[文書名] 東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ
一 東南アジア開発閣僚会議は、一九六六年四月六日及び七日の両日、東京において開催された。
二 会議には、ラオス王国からスヴァナ・プーマ総理大臣兼外務大臣及びインペン・スルヤタイ計画大臣、マレイシアからアブドゥル・ラザツック副総理兼国家開発大臣、フィリピン共和国からフィレモン・ロドリゲス経済審議庁長官、シンガポール共和国からリム・キム・サン財務大臣、タイ王国からポット・サラシン国家開発大臣、ヴィエトナム共和国からアウ・チューン・タン経済財務大臣、日本国から椎名悦三郎外務大臣、福田赳夫大蔵大臣、中村梅吉文部大臣、鈴木善幸厚生大臣、坂田英一農林大臣、三木武夫通商産業大臣、中村寅太運輸大臣、郡祐一郵政大臣、小平久雄労働大臣、瀬戸山三男建設大臣、藤山愛一郎経済企画庁長官、上原正吉科学技術庁長官及び橋本登美三郎内閣官房長官が出席した。
三 会議には、また、インドネシア共和国からルクミト・ヘンドラニングラット駐日大使、カンボディア王国からイアット・ブンタン駐日臨時代理大使が出席した。
四 佐藤総理大臣は、歓迎の挨拶において、アジアに平和と繁栄とを確立するためには、アジア諸国が、平等、相互尊重及び連帯の精神に基づいて、協力することが必要であり、このような協力の基礎の上に経済開発を進めることが望ましいことを強調した。同総理は、さらに、日本国が、地理的、歴史的に密接な関係にある東南アジア諸国の開発のため積極的に協力する決意を有する旨を述べた。これに関連し、同総理は、この地域に対する日本国の援助を大幅に拡充することを考慮している旨を述べた。
五 会議は、終始友好的で打ちとけた雰囲気の下で進められ、東南アジアの経済開発に関連する諸問題について、活発な討議が行なわれた。会議は、東南アジア諸国が経済開発に関して協力しうる分野の少なくないこと及びこれらの諸国は相互の利益のために緊密で友好的な協力関係を維持すべきであることを一般的に再確認した。
六 会議は、経済開発において農業がはたすべき役割が極めて重要であること、特に、現在のアジアにおける人口増加の趨勢にかんがみ食糧生産の増大が緊急に必要であることを強調し、農業生産性の向上及び一次産品市場の改善が望ましいことを認めた。会議は、農業開発問題の検討をさらに進めるため、しかるべき時期における農業開発会議の開催についてさらに検討することを合意し、また、そのような会議を開催するために必要な準備につき具体的に検討することに合意した。また、東南アジアにおける食糧事情を改善するための一助として、水産業の振興に関する研究の必要性が指摘され、さらに、日本国の協力の下に海洋漁業研究開発センターを東南アジアに設置することが提案された。
七 経済協力の具体的プロジェクトを検討するために、東南アジア経済促進開発センターを設立することが提案された。この問題に関する詳細な提案は参加諸国の検討のために追って提示される。
八 会議は、工業化の促進について、各国の経済の実情に即した計画に基づいた工業化を進める必要があることを認め、また、農村電化及び地下資源の開発に努力する必要があることを認めた。また、工業化を進めるに当たっては、民間のイニシアティヴを効果的に利用することが必要であり、このため、各国における投資環境の改善が必要であることが指摘された。また、各国の単純加工品に対する市場が限られていることが重大な障害となっていることが示唆され、域内及び域外の先進国は、資本及び技術が利用されるよう援助するとともに、より広範にその市場を提供すべきであることが認められた。
九 会議は、域内の経済開発を阻んでいる疾病その他の要因を除去するために一層の努力をする必要があることを再確認し、開発の基盤である教育及び職業技術訓練の振興のために地域的協力が重要であることを認めた。
一〇 会議は、運輸通信の施設の拡充整備が必要であることを認め、実行可能な場合には現存の港湾施設及び内陸運輸施設の改善に重点をおいた地域開発計画の作成を奨励すること及びそのような計画の作成のために必要な調査をできるだけ早い機会に行なうことを決定した。この点に関し、この会議に参加した発展途上にある諸国は、地域的海運施設の改善及び拡大の可能性の研究を行なうことが望ましいことを指摘した。
一一 会議は、従来のこの地域に対する先進国及び国際機関からの援助が比較的少なかったという事実に注目し、この地域の発展途上にある諸国に対する開発援助の増大を容易にすることが必要であり、また、健全でよく検討された開発計画の作成を含む適当な措置を講ずることが緊要であることを認めた。会議は、また、国際機関及び先進国がこの地域の経済開発に対し、より深い関心を示すことが必要であることを認めた。これに関連し、この会議に参加した発展途上にある諸国は、発展途上にある諸国に対する援助を国民所得の一パーセントまで拡大し、かつ、そのかなりの部分を東南アジアに振りむけるという日本国の声明を歓迎した。会議は、また、近く設立されるアジア開発銀行が果す役割に対し大きな期待を示した。
一二 会議は、このような会議が東南アジア諸国の経済開発を促進する上に極めて有用であり、また、アジアに繁栄と安定とをもたらすことに大きく貢献するであろうことを認め、一九六七年にマニラにおいて、再びこの会議を開催することに合意した。