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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 政府安全保障能力強化支援に係る調達手続実施要領

[場所] 
[年月日] 2023年4月
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

第1部 基本事項

I.序文

 本実施要領は、日本国政府と被供与国政府(以下II.2.で定義される「被供与国」という。)との間の交換公文(以下「E/N」という。)で合意された政府安全保障能力強化支援(OSA: Official Security Assistance)(以下「OSA」という。)を使用して実施する生産物及び役務(以下「生産物等」という。)の調達に係る手続を定め、以てプロセスの公平性・透明性を確保することを目的とするものである。

 本実施要領の適用は、日本国政府と被供与国との間でE/Nに基づき署名される手続細目(以下「P/D」という。)の中で規定される。

 被供与国、調達代理機関及びOSAのために生産物等を供給する者(以下II.4.で定義される「契約業者」という。)の権利及び義務は、被供与国が調達代理機関と締結する契約(P/Dにいう「雇用契約」(employment contract)、以下「調達代理業務契約」 という。)、入札図書及び調達代理機関が契約業者と締結する契約によって定められ、本実施要領によって定められるものではない。

II.関係機関

 本実施要領において、日本国政府、被供与国、調達代理機関及び契約業者の関係は次のとおりである。

1.日本国政府はOSAのための贈与の「供与者」である。

2.被供与国は贈与の「受益者」であり、OSAの実施に責任を有する。被供与国は、生産物等の調達を調達代理機関に委任する。

3.調達代理機関は、被供与国との調達代理業務契約により被供与国に代わり生産物等の調達業務を提供する中立な専門機関である。調達代理機関となる機関は、日本国政府の推薦に基づき、P/Dにおいて、両政府間で合意される。

4.契約業者は、被供与国調達代理機関との契約に基づき、OSAのための生産物等を被供与国に供給する者である。

III. 安全配慮

 被供与国、調達代理機関及び契約業者は適用される全ての安全基準を順守し、全ての安全対策措置に最善の注意を払わなければならない。


第2部 調達代理機関

I.総論

1.調達代理機関の役割

 調達代理機関は、被供与国に代わりOSAのための生産物等の調達業務を行う。調達代理機関は、生産物等の特性に関する技術的専門性を有するのみならず、中立的な立場において公平性、透明性等、適正な調達手続にも留意した上で、OSAが公正かつ円滑に実施され、支援の目的が達成されるよう業務を遂行しなければならない。

 また、調達代理機関の業務においては、被供与国の利益の保護と我が国による支援の効果の最大化が最優先されなければならず、調達代理機関は被供与国の負担を最小化するよう留意して行動しなければならない。

2.調達代理業務契約

 被供与国は、P/Dに従って、調達代理機関とE/N署名後可及的速やかに調達代理業務契約を締結する。

 調達代理機関は、P/Dの規定に従い、日本国政府による書面による承認を得て、本契約により被供与国に代わり、下記3.の業務を実施する。

3.調達代理機関の業務

 調達代理機関は、P/Dの別添に定める業務を実施する。

II. 調達代理業務契約の承認

1.総論

 調達代理業務契約は、2通の同一内容の文書で作成・締結され、当該契約書の写しは被供与国より調達代理機関を通じ日本国政府に提出されなければならない。日本国政府は、同契約がE/N、P/D及び本実施要領に従って締結されていることを確認した上で承認する。

 調達代理業務契約は、日本国政府の書面による承認により発効する。

2.E/Nについての言及

 調達代理業務契約には、「日本国政府は、(被供与国名)政府に対し、両政府間で(署名の日付)に署名されたE/NによりOSAの供与を実施する。」と明記しなければならない。

3.業務内容

 調達代理業務契約には、調達代理機関の業務の内容が明確に規定されなければならない。E/N及びP/Dの規定に合致しない調達代理機関の業務を内容とする調達代理業務契約は、日本国政府の承認を得ることができない。

4.業務完了

 調達代理業務契約には、「調達代理機関の業務は、被供与国名義の日本にある銀行の口座(以下「政府口座」という。)から調達代理機関名義の調達資金口座(以下「調達口座」という。)へ移動される資金の全額が支払われたとき又は同資金の残金が日本国政府に返納されたときに完了したものとみなされる」と明記されなければならない。

5.調達代理業務契約手数料

 調達代理業務契約には、正確かつ誤りなく同契約業務に係る調達代理機関手数料の金額及び通貨、若しくは、計算方法が明記されなければならない。

6.調達代理業務契約の承認

 調達代理業務契約には、「本契約は日本国政府による書面の承認を以て発効する。」と明記しなければならない。

7.支払方法

 調達代理業務契約には、調達代理機関に対する贈与の全ての資金移動に関して、被供与国は同国の代理機関として調達代理機関を指名するとともに、政府口座 から調達口座への資金(以下「前渡金」という。)を移動するための包括的支払授権書(BDA: Blanket Disbursement Authorization)(以下「BDA」という。)を発給することを規定しなければならない。

 調達代理業務契約には、調達代理機関に対する支払が、前渡金から日本円で行われること、及び調達代理機関に対する最終支払が、完了段階、すなわち、全ての生産物等の納入完了の1年後又は生産物等の納入後に据付やトレーニングが必要とされる場合はその完了の1年後に調達代理機関により実施される瑕疵検査完了後の結果報告書の提出があったときに実行されることが明記されなければならない。

8.不可抗力

 調達代理業務契約については、調達代理業務契約に基づく調達代理機関の義務の不履行が、調達代理業務契約の条件で定められた不可抗力の結果である場合には債務不履行とはみなされないことを規定する条項を含まなければならない。

9.被供与国の責任と義務

 調達代理業務契約には、E/Nに従って、被供与国の責任と義務が明確に規定されなければならない。

10.調達代理業務契約の修正

 契約の修正が必要な場合、修正された契約には、次の点が明確に規定されなければならない。

(1)修正される条項を除いた全ての条項に変更がないこと。

(2)修正契約は、日本国政府による書面の承認を以て発効すること。

11.瑕疵検査

 調達代理機関は、全ての生産物等の納入完了の1年後又は生産物等の納入後に据付やトレーニングが必要とされる場合はその完了の1年後に、生産物等の納入場所や使用場所において、被供与国の関係者とともに瑕疵検査を実施する。ただし、生産物等の特性等に応じ、上記実施時期に実施することが適当でない場合は、被供与国政府の了解の下、実施時期を変更することができる。

 検査には必要に応じ、契約業者が同行する。なお、検査場所、内容、又は検査結果として知り得た情報中に、被供与国の機密情報が含まれる場合は、調達代理機関、契約業者を含む検査に関係するすべての法人・自然人はその情報について対外厳秘事項として厳重に取り扱い、公表等は厳に行わない。検査中知り得た情報は、検査の遂行及び生産物等の原状回復が適当と判断される場合に講じる必要な措置のためのみに活用されることとする。瑕疵検査の目的を達成した後、被供与国から情報の返却や廃棄を求められた場合は、調達代理機関、契約業者及びその他検査に関係する全ての法人・自然人はこれに従い適切な措置を講じる。また、被供与国から情報の返却や廃棄を求められない場合も、関係者外に情報が漏洩することのないよう、適切な措置を講じる。

 検査完了後、調達代理機関は日本国政府及び被供与国に対し、指定部数の検査結果報告書を提出する。言語は原則として日本語及び英語とし、被供与国が仏語あるいは西語を指定する場合は、当該指定言語で作成する。検査結果報告書には、生産物等の現状、使用場所、納品場所、保管場所、管理体制、今後の使用計画、被供与国責任者の氏名・所属先・肩書・連絡先、検査実施日及び検査時に発覚した問題等につき、漏れなく記載する。また、当該報告書には検査時の写真を掲載する 。

 また、検査時に欠陥や問題等が発見された場合、調達代理機関はその発生原因について調査の上、中立的な観点から、当該欠陥や問題等が被供与国側の過失により発生したものでなく、契約業者による原状回復が適当と判断される場合は、被供与国と協議の上で調達代理機関として被供与国のために原状回復等必要な措置を講じ、その後に上記検査結果報告書を、上記要領にて日本国政府及び被供与国に対し提出する。

 その他、瑕疵検査の実施方法等詳細について、二国間政府で合意している事項があれば、当該合意に沿って検査が実施されるものとする。

12.外部監査

 調達代理機関は、上記4.の業務完了後速やかに、自己の資金にて外部の独立した第三者である監査人による監査を手配し、被供与国政府に代わって管理していた資金の用途について監査を受け、当該監査結果を日本国政府に提出しなければならない。日本国政府は、提出された監査結果のうち、被供与国政府及び調達代理機関の機密情報が含まれない箇所について、公表することができる。


第3部 調達手続

I.総論

1.調達可能生産物等

 調達される生産物等は、E/N及びP/Dに規定されたものの中から選定される。各生産物等の調達数量は被供与国と日本国政府との間で合意された一品目当たりの割合を上限とする。

2.契約業者

 契約業者は、入札図書に規定された条件を満たすものでなければならない。

3.不適正調達

 日本国政府は、契約業者に対し、贈与による事業の下では、その事業に係る調達及び実施に当たり最高水準の倫理を遵守するよう要求する。日本国政府は、当該契約を受注する際に、入札参加者が腐敗又は不正行為に関与したと認めたときは、その入札を拒否するよう被供与国及び調達代理機関に要求することができる。日本国政府は、他の日本国の贈与による若しくは他の日本のODA及びOSAによる事業に係る契約を受注するため、又はこれら事業の実施中に、契約業者が腐敗又は不正行為に関与したと認めたとき、又は、「外務省所管の工事請負契約等に係る指名停止等の措置要領」若しくは「日本国のODA事業において不正行為を行った者等に対する措置要領」を始めとする関連規定等に基づく措置を受けている法人・自然人について、日本国政府が定める一定期間、当該契約業者を調達から排除するよう被供与国及び調達代理機関に対し要求することができる。

 日本国政府機関が購入停止等の措置を行った企業の製品が調達されることが想定される場合、日本国政府は被供与国及び調達代理機関に対し、日本国政府機関の措置の期間内は当該企業の製品を調達対象外とするよう申し入れることができる。

II.調達手続の詳細

1.調達用資金

 調達代理機関は、調達手続の開始に先立ち、調達に必要な資金を政府口座から調達口座に移動するための手続を行わなければならない(移動された調達用資金を前渡金という)。

2.調達方法

(1)一般競争入札

 生産物等に係る調達手続の実施にあたっては、一般競争入札*1*を原則とする。調達手続においては入札参加者の間に不公平がないことを十分に考慮しなければならない。入札参加者は、生産物等の調達を適正に実行できる、入札図書に規定された条件を満たすものでなければならない。

(2)一般競争入札方式以外の調達方法

 次のいずれかの特別の事態によって、一般競争入札方式を採用することが適当ではない、又は、困難である場合、調達代理機関は、指名競争入札*2*、見積もり合わせ*3*又は直接契約*4*により生産物等を調達することができる。

(イ)既存機材のスペアパーツ、付属品又は製造業者が限られている機材等を調達する場合(この場合は、製造者又はその代理店との直接契約が想定される)

(ロ)既存の契約において提供されている生産物等の均一性、継続性等を維持したいとする適切な理由を有している場合(この場合は、製造者又はその代理店との直接契約が想定される)

(ハ)資格条件に合った供給業者の数が限られている場合(この場合は、指名競争入札又は見積もり合わせが想定される)

(ニ)見込まれる契約額が少額であり、相当数の入札予定者が関心を持つことに疑問があり、一般競争入札手続を実施する利点がその実務的煩雑さによって阻害される場合(この場合は、指名競争入札又は見積もり合わせが想定される)

(ホ)実施した入札の一部又は全部が成立せず、再度入札を行う場合(この場合は、指名競争入札又は見積もり合わせが想定される)

(へ)自然災害や人道に係る緊急支援等において緊急に調達する場合(この場合は、指名競争入札又は見積もり合わせが想定される)

(ト)被供与国の安全保障能力強化に資する生産物等のうち、調達内容を公にすることにより重大な支障が生ずる場合など公表しないことが適当と判断される特有の事由がある場合(この場合は、指名競争入札、見積もり合わせ又は直接契約が想定される)ただし、このような調達方法を採用する場合であっても、調達代理機関は、選定手続における透明性を確保するため、本実施要領で定める一般競争入札による調達に係る規定に可能な限り依拠しつつ、手続を行わなければならない。

(3)追加調達

 調達代理機関は、供給者を選定した結果、調達資金に残額(以下「残余金」という。)が発生し、被供与国が追加の調達を希望する場合、次の点を遵守した上で追加調達を行うことができる。なお、残余金について利息が発生した場合、同利息を追加調達に充てることができる。

(イ)同一生産物等の調達

 追加調達する生産物等が当初入札と同一品目であり、かつ調達する数量が限定的である場合や当初入札において競争者がいなかった場合等、新たな競争入札に付す利益がない、又はむしろ不経済であると判断される場合は、当該生産物等を納入する契約業者から、同一の単価で直接契約により調達することができるものとする。ただし、追加調達に使用する残余金が多い場合等、同一業者と直接契約を行うことが不適当、あるいは、その利益が明白ではない場合においては、新たに競争入札等によって契約業者を決定しなければならない。

(ロ)その他の調達

 上記(イ)以外の生産物等を調達する場合には、競争入札等による調達を実施しなければならない。ただし、調達する生産物等はE/N及びP/Dの規定、その他二国間政府間の合意の規定に合致するものでなければならない。

3.入札ロットの規模

 調達する生産物等を技術的、実務的に複数の入札単位(以下「ロット」という。)に分割でき、かつ、それがもっとも広い競争入札につながるとみなされるならば、当該ロットは適切に分割されなければならない。但し、入札の競争性を確保するため、入札に付されることになる個々のロットは、それが入札参加者をひきつけるに十分な大きさでなければならない。

4.入札条件の設定

 調達代理機関は、調達する生産物等について、仕様、価格、製造、輸送、貿易に関する規制等を十分に調査・検討し、被供与国に確認した上で、被供与国との合意に基づく適切な入札及び納入条件を確定しなければならない。また、当該調達で見込まれる価格(見込額)について積算の上、契約者選定手続を行う際の参考としなければならない。

5.入札公示

 入札公示は、入札資格を有しかつ関心のある業者が前広に知る機会を有し、入札に公平に参加する機会が得られるような合理的な方法で行われなければならない。少なくと も、被供与国(あるいは近隣国)又は日本で一般に流通している新聞に公示されるとと もに、調達代理機関のウェブページ上の閲覧しやすい場所に掲載されなくてはならない。公示に含まれるべき主な項目は次のとおりである(なお、新聞公示においては、(1) から(3)に係る必要最低限の情報に留め、(4)、(5)及びその他の詳細な案内につ いては、調達代理機関のウェブページに掲載することができる。)。

(1)案件名

(2)調達する生産物等の概要

(3)調達代理機関名並びにウェブページアドレスを含む連絡先(被供与国の代理人であることを併記)

(4)要求される入札参加者の資格

(5)業者が入札への参加を判断するのに必要とされるその他の関連情報

6.言語

 入札案内、入札図書及び契約書は、英語、仏語又は西語を用いて作成されるものとする。

III.入札図書

1.総論

(1)入札図書には、OSAによって調達される生産物等について、入札参加者が入札を準備するために必要な全ての情報が記載されていなければならない。

(2)調達される生産物等に係る被供与国、調達代理機関及び契約業者の権利と義務は、調達代理機関が作成する入札図書によって規定される。なお、入札図書は、被供与国と協議の上、作成されなければならない。

(3)入札図書には、「日本国政府は、(被供与国名)政府による安全保障能力強化事業に寄与するため、(被供与国名)政府に対し、(署名の日付)に署名されたE/Nにより贈与を実施する。」旨明記されなければならない。

(4)入札図書には、「日本国政府は、契約業者に対し、贈与による事業の下では、その事業に係る調達及び実施に当たり最高水準の倫理を遵守するよう要求する。日本国政府は、当該契約を受注する際に、入札参加者が腐敗又は不正行為に関与したと認めたときは、その入札を拒否するよう被供与国及び調達代理機関に要求することができる。日本国政府は、他の日本国の贈与による若しくは他の日本のODA及びOSAによる事業に係る契約を受注するため、又はこれら事業の実施中に、契約業者が腐敗又は不正行為に関与したと認めたとき、又は、「外務省所管の工事請負契約等に係る指名停止等の措置要領」若しくは「日本国のODA事業において不正行為を行った者等に対する措置要領」を始めとする関連規定等に基づく措置を受けている法人・自然人について、日本国政府が定める一定期間、当該契約業者を調達から排除するよう被供与国政府及び調達代理機関に対し要求することができる。

 日本国政府機関が購入停止等の措置を行った企業の製品が調達されることが想定される場合、日本国政府は被供与国及び調達代理機関に対し、日本国政府機関の措置の期間内は当該企業の製品を調達対象外とするよう申し入れることができる。」と明記されなければならない。

2.入札図書の構成

入札図書には次の書類が含まれていなければならない。

(1)入札要領

(2)納入条件書

(3)入札書類の書式

(4)契約書案

 入札図書を販売する場合、その金額は入札手続の実施に係る実費に見合う妥当なものでなければならない。

3.入札要領の主要事項

(1)入札要領には、入札図書に係る質問回答及び修正、入札の実施方法、入札評価その他の入札実施に係る関連事項を明記しなければならない。

(2)入札要領には納入されるべき生産物等、入札参加者に要求される資格、現地又は近隣国における事務所の有無や当該事務所の同種の生産物等の取扱実績、現地代理店等の有無や当該代理店の同種の生産物等の取扱実績、不適格業者の入札からの排除、調達適格国、引渡しの場所及び期日、保険、輸送、保証金、担保その他関連事項を明記しなければならない。

(3)入札要項には、原則として、入札書(価格札)に記載される価格が、数字及び文字で表示され、不変かつ最終のものであること及び数字及び文字の価格に相違がある場合には、文字による価格が正当とみなされる旨を明記しなければならない。

4.納入条件書

(1)条件の明確性

 納入条件書は、行われるべき業務、調達されるべき生産物等の概要、その技術仕様及び引き渡しの場所等の関連条件、並びに入札の評価及び比較を行う際に考慮される主要な要素又は基準を明瞭かつ詳細に明記したものでなければならない。

 また、納入条件書は、出来る限り競争が確保されるよう作成されなければならない。

(2)技術仕様の汎用性

 納入条件書に含まれる技術仕様書は、調達する生産物等に関連する特性及び要求される性能に基づくものでなければならない。

 商標名、カタログ番号又はこれらに類似する分類に言及することは、スペアパーツ等、特定の生産物等が必要とされる場合を除き避けなければならない。

(3)技術仕様の規格該当性

工業規格に適合する生産物等を調達する場合には、納入条件における技術仕様には、日本工業規格(JIS)若しくは、JIS と同等かそれ以上の品質を保証する国際的に認められた規格(ISO 等)に合致する生産物等も受け入れられる旨が明記されなければならない。

5.入札書類の書式

 入札書類には、入札参加者が提出する1)入札資格書類、2)入札仕様書類、3)価格札の書式を明記しなければならない。

6.契約書案

 契約書案には、被供与国、調達代理機関及び契約業者の権利及び義務等の契約条件及び次の事項を明記しなければならない。

(1)支払い条件

(2)保証期間

(3)契約履行保証

(4)契約義務不履行

(5)不可抗力

(6)紛争の解決

IV.入札実施

1.入札準備期間

 当該国の事業に係る特殊事情及び入札ロットの規模及び複雑さを十分考慮して、入札予定者が入札図書の入手が可能となった日から入札まで入札予定者が入札準備をするのに十分な期間を設けなければならない。

2.入札保証

 調達代理機関は、入札のための保証(銀行保証等)を入札参加者から求めることができる。ただし、入札参加の障害とならない程度の適切な金額としなければならない。また、入札のための入札保証は、入札の結果が明らかとなった後、速やかに入札参加者に返却されなければならない。

3.入札図書に係る質問及び回答

 調達代理機関は、入札の円滑な実施を目的として、次の点を遵守しつつ、入札図書受領者からの入札図書に係る質問の受付け及びそれに対する回答を行う。

(1)質問の受付け及び回答に当たり、それぞれ適切な期間を設定する。

(2)質問に対する回答は、回答を受けた後入札予定者が適切な対応を行うことができるよう入札日までに十分な時間的余裕を保証した上、入札図書を受領した全ての者に対して通知されなければならない。

4.入札図書の訂正・変更

 入札図書に係るいかなる追加情報、補足説明、誤記の訂正及び変更は、入札予定者が適切な措置を取ることができるよう入札日までに十分な時間的余裕を保証した上で、入札図書を受領した全ての者に対して通知されなければならない。

5.入札参加者の事前資格審査

(1)調達代理機関は、入札手続の煩雑化を避けるため、一定の能力を有する入札予定者のみが入札に参加できるよう、入札に先だって事前資格審査を行うことができる。

(2)事前資格審査は、入札予定者が特定の業者契約を確実に履行できる能力を有しているか否かに関してのみ行われなければならない。

(3)事前資格審査においては、次の点を考慮することとする。

 (イ)同種の契約についての経験と実績

 (ロ)資本の額その他の経営の規模及び経営の状況

 (ハ)入札図書で定める現地又は近隣国における事務所の有無や当該事務所の同種の生産物等の取扱実績

6.入札手続

(1)入札の最終受付日時及び場所並びに開札の日時及び場所は入札図書に明記されなければならない。

(2)入札参加者は、入札に必要な書類(入札書類)として次の書類を提出しなければならない。

 (イ)入札資格書類

 (ロ)入札仕様書類

 (ハ)入札書(価格札)

(3)入札書類は、原則として、定められた日時及び場所において、調達代理機関及び入札参加者(又はその代理人)の立会いのもとで開札されなければならない。ただし、入札参加者の立会いは任意とし、開札に立ち会わなかった入札参加者を競争において不利に扱うことがあってはならない。なお、公平性、透明性並びにインターネット上でのセキュリティが確保される限りにおいては、オンライン方式にて開札を行うことも妨げない。

(4)入札指定時刻後に提出された入札書類は有効な入札とは認められない。

(5)開札に当たっては、各入札参加者の名前及びそれぞれの入札額が記録され、入札参加者に共有されなければならない。

7.入札の補足説明と変更

(1)いかなる入札参加者についても、入札の後に入札内容の変更を許されるべきではない。

(2)調達代理機関は、入札参加者に対して、入札書類に関する補足説明を求めることができるが、入札の実質的内容の変更を求めてはならない。

8.手続の非公開

 被供与国及び調達代理機関は、公開の場での開札後、落札が通知されるまで、入札の審査、補足説明、評価及び落札者の推薦に関するいかなる情報も入札参加者及び入札手続に公式に関与していないその他の者に対して公開してはならない。

9.入札書類の審査

 調達代理機関は入札された書類に対して、次の項目を審査しなければならない。

(1)計算上の重大な誤り

(2)要求されている書類の添付

(3)要求されている証明書の添付

(4)要求されている保証の添付

(5)書類に正しい署名の添付

(6)入札書類が入札図書の規定に合致していること

 入札書類の審査において、不一致若しくは留保事項が含まれている場合又はその他の点で入札図書に規定されている条件・仕様に実質的に合致していない場合、その入札は有効な入札とは認められず、排除される。

 入札書類の審査の後、これらの条件を満たした各入札の評価と比較のために、原則として最低価格提示者の入札から順に入札書類の技術的検討がなされるものとする。

10.入札評価及び落札者の決定方法

(1)入札評価及び契約者の決定は、入札図書に規定された条件に基づき行われなければならない。

(2)入札図書の技術仕様に実質的に合致しており、かつ入札図書のすべての条件を満たしている入札が有効な入札とされ、それらのうち、原則として、最低価格を提示した入札参加者が、落札者とされなければならない。ただし、調達する生産物等の性質に鑑み、価格競争のみによって落札者を決定することが適当ではないと判断される場合に限り、納期、仕様、アフターセールスサービス体制等、価格以外の観点に関する評価を点数化し、価格評価結果と併せて総合的に入札評価を行うことができる。この場合も、予め入札評価の方法及び基準が入札図書に明記されていることを前提とする。

(3)有効な入札であって、調達代理機関で設定した見込額等に鑑み満足のいく入札を得られなかった場合、調達代理機関は、最低価格等、その段階で最良の条件を提示している入札参加者(又は、当該交渉が満足する結果に至らなかった際は次点者)と交渉して、直接契約により契約を締結することができる。

(4)いくつかのロットに分割されている入札の場合には、入札評価は、それぞれのロット毎に行われなければならない。

11.入札評価報告書

 調達代理機関は、落札又は失格の理由を明らかにした詳細な入札評価報告書を作成し、落札者との契約締結前に被供与国に提出し、確認を得なければならない。

12.落札及び不落札通知

(1)調達代理機関は、入札図書で定められた札の有効期間内に、落札及び不落札の通知を全入札参加者に対して行わなければならない。有効期間内に落札の通知を行うことができない場合には、全入札参加者に対して、期間の延長につき遅延無く通知しなければならない。

(2)いかなる入札参加者も、落札の条件として、入札図書に記載されていない責任又は義務を負うことを要求されない。

13.全入札の拒否及び再入札

(1)調達代理機関は、単に入札金額を下げることを目的として、全入札を拒否し、再入札を行ってはならない。ただし、次に掲げる場合には、全ての入札を拒否することが認められる。

 (イ)入札参加者との交渉の結果によっても、最低入札価格が見込額を大幅に上回った場合等、手続を続けることが根本的に困難である場合

 (ロ)全ての入札が入札審査及び入札評価の結果、入札図書に適合していない場合

 (ハ)競争性が阻害されていることが明白である場合 (ニ)入札手続の過程において、当該入札手続の継続によっては支援の目的が達せられない相当の根拠が判明した場合

(2)万一、全入札拒否を行い、再入札を行う場合、調達代理機関はその事由を検討し、当初の入札図書に記載した仕様とその他の条件の修正及び調達方法について検討しなければならない。

V. 契約締結

1.総論

調達代理機関は、E/N及びP/Dの規定に基づき、被供与国による事業のために必要となる生産物等を調達するため、入札又はその他の方法によって選ばれた業者と契約を結ぶ。複数のロットを同一の業者と契約する場合には、一つの契約にすることができる。

2.E/Nについての言及

契約書には、「日本国政府は、(被供与国名)政府に対し、(署名の日付)に署名されたE/NによりOSAを実施する。」旨明記しなければならない。

3.生産物等の内容

契約書には、調達される生産物等の内容を明確に規定しなければならない。政府間で合意されていない生産物等の調達を内容とする契約書は、締結できない。

4.契約金額

各契約金額の総額は、原則として、E/Nに規定される贈与額及び発生利子の総額から調達代理業務に係る手数料を差し引いた額を超えてはならない。

各契約金額は、正確かつ誤りなく文字及び数字により併記されなければならない。文字及び数字の価格に齟齬がある場合は、文字による価格が正当とみなされる。

5.支払条件

契約書には支払条件が明記されていなければならない。

6.保証期間

納入後に製造者等による保証の提供のある生産物等を調達する場合には、契約書には、保証期間等の保証条件が明記されていなければならない。

7.契約履行保証

調達代理機関は、契約業者に対して、契約履行保証(銀行保証等)の提出を要求することができる。この場合、履行保証は、妥当な金額でなければならず、生産物等の引渡し及び全ての契約義務が完了した後、可及的速やかに返却されなければならない。

8.契約債務不履行

契約書には、契約業者による債務履行が契約の履行期限より遅延した場合、若しくはその他の事由(倒産等を含む)により不履行となった場合において、調達代理機関が契約業者に対して、賠償支払の要求、契約履行保証の没収、若しくは契約解除等を要求できることが明記されなければならない。

9.不可抗力

契約書には、契約に基づく契約業者の義務の不履行は、係る不履行が契約条件で定められた不可抗力の結果である場合には債務不履行とはみなされない旨を述べた条項が含まれていなければならない。

10.紛争の解決

契約書には、紛争の解決に関する規定が含まれていなければならない。

11.各契約業者の責任と義務

契約書には、被供与国、調達代理機関及び契約業者の責任と義務を明記されなければならない。

12.支払方法

調達代理機関は、契約書の支払条件に基づき、契約業者からの必要書類の提出を受け、前渡金から調達代理機関が同契約業者に対して支払を行う。

13.契約の発効

契約は、調達代理機関と契約業者との間で署名が交換された後、発効する。

14.契約の修正

契約の修正が必要な場合、事前に被供与国の了解を得た上で、調達代理機関は契約業者と修正のための契約を締結する。修正契約には、修正される条項を除いた全ての条項は変わらない旨が明記されなければならない。

15.契約結果の公表

調達代理機関は、調達契約の内容(調達品目、契約業者名、契約金額及び契約日)を 各調達代理機関のウェブページ上において、各契約後速やかに公表しなければならない。ただし、被供与国の安全保障能力強化に資する生産物等のうち、調達内容について広く 公表しないことが適当と判断される特有の事由がある場合は、事前に日本国政府及び被 供与国の了解を得た上で、公表しないこと、又は、公表内容を限定することができる。

(了)


{*1* 入札に係る事前公告を行った上で、競争参加希望者のうち一定の資格を有する不特定多数の者を入札に参加させ、最も有利な条件を提示した者との間で契約を行う方式を指す。}

{*2* 一定の資格要件に基づき複数の供給者を指名して入札を行う方式を指す。}

{*3* 競争性を確保するために複数の供給者から得た見積もりを比較した上で契約者を選定する方式を指す。}

{*4* 特定の供給者との間で直接契約を行う方式を指す。}