[文書名] 日本国とインドネシア共和国との間の友好通商条約
日本国政府及びインドネシア共和国政府は、
両国間に存在する友好的な関係及び協力に留意し、
両国民の間に最も緊密な友好関係を確立するためさらに協力的な努力を強化し、かつ、発展させることを希望し、並びに
相互に有利な基礎の上に両国間の貿易及び通商を容易にし、及び発展させることを希望して、
友好通商条約を締結することに決定し、そのため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。
日本国政府
外務大臣 小坂善太郎
インドネシア共和国政府
外務大臣 ドクトル スバンドリオ
これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。
第一条
いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域に当該他方の締約国の法令に従って入ることを許され、かつ、当該他方の締約国の領域への入国、同領域内における滞在、旅行および居住並びに同領域からの出国に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
第二条
1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判を受ける権利、財産権、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
2 1の規定にかかわらず、各締約国は、相互主義に基づき、又は二重課税の回避若しくは歳入の相互的保護のための協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。
第三条
1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、身体の保護及び保障に関して、当該他方の締約国の国民及びいかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
2(1) いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、すべての強制軍事服役及びその代りに課されるすべての課徴金を免除される。
(2) いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、すべての強制公債、軍事取立金、軍用徴発又は強制宿営に関して、当該他方の締約国の国民及び会社並びにいかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
第四条
いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他方の締約国の領域内において、公共のためを除くほか、収用し、又は使用してはならず、また、当該他方の締約国の法令に従い、正当な補償を行なうことなく収用し、又は使用してはならない。この条で取り扱うすべての事項については、いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
第五条
1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
2 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。
3 1及び2の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、その対外財政状態及び国際収支を擁護するため必要な措置を執ることができる。
第六条
すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。
第七条
両締約国は、各締約国の独自の経済的特徴及び経済開発計画を考慮して、両締約国間における相互の利益のための貿易を発展させ、及び経済関係を強化すること並びに、特にそれぞれの領域内における経済の発展及び生活水準の向上に資するため、科学及び技術に関する知識の交換及び利用を促進することを目的として、協力することを約束する。
第八条
この条約のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はそれらを修正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有するか、又は有することがある権利及び義務については、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。
第九条
この条約の規定は、いずれか一方の締約国が、
(a) 国内の公共の安全若しくは国防又は国際の平和及び安全の維持
(b) 核分裂性物質又はその生産原料である物質
(c) 武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び資材の取引
(d) 公衆道徳の保護
(e) 公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護
(f) 金または銀の貿易
(g) 美術的、歴史的又は考古学的価値のある国宝の保護並びに
(h) 多数国間の商品協定に基づく義務の履行
に関する措置を採用し、又は実施することを妨げるものと解してはならない。
第十条
各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施から又はそれに関連して生ずる問題に関して行なう申入れに対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。
第十一条
1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにジャカルタで交換されるものとする。
2 この条約は、批准書の交換の日の後一箇月で効力を生ずる。この条約は、三年間効力を有し、その後は、3に定めるところにより終了するまで効力を存続する。
3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し六箇月前に文書による予告を与えることによって、最初の三年の期間の終りに又はその後いつでもこの条約を終了させることができる。
第十二条
この条約は、日本語、インドネシア語及び英語によるものとする。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。
以上の証拠として、各全権委員は、この条約に署名調印した。
千九百六十一年七月一日に東京で、本書二通を作成した。
日本国のために
小坂善太郎
インドネシア共和国のために
スバンドリオ