データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日比賠償協定・第一条に関する交換公文

[場所] マニラ
[年月日] 1956年5月9日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),746−747頁.
[備考] 
[全文]

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名されたフィリピン共和国と日本国との間の賠償協定第一条の指定に言及し、両国政府の次の了解を確認する光栄を有します。

  同条に定める額すなわち現在において千九百八十億円(一九八、○○○、○○○、○○○円)に換算される五億五千万合衆国ドル(五五○、○○○、○○○ドル)に等しい円の額のうち、現在において百八十億円(一八、○○○、○○○、○○○円)に換算される五千万合衆国ドル(五○、○○○、○○○ドル)に等しい円の額は、次のとおり割り当てられる。

(1)同協定に基いて供与される生産物以外の日本国の生産物で通常フィリピンに積み出されるものの加工に充てられる日本人の役務に対し、現在において七十二億円(七、二○○、○○○、○○○円)に換算される二千万合衆国ドル(二○、○○○、○○○ドル)に等しい円の額。その役務は、同協定の効力発生の後五年の間、各年度において、現在において十四億四千万円(一、四四○、○○○、○○○円)に換算される四百万合衆国ドル(四、○○○、○○○ドル)に等しい円の額まで供与されるものとする。この取極の追加の細目でフィリピン共和国政府が受諾することができるものは、同協定第十条の合同委員会の勧告に基いて両政府が定めるものとする。

(2)前項に定める役務以外の役務で賠償契約に基いて供与されるものに対し、現在において百八億円(一○、八○○、○○○、○○○円)に換算される三千万合衆国ドル(三○、○○○、○○○ドル)に等しい円の額。ただし、この額は、フィリピン共和国政府が賠償として供与される資本財の十分なかつ効果的な利用のため、その増加が必要であることを将来認めたときは、同協定第一条に定める賠償総額の範囲内で増加することができる。

 本全権委員は、前記のことが貴国政府の了解でもあるときは、この書簡及びこれを確認される閣下の返簡を、同協定の不可分の一部をなす両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十六年五月九日にマニラで

フィリピン共和国全権委員

フェリノ・ネリ

日本国全権委員 高碕達之助閣下

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 (フィリピン側公文省略)

 本全権委員は、閣下の書簡に述べられた了解が本国政府の了解でもあることを、本国政府に代つて確認する光栄を有します。したがつて、閣下の書簡及びこの返簡は、同協定の不可分の一部をなす両政府間の合意を構成するものとみなされます。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十六年五月九日にマニラで

日本国全権委員

高碕達之助

フィリピン共和国全権委員

フェリノ・ネリ閣下