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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 南越賠償終了についての外務省情文局発表

[場所] 
[年月日] 1964年1月12日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),541頁.外務省公表集,昭和40年上半期, 76−8頁.
[備考] 
[全文]

  ヴィエトナム賠償の終了について

外務省情報文化局発表

一、ヴィエトナムに対する賠償は日本とヴィエトナム共和国との賠償協定に基づき、昭和三十五年一月十二日から実施されてきたが、一月十一日に五年間の供与期間を終了し、総額百四十億四千万円(三千九百万ドル)の供与が完了した。

二、賠償協定の支払予定額は、最初の三年間にそれぞれ三十六億円(一千万ドル)、後の二年間にそれぞれ十六億二千万円(四百五十万ドル)となつていたが、実際の賠償年度別支払額は次のとおりであつた。

  第一年度 三億一、二二六万円

       (   八七万ドル)

  第二年度 四四億七、五二四万円

       (一、二四三万ドル)

  第三年度 四八億六、〇〇六万円

       (一、三五〇万ドル)

  第四年度 二四億一、五二九万円

       (  六七〇万ドル)

  第五年度 一九億七、七一四万円

       (  五五〇万ドル)

三、賠償資金の大部分は、サイゴンの東北約二百五十キロの地点にあるダニム水力発電所の建設に当てられた。この発電所は昨年一月十五日に竣工式を挙げ、現在八万キロワットの出力で稼動している。この発電所の建設工事に当てられた資金は、現地通貨調達のための消費財の供与をふくめ、百二十六億円強(約三千五百万ドル)にのぼり、賠償総額の約九十パーセントを占めている。発電所建設の所要経費の内訳は次のとおりである。

 建設土木工事 四九億八、八〇〇万円

 発電所建設工事 一億四、三〇〇万円

 主要発電機器 一五億六、七〇〇万円

 導水鉄管 八億九、九〇〇万円

 水門 一億六、三〇〇万円

 サイゴン変電所用機器 四億〇、八〇〇万円

 調査、設計、監督役務 八億三、七〇〇万円

 その他機器、資材 九億四、四〇〇万円

 現地通貨調達のための消費物資等(家庭電気器具、ラジオ受信器、プラスチック製品、染料、紙製品、ミシン等) 二七億円

    合計 一二六億四、九〇〇万円

四、ダニム発電所以外の計画に当てられた賠償資金は、全体の約十パーセントに過ぎないが、主なものは次のとおりである。

  ボール紙工場 三億四、五〇〇万円

  沈船引揚作業 二億五、二〇〇万円

  ディーゼルエンジン 一億三、四〇〇万円

  合板工場 一億一、〇〇〇万円

  鍛鉄工場 七、四〇〇万円

  ファンラン渫漑{前2文字ママとルビ}工事調査設計、監督 七、四〇〇万円

 このほか、賠償受入れのための機関として東京に設置されたヴィエトナム賠償使節団の経費として、五年間に二億六百万円が支払われている。