データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 特定重要物資の安定的な供給の確保に関する基本指針(安定供給確保基本指針)

[場所] 閣議決定
[年月日] 2022年9月30日
[出典] 内閣府
[備考] 
[全文] 

はじめに

 世界各国・地域が重要な物資の確保や重要な技術の獲得にしのぎを削る中、我が国の国家及び国民の安全を経済面から確保するに当たっては、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を踏まえ、社会経済構造の自律性の向上、我が国の技術等の他国・地域に対する優位性ひいては国際社会にとっての不可欠性の確保に向けた取組を推進しながら、同盟国・同志国との協力を拡大・深化させていくことが必要である。

 中でも重要な物資のサプライチェーンについては、グローバル化の進展や科学技術の発展、それに伴う産業構造の変化を背景にその多様化が進む一方、世界各国・地域で重要な物資を外部に過度に依存することによる供給リスクが顕在化している。我が国においても、国民の生存に必要不可欠又は広く国民生活若しくは経済活動が依拠しているにもかかわらず外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある物資については、安定供給確保を図るための対応を行わなければ、当該物資の供給途絶等又は供給不足(以下「供給途絶等」という。)が生じた場合、国民の生存や国民生活・経済活動に甚大な影響を及ぼす事態に至るおそれがある。

 また、近年の科学技術の非連続的な発展が、社会経済活動や産業構造に大きな変革をもたらし、重要な物資のサプライチェーンに根本的な変化を引き起こす可能性もある。これらの変革を支える科学技術の開発に各国・地域がしのぎを削る中、サプライチェーンの強靱化を図る際には、将来に向けて戦略的に産業基盤を構築することが重要であり、こうした取組を行わなければ、中長期的に、国民の生存や国民生活・経済活動に甚大な影響を及ぼす事態を生じさせるおそれもある。

 実際に一部の重要な物資について、既に外部に過度に依存している状況が見られるところであり、とりわけ近年、一部の物資についてはサプライチェーン上の脆弱性が顕在化し、国民の生存や国民生活・経済活動を脅かす事態に発展した事例も見られる。また、今後需要が大きく高まると見込まれる重要な物資については、米国や欧州連合(EU)、中国、韓国等において、サプライチェーンを強靱化する必要性が謳われ、各国・地域が大規模な支援にしのぎを削る中、将来的に外部に過度に依存する状況が発生することが懸念され得る。

 重要な物資の安定供給を確保し、国家及び国民の安全を確保するという政策目的については、民間事業者等による経営判断だけによっていては、十分に達成することが困難となる事態が想定される。我が国においてもこれまで一定の措置が講じられてきたところであるが、近年の国際情勢の変化等を背景に、こうした事態を未然に防止し、平時から重要な物資の安定的な供給の確保を図るため、今般、業種横断的・総合的に措置を講ずるための制度を整備することとしたものである。

 特定重要物資の安定的な供給の確保に関する基本指針(以下「本基本指針」という。)は、こうした制度整備の背景及び必要性を踏まえ、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43号。以下「法」又は「本法」という。)第6条第1項の規定及び基本方針に基づき、これを定めるものである。

 なお、本基本指針において使用する用語は、本法において使用する用語の例による。


第1章 特定重要物資の安定供給確保の基本的な方向に関する事項

第1節 制度の基本的な考え方

 本制度においては、政府が特定重要物資の安定供給確保に関する施策の方向性を示

し、当該特定重要物資のサプライチェーンを構成する民間事業者等の予見性を確保するとともに、サプライチェーンの強靱化を図ろうとする民間事業者等による取組を支援することにより、特定重要物資の安定供給確保を図ることとしている。

 本制度の運用に当たっては、官民の適切な役割分担の下で、特定重要物資等(特定重要物資又はその生産に必要な原材料、部品、設備、機器、装置若しくはプログラムをいう。以下同じ。)の安定供給確保を図ることが重要である。ただし、民間事業者等による自由な経済活動に制約を加えることはサプライチェーンの合理性及び効率性を阻害することにつながる懸念もあることから、政府は当該サプライチェーンが抱える国際的な競争環境・市場動向、我が国の産業競争力等に留意した上でその強靱化を図ることが不可欠である。そのため、民間事業者等による自由な経済活動を極力阻害せず、過度な負担とならないよう留意するとともに、民間事業者等による創意工夫を生かした形で、サプライチェーンの強靱化を後押ししていくことが重要であるため、施策の実施に当たっては、こうした趣旨が適切に達成されるよう留意するものとする。

第2節 関係行政機関の連携

 特定重要物資等の安定供給確保の推進に当たっては、物資所管大臣(特定重要物資の生産、輸入又は販売の事業を所管する大臣をいう。以下同じ。)とそれ以外の大臣との間等、関係行政機関間における連携が重要となる。関係行政機関は、特定重要物資等の安定供給確保を図るため、安全保障の確保に関する経済施策の実施に関し、相互に協力しなければならない旨を定める法第4条第2項の趣旨を踏まえ、本法その他の法令、基本方針、本基本指針、特定重要物資等に係る安定供給確保を図るための取組方針(以下「安定供給確保取組方針」という。)等に基づき相互に協力するものとする。その際、物資所管大臣が複数にまたがる場合や物資所管大臣とそれ以外の大臣との間にまたがる取組が特定重要物資等の安定供給確保に不可欠な場合もあるため、こうした場合には、関係行政機関が特に緊密な連携協力を図るよう留意するものとする。

第3節 民間事業者等への適切な情報提供

 物資所管大臣は、特定重要物資等の安定供給確保に関する民間事業者等の自発的な取組を促すため、必要な情報提供及び周知・広報(以下「情報提供等」という。)を適切に行うものとする。また、特定重要物資等の安定供給確保のためには、当該物資のサプライチェーンの実態を把握し、供給途絶等のリスクを把握した上で必要な措置を講ずることが重要であることを踏まえ、施策の実施状況についての適切な情報提供等を図ることを通じ、サプライチェーンに係る情報の収集に関し、民間事業者等からの必要な協力が得られるよう、十分配慮するものとする。


第2章 特定重要物資の安定供給確保に関し国が実施する施策に関する事項

第1節 物資の特性に応じた安定供給確保の取組の推進

 特定重要物資等の安定供給確保に当たっては、国が実施する施策への予見性を可能

な限り確保するとともに、物資ごとの特性に応じ、安定供給確保の効果が高いと考えられる取組への支援を優先的に行うものとする。

 本制度は、助成金による支援、金融支援、市場環境の整備等を通じて、民間事業者等による生産基盤の整備、供給源の多様化、備蓄、生産技術の導入・開発・改良その他の供給網を強靱化するための取組又は使用の合理化、代替する物資の開発その他の外部への依存を低減するための取組を促進し、特定重要物資等の安定供給確保を図ろうとするものである。物資所管大臣は、安定供給確保取組方針の策定に当たっては、こうした様々な取組のうち、当該特定重要物資等の安定供給確保のために有効な取組を絞り込み、当該取組に必要な支援措置を検討した上で、支援対象となる取組及び当該取組に関し物資所管大臣が実施する施策を安定供給確保取組方針等の形で公表するものとする。

 また、自由かつ公正な経済活動との両立の観点も踏まえながら、民間事業者等による安定供給確保の取組を後押しするため、必要に応じ、

・ 特定重要物資等の生産、輸入又は販売の事業を所管する大臣は、他国からのダンピングや不適切な市場介入等により国内産業への被害の可能性があると思料する場合において、特定重要物資等の安定供給確保に支障が生じる事態を未然に防止するため必要があると認めるときは、法第30条の規定も活用しつつ、国際ルールに則り適切に貿易救済措置を図る

・ 物資所管大臣は、複数事業者が作成する供給確保計画の認定を行おうとする場合には、必要に応じ、公正取引委員会との連携を図り、適正な競争の確保に留意しつつ、企業の連携等の円滑化を図る

等、市場環境の整備、国際的な連携等の推進に必要な措置を検討するものとする。

 さらに、民間事業者等による取組に対する支援では特定重要物資等の安定供給確保が十分に図られない場合には、国として、例えば備蓄等の特定重要物資等の安定供給確保のために必要な取組を自ら実施することを検討するものとする。

第2節 重要な物資のサプライチェーンを把握するための調査の実施

 重要な物資の安定供給確保を図る上では、その調達及び供給の現状並びにサプライチェーンの抱える課題を把握することは重要と考えられる。このため、国は重要な物資の安定供給確保に関し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展も踏まえつつ、不断の情報収集・検証に努めるものとする。

 具体的には、物資の生産、輸入又は販売の事業を所管する大臣は、重要な物資のサプライチェーンの状況を的確に把握するため、必要と認めるときは、法第48条第1項を活用するなどし、重要な物資のサプライチェーン把握のための調査を実施することにより、その調達及び供給の現状並びにサプライチェーンの抱える課題の把握に努めるものとする。

 重要な物資のサプライチェーン把握のための調査の実施に当たっては、民間事業者等によるサプライチェーンの把握には一定の限界があることにも留意しつつ、事業者の過度な負担とならないよう、公的統計、業界団体が実施する調査・統計の活用や業界団体へのヒアリング等を活用し、法律の規定の施行に必要な限度で調査の対象範囲、内容等を適切に絞り込むこととする。また、調査の目的・趣旨、調査の位置付け等についての丁寧な説明に努めることにより、民間事業者等の理解を得て、調査への協力を求めることを基本とする。調査の実施に際しては、必要に応じ、調査対象となる物資の生産、輸入又は販売の事業に関連する団体への事前説明等により、調査趣旨を広く周知する方法も想定され得る。その上で、調査を通じて政府が把握する情報には、企業の競争力の源泉と深く関わりのある内容が含まれ得ることを踏まえ、必要な情報管理のための措置を講ずるものとする。

 また、重要な物資のサプライチェーンの状況を把握し、安定供給確保に向けた取組に対する支援の必要性が認められるときは、特定重要物資の指定を含め、本制度による措置の必要性を検討するものとする。


第3章 特定重要物資の指定に関する事項

第1節 基本的な考え方

 特定重要物資を政令で指定するに当たっては、特に安定供給確保を図るべき重要な

物資として、法第7条の規定のとおり、次に掲げる4つの要件を全て満たしたものに絞り込んで適切に指定するものとする。

・ 国民の生存に必要不可欠な又は広く国民生活若しくは経済活動が依拠している重要な物資であること(重要性)

・ 外部に過度に依存し、又は依存するおそれがあること(外部依存性)

・ 外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止する必要があること(外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性)

・ 安定供給確保を図ることが特に必要と認められること(本制度により安定供給確保のための措置を講ずる必要性)

 その際、国際情勢・社会経済構造の変化等に伴い、重要な物資を取り巻く状況が変化することを踏まえ、国民の生存に必要不可欠な又は広く国民生活・経済活動が依拠している重要な物資については、サプライチェーンの現状と供給途絶等のリスクを不断に把握・点検することが重要であり、安定供給確保のための措置を講ずるべき物資が確認されたときは、特定重要物資の指定を含め、本制度による措置の必要性を検討するものとする。

 国は、特定重要物資を指定するに当たっては、国民の生存に必要不可欠な又は広く国民生活・経済活動の用に供される物資を指定することを基本とするが、当該物資の生産に必要な原材料等(原材料、部品、設備、機器、装置又はプログラムをいう。以下同じ。)が多岐にわたり、そのうち特定のものについて安定供給確保を図る必要がある場合には、当該原材料等を特定重要物資として指定することも妨げないこととする。

 特定重要物資の指定に当たっては、法第7条の規定のとおり、次節から第5節までに掲げる要件に該当するものに絞り込んで指定するとともに、例えば統計情報も活用するなど、可能な限り客観性及び公平性を確保し、適切に指定されるよう留意するものとする。また、指定に当たっては、支援が効果的に実施できるかどうかといった観点にも留意するものとする。

第2節 重要性

 「国民の生存に必要不可欠な又は広く国民生活若しくは経済活動が依拠している」かは、以下の(1)又は(2)に記載するところによって判断する。

(1) 国民の生存に必要不可欠

 国民の生存に必要不可欠な物資とは、当該物資の供給途絶等が発生すると、国民の生存に直接的な影響*1*が生じるものをいう。国民の生存に必要不可欠な物資かどうかの判断に当たっては、事象の重大性、影響範囲及び代替が困難であることを総合的に考慮する。詳細については、以下のとおりとする。

① 事象の重大性

 事象の重大性の判断に当たっては、供給途絶等が発生した場合に、当該物資を使用又は利用できないことによって、当該物資の受益者に致死的な影響又は不可逆的な障害等を生じさせる蓋然性を高めること等の程度を考慮する。

② 影響範囲

 影響範囲の判断に当たっては、例えば、需要規模が大きいこと(使用者数や利用者数が大きいこと等)や国民の生存に必要不可欠な公共サービスの提供に与える影響等の程度を考慮する。

③ 代替が困難であること

 代替が困難であることの判断に当たっては、その効用・機能を直ちに他物資で切り替えることが難しいかどうかなどを考慮する。

(2) 広く国民生活又は経済活動が依拠

 広く国民生活又は経済活動が依拠している重要な物資とは、国民の大多数に普及していたり、様々な産業に組み込まれていたりしており、当該物資が使用又は利用できなくなったときに多大な支障が生じ、その支障を回避するための経済合理的な観点からの代替品がないものをいう。広く国民生活又は経済活動が依拠しているかどうかの判断に当たっては、事象の重大性、影響範囲及び代替が困難であることを総合的に考慮する。詳細については、以下のとおりとする。

① 事象の重大性

 事象の重大性の判断に当たっては、例えば、次に掲げる事項の程度等を考慮する

*2*。

· 当該物資又は当該物資を使用・利用した物品が、国民生活・経済活動の維持にとって基幹的なものであり、供給途絶等が発生した場合に国民生活・経済活動に多大な支障が生じるかどうか

· 当該物資が同物資を使用・利用する物品の性能・機能において中核的な構成要素であるかどうか

② 影響範囲

 影響範囲の判断に当たっては、例えば、次に掲げる事項の程度等を考慮する。

・ 物資の普及・利用の割合が大きいこと(当該物資を使用・利用している国民・企業が多いこと等)

・ 関連産業の規模が大きいこと(当該物資を使用・利用している産業の規模が大きいこと等)

・ 大多数の国民又は多くの産業に利用されているインフラ機能の維持に与える影響が大きいこと(当該物資の供給途絶等がインフラ機能の維持や当該インフラを利用する国民又は産業に与える影響が大きいこと等)

・ 用途が多様であること

③ 代替が困難であること

 代替が困難であることの判断に当たっては、他物資ではその機能を直ちに切り替えることが経済合理的な観点から難しいかどうかなどを考慮する。

第3節 外部依存性

 外部に過度に依存し、又は過度に依存するおそれがあるかは、以下の(1)又は(2)に記載するところによって判断する。

(1) 外部に過度に依存

 外部に過度に依存する物資とは、供給が特定少数国・地域に偏っており、当該特定少数国・地域からの供給途絶等が発生した場合に甚大な影響が生じ得るものをいう。外部に過度に依存しているかどうかの判断に当たっては、物資ごとの特性を踏まえつつ、特定少数国・地域に依存・集中している程度、国内外からの代替供給確保の可能性及び短期的な供給途絶等への脆弱性の程度を総合的に考慮する。詳細については、以下のとおりとする。

① 特定少数国・地域に依存・集中している程度

 特定少数国・地域に依存・集中している程度の判断に当たっては、例えば、次に掲げる事項等を考慮する。

・ 国内需要量に占める特定少数国・地域への依存の程度

・ 国内需要量に占める国内生産の程度

・ 国内需要量又は国内輸入量に占める最大輸入先国・地域からの輸入量の程度

②国内外からの代替供給確保の可能性

 国内外からの代替供給確保の可能性の判断に当たっては、例えば、次に掲げる事項等、特定少数国・地域からの供給途絶等が生じた場合の代替供給確保の可能性を考慮する。

・ 我が国が現在依存する特定少数国・地域以外の国・地域の供給余力や世界における供給シェアの状況から判断して、経済合理的な範囲で代替供給を確保することができるかどうか

・ 国内の生産基盤での供給余力から判断して、経済合理的な範囲で代替供給を確保することができるかどうか

③ 短期的な供給途絶等への脆弱性の程度

 短期的な供給途絶等への脆弱性の程度の判断に当たっては、物資ごとに供給途絶等が影響を及ぼすまでの期間及び影響の程度は大きく異なることに留意し、例えば、物資ごとの備蓄や在庫の状況、物資の特性、流通の状況等を考慮する。

(2) 外部に過度に依存するおそれ

 外部に過度に依存するおそれがある物資とは、社会経済構造の変化や技術革新の動向、我が国及び諸外国・地域における産業戦略や科学技術戦略等を踏まえ、我が国が措置を講じなければ将来的な外部依存のリスクの蓋然性が認められるものをいう*3*。

 外部に過度に依存するおそれがあるかどうかの判断に当たっては、将来における物資の重要性及び成長性、国内外の諸動向等を総合的に考慮する。詳細については、以下のとおりとする。

① 将来における重要性及び成長性

 将来における重要性及び成長性の判断に当たっては、例えば、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)等といった、我が国及び諸外国・地域の中長期的な社会経済構造の変化や技術革新の動向に沿ったものであり、将来において重要性及び成長性が見込まれる戦略的に意義がある物資かどうかなどを考慮する。

② 国内外の諸動向

 国内外の諸動向の判断に当たっては、例えば、次に掲げる動向等を踏まえ、我が国の社会経済構造に鑑みて戦略的に意義がある物資かどうかなどを考慮する。

・ 我が国及び諸外国・地域における政府の産業戦略や科学技術戦略での位置付け等の動向

・ 我が国及び諸外国・地域における民間による研究開発、投資、シェア、設備保有その他当該物資に係る業界の諸動向

第4節 外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性

 本制度は、外部から行われる行為により重要な物資の供給途絶等の国家及び国民の安全を損なう事態が生じることを未然に防止する目的で措置されたものである。

 このため、特定重要物資の指定に当たっては、外部から行われる行為により供給途絶等が発生し、国民の生存や国民生活・経済活動に甚大な影響を及ぼす可能性を評価し、その蓋然性が認められる場合には国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止する必要がある。

 こうした蓋然性については、物資ごとの状況や我が国を取り巻く外交・安全保障環境を始めとする国際関係等の様々な要因が影響し得るものであり、例えば、供給国・地域による輸出の停止・制限、当該供給国・地域内への優先的な供給の実施、生産抑制につながる制限の導入・強化等、外部から行われる行為により想定される供給途絶等のリスクを総合的に考慮する。

第5節 本制度により安定供給確保のための措置を講ずる必要性

 特定重要物資の指定の検討に当たっては、第2節から前節までの要件に加え、本制度による施策が特に必要と認められる場合に指定を行うものとする。詳細については、以下のとおりとする。

① まず、重要性及び外部依存性があり、外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性がある物資であっても、従前からその安定供給確保が政策的課題であり、別途の制度的な措置を講じている場合もある。本制度による措置が他制度による措置と重複する場合には、措置が重複する部分に関し、本制度により安定供給確保のための措置を講ずる必要性が小さいと判断される。ただし、措置を講ずる範囲が重複する場合であっても、他制度による措置に加え、本制度による措置を組み合わせて講ずることが安定供給確保に資する場合には、措置を講ずる必要性が大きいと判断される場合もある。

②また、安定供給確保のための措置を講ずることの優先度が高く、特にその必要性が認められる場合としては、例えば、次に掲げる場合が考えられる。

・国民の生存に必要不可欠な物資又は基幹的な役割を果たすインフラ機能の維持に与える影響が顕著と考えられる物資のうち、例えば、近年、供給途絶等が発生した実績がある、供給途絶等のリスクが高まる傾向がみられるなど、早急に措置を講ずる必要があると考えられる場合

・中長期的な社会経済構造の変化や技術革新の動向を踏まえ将来にわたって重要性や成長性が見込まれる等の戦略的な重要性があることや、我が国及び諸外国・地域における産業戦略や科学技術戦略での位置付け、民間の研究開発、投資等の動向等を総合的に勘案し、例えば、近年、国際環境の変化等を受け、諸外国・地域で物資の囲い込みが行われるリスクが高まっている、集中的な支援が検討されているなど、早急に措置を講ずる必要があると考えられる場合

第6節 解除の考え方

 政府は、サプライチェーンを取り巻く環境の変化や安定供給確保のための措置等により、更なる安定供給確保のための措置を講ずる必要が小さくなったと考えられる特定重要物資について、将来の社会経済情勢や国際情勢等を見据えて安定供給確保の必要性の有無等を慎重に検討した上で、その指定を解除するものとする。


第4章 安定供給確保取組方針を作成する際の基準となるべき事項

第1節 安定供給確保取組方針を定める際の基本的な考え方

 特定重要物資を政令で指定した場合は、物資所管大臣は、法第8条及び本基本指針

に基づき、特定重要物資ごとに、物資の特性を踏まえ、安定供給確保取組方針を定める必要がある。

 物資所管大臣は、本基本指針を踏まえ、取組の基本的な方向、主務大臣が実施する施策、支援対象となる取組の内容等を安定供給確保取組方針として取りまとめて客観的かつ具体的に示すことで、民間事業者等が取組を進めるに当たっての予見性を確保し、その取組を促していくことが重要である。

 安定供給確保取組方針を定めるに当たっては、関係する政府の方針や国内の動向、国際的な政策の動向等を踏まえるものとする。

 また、サプライチェーンは民間事業者等による自由な経済活動の中で形成されてきたものであることを踏まえ、安定供給確保取組方針を定めるに当たっては、民間事業者等の自助努力や創意工夫の喪失に繋がらないよう、民間事業者、業界団体その他の関係者の意見を十分考慮し、基準を可能な限り明確に示すとともに、客観性・公平性や透明性が可能な限り確保されるよう十分留意するものとする。

第2節 安定供給確保取組方針に定めるべき事項

 物資所管大臣が特定重要物資について安定供給確保取組方針を定める場合には、法第8条第2項に基づき、次の(1)~(7)に掲げる事項を定めるものとする。

(1) 対象となる個別特定重要物資等の安定供給確保のための取組の基本的な方向に関する事項

① 現状認識

 対象となる個別の特定重要物資等(以下「個別特定重要物資等」という。)を取り巻く現状の認識に関する次に掲げる事項等

・ 個別特定重要物資等に関係するサプライチェーンの動向

・ 個別特定重要物資等及び関連産業(特定重要物資の取引先となる産業等)の市場及び投資の動向及び見通しその他の市場環境に関する動向

・ 個別特定重要物資等に関係するサプライチェーンが抱える課題の分析及び評価

・ 国内外における産業戦略や科学技術戦略の動向

② 指定要件の該当性

 前章及び前記①の記載を踏まえた特定重要物資の指定の要件への該当性に関する定量的及び定性的な動向

③ 特定重要物資の安定供給確保に関する目標

 前記①及び②を踏まえた安定供給確保取組方針で定める施策により、達成すべき安定供給確保の目標

(2) 個別特定重要物資等の安定供給確保のための取組に関し主務大臣が実施する施策に関する事項

 物資所管大臣が実施する施策の具体的な内容に関する次に掲げる事項等

① 施策の基本的な方向

② 実施する施策

実施する個別施策の内容及び対象、想定する効果及び目標

③ 施策に係る留意事項

施策に係る留意事項に関する次に掲げる事項等

· 実施する施策に関連する政府の戦略及び取組

· 施策を取り巻く環境

· 施策の総合的かつ効果的な推進のための取組

· 施策の予見性確保のための取組

· サプライチェーンの状況を把握するための調査に関する基本的な方向及び内容

(3) 個別特定重要物資等の安定供給確保のための取組の内容に関する事項及び当該取組ごとに取組を行うべき期間又は取組を行うべき期限

 取組の内容及び取組ごとに取組を行うべき期間又は取組を行うべき期限に関する次に掲げる事項等

① 取組の対象範囲

取組の対象とする特定重要物資等及びその取組の内容

② 安定供給確保の目標

供給能力の確保、生産性及び技術水準の確保等に関し、認定供給確保事業者が取り組むべき具体的目標

③ 取組ごとに取組を行うべき期間又は取組を行うべき期限

④ その他必要と認める事項

前記①から③までのほか、物資所管大臣が必要と認める事項

(4) 個別特定重要物資等の安定供給確保のために安定供給確保支援業務及び安定供給確保支援法人基金又は安定供給確保支援独立行政法人基金に関して安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人が果たすべき役割に関する事項

 第6章の記載を踏まえた安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人が果たすべき役割に関する次に掲げる事項等

① 安定供給確保支援業務の基本的な方向に関する事項

② 安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人が果たすべき役割に関する事項

③ 安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人の指定に関する事項

④ 安定供給確保支援業務の内容及びその実施体制に関する事項

⑤ 供給確保支援実施基準の作成の基準となるべき事項

⑥ 安定供給確保支援法人基金又は安定供給確保支援独立行政法人基金の管理に関する事項

(5) 対象となる個別の特定重要物資に係る法第44条第1項の規定による指定に関する事項

 第7章の記載を踏まえた法第44条第1項の規定による特別の対策を講ずる必要がある特定重要物資としての指定を行う場合についての考え方

(6) 個別特定重要物資等の安定供給確保に当たって配慮すべき事項

 第8章の記載を踏まえた個別特定重要物資等の安定供給確保に当たって配慮すべき内容

(7)(1)~(6)に掲げるもののほか、個別特定重要物資等の安定供給確保に関し必要な事項

 (1)~(6)に定めるもののほか、物資所管大臣が必要と認める事項


第5章 特定重要物資の安定供給確保のための取組に必要な資金の調達の円滑化の基本的な方向に関する事項

 特定重要物資等の安定供給確保のためには、当該特定重要物資等について、生産基盤の整備、供給源の多様化等を通じ、サプライチェーンの強靱化を図る必要があるが、これらの取組には大規模かつ長期の投資を要し、その投資回収に長期間を要する場合があることから、民間金融機関だけでは十分な資金供給を行うことが困難になる場合が想定され得る。

 このため、本法は、民間金融機関の機能を補完する範囲内で、認定供給確保事業者に対し、株式会社日本政策金融公庫から指定金融機関を通じて低利・長期の資金を供給する二段階融資の仕組みを創設するほか、中小企業投資育成株式会社法及び中小企業信用保険法の特例を通じて中小企業者向けの資金の調達の円滑化に関する仕組みを措置することとしたものである。

 各制度の運用に当たっては、上記趣旨を踏まえ、特定重要物資等の安定供給確保のための取組に必要な資金の調達の円滑化に十分留意するものとするとともに、民間事業者等の自由な経済活動を極力阻害せず、民間事業者等による創意工夫を生かした形で、取組を促進していくことに十分留意するものとする。また、指定金融機関等は目利き・助言等を必要に応じ行うものとする。


第6章 安定供給確保支援業務並びに安定供給確保支援法人基金及び安定供給確保支援独立行政法人基金に関して安定供給確保支援法人及び安定供給確保支援独立行政法人が果たすべき役割に関する基本的な事項

第1節 安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人の選択に関する事項

 本制度の運用に当たっては、物資所管大臣等(物資所管大臣及び内閣総理大臣をいう。ただし、安定供給確保支援独立行政法人の場合には、当該安定供給確保支援独立行政法人を所管する物資所管大臣に限る。以下同じ。)は、特定重要物資ごとに、安定供給確保支援業務を行う法人として安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人のいずれかを適切に選択した上で、認定供給確保事業者に対する支援を行わせることができるものとする。


第2節 安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人の指定に関する事項

 安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人の指定を行うに当たっ

ては、当該法人の目的、当該物資に係る技術的知見、秘密保持のための情報管理体制、安定供給確保支援独立行政法人が当該独立行政法人の個別法(独立行政法人通則法

(平成11年法律第103号)第1条に規定する個別法をいう。以下同じ。)において支援可能な取組の範囲等を踏まえ、適切に指定するものとする。

(1) 安定供給確保支援法人

 安定供給確保支援法人を指定するに当たっては、法第31条第1項に基づき、次に掲げる事項を満たすものを指定するものとする。

①安定供給確保支援業務を適正かつ確実に実施するために必要と認められる経理的基礎を有するものであること。特に、安定供給確保支援法人基金を設ける場合にあっては、当該安定供給確保支援法人基金を適正かつ確実に運用できる経理的基礎を有すること。

②安定供給確保支援業務を適正かつ確実に実施するために必要となる技術的能力及び特定重要物資に関する活動実績を有すること。

③役職員の人的構成等を始め、安定供給確保支援業務の適正かつ確実な実施体制を構築していること。

④安定供給確保支援業務の実施を通じて、企業の競争力の源泉と深く関わりのあ

る情報に接する可能性があることを踏まえ、安定供給確保支援業務を通じて知り得た秘密を確実に保持するための情報管理体制を構築していること。

⑤安定供給確保支援業務以外の業務を行っている場合にあっては、その業務を行うことによって安定供給確保支援業務の適正かつ確実な実施に支障を及ぼすおそれがないこと。

⑥その他物資所管大臣等が定める基準に適合するものであること。

(2) 安定供給確保支援独立行政法人

  安定供給確保支援独立行政法人を指定するに当たっては、法第42条に基づき、次に掲げる事項を満たすものを指定するものとする。

①当該指定に係る特定重要物資に係る安定供給確保支援業務が個別法で規定する目的の範囲内であること。

②安定供給確保支援業務を適正かつ確実に実施するために必要となる技術的能力を有すること。

③役職員等の人的構成等を始め、安定供給確保支援業務の適正かつ確実な実施体制を構築していること。

④安定供給確保支援業務の実施を通じて、企業の競争力の源泉と深く関わりのある情報に接する可能性があることを踏まえ、安定供給確保支援業務を通じて知り得た秘密を確実に保持するための情報管理体制を構築していること。

第3節 安定供給確保支援業務の内容及びその実施体制に関する事項

 安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人が安定供給確保支援業務を行うに当たっては、安定供給確保支援業務を統括する部署を置くとともに、認定供給確保事業者の支援を的確に実施するための適正かつ確実な体制及び方法により、安定供給確保支援業務を実施するものとする。

 また、物資所管大臣等は、安定供給確保支援業務規程等を始め、関係法令に基づき作成する事業計画書、収支予算書等の内容について確認するとともに、適正かつ確実な体制及び方法により執行されていることを確認するものとする。

第4節 安定供給確保支援法人基金及び安定供給確保支援独立行政法人基金の管理に関する事項

 安定供給確保支援法人基金又は安定供給確保支援独立行政法人基金を設ける場合にあっては、認定供給確保事業者への支援に関し、助成金等の交付・支給申請時の審査、交付・支給決定、交付・支給決定後の検査の実施等により適正な執行に努めるとともに、物資所管大臣等が定める供給確保支援実施基準等の範囲で、管理する基金の資産を毀損することのないよう適正な運用管理を行うものとする。

 具体的には、次に掲げる内容の運用に留意するものとする。

・ 助成金等の執行に当たっては、安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人は、交付申請時の審査、交付決定、交付決定後の検査の実施等を通じ、適正な執行に努めるとともに、物資所管大臣等と連携し、認定供給確保計画が適正かつ確実に遂行されていることを確認するものとする。

・ また、物資所管大臣が認定供給確保計画の変更を指示する、認定を取り消すなどの措置を講じた場合には、その措置の内容に応じ、助成金等の返還等の所要の手続を実施するものとする。

・ 基金は他の事業との区分経理等を求められているところ、本法の規定に従い、適正な会計処理を実施するものとする。

・ 基金の管理については、本法の規定を踏まえ、資産運用の安全性と資金管理の透明性が確保される方法により行うものとし、運用上のリスクが低い方法で運用するものとする。

第5節 安定供給確保支援業務の情報の管理に関する事項

 安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人は、認定供給確保計画に企業の競争力の源泉と深く関わりのある内容が多く含まれ得ることに鑑み、安定供給確保支援業務で得られた情報の適切な管理を図るため、必要な措置を講ずるものとする。


第7章 特別の対策を講ずる必要のある特定重要物資の指定に関する基本的な事項

第1節 特別の対策を講ずる必要のある特定重要物資の指定に関する事項

 次のいずれにも該当するときは、法第2章第3節から第7節までの措置では特定重

要物資の安定供給確保を図ることが困難である場合として、法第44条第1項に基づく指定を行うことができるものとする。

· 当面の間、民間事業者等による安定供給確保に向けた取組の実施が想定されず、特定重要物資の安定供給確保が困難と認められること。

· 特定重要物資等のうち、その安定供給確保が困難と認められるものについて、法第44条第6項に規定する措置(国が自ら実施する備蓄その他の措置をいう。以下同じ。)の実施を通じて、安定供給確保のための取組を図ることが特に必要と認められること。

· 当該特定重要物資等について、民間事業者等が法第44条第6項に規定する措置を行おうとすることがその経済性に照らし困難と判断されること。

第2節 指定解除の考え方

 物資所管大臣は、法第44条第1項に基づく指定をした特定重要物資について、安定供給確保が一定程度図られ、特別の対策を講ずる必要が小さくなったと考えられる場合、前節で示す特別の対策を講ずる必要のある特定重要物資の指定の要件への該当性の有無等を慎重に検討した上で、当該指定を解除するものとする。


第3節 その他留意事項

(1) 国が講ずる施策に関する事項

主務大臣は、法第44第1項に基づく指定を行った場合には、同条第6項に規定する措置を講じて、その安定供給確保を図るものとする。

(2) 輸送手段の確保に関する事項

 特定重要物資又はその生産に必要な原材料等について、備蓄その他の安定供給確保のために必要な措置を講ずる際には、輸送手段の確保その他の必要な措置について一層配慮するものとする。


第8章 特定重要物資の安定供給確保に当たって配慮すべき基本的な事項

第1節 国際約束との整合性の確保に関する事項

 本制度の運用に当たっては、法第90条の規定及び基本方針の趣旨に則り、我が国

が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、WTO協定等の国際ルールとの整合性に十分に留意するものとする。

第2節 経済活動における人権の尊重

経済活動における人権の尊重が国際的にも重要な課題となっており、今後、より一層、重要性を増していくものと考えられる。そのため、我が国として「ビジネスと人権」に関する行動計画を着実に実施しているほか、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」について、「ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議」において決定・公表がなされている。上記ガイドラインは、主に国連のビジネスと人権に関する指導原則、OECD多国籍企業行動指針及びILO多国籍企業宣言からなる国際スタンダードを踏まえ、企業に求められる人権尊重の取組について、日本でビジネスを行う企業の実態に即して、具体的かつわかりやすく解説し、企業の理解の深化を助け、その取組を促進することを目的としたものである。こうした背景を踏まえ、本制度の運用に当たっては、主務大臣は、本制度の目的及び基本方針の趣旨を踏まえつつ、必要に応じ、上記ガイドラインの活用等、サプライチェーンにおける人権の尊重を勧奨する等の対応を行うものとする。

第3節 関係者の意見の適切な考慮、施行状況の情報提供等に関する事項

(1) 関係者の意見の適切な考慮等

 特定重要物資を指定する際には、基本方針で定めているとおり、本基本指針の策定等に当たって聴取した有識者の意見を適切に参照する。また、個別の下位法令を定めようとする場合には、必要に応じ、行政手続法に基づく意見公募手続を利用し、広く関係者の意見・情報を公募する。

(2) 施行状況の適切な情報提供等

 本制度の施行状況については、本法、関係法令及び基本方針等に従い、国民、事業者その他の関係者に公表するとともに、本制度に係る手続等について情報提供等を行い、本制度に関する理解と協力が得られるよう努めるものとする。

第9章 その他特定重要物資の安定供給確保に関し必要な事項

 本制度の運用に当たっては、施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、世界の安全保障環境が激変している状況を勘案し、周辺環境の変化等に応じて機動的に検討を加えることとし、その結果に基づいて必要な措置を速やかに講ずるものとする。

 また、物資所管大臣は、特定重要物資の指定及び安定供給確保取組方針の策定後、毎年度、供給確保計画の定期報告等を通じ、特定重要物資等の安定供給確保の状況について確認を行い、必要に応じて、供給確保計画の適確な実施のための措置を講ずるものとする。


{*1* 直接的な影響とは、当該物資を使用又は利用できなくなること自体が生存に関わる事象を発生させる蓋然性を高めることを指す。
また、使用又は利用ができなくなると国民の生存に直接的な影響が生じる物資の生産に不可欠な原材料等で、かつ、代替が困難であると認められるものについては、当該原材料等についても国民の生存に必要不可欠な物資に該当するものとする。}

{*2* 例えば、一時的な流行品等や、製品の性能・機能に直ちに支障を来さない周辺部品等の場合は、当該物資の供給途絶等により生じる支障が相対的に小さいと考えられ、事象の重大性は小さいと判断し得る。}

{*3* 我が国が措置を講じなければ将来的な外部依存のリスクの蓋然性が認められ得る場合としては、例えば、以下が考えられる。
・我が国の社会経済構造に鑑みて将来にわたって重要性及び成長性がある物資について、このまま措置を講じなければ、将来的に外部に過度に依存せざるを得なくなる場合
・現在は我が国が優位性を有し、国内需要に対する国内供給等が確保できている重要な物資について、各国・地域が先端技術開発に重点的な支援を行う中で、将来的に優位性を失ってしまい外部に過度に依存せざるを得なくなる場合
・現在、我が国が外部に依存していない物資について、技術革新等によって、従来と全く異なる生産方式・技術等が導入され、又は新たな原材料等が必要となるなど、将来的にサプライチェーンが根本的に変化し、その結果として外部に過度に依存せざるを得なくなる場合}