の効率的な運用と着実な増強に加え、JAXAのALOS-3、ALOS-4、SLATS等の各種衛星及び民間等の小型衛星(光学衛星・SAR衛星)等の活用も視野に入れ、また、同盟国、友好国等と連携し、情報収集体制強化を通じて、MDA能力を強化する。(内閣官房、内閣府、外務省、財務省、文部科学省、国土交通省、防衛省)

 ○準天頂衛星の機数増等の取組、ALOS-3・4等のセンサーに関する技術開発及びSLATSの実証実験等の進展、船舶自動識別装置(AIS*75*)受信機を搭載した衛星の普及、小型衛星等各種衛星に関する諸外国の取組等を踏まえ、衛星AISによる船舶航行状況をより正確に把握するための実証実験の実施など、MDAにおける衛星情報の更なる利活用について研究や検討を行う。(内閣府、文部科学省)

 ○海水温、海流、海氷等の海況監視、漁業者に対する漁場情報の提供、海洋上を含む地球規模の温室効果ガスの観測や気候変動予測等の分野において、衛星情報の利用を引き続き推進する。(文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○海洋調査の効率化・精緻化を図るためのセンサーやAUV等を活用した自動観測技術の開発に引き続き取り組む。また、AIS等による船舶動静情報の収集や、ICT技術を活用した新しい船舶動静の把握手法及びこれらの情報を更に利活用しやすい形で共有することについて検討を進める。(文部科学省、国土交通省)

 ○日本海溝海底地震津波観測網(S-net*76*)、地震・津波観測監視システム(DONET*77*)等の既設の海底地震・津波観測網を着実に運用するとともに、利活用手法をさらに充実していく。また、南海トラフ沿いで発生が想定される大規模地震・津波への対応に向けた観測研究体制に関する検討を行う。(文部科学省)

 ○海洋気象観測船、漂流型海洋気象ブイ、沿岸波浪計、潮位計、気象衛星ひまわり、気象レーダー等を用いた気象・水象観測を実施する他、地震・津波観測を実施する。

(国土交通省)

(2)情報の集約・共有体制

 ○海洋監視情報の集約・共有に当たっては、海洋監視情報の機密性に応じ、関係府省間で機動的かつ迅速な情報共有が可能となる有機的な情報共有体制を構築していくとともに、漁業者からの情報提供を始め、民間機関との連携も強化する。(内閣府、外務省、農林水産省、国土交通省、防衛省)

 ○防衛省・自衛隊と海上保安庁との間の情報共有システムの整備を進め、二者間の情報共有体制を充実させる。また、公表されている情報や学術情報を含めた各種ソースからの海洋関連情報を集約可能な「海洋状況表示システム*78*」の構築に努める。

「海洋状況表示システム」の整備・運用に当たっては、関係機関等が運用する各種海洋情報サービスとの連携を強化する。(内閣府、国土交通省、防衛省)

 ○海洋調査成果等の関係機関が保有する海洋情報について、利用者の利便性の観点から、情報の品質の維持やデータポリシーの統合・標準化に取り組む。(内閣府)

 ○国及び地方公共団体による海洋調査で得られた情報を始め、国等が海洋政策を進める上で収集・整備した海洋情報について、情報の機密性等に応じた適切な取扱いを確保しつつ、一元的に管理・公開を行うとともに、関係者間での情報共有を一層推進することによって、海洋政策の効率的な推進と産業活動への利用促進を図る。(内閣府、国土交通省)

 ○観測データの価値を向上するため、係留・漂流ブイ、船舶、衛星等の異なる手法で得られた観測データの統合(数値予報モデルへのデータ同化等)を推進する。(文部科学省、国土交通省)

 ○数値モデルを高精度化する等により、気候変動、海洋酸性化、海況等の実態把握とスーパーコンピュータを用いた予測の精度向上を図るとともに、情報の可視化等その内容の充実に取り組む。さらに、これらの成果の幅広い利用を促進するため、「海洋の健康診断表」等での情報公開に取り組む。(文部科学省、国土交通省)

 ○関係機関の協力の下、日本海洋データセンター(JODC*79*)において各種海洋情報の収集・管理・提供を実施するとともに、海洋情報クリアリングハウス及び海洋台帳を引き続き運用し、その充実を図る。また、これらの取組と「海洋状況表示システム」との連携を進める。(内閣府、国土交通省)

 ○海洋情報の収集と解析処理のための共通基盤技術の整備・運用を進め、都道府県等の地域レベルでの利用を含め、海洋情報の利用促進を図る。また、広く一般への情報提供の観点から、海洋科学技術に関する資料を広く収集・整理するとともに利便性を高める。(内閣府、文部科学省)

(3)国際連携・国際協力

 ○「海洋状況表示システム」については、国際社会との連携に活用するため、多言語化に向けた対応を図る。(内閣府、国土交通省)

 ○二国間及び多国間での取組を効果的に組み合わせ、MDAに関する国際連携・国際協力を強化し、これらの取組を通じて得た海洋情報を多様な海洋政策の実施に適切に活用する。(内閣府、外務省、国土交通省)

 ○諸外国、国際機関等が保有する海洋情報について、各種ルートを通じて情報収集を図る。(内閣官房、内閣府、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省)

 ○我が国自身の努力に加え、MDAに関する同盟国、友好国等との協力体制を構築し、各国との連携やシーレーン沿岸国の海洋状況把握に係る能力向上に資する協力の推進を通じ、MDA体制を強化していく。(内閣府、外務省、国土交通省、防衛省)


5.海洋調査及び海洋科学技術に関する研究開発の推進等

(1)海洋調査の推進

ア 海洋調査の戦略的取組

 ○我が国の排他的経済水域・大陸棚を始め、我が国周辺海域における海洋調査を通じ、海洋権益確保の戦略的観点から、我が国の海域の総合的管理に必要なものや境界画定交渉に資するものを含め、海底地形、資源の分布状況等に係る関連情報の一層の充実に努めるため、「海上保安体制強化に関する方針」に基づく海洋調査体制の強化等、海洋調査に関する戦略的取組を推進する。(内閣府、外務省、国土交通省)

 ○海洋のモニタリングについては、リアルタイム性のみならず、長期的な観測を積み重ねるとともに、衛星、観測ブイ等を用いた高度な観測技術を最大限活用し海洋を総合的に観測することが重要であり、海洋観測を行う海洋調査船等の適切な運航、

効率的な観測に資する自動化技術の向上等に取り組む。(文部科学省、国土交通省)

まば

 ○時空間的に疎らである生物分野を含め、海洋に関する科学データをより深海域ま

で精度よく観測するため、漂流フロート*80*、係留系*81*、船舶及び海中・海底探査システム*82*による観測を組み合わせた統合的観測網の構築を目指す。(文部科学省)

 ○海洋調査の基盤となる海洋調査船等、有人・無人調査システム等を着実に整備する

とともに、新たな調査機器の開発、新技術の導入を推進する。(文部科学省、国土交通省)

 ○国際的な海洋観測計画及び海洋情報交換の枠組に参画し、長期的・継続的に海洋の観測、調査研究等を実施するとともに、観測データの交換及び共有に取り組む。(文部科学省、国土交通省)

 ○海洋資源の開発、海洋権益の確保及び海洋の総合的管理に必要となる基盤情報を整備するため、海底地形、海洋地質、地殻構造、領海基線、海潮流等の調査を引き続き実施する。(国土交通省)

イ 気候変動・海洋環境の把握のための調査等

 ○気候変動、海洋酸性化等の地球規模の変動の実態を把握するため、世界気象機関

(WMO*83*)、UNESCO/IOC等が進める国際的な海洋観測計画に参加し、海洋調査船等による高精度かつ高密度な観測を実施するとともに、中層フロート*84*等の自動観測システムの活用や水中グライダー等の最新技術の導入を進め、海水温、塩分、温室効果ガス濃度等の観測を着実に実施する。(文部科学省、国土交通省、環境省)

 ○我が国周辺海域における海洋環境保全対策を効率的かつ効果的に実施するため、油分、重金属、内分泌かく乱物質等の陸上・海上起因の汚染物質の海洋環境への影響を把握するとともに、バックグラウンド数値の経年変化を把握する。また、海域における放射性物質のモニタリングを実施する。(国土交通省、環境省)

 ○東日本大震災に伴い発生した津波による廃棄物の海上流出や油汚染、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質の漏出等による海洋環境への影響を把握するため、引き続き有害物質及び放射性物質に関するモニタリングを実施する。(国土交通省、環境省)

 ○閉鎖性海域の海洋環境モニタリングとして、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海における栄養塩類等の水質調査、底質・底生生物調査等を実施する。また、海洋環境整備船による水質調査や海洋短波レーダーによる流況観測等を実施するとともに、国及び地方公共団体が実施した環境調査データを収集・共有する海域環境情報データベースの充実を図る。(国土交通省、環境省)

ウ 自然災害による被害軽減のための調査等

 ○プレート境界域における海溝型巨大地震の発生メカニズム解明や地震・津波の発生予測に資する基礎情報を収集・整備するため、海底地殻変動観測、GPS*85*を利用した地殻変動観測、海底変動地形調査、地殻構造探査、津波堆積物調査、地震断層の掘削調査、掘削孔内観測等の充実・強化を図る。(文部科学省、国土交通省)

 ○港湾内の船舶の避難等の津波対策及び地方公共団体による津波ハザードマップ作成に活用するため、海底地形データを収集・整備するとともに、津波防災情報図の整備を推進する。(国土交通省)

 ○火山噴火予知に資する基礎情報を収集・整備するため、南方諸島及び南西諸島の海域火山を中心に航空機や衛星画像の活用等による定期的な監視、海洋調査船による海底地形、地質構造、海上重力及び地磁気の調査を実施する。(国土交通省)

 ○船舶、沿岸の安全を確保するため、海洋気象観測船、漂流型海洋気象ブイ、沿岸波浪計、潮位計、気象衛星ひまわり、気象レーダー等を用いた気象・水象観測を実施する他、地震・津波観測を実施する。(国土交通省)

(2)海洋科学技術に関する研究開発の推進等

ア 国として取り組むべき重要課題に対する研究開発の推進

 ① 気候変動の予測及び適応に関する研究開発

 ○海洋と大気の相互作用、さらに、陸域も含めた地球表層における物質循環やそれに伴う熱輸送・炭素循環、海洋が吸収する二酸化炭素の増加に伴う海洋の酸性化や、それによる海洋生態系への影響等を解明するための観測、調査研究等を強化する。(文部科学省、国土交通省)

 ○気候変動及びその影響に関する観測・監視等を行い、長期的な気候変動の低減のため、気候変動に係るリスク評価の基盤となる情報を収集・整備するとともに、予測情報の高精度化のための研究開発を推進する。また、長期的な気候変動及びその影響への適応策を講じていくため、都道府県等の地域レベルでの影響評価が可能となるように、気候モデルを改良するとともに、各地域のニーズに応じた観測、調査研究等を充実させる。(文部科学省、国土交通省、環境省)

 ○地球温暖化の影響が顕著である北極域における環境変化は、地球温暖化の加速、地球全体の海面水位上昇、極端な気象の頻度増加等、全球的な気候への影響を与えることが懸念されており、全球の気候システムの形成に大きな役割を果たす南極域の重要性も踏まえ、両極域における観測・研究を引き続き実施する。(文部科学省)

 ② 海洋エネルギー・鉱物資源の開発に関する研究開発

 ○広域科学調査により、エネルギー・鉱物資源の鉱床候補地推定の基礎となるデータ等を収集するため、海底を広域調査する研究船、有人潜水調査船や無人探査機

(AUV、ROV等)等のプラットフォーム及び最先端センサー技術を用いた広域探査システムの開発・整備を行うとともに、鉱床形成モデルの構築による新しい探査手法の研究開発を推進するなど、海洋資源の調査研究能力を強化する。また、鉱物資源開発に係る環境影響評価技術の国際標準化に向けた取組を進める。(内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、環境省)

 ○平成26年度から取り組んできたSIP「次世代海洋資源調査技術」における研究開発成果について、未調査海域での実証運用等により統合海洋資源調査システムを実用レベルで確立させる。(内閣府、文部科学省、国土交通省)

 ○SIP「次世代海洋資源調査技術」の成果を踏まえ、我が国の海洋資源探査技術を更に強化・発展させ、本分野における生産性を抜本的に向上し、我が国の排他的経済水域等にある豊富な海洋鉱物資源*86*を活用するため、平成30年度から新たにSIP「革新的深海資源調査技術」を立ち上げ、これまで培った海洋資源調査技術、生産技術等を更に強化・発展させるとともに、基礎・基盤研究から事業化・実用化までを見据え、水深2000m以深の同技術の開発・実証に向けた取組を世界に先駆けて進める。(内閣府、文部科学省、経済産業省、国土交通省)

 ○海洋資源の環境影響評価に資するための科学的研究として、高解像度の調査と長期の環境モニタリングから得られる大規模データとの統合解析を推進する。(文部科学省)

 ③ 海洋生態系の保全に関する研究開発

 ○海洋生物資源の持続的な利用の観点から、海洋環境調査を活用し、海洋環境の変動が水産資源に与える影響の把握に努めるとともに、海洋生態系の構造と機能及びその変動の様子を総合的に理解するための研究開発を推進する。また、サンゴ礁を始めとした海洋生態系の保全に必要な海洋生物の生物学的特性や多様性に関する情報の充実を図る。(内閣府、文部科学省、農林水産省、環境省)

 ○東日本大震災により激変した海洋生態系の回復状況を把握するため、大学や研究機関等によるネットワークを形成し、東北太平洋沖等における海洋生態系の調査研究を行う。(文部科学省、環境省)

 ④ 海洋由来の自然災害に関する研究開発

 ○海域の地震・津波を、稠密な観測点により、精度高く早期に観測し、警報の高度化や発生メカニズムの解明を行うため、日本海溝沿い及び南海トラフ沿いにおいて、地震・津波のリアルタイム観測が可能な海底観測網(S-net、DONET等)を運用する。また、南海トラフ沿いで発生が想定される大規模地震・津波への対応に向けた観測研究体制に関する検討を行う。さらに、日本海側も含め、日本列島周辺海域における地震及び津波の発生予測や被害予測に関する調査研究を行い、それらに基づく防災・減災対策の研究を行う。(文部科学省)

 ○地球表層から地球中心核に至る固体地球の諸現象について、その動的挙動に関する基礎的な研究を行うことにより、海洋プレートの運動によって引き起こされる地震・火山活動の原因、島弧・大陸地殻の進化、地球環境の変遷や海底下の構造等に関する知見を蓄積するとともに、地震・津波・火山活動等のモデル化と予測・検証を行う。(文部科学省)

 ○海洋由来の災害防止・軽減に資するため、高波、高潮等の予測情報、津波警報、海洋環境情報の高度化等に関する研究等を行う。(国土交通省)

イ 基礎研究及び中長期的視点に立った研究開発の推進

 ① 基礎研究の推進

 ○独創的で多様な基礎研究を広範かつ継続的に推進するための取組を強化し、人類共通の知的フロンティアの開拓、知的資産の創造や重厚な知の蓄積の形成を図る。(文部科学省)

 ○オープンサイエンスの急速な拡大を踏まえ、観測・研究活動を通じて得られたデータやサンプル等については、原則として、研究者を始め一般国民が利用しやすい形で整理・保管・提供するとともに、他分野の研究者・技術者の利用促進を図る。(文部科学省)

 ○地球深部探査船「ちきゅう」の活用等により、国際深海科学掘削計画(IODP*87*)を推進する。IODPにおいては、地球を構成する物質の直接採取、分析及び現場観測を実施し、数値解析手法、モデリング手法等を用いつつ、海洋・地球・生命を関連させた全地球内部ダイナミクスモデルの構築とその理解の推進を図る。(文部科学省)

 ○巨大地震発生メカニズムの解明、海底下地下生命圏の探査や機能の解明、将来的なマントル掘削の実施に向け、大水深・大深度掘削のための基盤技術開発を推進する。(文部科学省)

 ② 海洋科学技術に関する人材育成

 ○将来にわたって、海洋に関する研究開発を推進し、海洋科学技術による経済・社会的課題の解決等を図るため、専門性と俯瞰力を持った海洋科学技術に携わる人材の質と層を向上させる。(文部科学省)

 ○大学及び大学院において、学際的な教育及び研究が推進されるようカリキュラムの充実を図るとともに、産業界等とも連携しながらインターンシップ実習の推進や、社会人再教育等の実践的な取組を推進することにより、海洋科学技術に関する先進的な人材を育成する。(文部科学省)

ウ 海洋科学技術の共通基盤の充実及び強化

 ① 世界をリードする基盤的技術の開発

 ○高精度で効率的な観測・探査システムの構築を推進するため、音響通信・複合通信システム、計測・センシング、測位、検知・探知、モニタリング、試料採取、分析等に係る先進的要素技術、探査・観測システム等の長期運用に必要となるエネルギーシステムに係る技術、深海底での調査や観測のためのセンサーや観測プラットフォーム設置に係る技術等について、先進的な研究開発を推進する。(文部科学省)

 ○深海等の未知の領域を効率的に探査するための海中・海底探査システム及びそれらに関連するサブシステム並びに長期にわたり広範囲な海洋空間を高精度で観測するための3次元観測システムの運用を行う。(文部科学省)

 ○オープンイノベーションの推進の観点から、基盤的技術のオープン・アンド・クローズ戦略*88*や知的財産戦略、標準化戦略の検討、国内外の大学、企業、公的研究機関等の連携・協力を推進し、知見・技術・成果の社会還元を引き続き推進する。特に、知的財産の国際標準化に向けた取組を推進する。(文部科学省)

 ② プラットフォームの整備・運用

 ○海洋調査船、無人探査機(AUV、ROV等)、有人探査船、試験水槽、スーパーコンピュータ、大容量の観測データ通信に必要な基盤技術等の研究プラットフォームの整備・運用を図る。(文部科学省、国土交通省)

 ○研究機関・大学等が有する船舶、探査機、スーパーコンピュータ等の施設・設備等について、性能を十分に発揮できるよう計画的に代替整備、老朽化対策等を進めるとともに、限られた研究基盤の有効活用を図るため、共同利用を推進する。

(文部科学省)

 ○大容量の海洋データの送信を行うための衛星を活用した高速通信技術に係る研究開発を進める。(内閣府、総務省)

 ③ 海洋ビッグデータの整備・活用

 ○海洋の調査・観測で得られる多様で膨大なデータ(海洋ビッグデータ)の収集、解析等を通じ、ビッグデータ、AI等の超スマート社会*89*を支える基盤技術の強化を図るため、スーパーコンピュータ等を最大限に活用し、海洋地球科学の推進のために必要な先端的な融合情報科学を推進する。(文部科学省)

 ○海洋ビッグデータを用いて多様な経済・社会的課題の解決や新しい価値の創出に貢献するため、地球環境情報プラットフォームであるデータ統合・解析システム

(DIAS*90*)等を活用し、他分野との連携・融合を図りつつ、情報の活用を推進する。(文部科学省)


6.離島の保全等及び排他的経済水域等の開発等の推進

(1)離島の保全等

ア 国境離島の保全・管理

 ① 国境離島及び低潮線の安定的な保全・管理の推進

 ○排他的経済水域等の外縁を根拠付ける低潮線の保全のため、低潮線保全法及び

「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する基本計画」(平成22年7月閣議決定)に基づき、低潮線保全区域内の海底の掘削等の行為規制を行う。また、船舶、ヘリコプター等を活用した継続的な巡視や空中写真の周期的な撮影、衛星画像等による低潮線保全区域の状況を把握するための調査を実施する。(国土交通省)

 ○内閣府が中心となり関係省庁間で連携して、衛星画像等により国境離島の海岸線等の状況を継続的に把握することにより、国境離島の適切な保全・管理を図る。

(内閣府、文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省)

 ○国土保全上極めて重要であり直轄管理している沖ノ鳥島については、海岸法に基づき必要な人為的損壊等を防止するための行為の規制を行うとともに、島の基盤をなすサンゴ礁を保全し、2019年度を目途に観測・監視施設を更新するなど管理を強化する。また、海岸保全施設の維持・整備による侵食防止の措置等を推進する。その他離島の海岸保全区域についても国土保全の観点から、低潮線と一体的に侵食対策や保全等を推進する。(農林水産省、国土交通省)

 ○低潮線の保全を確実かつ効率的に実施していくため、低潮線に係る位置、行政区分、図面、写真、利用状況等の情報及び低潮線の所在する離島に係る名称、位置、施設等の情報について関係機関での共有を可能とする「低潮線データベース」を維持・更新し、低潮線に関する各種情報を一元的に管理する。(国土交通省)

 ○海洋資源の開発及び利用や海洋調査等の諸活動が、本土から遠く離れた離島や海域においても安全かつ安定的に行うことができるよう、人員、物資等の輸送や補給に必要な拠点施設として、特定離島(沖ノ鳥島及び南鳥島)において、特定離島港湾施設の整備を推進するとともに、国による港湾の管理を実施し、その利活用を図る。(内閣府、国土交通省)

 ○有人国境離島法及び同法に基づく「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する基本的な方針」(平成29年4月内閣総理大臣決定)に則し、有人国境離島地域が有する領海保全等に関する活動拠点としての機能を維持するとともに、特定有人国境離島地域では2027年に向けて定常的に転入者数が転出者数を上回る状態を実現すべく、保全及び地域社会維持の施策を推進する。(内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省)

 ○国境離島の保全上重要と考えられる土地について、その利用のあり方が国家安全保障に関わる重要な問題であるという認識の下、その所有状況の把握を行い、領海等の保全及び海洋権益の確保の観点から、所有者が不明である土地に伴う課題や外国人等による土地の取得に関する意見も考慮しながら、土地利用等のあり方及び必要な措置について検討する。(内閣府)

 ② 離島における安全確保や観測活動の実施

 ○海上交通の安全確保の観点から、離島に設置されている灯台等の航路標識の整備・管理を行う。(国土交通省)

 ○台風、地震、津波等の自然災害による被害防止・軽減の観点から、離島の気象・海象観測施設等の整備等及び適切な維持管理を進めるとともに、地上・高層の気象観測、温室効果ガス、日射放射等の観測を継続して実施する。(国土交通省)

 ○海洋プレートの観測にも寄与する離島の位置情報基盤を整備する。(国土交通省)

 ③ 離島及び周辺海域の自然環境の保全

 ○海洋によって他の地域から隔離され、独特の生態系が形成され、また、サンゴ礁やマングローブ林等における豊かな生態系を有する離島は、赤土流入など人間の諸活動や外来種の侵入による影響を受けやすい脆弱な地域であることから、これらの離島の貴重な生態系等を適切に保全、管理、再生するとともに、生物多様性の確保に取り組む。(農林水産省、環境省)

 ○藻場、干潟、サンゴ礁等が残る離島周辺の海域は、貴重な漁場であるため、漁場環境の保全・再生及び漁場の整備を推進するとともに、漁業者や地域住民により行われる藻場、干潟、サンゴ礁等の維持管理等の取組を促進し、水産動植物の生息・生育環境の改善や水産資源の回復を図る。(農林水産省)

 ○離島の優れた自然の風景地や海域景観、自然海岸等を保全するため、海岸の適正利用、自然公園制度の適切な活用を図る。(農林水産省、国土交通省、環境省)

 ○漂流・漂着ごみや流木の撤去及び島外への輸送や廃棄物処理施設の整備を推進する。(環境省)

イ 離島の振興

 ① 離島における産業の振興等

 ○定住を促進するための海上輸送費の軽減等戦略産業の育成による雇用拡大等の取組、観光の推進等による交流の拡大促進の取組、安全・安心な定住条件の整備強化等の取組を支援する。(国土交通省)

 ○離島の漁業を維持・再生させるため、離島の漁業集落を対象に、共同で漁業の再生等に取り組む活動に対して支援する。(農林水産省)

 ○離島の産業の振興を図るための計画を策定している市町村における製造業、農林水産物等販売業、旅館業、情報サービス業等の用に供する機械等の新増設を促進する。(国土交通省)

 ○エネルギーの安定的かつ適切な供給及び環境負荷の低減を図る観点から、離島の自然的特性を活かした再生可能エネルギーの利用を促進する。(環境省)

 ○地域の創意工夫を活かした振興を図るため、離島特区制度について総合的に検討する。(国土交通省)

 ② 交通通信の確保

 ○離島住民の利便性の確保や地域資源を活用した海洋観光の振興等を図る観点から、離島航路、離島航空路の安定的な確保維持を支援する。(国土交通省)

 ○本土に比べて割高となっている離島の石油製品について、安定的かつ低廉な供給を図るため、ガソリン小売価格を実質的に引き下げるための支援等を行う。(経済産業省)

 ○情報の流通の円滑化を図り、高度情報通信ネットワーク等の通信体系を整備するため、超高速ブロードバンド、携帯電話等のサービスの利用を可能とするための施設や伝送路の整備を支援する。(総務省)

 ③ 医療の確保及び教育文化の振興

 ○離島に住む妊婦が、その島を離れて妊婦健診・分娩する際の経済的負担の軽減を図る。(厚生労働省)

 ○高校未設置の離島に住む高校生が、島外に通学又は居住する際の経済的負担の軽減を図る。(文部科学省)

 ④ 基盤の整備

 ○離島の産業振興の基盤となる道路、港湾、農林水産基盤等や定住環境の向上のための生活基盤の整備を推進する。(農林水産省、国土交通省)

(2)排他的経済水域等の開発等の推進

ア 排他的経済水域等の確保等

 ○大陸棚の延長に関し、「大陸棚の延長に向けた今後の取組方針」に沿って取組を進める。(内閣府、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省)

 ○我が国と他国の主張が重複する海域が存在することに伴う問題については、国際法に基づいた解決を目指す。(外務省)

 ○上記の取組を進めるためにも、排他的経済水域等についても、国連海洋法条約を中心とした国際ルールが適切に実施され、「法の支配」に基づく海洋秩序が維持・強化されるよう取り組む。(内閣府、外務省)

イ 排他的経済水域等の有効な利用等の推進のための基盤・環境整備

 ○排他的経済水域等の有効な利用等を図るため、水産資源の持続的利用、保護及び増大に資する漁場の整備を推進するとともに、エネルギー・鉱物資源の開発に向けた技術開発を着実に進める。(農林水産省、経済産業省)

 ○排他的経済水域等の有効な利用等に係る基盤情報を整備するため、海洋調査の推進と海洋情報の一元化を進め、情報の戦略性等に配慮した上で海洋情報の公開に引き続き取り組む。(内閣府、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省)

 ○第2期海洋基本計画では「排他的経済水域等の開発等を推進するため、海域の開発等の実態や今後の見通し等を踏まえつつ、管理の目的や方策、取組体制やスケジュール等を定めた海域の適切な管理の在り方に関する方針を策定する。当該方針に基づき、総合海洋政策本部において、海洋権益の保全、開発等と環境保全の調和、利用が重複する場合の円滑な調整手法の構築、海洋調査の推進や海洋情報の一元化・公開等の観点を総合的に勘案しながら、海域管理に係る包括的な法体系の整備を進める。」と記述している。これを受け、これまで同計画策定以降における検討として、総合海洋政策本部「排他的経済水域等の海域管理の在り方検討チーム」での取りまとめ(平成26年6月)や、参与会議の下に設置された「海域の利用の促進等の在り方プロジェクトチーム」報告書(平成27年3月、平成28年2月及び平成29年2月)が出されており、これらも踏まえ、包括的な法体系の整備を進める。

 この場合において、既存個別法による措置、特定の海域での実務的な調整等、その進め方についても時機を逸することなく、適切に対応する必要がある。

 また、諸外国においても導入事例のある「海洋空間計画*91*」については、その実態の把握に努め、我が国の海域の利用実態や既存の国内法令との関係等を踏まえつつ、その必要性と課題及び活用可能性につき検討を進める。(内閣府)


7.北極政策の推進

(1)研究開発

ア 北極域研究に関する取組の強化

 ○北極域研究推進プロジェクト(ArCS*92*)等により、北極における環境変動と地球全体へ及ぼす影響を包括的に把握するとともに、社会・経済的影響を明らかにし、適切な判断や課題解決のための情報を関係者に伝えることを目指して、自然科学分野と人文・社会科学分野の連携による国際共同研究を引き続き推進する。また、行政と研究の両分野が連携し、我が国の強みである北極域研究を活かして、我が国の北極政策に取り組む。(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)

イ 北極域に関する観測・研究体制の強化

 ○北極環境の変動メカニズムに関する更なる解明に向けた北極域の科学的データを取得し、解析するため、我が国が強みを有する、最先端の衛星の開発や、観測基地、観測船等を用いた継続的な観測の強化に取り組む。このため、極域観測用のAUV等の先進的な技術開発を推進する。また、温暖化監視にも資する極域の海氷観測に不可欠なマイクロ波放射計の高度化を行う。(文部科学省)

 ○AUV等を用いた国際的な北極域観測計画への参画を可能とする機能や性能を有する、新たな北極域国際研究プラットフォームとしての砕氷機能を有する北極域研究船の建造等に向けた検討を進める。(文部科学省)

 ○国内の複数の大学及び研究機関のネットワーク型の研究拠点による分野横断的な取組や、研究船、水槽施設、スーパーコンピュータ等の研究基盤の共同利用を促進し、北極の課題解決に向けた取組を進める。(文部科学省、国土交通省)

ウ 北極域に関する国際的な科学技術協力の推進

 ○北極圏国を含む関係国との間で、二国間の科学技術協力協定等に基づき極地研究等の関連分野における科学技術協力を推進する。また、北極圏国における研究・観測拠点の確保と研究者の派遣により、北極に関する国際共同研究を強化する。(外務省、文部科学省、環境省)

 ○科学的データが不足している北極域での研究を効率的に進めるため、各研究機関、各研究者が有するデータを共有する枠組を形成し、国際的なデータ共有の枠組への参画を進める。(文部科学省、国土交通省)

エ 北極域の諸問題解決に貢献する人材の育成

 ○我が国の北極研究が継続的に発展するために、若手研究者の教育に取り組むとともに、ArCSの取組等を通じて国外の大学や研究機関へ若手人材を派遣し、北極域の諸課題解決に向けた国際的な議論を牽引できる人材の育成に取り組む。(文部科学省)

 ○北極域の諸問題解決に貢献するため、ArCSの取組等を通じて自然科学、人文・社会科学を問わず専門的人材を育成・確保する教育・研究支援策を推進する。(文部科学省)

(2)国際協力

ア 「法の支配」に基づく国際ルール形成への積極的な参画

 ○北極をめぐる経済環境、安全保障環境を念頭に、北極海において、国連海洋法条約に基づき、「航行の自由」を含む国際法上の原則が尊重されるよう、北極評議会(AC*93*)を含む多国間のフォーラムや北極圏諸国との二国間の対話を活用し、我が国から積極的に働きかける。(外務省)

 ○北極域における環境変化がもたらす、気候変動等を含む地球環境全体への影響が懸念される諸課題について、我が国の観測・研究に基づく科学的知見を多国間、二国間の枠組を活用して積極的に発信する。北極をめぐる議論の主要なプレイヤーとして、広範な国際協力に基づく地球規模課題の解決に貢献すべく、経済活動を始め北極域における我が国の活動拡大を視野に、現実に対応した新たなアジェンダ設定を含む更なる取組の可能性につき検討する。(外務省、文部科学省、環境省)

 ○北極海公海における科学的根拠に基づく水産資源の持続可能な利用に向け、沿岸国を含めた関係国との水産資源の保存管理のルール形成に引き続き積極的に参加する。(外務省、農林水産省)

イ 北極圏国等との二国間、多国間での協力の拡大

 ○二国間と多国間の最適な組合せを常に念頭に置き、北極圏国を始め北極に携わる諸国との意見交換を更に促進するとともに、北極科学大臣会合*94*、北極サークル*95*、北極フロンティア*96*、北極に関する日中韓ハイレベル対話*97*等の北極に関する国際枠組を最大限活用し、我が国の考え方や観測・研究実績の発信を更に強化し、プレゼンスの向上を図る。そのために、これら会合へのハイレベルの参加や、その主催について検討する等の取組を進める。(外務省、文部科学省)

 ○国際協力の一環として、北極圏に位置する研究・観測拠点の確保や研究者の交流、国際共同研究を推進する。その際、ICTを積極的に活用する。(総務省、文部科学省)

ウ 北極評議会(AC)の活動に対する一層の貢献

 ○2013年5月にACのオブザーバー資格が承認されたことを踏まえ、ACの関連会合

(作業部会、タスクフォース等)に対する我が国専門家や政府関係者の派遣機会の増加等、ACの活動に対する貢献を一層強化する。また、AC議長国及びメンバー国等との政策的な対話を進め、北極の主要なプレイヤーとしての貢献を強化する。(外務省、文部科学省、環境省)

 ○我が国のACへの一層の貢献を可能とする観点から、ACの議論の対象や、オブザーバーの役割についてのAC内での検討の動向を注視するとともに、オブザーバーの役割拡大を含め、ACのあり方に関する議論に積極的に参加していく。(外務省)

(3)持続的な利用

ア 北極海航路の利活用

 ○北極海航路の自然的・技術的・制度的・経済的課題について明らかにするとともに、海氷分布予測システムや気象予測システム等の航行支援システム構築や必要なインフラ整備の検討等、我が国海運企業等の北極海航路の利活用に向けた環境整備を進める。(文部科学省、国土交通省)

 ○水循環変動観測衛星(GCOM-W*98*)、陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)等の衛星による海氷観測データを活用し、北極海航路における船舶の航行安全のための海氷速報図作成等に係る利用実証を引き続き行う。(文部科学省)

イ 北極海の海洋環境保全の確保

 ○北極域における気候変動対策に貢献すべく、関係省庁が緊密に連携をし、パリ協定やSDGsの適切な国内実施に取り組む。(環境省)

 ○北極評議会の作業部会、その他の関連会合等のフォーラムにおける北極海の海洋環境問題の議論に積極的に参加し、我が国官民の経験や科学的知見、最先端の科学技術の活用を通じ、予防・対応策の検討に一層の貢献をする。(文部科学省)

ウ 北極域の持続的な海洋経済振興

 ○北極域における経済活動拡大のため、我が国経済界に対して、北極経済評議会*99*や北極サークル等の国際フォーラムへの積極的な参加を働きかける。(内閣府、外務省、経済産業省)

 ○政府、民間企業、研究機関が協力して、環境保全と両立する形での北極海航路の利活用や北極域の天然資源開発等に関する情報収集及び活用方策を検討する。(文部科学省、経済産業省、国土交通省)


8.国際的な連携の確保及び国際協力の推進

(1)海洋の秩序形成・発展

 ○国連海洋法条約を中心とした国際ルールを適切に実施するため、国際連合等における海洋に関する議論に積極的に対応するとともに、IMO等における海洋に関する国際ルールの策定や国際連携・国際協力に主体的に参画する。(外務省、国土交通省)

 ○海洋の秩序形成・発展に貢献するため、国際ルールに則し、海洋に関する紛争の解決を図る。また、国際司法機関等第三者機関の積極的な活用を重視すべきという考え方を、我が国のみならず、各国も共有することを促進するとともに、国際海洋法裁判所等の海洋分野における国際司法機関の活動を積極的に支援する。さらに、国際法的観点から説得的な主張の展開、国際裁判等に備えた国内の体制を早急に強化するとともに、シーレーン沿岸国が国際法に基づいて適切に対応ができるように、我が国が主催する国際会議や国際法模擬裁判等の実施を通じて、これら諸国の法律家との連携を強化し、また、人材育成に貢献していく。(外務省)

 ○政府のみならずNGOや企業等民間団体を含む幅広い主体が出席するアワオーシャン会合等の場を積極的に活用し、海洋国家としての我が国官民の取組を幅広く発信することで、「海における法の支配」及び「科学的知見に基づく政策の実施」という二つの原則を国際社会全体に浸透させるとともに、国際社会におけるプレゼンスを強化する。(内閣府、外務省)

(2)海洋に関する国際的連携

 ○海洋に関する国際枠組に積極的に参加し、国際社会の連携・協力の下で行われる活動等において主導的役割を担うよう努める。特に、経済的側面を含む我が国の安全の確保の基盤である長大な海上航路における航行の自由及び安全を確保するため、EAS・ARF等様々な場を積極的に活用し、関係各国と海洋の安全に関する協力関係を強化するとともに、ASEAN地域訓練センターにおけるVTS*100*要員の育成支援等の協力の具体化を進める。(外務省、国土交通省、防衛省)

 ○北太平洋海上保安フォーラム、アジア海上保安機関長官級会合等の多国間会合や、インド、韓国、ロシア等との二国間会合を通じ、関係国の機関との連携を深める。また、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP*101*)や東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA*102*)等への参画等を通じて、関係諸国と海洋環境に係る国際連携・国際協力体制を強化する。(外務省、国土交通省、環境省)

 ○マグロ類を始めとする国際的な水産資源の適切な保存管理を推進するため、各地域漁業管理機関において、我が国のリーダーシップによる科学的根拠に基づく議論を主導する。(外務省、農林水産省)

 ○公海域等における高度回遊性魚類等の資源管理の効果を損なう違法、無報告、無規制(IUU*103*)漁業に対して、各国と協調して、地域漁業管理機関等における対策強化等を主導する。(農林水産省)

 ○海上における安全の確保のため、IMOにおける「海上人命安全条約(SOLAS*104*)」及び関連方針等の国際ルールの見直しに積極的に参画する。(国土交通省)

 ○自動運航船の実現に向け、IMOにおいて、安全に関する国際ルールの適切な整備を進める。(国土交通省)

 ○船舶の再資源化(シップ・リサイクル)における安全確保及び環境保全を図るため、「船舶再資源化香港条約(シップ・リサイクル条約)」の締結に係る国会承認を求める件を平成30年2月に閣議決定し、国会に提出したところであり、引き続き同条約の早期締結を目指すとともに、早期発効に向けて環境整備等を推進する。また、同条約の国内実施のために「船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案」を平成30年3月に閣議決定し、国会に提出したところであり、引き続き同条約の発効に備えた国内法令の整備を行っていく。(外務省、厚生労働省、国土交通省、環境省)

 ○海上でのテロ行為の防止及び海上輸送による大量破壊兵器の拡散の防止に関し、

「海洋航行不法行為防止条約2005年改正議定書」等を早期に締結する。(外務省)

(3)海洋に関する国際協力

ア 海洋調査・海洋科学技術

 ○気候変動、海洋酸性化、生物多様性等の地球規模課題に対応していくため、WMO、UNESCO/IOC等の関係機関や関係省庁の下で実施されている「アルゴ計画」を始めとした国際的な海洋観測計画、データ交換の枠組等に引き続き参画・貢献する。(外務省、文部科学省、農林水産省、国土交通省)

 ○海洋調査により得られた成果を基に、海底地形名小委員会(SCUFN*105*)への海底地形名の提案を引き続き実施し、海底地形名の標準化に貢献していく。(国土交通省)

 ○近年、世界的に関心が高まっている北極海や、太平洋・インド洋系の海洋と大気の変動が環境に及ぼす影響評価を視野に入れた海洋観測研究を推進するため、科学技術協力協定等に基づく二国間協力を含め、国内外の関係機関と連携した海洋観測に関する国際協力を推進する。(外務省、文部科学省、環境省)

 ○我が国の地球深部探査船「ちきゅう」と欧米の掘削船を国際的に共同利用するIODPに、引き続き積極的に参画するとともに、日米欧だけでなくアジア大洋州諸国等を加えた協力体制を構築する。(文部科学省)

イ 海洋環境

 ○生物多様性を保全する観点から、サンゴ礁、広域を移動する動物等の保護に関し、国際協力の下で、海洋環境や生物の調査・研究を行う。(環境省)

 ○世界閉鎖性海域環境保全会議(EMECS*106*)等の国際会議において、我が国の水質総量削減制度や「里海」づくり等の環境保全施策の情報発信を行う。(環境省)

 ○太平洋島嶼{しょとルビあり}国等との間で、島の保全・管理、周辺海域の管理、漁業資源の管理、気候変動への対応など、我が国の島と共通の問題の解決に向けて連携・協力を推進する。(外務省、農林水産省、環境省)

ウ 海洋の治安対策・航行安全確保

 ○「アジア人船員国際共同養成プログラム*107*」等を通じて、諸外国における船員の資質向上に貢献する。また、世界海事大学等を通じて、諸外国における海事関係者の資質向上に貢献する。(国土交通省)

 ○マラッカ・シンガポール海峡の航行安全の確保を図るため、官民連携の下、同海峡の協力メカニズムにおいて実施されるプロジェクトのうち、航行援助施設の整備に関する協力や、航行援助施設の維持管理に係る人材育成を推進するとともに、同海峡の航行安全対策等を充実するため、日ASEAN統合基金(JAIF*108*)を活用した沿岸国との共同水路測量及び電子海図の作成を着実に実施する。(国土交通省)

 ○港湾保安に関する国際連携を強化するため、能力向上支援、共同訓練の実施等を推進する。(国土交通省)

エ 防災・海難救助支援

 ○我が国の優れた防災技術を、アジアや太平洋島嶼{しょとルビあり}国を始めとする災害に脆弱な国に

対して周知・普及活動を行う。特に、地球温暖化による海面水位上昇に伴い一層深刻化する高潮・高波等による災害を防止するため、アジア・太平洋地域等への高潮・高波予測情報の提供、技術的助言、情報ネットワーク活動の支援等を推進する。(国土交通省)

 ○北西太平洋沿岸国等における防災・減災のため、津波災害が懸念される諸外国への

津波情報の迅速な提供、津波警報システム構築への技術支援等を継続する。(国土交通省)

 ○アジア・太平洋地域の熱帯低気圧や火山噴火等による災害リスク軽減に資するため、気象衛星ひまわりの観測データを外国気象機関へ提供するとともに、リクエストされた領域に対して機動観測(Himawari Request)を実施する。(国土交通省)

 ○効率的かつ効果的な海難救助を実施するため、各国との間で情報交換・合同訓練等により連携・協力を強化する。(国土交通省)


9.海洋人材の育成と国民の理解の増進

(1)海洋立国を支える専門人材の育成と確保

 海洋産業が広範な研究開発型産業であることや多分野横断的な産業であるという性格を踏まえ、国際法に係る知識など文系的素養を有する人材の育成にも配慮しながら、海洋立国を支える専門人材の育成と確保のため、以下の取組を行う。

ア 海洋開発の基盤となる人材の育成

 ○国際的に通用する技術者等の人材育成のため、「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム」への関係者の参加及び取組強化を促進するとともに、実践現場を有する海外の大学・企業・研究機関等との連携体制を構築する。また、海洋開発特有の船舶での作業に係る育成プログラムを検討する。(国土交通省)

 ○「j-Ocean」として、産業界のニーズを踏まえた海洋開発に必要な知識を体系的・包括的にカバーする専門教材の整備等を推進する。(国土交通省)

 ○海洋に関する大学等において各機関が有する特色を踏まえ、実践力強化のために産学連携を推進し、産業界のニーズ等に留意したカリキュラムの検討など、海洋開発の基盤となる人材の育成に資する取組を促進する。(文部科学省)

イ 造船業・舶用工業に関わる人材の育成

 ○学生生徒の造船業・舶用工業への就職率の向上のため、職業としての魅力を発信する取組を継続する。造船技能者に対しては、造船技能研修センターの活用等により、高度な専門人材の育成を図る取組を継続する。(国土交通省)

 ○産業としての魅力を高めるため、「i-Shipping」などIoTの活用による生産性向上を図ることが重要であり、ICTを中心とした研究開発に取り組む。(国土交通省)

 ○「新高等学校学習指導要領」(平成30年3月文部科学省告示第68号)において「船舶工学」が科目として新設されたことも踏まえ、造船業・舶用工業を志す若者を継続的に確保・育成するため、授業の教材や教員養成プログラムの作成・普及等による高校における造船等に関する教育の質の向上を図り、我が国造船業・舶用工業の担い手候補となる生徒を育成する。(国土交通省)

 ○その他、地方運輸局等を主体とした地域の造船企業、地元教育機関等との会合等を通じ、地域の連携体制を強化し、各地域のニーズに即した造船に関する教育の充実、造船人材の確保・育成を図る。(国土交通省)

ウ 船員等の育成・確保

 ○独立行政法人海技教育機構において外航・内航海運のニーズに応じた即戦力・実践力を備えた船員を養成するため、①関係者間での連携を強化し、海運事業者が運航する船舶の活用を通じて、より実践的な乗船訓練を可能とする社船実習の拡充等に取り組み、②船員に必要な知識要件への対応として、各種講習等を実施し、技能の習得に努めるなど、船員教育体制の見直しを含め、教育の高度化に取り組む。(国土交通省)

 ○船員の安定的・効果的な確保・育成のため、就業体験を実施するなど、国と内航海運事業者等の関係者とが連携して若年者の志望を増加させるための取組を推進するとともに、事業者が新人船員を雇用して、育成する取組を促進する。また、魅力ある職場づくり等による船員への就業・定着の推進、労働時間・負荷の軽減等の働き方改革による生産性向上に取り組む。(国土交通省)

 ○若年船員を計画的に確保するため、女性船員の活躍促進に向け取り組むとともに、退職海上自衛官等が船員として就業するための環境整備を引き続き行う。(国土交通省、防衛省)

 ○優秀なアジア人外航船員の確保・育成のため、開発途上国の船員教育者の技能向上を図り、より優秀な船員を養成することを目的とした研修を実施する。(国土交通省)

 ○船舶交通の要衝及び難所において船舶を導き、航行の安全を確保することで海運を支える重要な役割を担う水先人の安定的な確保・育成のため、国、水先人、海運事業者等の関係者の連携の下、複数免許取得の促進、募集活動の強化等の確保・育成策に取り組む。(国土交通省)

エ 海洋土木の担い手の育成・確保

 ○海洋土木への理解を深めるため、官民が連携して、学生生徒を対象とした現場見学会や、国や建設事業者の土木技術者との意見交換会等を引き続き実施する。また、潜水士等に対する認知度の向上や海洋土木に関する教育の充実により担い手となり得る若年者層の拡大を図る。(国土交通省)

 ○魅力的な職場とするため、官民が連携して、適切な休日確保等の就労環境改善に引き続き取り組む。(国土交通省)

 ○次の世代へと技術を伝承するため、官民が連携して、若手技術者の現場体験の機会の拡大に引き続き取り組む。(国土交通省)

 ○生産性の向上を図るため、測量から設計、施工、検査、維持管理に至るプロセス全体に3次元データを活用するなど、ICTの導入を拡大していくとともに、ICTに対応できる人材の育成を推進する。(国土交通省)

 ○東南アジア諸国等へのインフラ海外展開を推進するため、プロジェクトの川上から川下まで、各段階を担える人材の育成を更に進める。(国土交通省)

オ 水産業の担い手の育成・確保

 ○新規漁業就業者の漁業への定着率の向上を図り、将来の漁業の担い手として育成していくため、漁業への就業情報の提供や現場での研修を支援する。また、漁船漁業の乗組員不足に対応するため、漁業団体等が行う計画的・安定的な人員採用に向けた取組の支援及び水産高校、水産大学校、漁業学校、水産試験場等における海技資格を取得できる新たな仕組みの実現により、海技士等の人材の育成・確保に努める。

(文部科学省、農林水産省、国土交通省)

 ○水産業及びその関連分野の人材確保のため、水産業において指導的役割を果たす人材を育成する国立研究開発法人水産研究・教育機構水産大学校や、水産に関する課程を備えた高校・大学において、好事例の普及や質の高い教員の育成・配置等による実践的な専門教育の充実を図るとともに、実習船・練習船の整備を始めとする教育環境の整備を引き続き推進する。(文部科学省、農林水産省)

 ○水産業のICT化を始め、持続的な水産資源の利用や収益性の高い操業体制への転換を進めるとともに、水産業普及指導員による新たな技術・知識の導入についての指導・助言を実施する。(農林水産省)

 ○水産業における女性の活躍の場を更に広げるため、漁獲物の加工や消費者ニーズに対応した商品開発等、女性の特性を活かしつつ能力を発揮できる多種多様な活動を促進する。(農林水産省)

カ 横断的に講ずべき施策

 ○海洋分野におけるIT人材の育成を促進するため、MDAの能力強化に資する研究開発を含めた研究開発プロジェクト等を実施する。(文部科学省)

 ○海洋や水産に関する専門教育を行う高校、高専や海洋系・商船系・水産系の大学・大学校において、教育環境の整備を含め、産業界が求める人材ニーズ等を踏まえた教育の高度化を図る。(文部科学省、農林水産省、国土交通省)

 ○外板疲労等による老朽化の進行が指摘されている練習船の代船建造を計画的かつ早期に進め、学生等の安心・安全な教育研究環境の整備や新たな設備等の搭載による教育研究の高度化を着実に図る。(文部科学省)

 ○海洋人材の育成と確保につながるよう、関係省庁の連携により、海洋分野における社会人の学び直しを推進する。(文部科学省、厚生労働省、国土交通省)

(2)子どもや若者に対する海洋に関する教育の推進

 ○2025年までに全ての市町村で海洋教育が実践されることを目指し、「ニッポン学びの海プラットフォーム」の下、関係府省・関係機関間の連携を一層強化する。(内閣府、文部科学省、国土交通省)

 ○学校現場で活用できる副読本(インターネット上におけるものを含む。)の開発や、施設見学、キャリア教育の推進、教員がアクセスして使えるデータ利用・教材作成の手引きの充実等を通じ、教育現場が主体的かつ継続的に取り組めるような環境整備を行う。特に、海洋に関する科学的な理解を深めるため、副読本において、大学・研究機関等における研究開発の最新の状況を児童生徒の発達段階に応じて解説・情報発信する。(文部科学省、国土交通省)

 ○海洋に関する教育の総合的な支援体制を整備する観点から、学校教育と水族館や博物館等の社会教育施設、水産業や海事産業等の産業施設、国立研究開発法人等の研究機関、海に関する学習の場を提供する各種団体等との有機的な連携を促進する。

(文部科学省、農林水産省、国土交通省)

(3)海洋に関する国民の理解の増進

 ○海洋に関する国民の理解と関心を喚起するため、国民の祝日である「海の日」制定の意義に鑑み、「海の日」や「海の月間」等の機会を通じて、大学・研究機関等が所有する船舶や海上保安庁による灯台等の一般公開、各種海洋産業の施設見学会や職場体験会、海岸清掃活動、海洋環境保全、海洋安全、沿岸域についての普及啓発活動、マリンレジャーの普及や理解増進等の多様な取組を、産学官等で連携・協力の下、実施する。(文部科学省、国土交通省)

 ○平成27年12月、第70回国連総会において、人々の津波に対する意識向上と津波対策の強化を目的に、日本を始め世界142か国が共同提案し、全会一致で採択された「世界津波の日(11月5日)」を一つの切り口として、世界各地における「世界津波の日」シンポジウム等の普及啓発活動の推進や自然災害に脆弱な国における津波防災訓練等の実施を通じて、防災分野の様々な分野で国際協力を推進する。(外務省)

 ○一般国民が海に親しむ機会を拡大し、子どもや若者を始めとする多くの人に対し、海・船への興味・関心をより一層高める「CtoSeaプロジェクト」を強力に推進する。また、この一環として独立行政法人海技教育機構の練習船等を活用した小中学生等の各種行事への参加等を通じた普及啓発への取組も強化する。(国土交通省)

 ○海洋に関する様々な情報を有する大学・研究機関等において、ICTの利活用を進め、メディア、インターネット等を通じて分かりやすく発信する。特に、ネットメディア、SNS*109*、バーチャルリアリティ(VR)等の利活用を促進する。(文部科学省、農林水産省、国土交通省)

 ○海洋に関する科学技術の魅力や研究活動の実際を分かりやすく伝え、効果的な理解増進に資することを目的として、研究機関等における、広報活動に携わる専門的な人材の活用を推進する。(文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省)

 ○海洋国家である我が国の歴史・文化を知る上で重要な文化遺産である水中遺跡について、遺跡の保存や活用等に関する検討を進める。(文部科学省)

 ○地方公共団体による水族館・科学館のコンテンツの充実、調査船の一般公開、講演会・イベント等の開催、体験型学習等の取組や海洋振興策の検討に対し、大学・研究機関等の積極的な協力を図る。また、地域における産学官連携のネットワークを通じて、地域の特色を活かした海洋教育、普及啓発活動の取組を推進する。(内閣府、文部科学省)


第3部 海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

1.計画を着実に推進するための方策

 内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚から構成される総合海洋政策本部が打ち立てる国家戦略としての海洋政策のあるべき姿を踏まえ、同本部がその実務を担う総合海洋政策推進事務局と一体となって、政府の司令塔としての機能を十分に果たし、その実現を推進していけるよう積極的に取り組む。

 このため、総合海洋政策推進事務局は、各施策が総合的かつ計画的に推進されるよう、関係府省の協力を得つつ、その連携を強化する方策を講ずる。この場合において、そもそも、海洋に関する施策を進めるに当たっては、それぞれの施策につき、権限、ノウハウ・知見、経験等を有する多くの関係府省の責任ある取組が重要であるとともに、関係府省が密接に連携し、政府全体としてそれらの取組を効果的に組み合わせる等、総合的かつ総力を挙げた取組を進めることが求められることから、関係府省はその点を十分認識する必要がある。また、国の他の計画のうち、海洋に関する施策を含むものは、本計画で示す基本的な方針に沿って策定、推進することが重要である。

 これらの点を踏まえ、今後の海洋政策のあり方として、施策の着実な進展をもたらす手法を導入・強化することとする。

 このため、海洋基本計画の実現に向けた工程を明確にし、それに則し取り組み、実施状況等を評価し、それを基に工程を手直ししながら進めていくといった手法を導入・強化し、海洋基本計画に定める事項の着実かつ効果的な推進体制を構築する。

 このような観点から、総合海洋政策本部の総合調整機能及び企画立案機能が十分に発揮されるよう以下の取組を行う。

(1)施策の進捗状況の点検及び見直しによる着実な実施

 海洋基本計画に掲げた諸施策を進めるに当たり、具体的目標を掲げ(Plan)、施策を実施し(Do)、その進捗状況を的確に把握・評価し(Check)、その結果に応じて取組内容等を見直す(Act)というPDCAサイクルを活用した工程管理を行う。工程管理の具体的あり方については、それぞれの施策の性質も踏まえ、効果的・効率的な展開に資するものとなるよう工夫する。

 具体的には、まず、工程管理の基礎として、毎年度、海洋基本計画に記載された施策ごとに進捗状況を整理するとともに、その内容を取りまとめて公表する。

 さらに、共通の目標・目的を持った施策のまとまり(以下「施策群」という。)を単位として工程表を策定することとし、目標やその達成に向けた取組内容、スケジュール、実施体制等を当該工程表に記載する。その際に、本計画に数値による目標が設定されていないものも含め、工程表には目標達成に向けた状況を俯瞰的・定量的に把握するための指標の記載に努める。

 こうしたPDCAサイクルの活用に当たって、関係府省は所管する諸施策(第2部に記載された個別施策ごとに付記された府省以外の関係府省が情勢変化等を踏まえて当該施策に取り組む場合を含む。)を踏まえて工程表の作成や見直しを行うこととし、特に、府省をまたがる施策群に係る工程表に関しては、総合海洋政策推進事務局が主体となって調整を行う。また、参与会議において、施策が総合的かつ計画的に取り組まれているかという観点から工程表等に関する審議が効率的かつ効果的に進められるよう、総合海洋政策推進事務局は、あらかじめPDCAサイクルの年間及び今後5年間を想定したスケジュールを明確化するとともに、資料作成や議論の進め方に関しても十分な事前調整を行うものとする。

 関係府省は、参与会議における審議結果等を参考に、必要に応じて施策の実施手法等や工程表の見直しを行うとともに、それらを踏まえて諸施策を的確に遂行する。なお、他の関連する基本計画に基づく施策の遂行に係る事項にあっては、参与会議及び総合海洋政策推進事務局と関係府省とは、政府内の調整プロセスも活用しつつ、双方向の議論を行うことに留意する。

(2)参与会議の検討体制の充実

 海洋基本計画に掲げた諸施策の実施状況を継続的にフォローしていくため、各施策の実施主体である関係府省は、参与会議に積極的に参画する。

 また、参与会議は、専門的なテーマを集中的に議論する場合においては、必要に応じプロジェクトチーム等を設置し、参与以外の幅広い関係者の参画も得ながら、テーマごとに集中的に審議できる体制とする。参与会議における審議を踏まえ、新たに必要と考えられる措置等については、総合海洋政策本部長に提案する。


(3)事務局機能の充実

 総合海洋政策推進事務局は、関係府省が実施する各施策の効果的かつ効率的な推進に向けて、各施策のフォローアップ、必要な工程の見直し等を行うことができるように、関係府省との協力関係をより一層強化する。また、産業界等との連携を更に深化させ、重要施策の着実な実施に努める。


2.関係者の責務及び相互の連携

 海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するためには、政府機関のみならず、地方公共団体、関係研究教育機関、民間事業者、公益団体等の様々な関係者の英知と総力を結集することも極めて重要であり、官民、産学官公の様々な連携を図りつつ、それぞれの役割に応じて積極的に取り組むことが重要である。

 地方公共団体は、国と地方の役割分担の下、地域の実態や特色に応じて、海岸等における漂着ごみの処理に努める等の良好な海洋環境の保全、地域の重要な産業である水産業や地域資源を活用した海洋関連観光等の海洋産業の振興、陸域と海域を一体的かつ総合的に管理する地域の計画の策定、地域の特色を活かした人材の育成等に努めることが重要である。海洋産業の事業者は、海洋資源開発の着実な推進、環境負荷の低減技術の開発等の環境対策等を通じた海洋環境の保全、水産資源の適切な管理、効率的・安定的な海上輸送の確保、情報技術の進展等を活かした新たな事業展開等に努めることが重要である。大学・研究機関等は、海洋国家の実現に向けて海洋科学技術に関する研究開発の推進等に努めることが重要である。国民、NGO等は、海洋に関する会議やイベントへの参加、海洋産業の事業者との交流、海浜清掃等身近な海洋環境保全活動の実施等を通じて、海洋への理解を深めるよう努めることが重要である。

 特に、四方を海に囲まれた我が国では、水産業や海運業、造船業、港湾関連産業等を中核産業とする地域が存在し、それら諸産業が集積した「海事クラスター」を形成し、産業基盤の強化はもとより、地域経済の活性化をもたらしている地域もある。こうした中、一部の地方公共団体においては、水族館・科学館のコンテンツの充実、造船所、調査船、帆船を含む練習船等の一般公開、講演会・イベント等の開催など、地方創生の観点から海洋産業振興・海洋人材育成に資する積極的な取組が進められており、これら取組は国全体の海洋政策の推進に寄与することから、更なる広がりが図られるよう、適切な支援を講ずることが必要である。また、我が国は亜寒帯から亜熱帯までの幅広い環境を有しており、その環境に応じた海の多様性に対応していくため、地方をベースとした取組を推進していくことも必要となる。

 また、民間事業者による「海洋資源開発技術プラットフォーム」等のこれまでに取り組まれてきた事業との更なる連携強化にも引き続き努める。


3.施策に関する情報の積極的な公表

 海洋基本計画は、広く国民に周知されるよう印刷物、インターネット等様々な媒体を通じて情報提供する。その際に、国民にとっても分かりやすく、また、親しみやすいものとなるよう、図表、写真等を積極的に取り入れた海洋基本計画のポイントを取りまとめた資料を作成し、公表する。

 また、施策に関わる関係者が相互に連携を図りながら施策を推進できるよう、関係者間で情報を共有する基盤を構築することが重要である。このため、PDCAサイクルを活用した工程管理に関して、関係府省が作成した工程表、参与会議における個別施策や工程表の進捗状況に関する審議結果、さらには、それらを踏まえた個別施策の実施方法等や工程表の見直しの内容等について、適切な方法により公表する。

 さらに、「海洋の状況及び政府が海洋に関して講じた施策」に関して、政府や関係機関における取組やその状況等について資料として取りまとめ、毎年度公表する。


おわりに

 我が国が、国土の保全と国民の安全を確保すべく海を守り、経済社会の存立・成長の基盤として海を活かし、貴重な人類の存続基盤として海を子孫に継承していくために最も重要なことは、政府及び関係者が、国民の理解と協力を得つつ、各々の任務を確実に遂行し、本計画に掲げる海洋政策の方向性である「新たな海洋立国への挑戦」に向けて邁{まいとルビあり}進することである。そのため、政府においては、本計画に基づき、統合的な形で各施策を、一歩一歩、着実に実施することとする。また、本計画は海洋基本法施行後10年の総括及び最近の情勢の変化を踏まえて、長期的視点に立って策定するものであるが、今後の海洋をめぐる情勢の変化に応じて柔軟に対応していくことに留意しつつ、全力を挙げて本計画の内容の達成を目指すとともに、我が国が世界をリードし世界の模範となる海洋国家として更なる飛躍を果たせるよう取り組むこととする。


{*1* InformationTechnology(情報技術)の略。}

{*2* 微細なプラスチックごみ(5㎜以下)のこと。マイクロプラスチック及びそれに含有・吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響が懸念されている。}

{*3* Sustainable Development Goalsの略。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。先進国を含む国際社会全体の開発目標として、2030年を期限とする包括的な17の目標を設定。}

{*4* 2015年12月に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等を定めた協定。世界共通の長期目標として2℃目標の設定・1.5℃に抑える努力を追求すること、主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること、全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、レビューを受けること等を内容とする。}

{*5* 平成28年7月18日、「海の日」を迎えるに当たっての内閣総理大臣メッセージにおいて、海洋教育の取組を強化していくため、産学官オールジャパンによる海洋教育推進組織「ニッポン学びの海プラットフォーム」を立ち上げ、プラットフォームを通じて、2025年までに、全ての市町村で海洋教育が実践されることを目指す旨発信。}

{*6* 平成28年10月に設立された、海洋開発技術者を育成する産学官からなる統合的なプラットフォーム(日本財団が事務局として活動を実施)。平成27年7月20日、第20回「海の日」特別行事総合開会式における内閣総理大臣スピーチにおいて、海洋開発技術者の育成をオールジャパンで推進するため、産学官を挙げたコンソーシアム、「未来の海パイオニア育成プロジェクト」を立ち上げる旨発信されたことを受けて、実施されている取組。}

{*7* 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」}

{*8* United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2017). World Population Prospects: The 2017 Revision.}

{*9* 我が国の領海(内水を含む。)及び排他的経済水域の面積は世界第6位、各国の海外領土の持つ海域も当該国のものとすると世界第8位とされる。}

{*10* Johan Rockström et al.「A safe operating space for humanity」, Nature, 24 September 2009, Vol 461、 Will Steffen et al.「Planetary boundaries:Guiding human development on a changing planet」,Science,13 February2015,Vol347,Issue6223、「平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」}

{*11* 「双方にとって有益な」の意味。}

{*12* Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)の略。}

{*13* 平成29年4~5月、全国の15~69歳の男女を対象に行われ、1万1600人が回答を寄せた、日本財団実施のインターネット調査。10代の3人に1人(29.6%)は「海に接していても心地よくない」と答えている。}

{*14* Maritime Domain Awareness の略。海洋の安全保障、海洋環境保全、海洋産業振興・科学技術の発展等に資す る海洋に関連する多様な情報を、取扱等に留意しつつ効果的な収集・集約・共有を図り、海洋に関連する状況を効 率的に把握すること。}

{*15* 「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」(平成8年法律第74号)第1条第1項の排他的経済水域及び同法第2条の大陸棚をいう。}

{*16* 具体的目標を掲げ(Plan)、施策を実施し(Do)、その進捗状況を的確に把握・評価し(Check)、その結果に応じて取組内容等を見直す(Act)こと。}

{*17* Internet of Things(モノのインターネット)の略。自動車、家電、ロボット、施設等あらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出すというもの。}

{*18* Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program の略。内閣府「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために平成26年度に新たに創設したプログラム。}

{*19* 平成28年度の参与会議の下に設置された新海洋産業振興・創出PTの報告書において創設が提唱された海洋産業と資源産業の連携を強化するための枠組。先端的な海洋資源開発の実用化促進と海洋産業の競争力強化を目指して、造船、舶用工業、海運、エンジニアリング等の海洋産業と資源開発会社が一堂に会し、資源開発プロジェクトの現状や将来見通しや新技術の利用可能性等の様々な技術情報の共有を行う場である。平成9年6月7日に第1回会合、平成30年2月2日に第2回会合が開催され、約200名が参加した。}

{*20* 従来の自前主義(クローズドイノベーション)に代わり、組織外の知識や技術を積極的に取り込むこと。}

{*21* Autonomous Underwater Vehicle の略。}

{*22* Artificial Intelligence の略。}

{23* 第5期科学技術基本計画において、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くものとして掲げられた5番目の社会の姿。}

{*24* ヤマルLNG社がロシア・ヤマル半島にLNGプラントを建設・操業し、北極海航路等を活用して欧州やアジア向けにLNGを輸送・販売するプロジェクト。

{*25* Intergovernmental Oceanographic Commission of United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization(ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)政府間海洋学委員会)の略。海洋と沿岸域の性質と資源に関する知識を深め、加盟国における海洋環境の管理と持続可能な開発・保護などの政策に適用されるよう、国際協力を行い、調査研究及び能力開発の活動を調整することを目的として1960年に設立された。}

{*26* Japan Aerospace eXploration Agencyの略。}

{*27* Advanced Land Observing Satellite(陸域観測技術衛星)の略。}

{*28* Super Low Altitude Test Satelliteの略。}

{*29* Synthetic Aperture Rader(合成開口レーダー)の略。}

{*30* Port State Controlの略。}

{*31* International Hydrographic Organizationの略。全世界の航海をより容易で安全にすることを目的として、水路図誌(海図、水路誌等)の最大限の統一、水路測量の手法や水路業務の技術開発等を促進するための技術的、科学的な活動を行う国際機関。1921年に国際水路局として設立され、1970年に発効した国際水路機関条約に基づき国際水路機関となった。}

{*32* Business Continuity Planの略。港湾BCPは、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、突発的な港湾運営環境の変化等の危機的事象が発生しても、当該港湾の重要機能が最低限維持できるよう、危機的事象の発生後に行う具体的な対応(対応計画)と、平時に行うマネジメント活動(マネジメント計画)等を示した文書。}

{*33* Combined Maritime Forcesの略。バーレーンに本部を置く、海賊対処等を実施する多国籍の海軍が共同して活動する部隊。}

{*34* Contact Group on Piracy off the Coastof Somaliaの略。国連安保理決議第1851号(2008年12月採択)を受けて2009年1月に発足した、各国政府・軍、海運業者、NGO等による対ソマリア海賊の取組を調整する場。}

{*35* Combined Task Force 151の略。2009年1月に海賊対処のために設置された多国籍の連合任務部隊。}

{*36* International Maritime Organizationの略。1958年に設立された、船舶の安全及び船舶からの海洋汚染の防止等、海事問題に関する国際協力を促進するための国連の専門機関(設立当時は「政府間海事協議機関」。1982年に国際海事機関に改称。)。}

{*37* Djibouti Regional Training Centreの略。ソマリア及び周辺国の海上保安能力の向上支援として、我が国等が拠出した、IMOのジブチ行動指針(DCoC)信託基金によって建設された訓練施設。}

{*38* Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and Armed Robbery against Ships in Asia の略。アジアの海賊・海上武装強盗対策のため、2006年に発効し、情報共有センター(ISC)がシンガポールに設立された。ISCは締約国間の情報共有の促進、独自情報の収集・分析・発信、締約国の能力構築等を実施しており、締約国はISCを通じ、海上保安当局間で海賊・海上武装強盗に関する情報共有及び協力を実施。ISC発足以来、日本人が歴代事務局長を務める。}

{*39* 海上保安庁に設置された外国海上保安機関への能力向上支援の専従部門であり、アジア諸国を中心とした諸外国の海上保安機関職員に対する研修訓練を実施するとともに支援内容の要望にきめ細かく対応するための協議等を通じて、信頼関係を構築し、より一貫性・継続性をもった能力向上支援を効果的に実施することを目的としている。}

{*40* East Asia Summit の略。2005年から開催される首脳会議。ASEAN10か国に加え、日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、インド、米国、ロシアが参加。}

{*41* ASEAN Regional Forum の略。政治・安全保障問題に関する対話と協力を通じ、アジア太平洋地域の安全保障環 境を向上させることを目的としたフォーラムで、1994 年から開催。}

{*42* ASEAN Defence Ministers' Meeting(ASEAN 国防相会議)の略。2006年から開催されるASEAN加盟国の防衛担当大臣による閣僚級会合。2010年の第4回ADMMにおいて、我が国を含むASEAN域外国8か国(豪州、中国、インド、日本、ニュージーランド、韓国、ロシア及び米国)を新たなメンバー(プラス国)として、ADMMプラスの創設が決定し、同年10月に第1回ADMMプラスが開催された。ADMMプラスはアジア太平洋地域における唯一の公式な防衛大臣会合。}

{*43* Proliferation Security Initiative の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器・ミサイ ル及びそれらの関連物資の拡散を阻止するために、国際法・各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとりうる移 転(transfer)及び輸送(transport)の阻止のための措置を検討・実践する取組。

{*44* International Seabed Authority の略。国連海洋法条約及び同条約第 11 部の実施協定の規定に従って、深海 底における活動を組織し及び管理する機関。国連海洋法条約が「人類の共同の遺産」と規定した深海底(全ての沿 岸国の大陸棚の外側にあっていずれの国の管轄権も及ばない海底及びその下)の鉱物資源の管理等を目的とする。

{*45* 海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊及びレアアース泥。

{*46* 船舶の開発・建造から運航に至る全てのフェーズで ICT(情報通信技術)を取り入れ、造船業の生産性向上と 燃料無駄遣い解消・故障ゼロの運航を目指す取組。頭文字の「i」は innovation、information、IoT 等の意味を込 めている

{*47* 海洋開発市場の成長を我が国海事産業が獲得することを目指す取組。頭文字の「j」は日本(Japan)の成長、 産官学公との連携(joint)、日本の市場獲得を J の文字のように伸ばしていくこと等の意味を込めている。

{*48* Japan Overseas Infrastructure Investment Corporation for Transport & Urban Development の略。我が 国に蓄積された知識、技術及び経験を活用して海外において交通事業及び都市開発事業を行う者等に対し資金の 供給、専門家の派遣その他の支援を行うことにより、我が国事業者の当該市場への参入の促進を図り、もって我が 国経済の持続的な成長に寄与することを目的として、官民が出資して設立された組織。

{*49* Organisation for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)の略。

{*50* Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。

{*51* ICT の全面的な活用等を建設現場へ導入することにより、建設生産システム全体の生産性向上を図る取組。

{*52* Official Development Assistance の略。開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関によ る国際協力活動。

{*53* Japan Oil, Gas and Metals National Corporation の略。日本社会のために資源・エネルギーを安定的、永続 的に供給していくという使命を持ち、地方公共団体、企業と連携して、日本の産業の発展と国民生活の向上に貢献 している経済産業省所管の組織。石油公団と金属鉱業事業団を統合し、平成 16 年に設立。

{*54* Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology の略。海洋に関する基盤的研究開発、海洋に関す る学術研究に関する協力等の業務を総合的に行うことにより海洋科学技術の水準の向上を図るとともに、学術研 究の発展に資することを目的とした文部科学省所管の組織。

{*55* Remotely Operated Vehicle の略。

{*56* 平成 28 年2月に、一般財団法人日本マリン事業協会が目標を発表。

{*57* 子どもや若者を始め、より多くの人に海や船の楽しさを知ってもらうため、海との接点を広げる取組。「C」に は、国民(Citizen)、子供達(Children)、文化(Culture)等の多くの意味を込めている。

{*58* Carbon dioxide Capture and Storage の略。

{*59* 船舶へ LNG 燃料を供給すること。

{*60* 循環型社会の実現を図るため、静脈物流ネットワークの拠点となる港湾のこと。

{*61* 港湾管理者が管理する港湾区域及び「河川法」(昭和 39 年法律第 167 号)に規定する河川の河川区域以外の水 域における船舶の交通を確保するため開発及び保全に関する工事を必要とする航路。

{*62* Individual Quota の略。漁獲可能量を漁業者又は漁船ごとに割り当て、割当量を超える漁獲を禁止することに よって漁獲可能量の管理を行う手法。

{*63* 漁村地域や漁業者等を指す表現。

{*64* 追跡可能性。生産、加工及び流通の特定の一つ又は複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること。

{*65* Hazard Analysis and Critical Control Point の略。原材料の受入れから最終製品に至るまでの工程ごとに、 微生物による汚染や金属の混入等の食品の製造工程で発生するおそれのある危害をあらかじめ分析し、危害の防 止につながる特に重要な工程を重要な管理点として継続的に監視・記録する工程管理システム。

{*66* Convention on Biological Diversity(生物の多様性に関する条約)の略。生物多様性の保全、生物多様性の 構成要素の持続可能な利用、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的とする、1992 年に採択 された条約(1993 年発効)。

{*67 1992 年にブラジル・リオデジャネイロで開催の「国連環境開発会議」から 20 年後の 2012 年6月に、同じリオ デジャネイロで開催されたフォローアップ会議で、グリーン経済に向けた取組の推進、持続可能な開発を推進す るための制度的枠組、防災や未来型のまちづくり等の取組について議論が行われた。最終日に、SDGs 策定のため の政府間プロセスの立ち上げ等に合意した成果文書「我々の求める未来」が採択されるなど、今後の国際的取組を 進展させる上で重要な成果が得られた。

{*68 Marine Biological Diversity of Areas beyond National Jurisdiction の略。国連海洋法条約上、国家の管 轄権が及ばない海域、すなわち同条約にいう公海及び深海底における海洋生物多様性をいう。

{*69* 二酸化炭素の排出・吸収源対策や再生可能エネルギーの導入等により港湾空間全体の低炭素化を図る仕組みづ くりを促進する港湾のこと。

{*70* 世界気象機関(WMO)、UNESCO/IOC 等の国際機関及び各国の関係諸機関の協力の下、全世界の海洋内部の塩分及 び海水温を、アルゴフロートと呼ばれる観測機器によって、ほぼリアルタイムに観測・把握する国際プロジェク ト。我が国では、JAMSTEC 等が実施機関となってアルゴ計画を推進している。

{*71* 船舶の航行に起因する海洋汚染を防止するため、油、有害液体物質、汚水、廃棄物等について、船舶からの排 出方法、船舶の構造設備等に関する基準を定めた国際条約。MARINE POLLUTION(海洋汚染)の頭文字をとって MARPOL 条約と称す。正式名称は、International Convention for the Prevention of Pollution from Ships。

{*72* 海岸の構造物によって砂の移動が断たれた場合、上手側に土砂が堆積し、下手側の砂浜が後退することから、 その上手側に堆積した土砂を、下手側海岸に輸送・供給し、砂浜を復元する工法。

{*73* 窒素、りん、珪素等の植物プランクトンや海藻等の生長・増殖に必要な物質。海水交換が少ない閉鎖性海域等 に栄養塩類が過剰に流入すると、植物プランクトンが大量増殖し、赤潮の発生やこれらの分解過程で生じる底層 溶存酸素量の低下等の水環境の悪化が生じる。

{*74* 「水質汚濁防止法」(昭和45年法律第138号)等に基づき、人口産業が集中する広域的な閉鎖性海域を対象に、 海域に流入する汚濁負荷の総量を削減する制度。現在、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象に、化学的酸素要求量 (COD:Chemical Oxygen Demand)、窒素及びりんの総量削減が実施されている。

{*75* Automatic Identification Systemの略。船舶の位置、速力、針路等の情報及び安全に関する情報をVHF(超 ふくそう

短波)帯の電波で送受信するもので、船位通報の自動化、運航者の労力軽減及び通信の輻輳化の防止並びに船舶相 互の衝突防止等が期待されるシステム。

{*76* Seafloor observation Network for Earthquakes and Tsunamis along the Japan Trench の略。北海道沖か ら房総沖までの日本海溝沿いにおける、広域かつ稠密な地震・津波観測網(地震計・水圧計)。観測点 150 か所を 全長約 5700km の海底ケーブルで接続し、観測データをリアルタイムで陸上に伝送している。地震・津波の発生メ カニズムの解明や、地震・津波に関する正確かつ迅速な情報の提供等に活用することを目的とする。

{*77* Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis の略。紀伊半島沖(東南海地震の震源域) 及び潮岬沖から室戸岬沖(南海地震の震源域)における、広域かつ稠密な地震・津波観測網(地震計・水圧計等)。 観測点 51 か所を全長約 700km の海底ケーブルで接続し、観測データをリアルタイムで陸上に伝送している。南海 トラフ沿いで発生する地震・津波の発生メカニズムの解明や、地震・津波に関する正確かつ迅速な情報の提供等に 活用することを目的とする。

{*78* 海上保安庁にて整備・運用する、衛星情報を含めた海洋情報の集約・共有・提供のための情報システム。

{*79* Japan Oceanographic Data Center の略。国内の海洋調査機関等によって得られた海洋データを収集・管理し、 国内外へ提供する海上保安庁運営の機関。

{*80* 「アルゴフロート」等の海面から水深 2000m まで浮沈を繰り返しながら水温・塩分を観測し、得られたデータ を海面浮上時に準リアルタイムで送信する自動昇降型漂流ブイ。

{*81* 観測機器を配置したワイヤーの一端を海底に固定(係留)し、もう一方をブイの浮力によって海中に立ち上げ ることで、海中の定点を長期間にわたって連続的に観測するシステム。

{*82* 海中及び海底を探査することを目的とした、AUV や ROV 等のプラットフォームを連携したシステム。

{*83* World Meteorological Organization の略。世界の気象事業の調和的発展を目標とした国際計画の推進・調整 を行うため、1950 年に世界気象機関条約に基づいて設立された国際連合の専門機関。

{*84* 自動的に海中を浮き沈みして、水温・塩分を測定・送信する高さ1メートルの筒状の計測機器。

{*85* Global Positioning System(全地球測位システム)の略。

{*86* 我が国の排他的経済水域には、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、レアアース泥等の海洋鉱物資源の賦 存が確認されている。

{*87* International Ocean Discovery Program の略。2013 年 10 月から開始された多国間科学研究協力プロジェク ト。日本、米国、欧州がそれぞれ提供する掘削船を用いて世界中の海底を掘削して地質試料(掘削コア)の回収・ 分析や孔内観測装置の設置によるデータ解析等の研究を行うことで、地球や生命の謎の解明に挑戦している。

{*88* 事業者が保有する特許権等のコア領域(クローズ)と論文公表等のそうではない領域(オープン)とに分けて、 前者の実施を独占するとともに、後者の実施をパートナー等の他者に許す戦略の組み合わせ。

{*89 サイバー空間を介してあらゆる産業分野の壁を超えてつながる社会。

{*90 Data Integration and Analysis System の略。地球環境ビッグデータ(観測情報・予測情報等)を蓄積・統合 解析し、気候変動等の地球規模課題の解決に資する情報システム。

{*91* 総合的な海域管理と多様な資源の持続的可能な利用を目的とする管理利用計画。略称は、MSP(Marine Spatial

Planning)。

{*92* Arctic Challenge for Sustainabilityの略。文部科学省の補助事業として、国立極地研究所、JAMSTEC及び 北海道大学の3機関が中心となって、2015 年9月から 2020 年3月までの約4年半にわたって実施する、我が国の 北極域研究の国家プロジェクト。急変する北極域の気候変動の解明と環境変化、社会への影響を明らかにし、内外 の関係者が持続可能な北極の利用等諸課題について適切な判断を可能とする精度の高い将来予測や環境影響評価 等を行うことを目的としている。

{*93* Arctic Council の略。北極評議会の設立に関する宣言(オタワ宣言)(Declaration on the Establishment of the Arctic Council)(1996 年9月 19 日)に基づき、北極圏国(Arctic States)8か国(カナダ、デンマーク、 フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、米国)によって設置。北極における持続可能 な開発、環境保護といった共通の課題に対する協力を促進することを目的とする(オタワ宣言では、軍事・安全保 障に関連する事項は扱わないこととされている。)。

{*94* 北極に関する研究・科学の国際協力を強化し、政策決定に活かすことを目的に米国のイニシアティブにより 2016 年9月にワシントン DC において第1回会合を開催。第2回会合は 2018 年 10 月にベルリンにおいて開催予 定。

{*95* グリムソン・前アイスランド大統領、クライスト元グリーンランド首相等により設立され、政府関係者、研究 者、ビジネス関係者が分野を超えて集まる北極の将来に関する国際的対話や協力のためのネットワーク。

{*96* 2007 年以降毎年1月下旬にノルウェー・トロムソで開催されている、北極における持続可能な開発に関する産 官学の国際会議。ノルウェーの民間企業が事務局を担う。

{*97* 北極政策を共有し、協力案件を追求し、北極に関する協力を深化させる方法を模索するための場。これまで2 回(2016 年4月(ソウル)、2017 年6月(東京)開催。

{*98* Global Change Observation Mission - Water の略。「地球環境変動観測ミッション(GCOM)」は、地球規模で の気候変動、水循環メカニズムを解明するため、全球規模で長期間(10~15 年程度)の観測を継続して行えるシ ステムを構築し、そのデータを気候変動の研究や気象予測、漁業等に利用して有効性を実証することを目的とし ている。

{*99* 2014 年3月の北極評議会北極高級実務者会合で承認された勧告に従い、同年9月に設立。同評議会メンバーの ビジネス界代表、先住民6団体代表のみメンバーとして意思決定に参加可能。

{*100* Vessel Traffic Service(船舶通航サービス)の略。

{*101* Northwest Pacific Action Plan の略。国連環境計画(UNEP)が提唱してきた閉鎖性水域の海洋汚染の管理並

びに海洋及び沿岸域の資源の管理を目的とする地域海計画の1つ(世界全体で 18)。1994 年9月に、メンバー国 (日本、韓国、中国及びロシア)は共同して NOWPAP に取り組むことを承認した。富山及び釜山(韓国)に地域調 整部を置き、意思決定機関として、毎年政府間会合を開催。

{*102* Partnerships in Environmental Management for the Seas of East Asia の略。東・東南アジアの海域にお ける海洋開発と海洋環境の保全との調和の実現を目的とした、東・東南アジアの各国政府、NGO 等が参加する協力 の枠組。1994 年に国連開発計画(UNDP)が地球開発基金(GEF)の資金供与を受けて開始したプログラム。海域と 陸域を一体的に捉えた沿岸域を、行政が主体となって様々な関係者の参加の下に統合的かつ計画的に管理する統 合的沿岸管理(Integrated Coastal Management:ICM)を推進。

{*103* Illegal, Unreported and Unregulated の略。

{*104* International Convention for the Safety of Life at Sea の略。タイタニック号の遭難事故を契機に、そ

れまで各国に任されていた船舶の安全性確保について国際的に取り決めた 1914 年の条約が最初のもので、現在は 1974 年に採択された条約(1974 年の海上における人命の安全のための国際条約)が効力を有している。船舶の構 造、設備、船上で行われるべき措置、安全運航の管理に係る技術要件について規定。

{*105* Sub-Committee on Undersea Feature Names の略。世界の海底地形名を標準化するための学術的な委員会。

{*106* Environmental Management of Enclosed Coastal Seas の略。人類共通の財産である閉鎖性海域の恵沢を次世 代に継承していくことを目的に、沿岸域の環境保全をテーマとして世界的なレベルで定期的に開催される会議。

{*107* 平成 20 年 11 月の日 ASEAN 交通大臣会合で承認された船員養成事業の推進を図るプログラム。

{*108* Japan-ASEAN Integration Fund の略。ASEAN を支援するために、日本政府の拠出金に基づき、平成 18 年に ASEAN 事務局に設置された基金。

{*109* Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)の略。登録された利用者同士が交流で きる Web サイトの会員制サービス。