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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第12回世界海洋サミット閉会式における宮路外務副大臣ご挨拶(令和7年3月13日)

[場所] 
[年月日] 2025年3月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 外務副大臣の宮路拓馬です。外務省を代表して、ご挨拶申し上げます。世界海洋サミットが大いに成果をあげて閉会を迎えようとしていることにお祝い申し上げます。

 日本は世界有数の海洋国家であり、海洋について、科学に基づく知見や技術を持っています。日本はこれらを他国と共有して、海洋環境保全と、持続可能な海洋の利用に役立てるとともに、国際協調と国際協力に基づき、日本と国際社会の繁栄と安定を築くことを目指しています。海洋分野についても、外交という手段を通じてこれらを実現すべく、日々取り組んでおります。

 日本の国際的な取組の具体例として、以下三つの取組を御紹介します。

 一点目は、海洋プラスチックごみ対策です。先ほど浅尾環境大臣からも御発言のあった、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現のため、日本は「マリーン・イニシアティブ」を推進しています。これは、島嶼国を含む開発途上国の廃棄物管理関連人材の育成支援を行うもので、これまでに3万人以上がこの支援を受けて育成されました。

 プラスチック汚染対策のための条約の策定に向けた交渉においては、日本は、プラスチック汚染対策のためには、環境に配慮した製品設計、リデュース・リユース・リサイクルの促進、適正な廃棄物管理を含め、プラスチックのライフサイクル全体での取組が重要と考えています。この考えに基づき、これまでに5回開催された政府間交渉委員会の議論に積極的に参加してきました。今年中に予定される再開会合において交渉を妥結させるべく、引き続き取り組んでいく所存です。

 二点目は、いわゆるIUU漁業、すなわち違法・無報告・無規制漁業対策です。日本は責任ある漁業国として、IUU漁船の入港拒否等の措置を定めた違法漁業防止寄港国措置協定、いわゆるPSM協定の国内実施と、未締結国の加入促進に努めています。また、WTO漁業補助金協定を受諾し、その早期発効に向け関係国と協力しています。そして、G7、G20等の国際フォーラムでIUU漁業対策の議論をリードするなど、積極的に取り組んでいます。

 三点目として、ブルーカーボンについて御紹介します。ブルーカーボンは、海洋環境保全と気候変動対策のシナジーを進める取組として注目されています。先ほど浅尾環境大臣から、我が国がブルーカーボンの取組を進めていくことについて御紹介がありました。国際社会においても、我が国は、ブルーカーボン生態系の一部による二酸化炭素吸収量を算定し、温室効果ガスインベントリに反映させて、国連気候変動枠組条約事務局に提出しています。

 これらの三つの取組を含め、海洋環境保全と、持続可能な海洋の利用を進める国際的な取組は、世界的に高い関心を集め、各種の外交行事で議論されています。このワールド・「オーシャン・「サミットに続き、来月韓国ではアワ・オーシャン会議及びAPEC海洋担当閣僚会合が、また6月にフランスで第3回国連海洋会議が予定されています。また日本は、「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」のメンバーです。このパネルは、有志の海洋国家で構成され、健全な海洋環境の保全や持続可能な海洋経済の構築等に向けた国際的な議論を主導する会議です。日本はこのパネルの議論に、積極的に参加しています。このパネルの高官級会合が今週東京で開催されたばかりであり、本年の首脳級会合に向けた取組等につき意見交換を行いました。

 海洋環境保全と、持続可能な海洋の利用に関する様々な課題は、本日のサミットを始め、こうした多くの場で議論され、世界の多大な関心を呼んでいます。それぞれの会議における議論が、他の会議での議論との間で相乗的な効果をもたらして、取組の一層の強化につながっていくことが重要です。このためにも、日本として、海洋分野における外交活動を、今後も積極的に行っていく所存です。皆様の二日間の熱のこもった議論の成果を、外務省としても、海洋分野の外交に反映させていきたいと申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。

 ありがとうございました。

(了)