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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第二回東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ

[場所] マニラ
[年月日] 1967年4月28日
[出典] 外交青書12号,27−29頁.
[備考] 
[全文]

一 第二回東南アジア開発閣僚会議は、一九六七年四月二六日から二八日までフィリピンのマニラにおいて開催された。

二 会議にはインドネシア共和国、日本国、ラオス王国、マレイシア、フィリピン共和国、ヴィエトナム共和国、シンガポール共和国およびタイ王国の八カ国が参加した。

 会議には、インドネシア共和国からフランス・セダ大蔵大臣、日本国から三木武夫外務大臣、ラオス王国からインペン・スルヤタイ計画協力兼司法大臣、マレイシアからモハメッド・キール・ジョハリ文部大臣、フィリピン共和国からエドウァルド・ロムアルデス大蔵大臣、マルセロ・S・バラトバット商工大臣、アントニオ・V・ラキサ公共事業通信大臣およびアルフォンソ・カララン国家経済審議庁長官、ヴィエトナム共和国からグェン・ヒュウ・ハン経済財務大臣、シンガポールからS・ラジャラトナム外務大臣、ならびにタイ王国からポット・サラシン国家開発大臣が出席した。

三 会議には、またカンボディア王国からヘム・ファンラシー駐比大使、アジア開発銀行から渡辺武総裁が出席した。

四 フェルディナンド・E・マルコス大統領は、マニラ会議の開会式における歓迎の挨拶において会議の意義を強調した。

 マルコス大統領は、「われわれはこの地域とその住民に対する愛情および相互的な利益に基づいて、この平和の会議のため一堂に会することを選んだのであり」、従って会議は「アジアの指導者の兄弟的友好関係の一つの頂点である」旨をのべた。大統領は、さらに第二回閣僚会議は「域内開発の現状についての、われわれの真剣な関心を示すものである」と付言した。

五 会議における討議は終始率直かつ和気あいあいたる雰囲気の下で進められ、またアジアが直面する重要な開発問題の早期解決に対する参加国の強い関心を反映した。

六 会議は東南アジアにおける経済開発の進展と問題点に関する全般的な評価を行ない、東南アジア諸国各国の経済において或る程度の進歩があったことを認めた。会議はまた昨年日本の東京における第一回閣僚会議以来域内諸国の間に経済協力の面で一層の進展が見られたことを満足の意を以て注目した。

 会議は特にアジア開発銀行の設立および東南アジア農業開発東京会議の開催のごとく経済開発のための地域協力および連帯性の強化に資した一連の重要な出来事を想起した。

 しかしながら、会議は地域的協力の基礎を一層強化するため更に努力する緊急な必要を認めた。

七 東南アジアが大きな経済的可能性を有する重要な地域であり、この可能性はこれが効果的な計画と実施を通じて共同して活用され開発されるならば、将来の発展と繁栄のための確固たる基礎を提供することの出来るものであることを強調した。会議は如何なる地域的プロジェクトの成否も資金的および技術的寄与における共同の努力のほかに更に重要なことには、各国にこのような地域的プロジェクトとかみ合うことの出来る健全な開発計画と一貫性のあるプログラムが存在することによるところが大であることを確信した。

八 会議は地域内の発展途上にある諸国の有する重要問題の中には、人口の急速な増加と農業生産の遅滞があることを確認した。これに加えて開発プログラムに資金を供する財源の不足に注目し、アジア開発銀行がこの不足を緩和することに助けとなることを希望した。

九 本会議出席国は第二回閣僚会議が東南アジアの経済開発に向って確たる前進をもたらすであろうことを期待しつつ地域協力の推進という共同の努力において各自がその役割を果す意欲があることを表明した。

十 会議は東南アジア農業開発会議の報告をきいたのち地域の農業開発のための投資を拡大する緊急な必要があることおよび国内において必要資金を確保せんとする政府および民間の努力にかかわらず東南アジア諸国の農業開発プロジェクトのために緩和された条件による融資あるいは無償供与のための基金を設置することが必要であることに注目した。会議はかかる基金をアジア開発銀行の特別基金として設置することに全面的に賛同した。会議はアジア開発銀行に対し同銀行がかかる基金の重要性を全面的に認識し、この構想の実現のため積極的に検討を開始したことにつき謝意を表明するとともに同銀行総裁に対しかかる検討の結果を報告したことにつき、謝意を表明した。

一一 会議は次の諸点につき合意した。

 (一) アジア開発銀行に対し農業開発基金の設置に関して具体的、包括的研究を更に行ない、かかる基金ができるだけ多くの財源をもって最も早い機会に設置されるように最善の努力を行ない、東南アジア閣僚会議に対し基金の管理と運用に関連する諸点につき報告するよう要請すること。

 (二) 特別基金の運営に当っては閣僚会議を通じて表明された東南アジア諸国の見解と利益が充分に考慮に入れられるよう会議の要望として表明すること。

 (三) 先進諸国に対しアジア開発銀行により管理されるかかる基金に対し相当額の拠出を行なうよう要請すること。

 (四) アジア開発銀行および拠出諸国に対し東南アジアの農業開発に利用できる資金が極度に不足していることを認識し、この基金の運用に当り東南アジア諸国に主たる重点を置くよう要請すること。

一二 会議は農業開発特別基金に拠出するとの日本の申し出を感謝を以て歓迎した。

一三 会議は東南アジア漁業開発センターの設立を検討するため、昨年一二月東京で開催された東南アジア農業開発会議における決定に基づき設けられた作業部会の報告を聴取した。

一四 会議はこの報告に盛られた諸勧告を検討した後、東南アジア漁業開発センターの設立に同意した。会議は更に同センターの組織ならびに運営の態様およびその財政問題に関する協定案をそれぞれの政府に承認のために提出することにより同センター設立の最終的準備を行なう作業部会を会議参加諸国の代表の参加を得て三カ月以内に組織すべきこと、および日本がこのような作業部会を組織する責任を負うべきことに同意した。

一五 会議はこの地域の発展途上にある諸国が農業開発と併行して、工業化の努力を継続しなければならないことに注目した。会議は工業化への望ましい努力を阻害する次の四つの制約要因を認めた。

 (a)資本の不足 (b)国内市場の狭隘さ (c)外貨の不足および (d)技術の欠如。

 この関連において、会議は東南アジア諸国間のより一層緊密な地域協力および各国におけるより一層強化された努力の必要性を認めた。

一六 会議は域内および域外の先進諸国に対し、第一回国連貿易開発会議の諸勧告にしかるべき考慮を払いつつ、発展途上にある諸国の半製品および製品に対する特恵待遇ならびに発展途上にある諸国の一次産品および製品に関する関税障壁を含む貿易制限の引下げまたは撤廃についての東南アジアの発展途上にある諸国の緊急な要請に慎重な考慮を払うよう勧奨することに合意した。

一七 会議は域内の貿易および経済協力のための一層の努力が必要であることを強調するとともに、このような努力は東京における第一回閣僚会議において了解されたところに従ってこの地域の運輸通信の必要性の見透しに重要な意義を有することに注目した。会議はこの地域の運輸および通信の必要性を一つの全体として見る必要があることを強調した。このために会議は運輸および通信のための地域的開発計画に関する勧告を作成し、この分野において外部から融資を受けるための適切な計画を見出し、準備するために東南アジア諸国の高級政府代表者会議をクアラ・ランプールにおいて開催するとの提案を全会一致をもって採択した。

 会議はまた、現存する港湾施設の改善のための地域開発計画に関し、必要な研究を行なうことおよび東南アジアにおけるかかる施設の開発に関するセミナーを、一九六七年五月東京において開催することにつき合意をみた。

一八 会議は東南アジアにおける再保険プールの存在が地域内の危険負担のたくみな配合と保険料の蓄積を通じて資本形成の増加を促進することを認め、東南アジア各国の政府および再保険会社がかかるプールの設置の可能性を探究するようにとの希望を表明した。

一九 会議は現在の形式の会議が東南アジア諸国の経済開発を促進する上に極めて効果的であり、又、アジアに繁栄と安定をもたらす上で大きく寄与するであろうことを再確認し、従って一九六八年にシンガポールにおいてこの会議を再び開催することに合意した。