データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本とインドネシアとの間の平和条約・経済開発借款に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の交換公文

[場所] ジャカルタ
[年月日] 1958年1月20日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),847‐848頁.条約集,36‐10.
[備考] 
[全文]

 日本国全権委員からインドネシア共和国全権委員にあてた書簡

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、インドネシア共和国の経済開発の促進に資するため日本国の国民(民間商社を含む。以下同じ。)がインドネシア共和国の政府及び国民に提供する商業上の借款及び投資に関して、両政府の代表者が到達した了解を明らかにする次の取極を確認する光栄を有します。

1 現在において一千四百四十億円(一四四、〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される四億アメリカ合衆国ドル(四〇〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額までの商業上の投資、長期貸付又は類似のクレディット(以下「借款」という。)が、日本国の国民により、締結されることがある適当な契約に基いて、インドネシア共和国の政府又は国民に対し行われるものとする。

2 借款は、商業上の基礎により、かつ、両国の関係法令に従つて行われるものとする。

 インドネシア共和国政府は、借款の契約をすることができる投資部門及び諸産業を決定し、並びにそのような借款を希望するインドネシアの民間商社又は国民の適格性を定める基準を決定する権利を留保する。

3 両政府は、借款の提供を、関係法令の範囲内で容易にし、かつ、促進するものとする。借款について日本国政府が行うことを必要とする容易化及び促進の措置は、日本国国民とインドネシア共和国政府又は同国国民との間の契約による借款であつて、日本輸出入銀行のような日本国の金融機関から、通常の商業上の基礎により、当該時においてこれらの金融機関が振り向けることができるその資金の範囲内において、融資を受けているものにつき、現に行われている措置と同様とする。

 両政府は、この取極の円滑な運用のため、借款のための契約の締結及び履行の状況を随時共同で検討するものとする。

4 借款の条件は、当該契約の当事者間で合意されるものとする。

 借款は、主として、機械及び設備並びにこれらに附随する役務の形で行われるものとする。

5 借款のための契約から又はこれに関連して生ずる紛争は、当該契約の当事者間の合意に基く仲裁によつて、又はその紛争について管轄権を有する国の通常の訴訟手続に従つて解決されるものとする。

6 この取極は、二十年間効力を有する。ただし、この取極の効力発生の日から十九年が経過した後、借款がその二十年の期間の末までに1に定める金額に達しないと認められたときは、両政府は、いずれか一方の政府の要請により、この取極の有効期間を延長するため協議を行うことができる。

 本全権委員は、この書簡及びこの書簡に述べた取極の内容を確認される閣下の返簡を、日本国とインドネシア共和国との間の平和条約の批准書の交換の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十八年一月二十日にジャカルタで

日本国全権委員 藤山愛一郎

インドネシア共和国全権委員

スバンドリオ閣下

 インドネシア共和国全権委員から日本国全権委員にあてた書簡

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側公文省略)

 本全権委員は、閣下の書簡に述べられた取極の内容を確認し、かつ、閣下の書簡及びこの返簡を、インドネシア共和国と日本国との間の平和条約の批准書の交換の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

 千九百五十八年一月二十日にジャカルタで

インドネシア共和国全権委員

スバンドリオ

日本国全権委員 藤山愛一郎閣下