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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 防衛力整備計画について

[場所] 
[年月日] 2022年12月16日
[出典] 防衛省
[備考] 令和4年12月16日,国家安全保障会議決定,閣議決定
[全文] 

 防衛力整備計画について、「国家防衛戦略について」(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に従い、別紙のとおり定める。

 これに伴い、「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)について」(平成30年12月18日国家安全保障会議決定及び閣議決定)は廃止する。


(別紙)

防衛力整備計画

令和4年12月


目次

I 計画の方針

II 自衛隊の能力等に関する主要事業

 1 スタンド・オフ防衛能力

 2 統合防空ミサイル防衛能力

 3 無人アセット防衛能力

 4 領域横断作戦能力

  (1) 宇宙領域における能力

  (2) サイバー領域における能力

  (3) 電磁波領域における能力

  (4) 陸・海・空の領域における能力

 5 指揮統制・情報関連機能

  (1) 指揮統制機能の強化

  (2) 情報収集・分析等機能の強化

  (3) 認知領域を含む情報戦等への対処

 6 機動展開能力・国民保護

 7 持続性・強靱性

  (1) 弾薬等の整備

  (2) 燃料等の確保

  (3) 防衛装備品の可動数向上

  (4) 施設整備

III 自衛隊の体制等

 1 統合運用体制

 2 陸上自衛隊

  (1) 保有すべき防衛力の水準

  (2) 基幹部隊の見直し等

 3 海上自衛隊

  (1) 保有すべき防衛力の水準

  (2) 基幹部隊の見直し等

 4 航空自衛隊

  (1) 保有すべき防衛力の水準

  (2) 基幹部隊の見直し等

 5 組織定員の最適化

IV 日米同盟の強化

 1 日米防衛協力の強化

 2 在日米軍の駐留を支えるための施策の着実な実施

V 同志国等との連携

 1 共同訓練・演習

 2 装備・技術協力

 3 能力構築支援

VI 防衛力を支える要素

 1 訓練・演習

 2 海上保安庁との連携・協力の強化

 3 地域コミュニティーとの連携

 4 政策立案機能の強化等

VII 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組

 1 大規模災害等への対応

 2 海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用に関する取組

 3 国際平和協力活動等

VIII 早期装備化のための新たな取組

IX いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤

 1 防衛生産基盤の強化

 2 防衛技術基盤の強化

  (1) スタンド・オフ防衛能力

  (2) 極超音速滑空兵器(HGV)等対処能力

  (3) ドローン・スウォーム攻撃等対処能力

  (4) 無人アセット

  (5) 次期戦闘機に関する取組

  (6) その他抑止力・対処力の強化

 3 防衛装備移転の推進

 4 各種措置と制度整備の推進

X 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

 1 人的基盤の強化

  (1) 採用の取組強化

  (2) 予備自衛官等の活用

  (3) 人材の有効活用

  (4) 生活・勤務環境の改善等

  (5) 人材の育成

  (6) 処遇の向上及び再就職支援

 2 衛生機能の変革

XI 最適化の取組

 1 装備品

 2 人員

XII 整備規模

XIII 所要経費等

XIV 留意事項

別表1

別表2

別表3


I 計画の方針

 「国家防衛戦略」(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に従い、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化し、相手の能力と新しい戦い方に着目して、5年後の2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する。おおむね10年後までに、防衛力の目標をより確実にするため更なる努力を行い、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化する。

以上を踏まえ、以下を計画の基本として、防衛力の整備、維持及び運用を効果的かつ効率的に行う。

1 我が国の防衛上必要な機能・能力として、まず、我が国への侵攻そのものを抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除できるようにする必要がある。このため、「スタンド・オフ防衛能力」と「統合防空ミサイル防衛能力」を強化する。

 また、万が一、抑止が破れ、我が国への侵攻が生起した場合には、これらの能力に加え、有人アセット、さらに無人アセットを駆使するとともに、水中・海上・空中といった領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保できるようにする必要がある。このため、「無人アセット防衛能力」、「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」を強化する。

 さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念させられるようにする必要がある。このため、「機動展開能力・国民保護」、

 「持続性・強靱性」を強化する。また、いわば防衛力そのものである防衛生産・技術基盤に加え、防衛力を支える人的基盤等も重視する。

2 装備品の取得に当たっては、能力の高い新たな装備品の導入、既存の装備品の延命、能力向上等を適切に組み合わせることにより、必要十分な質・量の防衛力を確保する。その際、研究開発を含む装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化等によるコストの削減に努め、費用対効果の向上を図る。また、自衛隊の現在及び将来の戦い方に直結し得る分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性が高い事業については、民生先端技術の取り込みも図りながら、着実に早期装備化を実現する。

3 人口減少と少子高齢化が急速に進展し、募集対象者の増加が見込めない

 状況においても、自衛隊の精強性を確保し、防衛力の中核をなす自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上を図る観点から、採用の取組強化、予備自衛官等の活用、女性の活躍推進、自衛官の定年年齢引上げ、再任用自衛官を含む多様かつ優秀な人材の有効な活用、生活・勤務環境の改善、人材の育成、処遇の向上、再就職支援等の人的基盤の強化に関する各種施策を総合的に推進する。

4 日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力及び相互運用性の向上等を推進するとともに、あらゆる段階における日米共同での実効的な対処力を支える基盤を強化するため、日米間の情報共有を促進するための情報保全及びサイバーセキュリティに係る取組並びに装備・技術協力を強化する。また、在日米軍の駐留を支えるための施策を着実に実施する。

自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進するため、円滑化協定(RAA)、物品役務相互提供協定(ACSA)、情報保護協定等、防衛装備品・技術移転協定等の制度的枠組みの整備に更に推進するとともに、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流を含む取組等を推進する。

5 防衛力の抜本的強化に当たっては、スクラップ・アンド・ビルドを徹底して、組織定員と装備の最適化を実施するとともに、効率的な調達等を進めて大幅なコスト縮減を実現してきたこれまでの努力を更に強化していく。あわせて、人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。

II 自衛隊の能力等に関する主要事業

 2027年度までに、我が国への侵攻に対し、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できる防衛力を構築するため、防衛力の抜本的強化に当たって重視する主要事業を1から7までのとおり実施することとする。

 1 スタンド・オフ防衛能力

我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、脅威圏外から対処する能力を強化するため、12式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)、島嶼防衛用高速滑空弾及び極超音速誘導弾の開発・試作を実施・継続する。島嶼防衛用高速滑空弾及び極超音速誘導弾を始め、各種誘導弾の長射程化を実施する。防衛力の抜本的強化を早期に実現するため、上記のスタンド・オフ・ミサイルの量産弾を取得するほか、米国製のトマホークを始めとする外国製スタンド・オフ・ミサイルの着実な導入を実施・継続する。

 また、発射プラットフォームの更なる多様化のための研究・開発を進めるとともに、スタンド・オフ・ミサイルの運用能力向上を目的として、潜水艦に搭載可能な垂直ミサイル発射システム(VLS)、輸送機搭載システム等を開発・整備する。

 スタンド・オフ防衛能力の実効性確保のため、目標情報の一層効果的な収集を行う観点から、衛星コンステレーションを活用した画像情報等の取得や無人機(UAV)、目標観測弾の整備等を行い、情報収集・分析機能及び指揮統制機能を強化する。スタンド・オフ・ミサイルの運用は、目標情報の収集、各部隊への目標の割当てを含む一連の指揮統制を一元的に行う必要があるため、統合運用を前提とした態勢を構築する。スタンド・オフ・ミサイル等を保管するための火薬庫を増設するとともに、射場利用の確保を含め、試験・整備等に必要な施策を着実に実施することで、スタンド・オフ・ミサイルの開発・運用に必要な一連の機能を確保する。

 2 統合防空ミサイル防衛能力

 極超音速滑空兵器(HGV)等の探知・追尾能力を強化するため、固定式警戒管制レーダー(FPS)等の整備及び能力向上、次期警戒管制レーダーの換装・整備を図る。また、地対空誘導弾ペトリオット・システムを改修し、新型レーダー(LTAMDS)を導入することで、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)による極超音速滑空兵器(HGV)等への対処能力を向上させる。

 各種事態により実効的に対応するため、航空自衛隊の高射部隊の編成及び配置の見直しに着手するとともに、中距離地対空誘導弾部隊と合わせた重層的な要域防空体制を構築し、平素からの展開配置のための部隊運用を行う。また、基地防空用地対空誘導弾の能力向上を推進する。加えて、滑空段階での極超音速滑空兵器(HGV)等への対処を行い得る誘導弾システムの調査及び研究を実施する。

 極超音速滑空兵器(HGV)等に対処する能力を強化するため、03式中距離地対空誘導弾(改善型)の能力向上を図るほか、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM-3ブロックIIA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)、長距離艦対空ミサイル(SM-6)等を取得する。

 ネットワーク化による効果的かつ効率的な対処の実現のため、護衛艦等の間で連携した射撃を可能とするネットワークシステム(FCネットワーク)を取得し、共同交戦能力(CEC)を保持する。また、地対空誘導弾ペトリオット・システムの情報調整装置(ICC)を改修することで、各種誘導弾システムをネットワークで連接する。

 我が国の防空能力強化のため、主に弾道ミサイル防衛に従事するイージス・システム搭載艦を整備する。

 高出力レーザーや高出力マイクロ波(HPM)等の指向性エネルギー技術の組み合わせにより、小型無人機(UAV)等への非物理的な手段による対処能力を早期に整備する。

 なお、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力を反撃能力として用いる。この反撃能力の運用は、統合運用を前提とした一元的な指揮統制の下で行う。

 3 無人アセット防衛能力

 人的損耗を局限しつつ任務を遂行するため、既存の装備体系・人員配置を見直しつつ、各種無人アセットを早期に整備する。その整備に当たっては、安全性の確保と効果的な任務遂行の両立を図るものとする。

 隙のない情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)を実施するため、洋上監視に資する滞空型無人機(UAV)及び艦載型の無人アセットや相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る偵察用無人機(UAV)のほか、用途に応じた様々な情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)用無人アセットを整備する。また、広域に分散展開した部隊、離隔した基地、艦艇等への迅速な補給品の輸送を実施するため、輸送用無人機(UAV)の導入について検討の上、必要な措置を講じる。

 我が国への侵攻を阻止・排除するため、空中から人員・車両・艦艇等を捜索・識別し、迅速に目標に対処することが可能となるよう、各種攻撃機能を効果的に保持した多用途/攻撃用無人機(UAV)及び小型攻撃用無人機(UAV)を整備する。

 艦艇と連携し、効果的に各種作戦運用が可能な無人水上航走体(USV)を開発・整備する。また、水中優勢を獲得するための各種無人水中航走体

(UUV)を整備する。

 このほか、無人車両(UGV)と無人機(UAV)を効果的に組み合わせることにより、駐屯地・基地等や重要施設の警備及び防護体制の効率化を図る。加えて、有人機と無人機(UAV)の連携を強化するとともに、複数の無人アセットを同時に運用する能力の強化を図る。

 4 領域横断作戦能力

  (1)宇宙領域における能力

  スタンド・オフ・ミサイルの運用を始めとする領域横断作戦能力を向上させるため、宇宙領域を活用した情報収集、通信等の各種能力を一層向上させる。具体的には、米国との連携を強化するとともに、民間衛星の利用等を始めとする各種取組によって補完しつつ、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションを構築する。また、衛星を活用した極超音速滑空兵器(HGV)の探知・追尾等の対処能力の向上について、米国との連携可能性を踏まえつつ、必要な技術実証を行う。さらに、増大する衛星通信の需要に対応するため、従来のXバンド通信に加え、より抗たん性の高い通信帯域を複層化する取組を進める。

  宇宙領域の安定的利用に対する脅威が増大する中、宇宙領域への対応として、相手方の指揮統制・情報通信等を妨げる能力を更に強化する。また、平素からの宇宙領域把握(SDA)に関する能力を強化するため、2026年度に打ち上げ予定の宇宙領域把握(SDA)衛星の整備に加え、更なる複数機での運用についての検討を含めた各種取組を推進する。さらに、我が国の衛星を含む宇宙システムの抗たん性を強化するため、準天頂衛星を含む複数の測位信号の受信や民間衛星等の利用を推進しつつ、衛星通信の抗たん性技術の開発実証に着手する。

  諸外国との協力について、米国等と宇宙領域把握(SDA)に係る情報共有を推進するほか、高い抗たん性を有する通信波を多国間で共同使用するなどの連携強化を推進する。

  宇宙領域に係る組織体制・人的基盤を強化するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等の関係機関や米国等の同盟国・同志国との交流による人材育成を始めとした連携強化を図るほか、関係省庁間で蓄積された宇宙分野の知見等を有効に活用する仕組みを構築するなど、宇宙領域に係る人材の確保に取り組む。

  (2)サイバー領域における能力

  政府全体において、サイバー安全保障分野の政策が一元的に総合調整されることを踏まえ、防衛省・自衛隊においては、自らのサイバーセキュリティのレベルを高めつつ、関係省庁、重要インフラ事業者及び防衛産業との連携強化に資する取組を推進することとする。

  サイバー攻撃を受けている状況下において、指揮統制能力及び優先度の高い装備品システムを保全し、自衛隊の任務遂行を保証できる態勢を確立するとともに、防衛産業のサイバー防衛を下支えできる態勢を構築する。

  このため、最新のサイバー脅威を踏まえ、境界型セキュリティのみでネットワーク内部を安全に保ち得るという従来の発想から脱却し、もはや安全なネットワークは存在しないとの前提に立ち、サイバー領域の能力強化の取組を進める。この際、ゼロトラストの概念に基づくセキュリティ機能の導入を検討するとともに、常時継続的にリスクを管理する考え方を基礎に、情報システムの運用開始後も継続的にリスクを分析・評価し、適切に管理する「リスク管理枠組み(RMF)」を導入する。さらに、装備品システムや施設インフラシステムの防護態勢を強化するとともに、ネットワーク内部に脅威が既に侵入していることも想定し、当該脅威を早期に検知するためのサイバー・スレット・ハンティング機能を強化する。また、防衛関連企業に対するサイバーセキュリティ対策の強化を下支えするための取組を実施する。

  防衛省・自衛隊のサイバーセキュリティ態勢の強化のため、陸上自衛隊通信学校を陸上自衛隊システム通信・サイバー学校に改編し、サイバー要員を育成する教育基盤を拡充する。さらに、我が国へのサイバー攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方のサイバー空間の利用を妨げる能力の構築に係る取組を強化する。

  これらの取組を行う組織全体としての能力を強化するため、2027年度を目途に、自衛隊サイバー防衛隊等のサイバー関連部隊を約4,000人に拡充し、さらに、システム調達や維持運営等のサイバー関連業務に従事する隊員に対する教育を実施する。これにより、2027年度を目途に、サイバー関連部隊の要員と合わせて防衛省・自衛隊のサイバー要員を約2万人体制とし、将来的には、更なる体制拡充を目指す。

  (3) 電磁波領域における能力

  自衛隊の通信妨害やレーダー妨害能力の強化と併せて、電磁波の探知・識別能力の強化や電磁波を用いた欺まんの手段を獲得するなど電子戦能力を向上させるとともに、レーザー等を活用した小型無人機(UAV)への対処等の電磁波の利用方法を拡大する。また、自衛隊の使用する電磁波の利用状況を適切に管理・調整する機能を強化する。

  このため、通信・レーダー妨害機能を有するネットワーク電子戦システム(NEWS)の整備、脅威圏外から通信妨害等を行うスタンド・オフ電子戦機及び脅威圏内において各種電子妨害を行うスタンド・イン・ジャマー等の開発、電波探知器材の搭載による艦艇及び固定翼哨戒機の信号探知・識別能力の向上、陸上からレーダー妨害を行う対空電子戦装置の整備を行う。また、固定翼哨戒機等への電子妨害能力の付与について、試験的に検証し、必要な措置を講じる。加えて、小型無人機(UAV)に対処する車両搭載型レーザー装置の運用を開始するとともに、高出力レーザー、高出力マイクロ波(HPM)等の指向性エネルギー技術の早期装備化を図る。防衛省・自衛隊のシステムに電磁波の利用状況を把握・管理するための機能を整備するとともに、関係省庁と緊密に連携し、自衛隊の各種活動に必要な電波利用を確保していく。

  (4) 陸・海・空の領域における能力

  各自衛隊において、装備品等の取得及び能力向上等を加速し、領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化する。先進的な技術を積極的に活用し、各自衛隊の装備品等を着実に整備するとともに、無人アセットと連携する高度な運用能力を獲得する。

 5 指揮統制・情報関連機能

  (1) 指揮統制機能の強化

  迅速・確実な指揮統制を行うため、抗たん性のある通信、システム・ネットワーク及びデータ基盤を構築し、スタンド・オフ防衛能力及び統合防空ミサイル防衛能力を始めとする各種能力を統合的に運用するため、リアルタイムに指揮統制を行う態勢を概成するとともに、各自衛隊の一元的な指揮を可能とする指揮統制能力に関する検討を進め、必要な措置を講じる。

  このため、領域横断作戦に資する情報共有機能の強化を図るため、共通基盤としてのクラウドの整備、自衛隊の指揮統制機能及び関係省庁等との連接機能を強化する中央指揮システムの換装を行う。また、陸上自衛隊の自律的な作戦遂行能力を強化する将来指揮統制システムの整備、海上自衛隊の意思決定サイクルを一層高速化する指揮統制システムの換装、航空自衛隊の指揮統制機能の抗たん性を強化する自動警戒管制システム(JADGE)の換装、指揮統制機能の機動性・柔軟性の強化、宇宙関連装備品の運用を一元的に指揮統制する宇宙作戦指揮統制システムの整備及び衛星利用の抗たん性強化を行う。さらに、それらの情報を共有するために必要な防衛情報通信基盤(DII)の強化を行う。

  (2) 情報収集・分析等機能の強化

  我が国周辺における軍事動向等を常時継続的に情報収集し、その処理、分析、共有等を行う能力及び態勢を抜本的に強化することにより、隙のない情報収集・分析体制を構築するとともに、政策判断や部隊運用に資する情報を迅速に提供することができる態勢を確立する。加えて、米軍との情報共有態勢及び無人アセットに係る統合運用の在り方について検討し、必要な措置を講じる。

  このため、我が国の防衛における情報機能の中核を担う情報本部を中心に、電波情報、画像情報、人的情報、公刊情報等の機能別能力を強化するとともに、分析官等の育成基盤の拡充や地理空間情報の活用、防衛駐在官制度の充実を始めとする情報収集・分析等に関する体制を強化する。特に、情報収集衛星・民間衛星等を活用した宇宙領域からの情報収集能力を強化するとともに、米国との連携強化や、民間衛星の利用等を始めとする各種取組によって補完しつつ、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションを構築する。また、効果的な情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)の実施に必要な無人機(UAV)等を取得する。

  (3) 認知領域を含む情報戦等への対処

  国際社会において、紛争が生起していない段階から、偽情報や戦略的な情報発信等を用いて他国の世論・意思決定に影響を及ぼすとともに、自らの意思決定への影響を局限することで、自らに有利な安全保障環境の構築を企図する情報戦に重点が置かれている状況を踏まえ、我が国として情報戦に確実に対処できる体制・態勢を構築する。

  このため、情報戦対処の中核を担う情報本部において、情報収集・分析・発信に関する体制を強化する。さらに、各国等の動向に関する情報を常時継続的に収集・分析することが可能となる人工知能(AI)を活用した公開情報の自動収集・分析機能の整備、各国等による情報発信の真偽を見極めるためのSNS上の情報等を自動収集する機能の整備、情勢見積りに関する将来予測機能の整備を行う。

 6 機動展開能力・国民保護

 島嶼部への侵攻阻止に必要な部隊等を南西地域に迅速かつ確実に輸送するため、輸送船舶(中型級船舶(LSV)、小型級船舶(LCU)及び機動舟艇)、輸送機(C-2)、空中給油・輸送機(KC-46A等)、輸送・多用途ヘリコプター(CH-47J/JA、UH-2)等の各種輸送アセットの取得を推進する。また、海上輸送力を補完するため、車両及びコンテナの大量輸送に特化した民間資金等活用事業(PFI)船舶を確保する。

 南西地域への輸送における自己完結性を高めるため、輸送車両(コンテナトレーラー)及び荷役器材(大型クレーン、大型フォークリフト等)を取得する。また、港湾規模に制約のある島嶼部への輸送の効率性を高めるため、揚陸支援システムの研究開発を進める。同時に、輸送を必要とする補給品の南西地域への備蓄により、輸送所要を軽減する取組を講じる。

 また、自衛隊の機動展開や国民保護の実効性を高めるために、平素から各種アセット等の運用を適切に行えるよう、政府全体として、特に南西地域における空港・港湾等を整備・強化する施策に取り組むとともに、既存の空港・港湾等を運用基盤として使用するために必要な措置を講じる。さらに、自衛隊の機動展開のための民間船舶・航空機の利用の拡大について関係機関等との連携を深めるとともに、当該船舶・航空機に加え自衛隊の各種輸送アセットも利用した国民保護措置を計画的に行えるよう調整・協力する。その際、政府全体として、武力攻撃事態等を念頭に置いた国民保護訓練の強化や様々な種類の避難施設の確保を行う。また、国民保護にも対応できる自衛隊の部隊の強化、予備自衛官の活用等の各種施策を推進する。

 7 持続性・強靱性

  (1) 弾薬等の整備

  12式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイル、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM-3ブロックIIA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)、長距離艦対空ミサイル(SM-6)、03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型等の各種弾薬について、必要な数量を早期に整備する。加えて、早期かつ安定的に弾薬を量産するために、防衛産業による国内製造態勢の拡充等を後押しする。さらに、弾薬の維持整備体制の強化を図る。

  また、増加する弾薬の保管所要に対応するため、火薬庫の増設及び不用弾薬の廃棄を促進する。

  (2)燃料等の確保

  自衛隊が行う作戦に必要な燃料所要量を早期かつ安定的に確保するため、燃料タンクの新規整備及び民間燃料タンクの借り上げを実施する。加えて、糧食・被服の必要数量を確保する。

  (3)防衛装備品の可動数向上

  防衛装備品の高度化・複雑化に対応しつつ、リードタイムを考慮した部品費と修理費の確保により、部品不足による非可動を解消し、2027年度までに装備品の可動数を最大化する。

  このため、需給予測の精緻化を図るとともに、部隊が部品を受け取るまでの時間を短縮化するため、補給倉庫の改修を進める。可動数の増加に当たっては、限られた資源を有効に活用するため、維持整備等の部外委託を推進するなど、部外力を活用する。加えて、後方支援分野においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入を推進し、維持整備の最適化を図る。また、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う契約方式(PBL)等を含む包括契約の拡大を図る。

  (4) 施設整備

  スタンド・オフ・ミサイルを始めとした各種弾薬の取得に連動して、必要となる火薬庫を整備する。また、火薬庫の確保に当たっては、各自衛隊の効率的な協同運用、米軍の火薬庫の共同使用、弾薬の抗たん性の確保の観点から島嶼部への分散配置を追求、促進する。

  主要な装備品、司令部等を防護し、粘り強く戦う態勢を確保するため、主要司令部等の地下化・構造強化・電磁パルス(EMP)攻撃対策、戦闘機用の分散パッド、アラート格納庫のえん体化、ライフライン多重化等を実施する。あわせて、省人化を図りつつ、基地警備機能を強化する。

  また、無人アセット等の新たな装備品を効率的に運用可能な施設整備を行う。

  既存施設の更新に際しては、爆発物、核・生物・化学兵器、電磁波、ゲリラ攻撃等に対する防護性能を付与するものとし、施設の機能・重要度に応じた構造強化、離隔距離確保のための再配置、集約化等を実施する。

  大規模災害時等における自衛隊施設の被災による機能低下を防ぐため、被害想定が甚大かつ運用上重要な駐屯地・基地等から、津波等の災害対策等を推進する。今後、気候変動に伴う各種課題へ適応・対応し、的確に任務・役割を果たしていけるよう、駐屯地・基地等の施設及びインフラの強靱化等を進める。

  こうした施設整備は、関係省庁や民間の知見を活用しつつ、5年間で集中して、円滑に執行していく。

III 自衛隊の体制等

 計画の方針に基づき、各自衛隊の体制等を1から5までのとおり整備する。

 1 統合運用体制

 (1)各自衛隊の統合運用の実効性の強化に向けて、平素から有事まであらゆる段階においてシームレスに領域横断作戦を実現できる体制を構築するため、常設の統合司令部を創設する。この際、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増していることを踏まえ、速やかに当該司令部を創設するとともに、共同の部隊を含め、各自衛隊の体制の在り方を検討する。

 (2)サイバー領域における更なる能力向上のため、防衛省・自衛隊のシステム・ネットワークを常時継続的に監視するとともに、我が国へのサイバー攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力を抜本的に強化し得るよう、共同の部隊としてサイバー防衛部隊を保持する。

 (3)また、南西地域への機動展開能力を向上させるため、共同の部隊として海上輸送部隊を新編する。

 2 陸上自衛隊

  (1) 保有すべき防衛力の水準

  ア 作戦基本部隊に関して、南西地域における防衛体制を強化するため、第15旅団を師団に改編するとともに、各種事態に即応し、実効的かつ機動的に抑止及び対処し得るよう、その他の8個師団、5個旅団、1個機甲師団については機動運用を基本とする。また、専門的機能を備えた空挺部隊、水陸機動部隊、空中機動部隊を機動的に運用する。

  この際、良好な訓練環境を踏まえ、統合輸送能力により迅速に展開・移動させることを前提として、高い練度を維持した1個師団、2個旅団、1個機甲師団を北海道に配置する。

  こうした施策の前提として、組織の最適化を徹底するとともに、中長期的な体制の在り方を検討する。

イスタンド・オフ防衛能力を強化するため、12式地対艦誘導弾能力向上型を装備した地対艦ミサイル部隊を保持するとともに、島嶼防衛用高速滑空弾を装備した部隊、島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)及び極超音速誘導弾を装備した長射程誘導弾部隊を新編する。

ウ多様な経空脅威から重要拠点等を防護するため、03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型を装備した高射特科部隊を保持する。

  (2) 基幹部隊の見直し等

 ア 領域横断作戦能力を強化するため、対空電子戦部隊を新編するとともに、島嶼部の電子戦部隊を強化する。さらに、情報収集、攻撃機能等を保持した多用途無人航空機部隊を新編する。また、サイバー戦や電子戦との連携により、認知領域を含む情報戦において優位を確保するための部隊を新編する。

 イ 持続性・強靱性を強化するため、南西地域に補給処支処を新編するとともに、補給統制本部を改編し、各補給処を一元的に運用することで後方支援体制を強化する。

 ウ スタンド・オフ防衛能力、サイバー領域等における能力の強化に必要な増員所要を確保するため、即応予備自衛官を主体とする部隊を廃止し、同部隊所属の常備自衛官を増員所要に充てる。また、即応予備自衛官については、補充要員として管理する。

 3 海上自衛隊

  (1) 保有すべき防衛力の水準

  ア 平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、安定した経済活動の基盤となる海上交通の安全確保、各国との安全保障協力等のための海外展開の実施等、増加する活動量に対応し得るよう、哨戒艦等の導入により増強された水上艦艇部隊を保持する。また、有事においては、我が国の領域及び周辺海域を防衛するとともに、所要の海上交通の安全を確保するため、対潜水艦戦、対水上戦、対機雷戦等の各種作戦を有効かつ持続的に遂行し得るよう、増強及び強化された護衛艦部隊、掃海艦艇部隊を保持するとともに、強化された哨戒ヘリコプター部隊を保持する。加えて、主に弾道ミサイル防衛に従事するイージス・システム搭載艦を整備する。

  イ 平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、領域横断作戦の中でも重要な水中優勢を獲得・維持し得るよう、強化された潜水艦部隊を保持する。

  ウ 平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、平素からの活動に加え、偵察、ターゲティング及び対潜水艦戦を始めとする各種作戦を有効かつ持続的に遂行し得るよう、強化された固定翼哨戒機部隊を保持する。

  (2) 基幹部隊の見直し等

  ア 認知領域を含む情報戦への対応能力を強化し、迅速な意思決定が可能な態勢を整備するため、所要の研究開発を実施するとともに、情報、サイバー、通信、気象海洋等といった機能・能力を有する部隊を整理・集約し、総合的に情報戦を遂行するため、体制の在り方を検討した上で海上自衛隊情報戦基幹部隊を新編する。

  イ 重層的な警戒監視態勢を構築するとともに水中及び海上優勢の確保や人的資源の損耗を低減させるため、各種無人アセット(滞空型無人機(UAV)、既存艦艇の活用を含む無人水上航走体(USV)、無人水中航走体(UUV)等)を導入するとともに、無人機部隊を新編する。

  ウ 統合運用体制の下、高い迅速性と活動量を求められる部隊運用を持続的に遂行可能な体制を構築するため、基幹部隊の体制の見直し等に着手し、所要の改編等を実施する。

  エ 統合任務部隊を運用し得る自衛艦隊等の司令部の継戦能力を向上させるとともに、部隊運用の持続性・強靱性を確保するためのロジスティクスに係る態勢の見直し等に着手し、必要な措置を講じる。

  オ 護衛艦(DDG・DD・FFM)等に12式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイルを搭載する。

  カ 上記のオに加え、水中優勢獲得のための能力強化として、潜水艦(SS)に垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載し、スタンド・オフ・ミサイルを搭載可能とする垂直発射型ミサイル搭載潜水艦の取得を目指し開発する。

  キ 就役から相当年数が経過し、拡張性等に限界がある艦艇等の早期除籍等を図り、省人化した護衛艦(FFM)等を早期に増勢する。加えて、分散機動運用等の多様な作戦を可能にするため、防空中枢艦を増勢するとともに、護衛艦(DDG・DD・FFM)の防空能力、電子戦能力等の能力を向上させる。さらに、機雷戦能力を強化するため、掃海用無人アセットを管制する掃海艦艇を増勢するとともに、洋上における後方支援能力強化のため、補給艦を増勢する。また、有事における航空攻撃への対処等のため、戦闘機(F-35B)の運用が可能となるよう、護衛艦(「いずも」型)の改修を推進する。

  ク 能力向上した固定翼哨戒機(P-1)及び哨戒ヘリコプター(SH-60K(能力向上型))の整備を進めるとともに、固定翼哨戒機の電子戦、対艦攻撃等の能力を向上させる。

 4 航空自衛隊

  (1) 保有すべき防衛力の水準

  ア 太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域を常時継続的に警戒監視するとともに、我が国に飛来する弾道ミサイルに加え、極超音速滑空兵器(HGV)等の新たな経空脅威を探知・追尾し得る固定式警戒管制レーダーを備えた警戒管制部隊のほか、いわゆるグレーゾーン事態等の情勢緊迫時において、より広域で長期間にわたり我が国周辺の空域における警戒監視・管制を有効に行うため、増強された警戒航空部隊から構成される航空警戒管制部隊を保持する。

  イ 戦闘機とその支援機能が一体となって我が国の防空等を総合的な態勢で行うため、質・量ともに大幅に洗練・増強された戦闘機部隊を保持する。また、戦闘機部隊等が我が国周辺空域等で高烈度化する各種航空作戦において粘り強く戦闘を継続するため、増強された空中給油・輸送部隊及び航空救難部隊を保持する。

  ウ 部隊等の機動展開、国際平和協力活動等を効果的に実施するため、増強された航空輸送部隊を保持する。

  エ 重要地域の防空を実施する上で陸上自衛隊の地対空誘導弾部隊と連携するとともに、弾道ミサイル攻撃から我が国を多層的に防護する際に終末段階で対処する機能を備え、多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、増強された高射部隊を保持する。

  オ 宇宙空間の安定的利用を確保するため、宇宙領域把握(SDA)能力を増強した宇宙領域専門部隊を保持する。

  カ 我が国から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な監視を実施するため、無人機部隊を保持する。

  (2) 基幹部隊の見直し等

  ア 我が国の航空戦力の質・量を更に洗練・強化するため、近代化改修に適さない戦闘機(F-15)について、戦闘機(F-35A及びF-35B)への代替ペースを加速させる。また、近代化改修を行った戦闘機(F-15)について、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を引き続き行う。さらに、戦闘機(F-2)については、スタンド・オフ防衛能力の強化の観点から、12式地対艦誘導弾能力向上型の搭載能力等を付与するため、計2個飛行隊分の能力向上事業を推進する。加えて、航空戦力の量的強化を更に進めるため、2027年度までに必要な検討を実施し、必要な措置を講じる。この際、無人機(UAV)の活用可能性について調査を行う。

  イ 次期戦闘機について、戦闘機(F-2)の退役が見込まれる2035年度までに、将来にわたって航空優勢を確保・維持することが可能な戦闘機を配備できるよう、改修の自由や同盟国との相互運用性を確保しつつ、英国及びイタリアと次期戦闘機の共同開発を推進する。この際、戦闘機そのものに加え、無人機(UAV)等を含むシステムについても、国際協力を視野に開発に取り組む。

  ウ さらに、戦闘機(F-35)や次期戦闘機といった最先端の戦闘機の

  パイロットの効率的な育成のため、地上教育及び練習機による飛行訓練を教育システムとして一体化することも含め、あるべき教育体系について検討の上、必要な措置を講じる。

  エ 粘り強く戦闘を継続するため、各所に機動分散運用を実施し得るよう、展開基盤の迅速な整備等を行う体制を構築する。また、航空戦力を我が国への侵攻正面に柔軟に集中・指向し得るよう、航空戦力の運用の在り方について必要な検討を行う。

  オ 高烈度な航空作戦にも対応し、また、粘り強く戦闘を継続する観点から、空中給油機能を強化するため、空中給油・輸送機(KC-46A等)を増勢するとともに、救難機(UH-60J)を更新する。また、太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域における防空態勢を強化するため、太平洋側の島嶼部等への移動式警戒管制レーダー等の整備を推進するとともに、早期警戒機(E-2D)を増勢する。陸上部隊等の迅速な機動展開等を実施するため、輸送機(C-2)を整備する。

  カ スタンド・オフ・ミサイルの運用能力を向上させるため、相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る無人機(UAV)を導入するほか、部隊の任務遂行に必要な情報機能の強化のため、空自作戦情報基幹部隊を新編する。

  キ 多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、地対空誘導弾ペトリオット・システム等の能力向上を引き続き進める。

  ク 宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。

 5 組織定員の最適化

 2027年度末の常備自衛官定数については、2022年度末の水準を目途とし、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊それぞれの常備自衛官定数は組織定員の最適化を図るため、適宜見直しを実施することとする。また、統合運用体制の強化に必要な定数を各自衛隊から振り替えるとともに、海上自衛隊及び航空自衛隊の増員所要に対応するため、必要な定数を陸上自衛隊から振り替える。このため、おおむね2,000名の陸上自衛隊の常備自衛官定数を共同の部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊にそれぞれ振り替える。

 なお、2027年度末までは、自衛官の定数の総計を増やさず、所要の施策を講じることで、必要な人員を確保する。

IV 日米同盟の強化

 1 日米防衛協力の強化

 日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、平素からの連携を図る態勢を構築するとともに、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力、相互運用性を高めるための取組、我が国による反撃能力の行使に係る協力、防空、対水上戦・潜水艦戦、機雷戦、水陸両用作戦、空挺作戦、情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)、アセットや施設の防護、後方支援等における連携を推進する。また、より高度かつ実践的な演習・訓練を通じて同盟の即応性や相互運用性を始めとする対処力の向上を図る。

 力による一方的な現状変更やその試み、更には各種事態の生起を抑止するため、日米共同による、事態に応じて柔軟に選択される抑止措置(FDO)、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)等を拡大・深化させるとともに、平素から、日米双方の施設等の共同使用の増加、訓練等を通じた日米の部隊の双方の施設等への展開等を進める。また、日米間の調整機能を一層強化するとともに、日米同盟を中核とした同志国等との運用面における緊密な調整を実現する。

 あらゆる段階における日米共同での実効的な対処を支える基盤を強化するため、日米間の情報共有を促進するための情報保全及びサイバーセキュリティに係る取組を強化するとともに、先端技術に関する共同分析や共同研究、装備品の共同開発・生産、相互互換性の向上、各種ネットワークの共有及び強化、米国製装備品の国内における生産・整備能力の拡充、サプライチェーンの強化に係る取組等、装備・技術協力を一層強化する。

 2 在日米軍の駐留を支えるための施策の着実な実施

 在日米軍の安定的なプレゼンスを支えるだけでなく、日米同盟の抑止力・対処力を強化していく観点から、「同盟強靱化予算」を始めとする在日米軍の駐留に関連する経費を安定的に確保する。

V 同志国等との連携

 我が国にとって望ましい安全保障環境を創出することは、我が国の防衛の根幹に関わり、また、我が国の防衛そのものに資する極めて重要かつ不可欠な取組であるとの認識の下、自由で開かれたインド太平洋というビジョンも踏まえつつ、二国間・多国間の防衛協力・交流を一層推進する。特に、国家防衛戦略に示す同志国等との連携の方針を踏まえ、ハイレベル交流、政策対話、軍種間交流、連絡官等の人的交流に加え、自衛隊と各国軍隊との相互運用性の向上や我が国のプレゼンスの強化等を目的として、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、戦略的寄港・寄航、共同訓練・演習、装備・技術協力、能力構築支援、国際平和協力活動等といった具体的な取組を各軍種の特性に応じ適切に組み合わせて、戦略的に実施する。

 こうした防衛協力・交流の意義を踏まえ、より相互に連携し、具体的かつ踏み込んだ取組を行うべく、業務要領の改善、体制の整備、処遇を含む制度の見直しや秘匿回線を含む各国とのホットラインの整備といった基盤の整備等を進めるとともに、部隊運用に際して、防衛協力・交流に関する所要を一層反映していく。また、防衛協力・交流に係る取組を実施するに当たっては、関係省庁との連携、諸外国や非政府組織、民間部門等との連携を図るとともに、取組について戦略的に発信する。その際、特に以下を重視する。

 1 共同訓練・演習

 防衛協力・交流としての意義も十分に踏まえつつ、ロジスティクス協力を含む二国間・多国間の共同訓練・演習を積極的に推進する。これにより、望ましい安全保障環境の創出に向けた我が国の意思と能力を示すとともに、各国との相互運用性の向上や他国との関係強化等を図る。

 2 装備・技術協力

 装備品に関する協力は、構想から退役まで半世紀以上に及ぶ取組であることを踏まえ、防衛装備の海外移転や国際共同開発を含む、装備・技術協力の取組の強化を通じ、相手国軍隊の能力向上や相手国との中長期にわたる関係の維持・強化を図る。特に、防衛協力・交流、訓練・演習、能力構築支援等の他の取組とも組み合わせることで、これを効果的に進める。その際、就役から相当年数が経過し、拡張性等に限界がある装備品の早期用途廃止、早期除籍等の活用による同志国への移転を検討する。

 3 能力構築支援

 インド太平洋地域の各国軍隊等に対し、能力構築支援の取組を一層強化し、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出を目指すとともに、支援対象国との関係強化も推進する。その際、外交政策との調整を十分図るほか、米国、オーストラリア等の同盟国・同志国等とも緊密に連携することで、最大の効果が得られるように努める。東南アジア諸国等に対するものに加え、太平洋島嶼国に対する能力構築支援を拡充する。

VI 防衛力を支える要素

 1 訓練・演習

 各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、自衛隊の統合訓練・演習や日米の共同訓練・演習に加え、オーストラリア、インド、欧州・東南アジア諸国等との二国間、多国間の訓練・演習についても計画的かつ目に見える形で実施し、力による一方的な現状変更やその試みは認められないとの意思と能力を示していく。その際、事態に応じて柔軟に選択される抑止措置(FDO)としての訓練・演習等の充実強化を図るとともに、円滑化協定(RAA)の整備等を踏まえ、海外の良好な訓練環境を活かした訓練内容の充実や新たな訓練の実施を図る。

 また、有事において、部隊等の能力を最大限発揮するため、北海道を始めとする国内の演習場等を整備し、その活用を拡大するとともに、国内において必要な訓練基盤の整備・充実を着実に進める。米軍施設・区域の自衛隊による共同使用や民間の空港、港湾施設等の利用拡大を図るとともに、南西地域の島嶼部等に部隊を迅速に展開するための訓練を強化し、島嶼部における外部からの武力攻撃に至らない侵害や武力攻撃に適切に対応するため、警察、海上保安庁、消防、地方公共団体等との共同訓練、国民保護訓練等を強化する。

 こうした訓練を拡大していくためには、関係する地方公共団体や地元住民の理解や協力を得る必要があるため、訓練の安全確保に万全を期しつつ、北海道を始めとする国内の演習場等を含め、訓練基盤の周辺環境への配慮をしていく。

 2 海上保安庁との連携・協力の強化

 あらゆる事態に適切に対応するため、海上保安庁との連携・協力を一層強化する。このため、海上保安庁との情報共有・連携体制を深化するとともに、武力攻撃事態時における防衛大臣による海上保安庁の統制要領の作成や共同訓練の実施を含め、各種の対応要領や訓練の充実を図る。

 3 地域コミュニティーとの連携

 自衛隊及び在日米軍が、平素からシームレスかつ効果的に活動できるよう、自衛隊施設及び米軍施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解及び協力をこれまで以上に獲得していく。日頃から防衛省・自衛隊の政策や活動、在日米軍の役割に関する積極的な広報を行い、地元に対する説明責任を果たしながら、地元の要望や情勢に応じた調整を実施する。同時に、騒音等への対策を含む防衛施設周辺対策事業についても、我が国の防衛への協力促進という観点も踏まえ、引き続き推進する。また、各種事態において自衛隊が迅速かつ確実に活動を行うため、地方公共団体、警察・消防等の関係機関との連携を一層強化する。

 地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊による急患輸送が地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配置・運営に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮する。また、中小企業者に関する国等の契約の方針を踏まえ、効率性にも配慮しつつ、地元中小企業の受注機会の確保を図るなど、地元経済に寄与する各種施策を推進する。

 4 政策立案機能の強化等

 自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、宇宙・サイバー・電磁波領域を含め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜本的に強化していく。この際、有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置する。また、自衛隊の将来の「戦い方」とそのために必要な先端技術の活用・育成・装備化について、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携を強化しつつ、戦略的な観点から総合的に検討・推進する態勢を強化する。さらに、こうした取組を推進し、政策の企画立案を支援するため、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を見直し・強化し、知的基盤としての機能を強化する。

 また、国民が安全保障政策に関する知識や情報を正確に認識できるよう教育機関等への講師派遣、公開シンポジウムの充実等を通じ、安全保障教育の推進に寄与するほか、安全保障に係る研究成果等への国民のアクセスが向上するよう効率的かつ信頼性の高い情報発信に努めるとともに、多様化が進むソーシャルネットワークの一層の活用や、外国語によるものも含む情報発信の能力を高める各種施策を推進する。また、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究・教育機能を一層強化するため、国内外の研究・教育機関や大学、シンクタンク等とのネットワーク及び組織的な連携を拡充する。

VII 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組

 1 大規模災害等への対応

 南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害や原子力災害を始めとする特殊災害といった各種の災害に際しては、統合運用を基本としつつ、十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開して初動対応に万全を期すとともに、無人機(UAV)(狭域用)汎用型、ヘリコプター衛星通信システム、人命救助システム及び非常用電源の整備を始めとする対処態勢を強化するための措置を講じる。

 また、関係省庁、地方公共団体及び民間部門と緊密に連携・協力しつつ、各種の訓練・演習の実施や計画の策定、被災時の代替機能、展開基盤の確保等の各種施策を推進する。

 さらに、原子力発電所が多数立地する地域等において、関係機関と連携して訓練を実施し、連携要領を検証するとともに、原子力発電所の近傍における展開基盤の確保等について検討の上、必要な措置を講じる。

 2 海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用に関する取組

 開かれ安定した海洋及び既存の国際的なルールに基づく空の利用は、海洋国家である我が国の平和と繁栄の基礎という認識の下、自由で開かれたインド太平洋というビジョンも踏まえ、海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用について認識を共有する諸外国との共同訓練・演習、装備・技術協力、能力構築支援、情報共有等の様々な機会を捉えた艦艇や航空機の寄港・寄航等の取組を推進する。これにより、海洋秩序及び既存の国際的なルールに基づく空の利用の安定のための我が国の意思と能力を積極的かつ目に見える形で示す。

 3 国際平和協力活動等

 国際平和協力活動等については、平和安全法制も踏まえ、派遣の意義、派遣先国の情勢、我が国との政治的・経済的関係等を総合的に勘案しながら、引き続き推進する。特に、これまでに蓄積した経験をいかしつつ、安全保障環境の改善に寄与するため、現地ミッション司令部等への要員派遣、国連三角パートナーシッププログラム(TPP)等の国連PKOに係る能力構築支援、国連本部等への幕僚派遣等を積極的に推進する。また、国際情勢の不安定化を踏まえ在外邦人等の保護措置及び輸送に係るものを含め、国際的な活動に係る体制を強化するため、中央即応連隊及び国際活動教育隊の一体化による、高い即応性及び施設分野や無人機運用等の高い技術力を有する国際活動部隊を新編する。

 国際平和協力センターにおける教育内容を拡充するとともに、国際平和協力活動等における関係省庁や諸外国、非政府組織等との連携・協力の重要性を踏まえ、同センターにおける自衛隊員以外への教育を拡大するなど、教育面での連携の充実を図る。

 なお、ジブチにおいて海賊対処のために運営している自衛隊の活動拠点について、中東・アフリカ地域における在外邦人等の保護措置及び輸送等に際する活用を含め地域における安全保障協力等のための長期的・安定的な活用のため、老朽化した設備の更新や施設の整備を推進する。

VIII 早期装備化のための新たな取組

 スタンド・オフ防衛能力、海洋アセット、ソフトキル、無人アセット防衛能力、人工知能(AI)、次世代情報通信、宇宙、デジタルトランスフォーメーション(DX)、高出力エネルギー、情報戦といった分野のほか、自衛隊の現在及び将来の戦い方に直結し得る分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性の高いものについて、防衛関連企業等から提案を受けて、又は、スタートアップ企業や国内の研究機関等の技術を活用することにより、民生先端技術の取り込みも図りながら、着実に早期装備化を実現する。そのため、早期装備化の障害となり得る防衛省内の業務上の手続、契約方式等を柔軟に見直すほか、運用実証・評価・改善等の集中的な反復を通じて、5年以内に装備化し、おおむね10年以内に本格運用するための枠組みを新設する。

IX いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤

 1 防衛生産基盤の強化

  我が国の防衛産業は装備品のライフサイクルの各段階を担っており、装備品と防衛産業は一体不可分であり、防衛生産・技術基盤はいわば防衛力そのものと位置付けられるものである。

  企業にとって、防衛事業は高度な要求性能や保全措置への対応に多大な経営資源の投入を必要とする一方で、収益性は調達制度上の水準より低く、現状では、販路が自衛隊に限られ成長が期待されないなど産業としての魅力が乏しいこと、サプライチェーン上のリスクやサイバー攻撃といった様々なリスクが顕在化しているなど、多様な課題を抱えている。

  これらの課題に対応するため、各企業の防衛事業に対する品質管理、コスト管理、納期管理等を評価して企業のコストや利益を適正に算定する方式を導入し、防衛産業の魅力化を図る。また、企画提案方式等、企業の予見可能性を図りつつ、国内基盤を維持・強化する観点を一層重視した装備品の取得方式を採用していく。有償援助(FMS)調達する装備品についても、国内企業の参画を促進するための取組を行うとともに、合理化・効率化に努める。

  様々なリスクへの対応や防衛生産基盤の維持・強化のため、製造等設備の高度化、サイバーセキュリティ強化、サプライチェーン強靱化、事業承継といった企業の取組に対し、適切な財政措置、金融支援等を行う。

  サプライチェーンリスクを把握するため、サプライチェーン調査を実施する。新規参入を促進することでサプライチェーン強靱化と民生先端技術の取り込みを図る。さらに、同盟国・同志国等の防衛当局と協力してサプライチェーンの相互補完を目指す。これにより、安定的な調達に資するサプライチェーンの強靱化を行っていく。

  サイバー攻撃を含む諸外国の情報活動等からの情報保護は、防衛生産及び国際装備・技術協力の前提であり、防衛産業サイバーセキュリティ基準の防衛産業における着実な実施、防衛産業保全マニュアルを策定・適用するための施策を講じるとともに、産業保全制度の強化を行う。また、特許出願非公開制度等の経済安全保障施策と連携した機微技術管理を実施する。

 2 防衛技術基盤の強化

  将来の戦い方に必要な研究開発事業を特定し、装備品の取得までの全体像を整理することにより、研究開発プロセスにおける各種取組による早期装備化を実現する。将来の戦い方を実現するための装備品を統合運用の観点から体系的に整理した統合装備体系も踏まえ、将来の戦い方に直結する以下(1)から(6)までの装備・技術分野に集中的に投資を行うとともに、従来装備品の能力向上等も含めた研究開発プロセスの効率化や新しい手法の導入により、研究開発に要する期間を短縮し、早期装備化につなげていく。その際、成果の見込みが低い研究開発については、速やかに事業廃止する仕組みを構築する。

  将来にわたって技術的優越を確保し、他国に先駆け、先進的な能力を実現するため、民生先端技術を幅広く取り込む研究開発や海外技術を活用するための国際共同研究開発を含む技術協力を追求及び実施するとともに、防衛用途に直結し得る技術を対象に重点的に投資し、早期の技術獲得を目指す。その際、関係省庁におけるプロジェクトとの連携、その成果の積極活用を進める。

  以上を踏まえ、政策部門、運用部門及び技術部門が一体となった体制で、将来の戦い方の検討と先端技術の活用に係る施策を推進する。

  我が国の科学技術力を結集する観点から、防衛省が重視する技術分野や研究開発の見通しを戦略的に発信し、企業等の予見可能性を高める。加えて、防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能を抜本的に強化するため、防衛装備庁の研究開発関連組織のスクラップ・アンド・ビルドにより、2024年度以降に新たな研究機関を防衛装備庁に創設するほか、研究開発体制の充実・強化を実行する。さらに、先端技術に関する取組を効果的に実施する観点から、国内の研究機関のほか、米国・オーストラリア・英国といった同盟国・同志国との技術協力を強力に推進する。

  開発段階から装備移転を見越した装備品の開発や、自衛隊独自仕様の見直しを推進する。装備品の開発に当たっては、量産段階・維持整備段階のコスト低減を考慮する。また、弾薬や車両等の従来技術について、その生産・技術基盤を維持するための措置を講じる。

  (1) スタンド・オフ防衛能力

  我が国に侵攻してくる艦艇、上陸部隊等に対して、脅威圏の外から対処する能力を獲得する。

  ア 12式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)について開発を継続し、地上発射型については2025年度まで、艦艇発射型については2026年度まで、航空機発射型については2028年度までの開発完了を目指す。

  イ 高い隠密性を有して行動できる潜水艦から発射可能な潜水艦発射型スタンド・オフ防衛能力の構築を進める。

  ウ 高高度・高速滑空飛しょうし、地上目標に命中する島嶼防衛用高速滑空弾の研究を継続し、早期装備型について2025年度までの事業完了を目指すとともに、本土等のより遠方から、島嶼部に侵攻する相手部隊等を撃破するための島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)を開発する。

  エ 極超音速の速度域で飛行することにより迎撃を困難にする極超音速誘導弾について、研究を推進し2031年度までの事業完了を目指すとともに、派生型の開発についても検討する。

  オ  長射程化、低レーダー反射断面積(RCS)化、高機動化を図りつつ、モジュール化による多機能性を有した島嶼防衛用新対艦誘導弾を研究する。

  (2) 極超音速滑空兵器(HGV)等対処能力

  既存装備品での探知や迎撃が困難である極超音速滑空兵器(HGV)等に対処するための技術を獲得する。

  ア 巡航ミサイル等に加えて、極超音速滑空兵器(HGV)や弾道ミサイル対処を可能とする03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型を開発する。

  イ 極超音速で高高度を高い機動性を有しながら飛しょうする極超音速滑空兵器(HGV)に対処する、極超音速滑空兵器(HGV)対処用誘導弾システムの調査及び研究を実施する。

  (3) ドローン・スウォーム攻撃等対処能力

  脅威が急速に高まっているドローン・スウォームの経空脅威に対して、経済的かつ効果的に対処するための技術を獲得し、早期装備化を目指す。

  ア 小型無人機(UAV)等の経空脅威を迎撃する高出力レーザーの各種研究を継続する。

  イ 高出力マイクロ波(HPM)を照射して小型無人機(UAV)等を無力化する技術の研究を継続する。

  (4) 無人アセット

 防衛装備品の無人化・省人化を推進するため、既存の装備体系・人員配置を見直しつつ、無人水中航走体(UUV)等に係る技術を獲得する。

  ア 管制型試験無人水中航走体(UUV)から被管制用無人水中航走体(UUV)を管制する技術等の研究を実施し、水中領域における作戦機能を強化する。

  イ 有人車両から複数の無人戦闘車両(UGV)をコントロールする運用支援技術や自律的な走行技術等に関する研究を実施する。

  ウ 水上艦艇の更なる省人化・無人化を実現するため、無人水上航走体(USV)に関する技術等の研究を継続する。

  (5) 次期戦闘機に関する取組

  ア 次期戦闘機の英国及びイタリアとの共同開発を着実に推進し、2035年度までの開発完了を目指す。次期戦闘機等の有人機と連携する戦闘支援無人機(UAV)についても研究開発を推進する。

  イ これらの研究開発に際しては、我が国主導を実現すべく、数に勝る敵に有効に対処できる能力を保持することを前提に、将来にわたって適時適切な能力向上が可能となる改修の自由や高い即応性等を実現する国内生産・技術基盤を確保するものとする。

  (6) その他抑止力・対処力の強化

  ア 各種経空脅威への対処能力向上のための将来レールガンに関する研究を継続する。

  イ 脅威となるレーダー等の電波器材に誤情報を付与して複数の脅威が存在すると誤認させる欺まん装置技術に関する研究を実施する。

  ウ 複雑かつ高速に推移する戦闘様相に対して、人工知能(AI)により行動方針を分析し、指揮官の意思決定を支援する技術を装備品に反映するための研究を行う。

  エ 情報収集能力等を向上した多用機(EP-3)の後継機となる次期電子情報収集機について必要な検討を実施の上、研究開発を進める。

  オ 警戒監視中の艦艇等から迅速に機雷を敷設するため、小型かつ遠隔から管制が可能な新型小型機雷を開発する。

  カ 極超音速誘導弾の要素研究の成果を活用した極超音速地対空誘導弾の研究開発に着手する。

 3 防衛装備移転の推進

 防衛装備移転については、同盟国・同志国との実効的な連携を構築し、力による一方的な現状変更や我が国への侵攻を抑止するための外交・防衛政策の戦略的な手段となるのみならず、防衛装備品の販路拡大を通じた、防衛産業の成長性の確保にも効果的である。このため、政府が主導し、官民の一層の連携の下に装備品の適切な海外移転を推進するとともに、基金を創設し、必要に応じた企業支援を行っていく。

 4 各種措置と制度整備の推進

 以上のような政策を実施するため、必要な予算措置等、これに必要な法整備、及び政府系金融機関等の活用による政策性の高い事業への資金供給を行うとともに、その執行状況を不断に検証し、必要に応じて制度を見直していく。

X 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

 1 人的基盤の強化

  防衛力の抜本的強化のためには、これまで以上に個々の自衛隊員に知識・技能・経験が求められていること、また、領域横断作戦、情報戦等に確実に対処し得る素養を身に着けた隊員を育成する必要があることに留意しつつ、必要な自衛官及び事務官等を確保し、更に必要な制度の検討を行うなど、人的基盤を強化していく。その一環として、研究開発事業に係る職員を確保し、技能等の能力を向上させる。この際、特にサイバー領域等を含む分野については、教育体制の強化や民間人材の活用を図る。

  このため、育児、出産及び介護といったライフイベントを迎える中でも、全ての自衛隊員が能力を発揮できる環境を整備するとともに、自衛隊員へのリスキリングを含め、採用から始まるライフサイクル全般に着目した施策を総合的に講じる。

  (1) 採用の取組強化

  少子化による募集対象人口の減少という厳しい採用環境の中で優秀な人材を安定的に確保するため、採用広報のデジタル化・オンライン化等を含めた多様な募集施策を推進するとともに、地方協力本部の体制強化や地方公共団体及び関係機関等との連携を強化する。

  また、任期制自衛官の魅力を向上する観点から、自衛官候補生の在り方の見直し、任期満了後の再就職、大学への進学等に対する支援の充実を図る。さらに、少子高学歴化を踏まえ、非任期制自衛官の採用の拡大や大卒者等を含む採用層の拡大に向けた施策を推進する。この際、貸費学生制度の拡充を通じ、有為な人材の早期確保を図る。

  さらに、サイバー領域等で活躍が見込まれる専門的な知識・技能を有する人材を取り込むため、柔軟な採用・登用が可能となる新たな自衛官制度を構築するほか、自衛隊を退職した者を含む民間の人材を活用するために必要な施策を講じる。

  (2) 予備自衛官等の活用

  作戦環境の変化や自衛隊の任務が多様化する中で、予備自衛官等が常備自衛官を効果的に補完するため、充足率の向上のみならず、予備自衛官等に係る制度を抜本的に見直し、体制強化を図る。このため、即応予備自衛官及び予備自衛官が果たすべき役割を再整理した上で、自衛官未経験者からの採用の拡大や、年齢制限、訓練期間等について現行制度の見直しを行う。

  (3) 人材の有効活用

  女性隊員の採用や、意欲・能力・適性に応じた登用を引き続き積極的に行うとともに、女性の活躍を支える教育基盤の整備や、女性自衛官の増勢を見据えた隊舎・艦艇等における女性用区画の計画的な整備を行う。

  また、知識・技能・経験等を豊富に備えた人材の一層の活用を図るため、精強性にも配慮しつつ、自衛官の定年年齢の引上げを行うとともに、再任用自衛官が従事できる業務を大幅に拡大し、再任用による退職自衛官の活用を強力に推進する。

  中途退職者の抑制は急務であり、効果的な施策の検討の資とするため、中途退職に関する自衛隊員の意識等の調査を実施する。任務や勤務環境の特殊性も踏まえ、必要となる施策については不断に検討し、講じていく。

  (4) 生活・勤務環境の改善等

  ハラスメントは、自衛隊員相互の信頼関係を失墜させ組織の根幹を揺るがす決してあってはならないものであるとの認識の下、ハラスメント防止に係る有識者会議における検討結果等を踏まえた新たな対策を確立し、全ての自衛隊員に徹底させる。さらに、時代に即した対策が講じられるよう、その見直しを継続的に行い、ハラスメントを一切許容しない組織環境とする。

  また、部隊の新編・改編や即応性を確保するために必要な宿舎の着実な整備を進めるほか、隊舎・宿舎の近代化や予防保全を含む計画的な老朽化及び耐震化のための対策を講じる。さらに、生活・勤務用備品の所要数整備や確実な老朽更新、また、日用品等の所要数の確実な確保といった隊員の生活・勤務環境の改善を図る。この際、艦艇のように特殊な環境であっても働きやすい環境となるよう留意する。これらの施策により自衛隊員の士気向上を図る。

  家庭との両立を支援する制度の整備・普及を始めとするワークライフバランス確保の取組を進めるとともに、隊員のニーズを踏まえた託児施設の整備、緊急登庁時におけるこどもの一時預かり等の施策を推進する。また、地方公共団体や関係団体等と連携した家族支援施策を拡充する。

  (5) 人材の育成

  より高度な領域横断作戦における統合運用に資する人材確保のため、統合幕僚学校や各自衛隊の幹部学校等における統合教育を強化する。各自衛隊、防衛大学校及び防衛研究所においては、部隊の中核となり得る優秀な人材の確保・輩出のため、サイバー領域等を含む教育・研究の内容及び体制を強化する。また、陸上自衛隊高等工科学校については各自衛隊の共同化及び男女共学化を実施する。

  さらに、各自衛隊の相互補完を一層推進するため、教育課程の共通化を図るとともに、先端技術を活用し、効果的かつ効率的な教育・研究を推進する。加えて、一元的な教育の実施及び教育効果の向上のため、海上自衛隊第1術科学校及び第2術科学校を統合するほか、いわゆる第5世代戦闘機操縦者養成等のための飛行教育・練成訓練環境の最適化等に資する初等練習機(T-7)・中等練習機(T-4)後継機及び関連するシステムの整備等を実施する。

  (6) 処遇の向上及び再就職支援

  自衛隊員の超過勤務の実態調査等を通じ、任務や勤務環境の特殊性を踏まえた給与・手当とし、特に艦艇やレーダーサイト等で厳しい任務に従事する隊員を引き続き適正に処遇するとともに、反撃能力を始めとする新たな任務の増加を踏まえた隊員の処遇の向上を図る。諸外国の軍人の給与制度等を調査し、今後の自衛官の給与等の在り方について検討する。自衛官として長年にわたり任務に精励した功績にふさわしい栄典・礼遇に関する施策を進める。

  また、若年定年制又は任期制の下にある自衛官の退職後の生活基盤の確保は国の責務であることを踏まえ、退職予定自衛官に対する進路指導体制や職業訓練機会等を充実させるとともに、地方公共団体、関係機関及び民間企業等との連携を強化するなど、再就職支援の一層の充実・強化を図る。

 2 衛生機能の変革

 各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得るよう、各自衛隊で共通する衛生機能等を一元化して統合衛生運用を推進するとともに、防衛医科大学校も含めた自衛隊衛生の総力を結集できる態勢を構築し、戦傷医療対処能力向上の抜本的改革を推進する。

 有事において、危険を顧みずに任務を遂行する隊員の生命・身体を救うため、第一線から後送先までのシームレスな医療・後送態勢を確立することが必要である。このため、応急的な措置を講じる第一線、戦傷者を後送先病院まで輸送する各自衛隊の各種アセットを有効に利用した後送間救護、最終後送先となる病院それぞれの機能を強化していく必要がある。

 まず、第一線救護については、実際に第一線で活動を行う衛生隊員に准看護師及び救急救命士の資格取得を推進するとともに、これらの養成基盤の更なる強化を図る。また、第一線救護に引き続いて実施する緊急外科手術に関して、新たに統合の教育課程を新設し、計画的な要員の育成を図る。さらに、艦艇での洋上外科手術についても上記課程修了者に必要な教育訓練を実施し洋上医療の強化を図る。

 航空後送間救護については、新たに航空後送間救護のための訓練装置を導入し、傷病者搬送時の救護能力向上のための教育訓練環境を整備する。これらの教育訓練の実施に当たっては、各自衛隊間での共通化、統合化を推進し、共通の知識・技能の向上を図る。

 南西地域における衛生機能の強化に当たっては、自衛隊那覇病院の機能及び抗たん性を拡充することが有効と考えられることから、同病院の病床の増加、診療科の増設、地下化等の機能強化を図る。その他の後送先となる自衛隊病院についても、建替え等の機会を捉え、同様の機能強化を図る。

 衛生機能については、各自衛隊で共通する機能が多いことから、衛生資器材の整備について、各自衛隊間の相互運用性を考慮して共通化を推進する。また、医療・後送に際して必要となる各自衛隊員の医療情報を自衛隊病院等において陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の隊員の区別なくタイムリーに取得できるよう、隊員の身体歴情報を電子化し、各隊員の医療情報を速やかに検索・閲覧できる態勢を整える。

 戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創等による失血死であり、これを防ぐためには輸血に使用する血液製剤の確保が極めて重要であることから、自衛隊において血液製剤を自律的に確保・備蓄する態勢の構築について検討する。また、血液製剤と並び戦傷医療において重要な医療用酸素の確保のため、酸素濃縮装置等についても整備を行う。

さらに、防衛医科大学校においては、近年の医療技術等の進展が著しい中、戦傷医療対処能力向上を始めとした教育研究の強化を進めるとともに、臨床の現場となる防衛医科大学校病院については、医官及び看護官への高度な医療教育や自衛隊の衛生隊員の技能向上を図るほか、戦傷者の受け入れに対応するため、運営の抜本的改革を図るとともに、病院の建替え等の機会を捉え、機能強化を図る。また、それを補完するものとして、医官及び看護官の部外研修についてもその確保に努める。

XI 最適化の取組

 1 装備品

 陸上自衛隊については、航空体制の最適化のため、一部を除き師団・旅団の飛行隊を廃止し、各方面隊にヘリコプター機能を集約するとともに、対戦車・戦闘ヘリコプター(AH)及び観測ヘリコプター(OH)の機能を多用途/攻撃用無人機(UAV)及び偵察用無人機(UAV)等に移管し、今後、用途廃止を進める。その際、既存ヘリコプターの武装化等により最低限必要な機能を保持する。

 海上自衛隊については、広域での洋上監視能力強化のため、滞空型無人機(UAV)を取得することに伴い、固定翼哨戒機(P-1)の取得数を一部見直す。護衛艦(「いずも」型)への戦闘機(F-35B)の搭載等、艦載所要の見直しにより、哨戒ヘリコプター(SH-60K(能力向上型))の取得数を一部見直す。多用機(U-36A)の用途廃止を進める。

 航空自衛隊については、保有機種の最適化のため、救難捜索機(U-125A)等の用途廃止を進める。

 更なる装備品の効果的・効率的な取得の取組として、長期契約の適用拡大による装備品の計画的・安定的な取得を通じてコスト低減を図り、企業の予見可能性を向上させ効率的な生産を促すことに加え、他国を含む装備品の需給状況を考慮した調達、コスト上昇の要因となる自衛隊独自仕様の絞り込み等により、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の実効性を高める。

 2 人員

 統合運用体制強化に必要な定数を各自衛隊から振り替えるとともに、海上自衛隊及び航空自衛隊の増員所要に対応するために必要な定数を陸上自衛隊から振り替える。このため、陸上自衛隊の常備自衛官定数のおおむね2,000名を共同の部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊に振り替え、自衛隊の組織定員の最適化を図る。

 また、自衛官の定数の総計を増やさず、既存部隊の見直しや民間委託等の部外力の活用を進める。

XII 整備規模

 この計画の下で抜本的に強化される防衛力の5年後とおおむね10年後の達成目標は、別表1のとおりとする。

 前記II及びIIIに示す装備品のうち、主要なものの具体的な整備規模は、別表2のとおりとする。

 また、おおむね10年後における各自衛隊の主要な編成定数、装備等の具体的規模については、別表3のとおりとする。

XIII 所要経費等

 1 2023年度から2027年度までの5年間における本計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、43兆円程度とする。

 2 本計画期間の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、以下の措置を別途とることを前提として、40兆5,000億円程度(2027年度は、8兆9,000億円程度)とする。

 (1) 自衛隊施設等の整備の更なる加速化を事業の進捗状況等を踏まえつつ機動的・弾力的に行うこと(1兆6,000億円程度)。

 (2) 一般会計の決算剰余金が6の想定よりも増加した場合にこれを活用すること(9,000億円程度)。

  なお、格段に厳しさを増す財政事情と国民生活に関わる他の予算の重要性等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力整備の一層の効率化・合理化を徹底し、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直し、徹底したコスト管理・抑制や長期契約を含む装備品の効率的な取得等の装備調達の最適化、その他の収入の確保等を行うこととし、上記剰余金が増加しない場合にあっては、この取組を通じて実質的な財源確保を図る。

  各年度の予算編成においては、情勢の変化等の不測の事態にも対応できるよう配意するとともに、別表2に示す装備品の整備を含め、各事業の進捗状況、実効性、実現可能性を精査し、必要に応じてその見直しを柔軟に行う。

 3 この計画を実施するために新たに必要となる事業に係る契約額(物件費)は、43兆5,000億円程度(維持整備等の事業効率化に資する契約の計画期間外の支払相当額を除く)とし、各年度において後年度負担についても適切に管理することとする。

 4 本計画期間中、2023年度から2027年度までの5年間において、装備品の取得・維持整備、施設整備、研究開発、システム整備等を集中的に実施するため、その後の整備計画においては、これを適正に勘案した内容とし、2027年度の水準を基に安定的かつ持続可能な防衛力整備を進めるものとする。

 5 この計画については、中長期的な防衛と財政の見通しを踏まえつつ、その時点における国際情勢、情報通信技術を始めとする技術的水準の動向、防衛力強化の裏付けとなる経済力・財政基盤の状況等の内外諸情勢を勘案し、必要に応じ見直しを行う。

 6 2027年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源、及び、2023年度から2027年度までの本計画を賄う財源の確保については、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の創設、税制措置等、歳出・歳入両面において所要の措置を講ずることとする。

XIV 留意事項

 沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢見直し等についての具体的措置及び沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関連事業については、着実に実施する。



別表1 抜本的に強化された防衛力の目標と達成時期

分野 2027年度までの5年間(※) おおむね10 年後まで
   我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等からの支援を受けつつ、これを阻止・排除し得る防衛力を構築 左記防衛構想をより確実にするための更なる努力(より早期・遠方で侵攻を阻止・排除し得る防衛力を構築)
スタンド・オフ防衛能力 ●スタンド・オフ・ミサイルを実践的に運用する能力を獲得 ●より先進的なスタンド・オフ・ミサイルを運用する能力を獲得
●必要かつ十分な数量を確保
統合防空ミサイル防衛能力 ●極超音速兵器に対処する能力を強化
●小型無人機(UAV)に対処する能力を強化
●広域防空能力を強化
●より効率的・効果的な無人機(UAV)対処能力を強化
無人アセット防衛能力 ●無人機(UAV)の活用を拡大し、実践的に運用する能力を強化
●無人アセットの複数同時制御能力等を強化
領域横断作戦能力 ●宇宙領域把握(SDA)能力、サイバーセキュリティ能力、電磁波能力等を強化
●領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化
●宇宙作戦能力を更に強化
●自衛隊以外の組織へのサイバーセキュリティ支援を強化
●無人機と連携する陸海空能力を強化
指揮統制・情報関連機能 ●ネットワークの抗たん性を強化しつつ、人工知能(AI)等を活用した意思決定を迅速化
●認知領域の対応も含め、戦略・戦術の両面で情報を取得・分析する能力を強化
●人工知能(AI)等を活用し、情報収集・分析能力を強化しつつ、常時継続的な情報収集・共有体制を強化
機動展開能力・国民保護 ●自衛隊の輸送アセットの強化、PFI船舶の活用等により、輸送・補給能力を強化(部隊展開・国民保護) ●輸送能力を更に強化
●補給拠点の改善等により、輸送・補給を迅速化
持続性・強靱性 ●弾薬・誘導弾の数量を増加
●整備中以外の装備品が最大限可動する体制を確保
●有事に備え、主要な防衛施設を強靱化
●保管に必要な火薬庫等を確保
●弾薬・誘導弾の適正在庫を維持・確保
●可動率を維持
●防衛施設を更に強靱化
●弾薬所要に見合った火薬庫等を更に確 保
防衛生産・技術基盤 ●サプライチェーンの強靱化対策等により、強力な防衛生産基盤を確立
●将来の戦い方に直結する装備分野に集中投資するとともに、研究開発期間を大幅に短縮し、早期装備化を実現
●革新的な装備品を実現し得る強力な防衛生産基盤を維持
●将来における技術的優位を確保すべ く、技術獲得を追求
人的基盤 ●募集能力強化や新たな自衛官制度の構築等により、民間を含む幅広い層から優秀な人材を必要数確保
●教育・研究を強化(サイバー等の新領域、統合、衛生)
●隊舎・宿舎の老朽化や備品不足を解消し、生活・勤務環境及び処遇を改善
●募集対象者人口の減少の中でも、専門的な知識・技能を持つ人材を含め、必要な人材を継続的・安定的に確保
●教育・研究を更に強化
●全ての隊員が高い士気を持ちながら個々の能力を発揮できる組織環境を醸成

※ 現有装備品を最大限活用するため、弾薬確保や可動率向上、主要な防衛施設の強靱化への投資を加速するとともに、スタンド・オフ防衛能力や無人アセット防衛能力等、将来の防衛力の中核となる分野の抜本的強化に重点。


別表2

区分 種類 整備規模
(1)スタンド・オフ防衛能力 12 式地対艦誘導弾能力向上型
(地上発射型、艦艇発射型、航空機発射型)
島嶼防衛用高速滑空弾
極超音速誘導弾
トマホーク
地上発射型
11 個中隊


(2)統合防空ミサイル防衛能力 03 式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型
イージス・システム搭載艦
早期警戒機(E-2D)
弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル
(SM-3ブロックⅡA)
能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)
長距離艦対空ミサイルSM-6
14 個中隊
2 隻
5 機



(3)無人アセット防衛能力 各種UAV
USV
UGV
UUV



(4)領域横断作戦能力 護衛艦
潜水艦
哨戒艦
固定翼哨戒機(P-1)
戦闘機(F-35A)
戦闘機(F-35B)
戦闘機(F-15)の能力向上
スタンド・オフ電子戦機
ネットワーク電子戦システム(NEWS)
12 隻
5 隻
10 隻
19 機
40 機
25 機
54 機
1 機
2 式
(5)指揮統制・情報関連機能 電波情報収集機(RC-2) 3 機
(6)機動展開能力・国民保護 輸送船舶
輸送機(C-2)
空中給油・輸送機(KC-46A等)
8 隻
6 機
13 機


別表3(おおむね10 年後)

区分 将来体制
共同の部隊 サイバー防衛部隊
海上輸送部隊
1個防衛隊
1個輸送群
陸上自衛隊 常備自衛官定数 149,000 人
基幹部隊 作戦基本部隊 9個師団
5個旅団
1個機甲師団
空挺部隊
水陸機動部隊
空中機動部隊
1個空挺団
1個水陸機動団
1個ヘリコプター団
スタンド・オフ・ミサイル部隊 7個地対艦ミサイル連隊
2個島嶼防衛用高速滑空弾大隊
2個長射程誘導弾部隊
地対空誘導弾部隊 8個高射特科群
電子戦部隊(うち対空電子戦部隊) 1個電子作戦隊
(1個対空電子戦部隊)
無人機部隊 1個多用途無人航空機部隊
情報戦部隊 情報戦部隊
海上自衛隊 基幹部隊 水上艦艇部隊(護衛艦部隊・掃海艦艇部隊)
潜水艦部隊
哨戒機部隊(うち固定翼哨戒機部隊)
無人機部隊
情報戦部隊
6個群(21 個隊)
6個潜水隊
9個航空隊(4個隊)
2個隊
1個部隊
主要装備 護衛艦(うちイージス・システム搭載護衛艦)
イージス・システム搭載艦
哨戒艦
潜水艦
作戦用航空機
54 隻(10 隻)
2隻
12 隻
22 隻
約170 機
航空自衛隊 主要部隊 航空警戒管制部隊

戦闘機部隊
空中給油・輸送部隊
航空輸送部隊
地対空誘導弾部隊
宇宙領域専門部隊
無人機部隊
作戦情報部隊
4個航空警戒管制団
1個警戒航空団(3個飛行隊)
13 個飛行隊
2個飛行隊
3個飛行隊
4個高射群(24 個高射隊)
1個隊
1個飛行隊
1個隊
主要装備 作戦用航空機(うち戦闘機) 約430 機(約320 機)

注1:上記、陸上自衛隊の15 個師・旅団のうち、14 個師・旅団は機動運用を基本とする。
注2:戦闘機部隊及び戦闘機数については、航空戦力の量的強化を更に進めるため、2027年度までに必要な検討を実施し、必要な措置を講じる。この際、無人機(UAV)の活用可能性について調査を行う。