データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウクライナ・コンパクト

[場所] ワシントンD.C.
[年月日] 2024年7月11日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

我々、米国、ベルギー、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スウェーデン及び英国の首脳は、欧州理事会議長、欧州委員会委員長及びウクライナ大統領ともに、

 2023年のビリニュス北大西洋条約機構(NATO)サミットの際に発出されたウクライナ支援に関する共同宣言の枠組みの下で、22か国及び欧州連合(EU)によって、ウクライナとの間で作成された安全保障上の合意と取決めを称賛し、近い将来にウクライナとの間でそれぞれの安全保障上の合意と取決めを作成するその他の全共同宣言参加国を歓迎し、

 ウクライナの安全は欧州大西洋及びそれを超えた地域の安全にとって不可分であり、ロシアの侵略に打ち勝つまで、我々がウクライナを支援する意図を有することを確認し、

 自身を防衛し将来の侵略を抑止できる、自由で、独立し、民主的で、主権を有するウクライナへの我々の揺るぎないコミットメントを強調し、また、自身の安全保障上の取決め並びに政治、社会、経済及び文化システムを選択するウクライナの主権的権利を再確認し、

 ロシアの違法でいわれのないウクライナ侵攻は、国際の平和及び安全への脅威であり、国連憲章を含む国際法のあからさまな侵害であり、また、我々の安全保障上の利益と相容れないものであることを強調し、

 欧州大西洋への願望を前進させるために必要とされる、民主主義、法の支配並びに人権及び報道の自由の尊重を強化する改革へのウクライナのコミットメントを認識し、主権及び領土一体性といった国連憲章の原則の尊重を含む、我々の共通の価値及び利益を強調する。

本日、我々は、ウクライナ支援に関する共同宣言及びそれぞれの参加国(以下、「コンパクト参加国」という。)が、ウクライナとの間で作成した安全保障上の合意及び取決めに記載されているとおり、ウクライナの包括的な安全保障上のニーズを満たすための我々の集団的な取組を調整し、加速させることを視野に、ウクライナ・コンパクトを発表する。このコンパクトを通じて、我々は、ウクライナが成功裏に自身の今日の自由、独立、主権及び領土一体性を守り、将来の侵略行為を抑止することへの、我々の不変の意図とコミットメントを表明する。これらの重要目標を達成するため、我々のそれぞれの二国間の安全保障上の合意及び取決めに記載されているとおり、また、全ての適用可能な法及びそれぞれの法制度と整合的な形で、コンパクト参加国は、以下を誓約する:

 (1)二国間で、並びにウクライナ防衛コンタクトグループ(UDCG)及びその能力コアリション、対ウクライナ安全保障支援及び訓練組織(NSATU)、及びウクライナの支援におけるEUの軍事支援ミッション(EUMANウクライナ)を含む既存の多国間メカニズムを通じて取り組みつつ、安全保障上の支援及び訓練、近代的な軍事装備並びに防衛産業及び必要な経済的支援の継続した提供を通じたものを含め、ウクライナの喫緊の防衛及び安全保障上のニーズを支援する。

 (2)2030年代に向けた部隊の強化の継続を視野に、EUMANウクライナとの連携の下、2027年までの将来の軍の発展に関する各能力コアリション-それぞれのコンパクト参加国-の指導者によって準備されるロードマップを検討し承認するための、UDCGを通じた、6か月以内の防衛大臣級での会合の開催を含め、信頼性の高い防衛及び抑止能力を維持するウクライナの将来の軍を構築するための取組を加速する。

 (3)現在の戦闘行為の終了後におけるウクライナに対する将来のロシアによる武力攻撃の際に、迅速かつ持続的な安全保障上の支援の提供並びにロシアへの経済的及びその他のコストを課すことを含め、国連憲章第51条にうたう自衛権を行使するウクライナを支援することにおける適切な次の措置を決定するために、最も上級のレベルで迅速かつ集合的に会合を開催する。

我々は、ウクライナを支援する多国間の安全保障アーキテクチャーを活用することにより、それぞれの国内法並びに安全保障及び防衛政策に整合的な形で、揺るぎない決意を持って、これらのコミットメントを堅持する意図を有する。コンパクト参加国は、ウクライナがEU、NATO及びより広い欧州大西洋コミュニティにおける将来のメンバーシップへの道を追求する中で、これらのコミットメントを前進させることを計画する。自由で、民主的で、独立し主権を有するウクライナを確保するためのこの取組に貢献したいと願うその他の国は、ウクライナとの間の二国間の安全保障上の合意又は取決めの作成後、この コンパクトに参加することができる。

2024年7月11日、ワシントンにおいて、以下の首脳によって支持された:

米国
ベルギー
カナダ
チェコ
デンマーク
エストニア
EU
フィンランド
フランス
ドイツ
アイスランド
イタリア
日本
ラトビア
リトアニア
ルクセンブルク
オランダ
ノルウェー
ポーランド
ポルトガル
ルーマニア
スロベニア
スペイン
スウェーデン
ウクライナ
英国