[文書名] 特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定に関する合意された議事録
日本国政府及びタイ政府の代表者は、本日署名された特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定(以下「協定」という。)の交渉において到達した次の了解をここに記録する。
第一条に関し
1 タイ政府は、協定第一条の規定に従い支払を受領するため、在日本国タイ大使館を通じて毎年五月十五日までに当該年のための書面による支払の請求を日本国外務省に提出する。
2 日本国外務省は、書面による支払の請求を受領したときは、当該年の五月末日までに支払を行なう。
第二条に関し
3 協定第二条1の適用上「その財務代理人」とは、タイ銀行をいう。
4 協定第二条1に関連し、日本国政府及びタイ政府は、協定に基づく生産物及び役務の調達が円滑かつ能率的に行なわれることを確保するために指定銀行が相互に緊密な協力を維持するようにする。
5 タイ政府は、日本国政府が要請するときはいつでも、指定銀行が協定第二条1にいう特別勘定への払込み及び同勘定からの支払並びに同勘定の残高を日本国政府に報告を行なうようにする。
6 特別勘定から支払われた金額の全部又は一部が日本国の契約者により協定第四条1にいうタイ政府に払いもどされた場合には、その払いもどされた金額は、特別勘定に返納される。
7 協定第二条1に掲げる銀行取極においてタイ政府と指定銀行とが合意するときは、当該指定銀行は、タイ政府又はその財務代理人としてのタイ銀行に対し特別勘定について利子を支払うことができる。この利子は、当該指定銀行の別の勘定に置かれる。
特別勘定は、当座預金、普通預金及び(又は)通知預金として開設される。
第三条に関し
8 協定第三条1にいう「日本国の生産物」とは、外国為替上の特定の追加の負担を日本国に課することなく日本国において生産されたものをいう。
外国為替上の特定の追加の負担が日本国に課されるとは、たとえば、タイ政府が日本国の契約者に外国製エンジンを取りつけさせる注文を附して、機械を調達するに際し同政府がその契約者にこのエンジンを現物で供与しないためその契約者がこれを海外から購入する必要が生ずるような場合をいう。
9 協定第三条1の適用上「設備」は、武器及び弾薬を含まないと解釈される。
10 協定第三条1及び第四条1にいう「日本国民の支配する日本国の法人」とは、その法人が日本国の法律に基づき設立されたもので、その株式又は持分の過半を日本国民が所有し、又は支配する法人をいう。
11 協定第三条1及び第四条1の適用上「タイ政府」は、次に掲げる者を含む。
(1)政府各省庁
(2)地方公共団体
(3)国家企業
(4)株式又は持分の過半を政府各省庁、地方公共団体及び(又は)国家企業が所有する有限責任の会社
(5)前記(1)、(2)、(3)又は(4)に掲げる者がその代理人として授権した者
政府各省庁、地方公共団体、国家企業又は(4)にいう有限責任の会社が自己の名義で締結した契約を協定第四条2の規定に従い確認を受けるため日本国政府に提出するときは、その契約には、タイ政府の財務代理人としてのタイ銀行が発給した書類で、これらの者の資格及び当該政府各省庁、地方公共団体、国家企業又は有限責任の会社がそれらの調達に特別勘定を使用することを正当に授権されている旨を証明するものを添附するものとする。(5)にいう者が締結した契約には、前記の書類のほか、その者が当該政府各省庁、地方公共団体、国家企業又は有限責任の会社を代理することを正当に授権されている旨を証明する書類を添附するものとする。
前記に定義するタイ政府は、タイの国民及び法人のために協定に基づく調達契約を締結することができると了解される。
12 協定第三条2において「商業の取引」とは、その取引に係る物品が日本国外に積み出されない商業上の取引をいい、また、「貿易の取引」とは、外国貿易上の取引をいう。
第四条に関し
13 協定第四条1に関連し、毎年すみやかに協定に定める調達契約を締結し、実施し、及びこのための特別勘定からの支払を行ない、毎年支払われる金額ができる限り短期間に費消され、特別勘定の残高が最小限度にとどまることとなるようにすることがタイ政府の意向である。
14 指定銀行は、協定第四条2の規定に基づき契約の確認を受けるため、書面による確認の請求を添附してその契約を日本国外務省に提出する。
提出すべき契約書の数は、署名したもの二通及び署名のないもので認証されたもの二通とする。契約がタイ語で作成されている場合は、署名した契約書一通及び認証された英語の訳文四通を提出する。
日本国政府は、確認を了したときは、署名した当該契約書一通又は認証された英語の訳文一通に確認の印を押してこれを当該指定銀行に返送する。
日本国政府は、確認の請求を受けたときは、できる限り短期間内に確認を行なう。この期間は、通常の場合、二週間をこえないものと期待される。
これに関連し、日本国政府は、協定に基づく生産物及び役務のタイ政府による調達がすみやかに行なわれることを確保するために簡素な手続をとる。
千九百六十二年一月三十一日にバンコックで
A・O・
T・K・