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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インドネシヤにおける佐藤内閣総理大臣の晩餐会スピーチ(第二次東南アジア訪問)

[場所] 
[年月日] 1967年10月10日
[出典] 佐藤内閣総理大臣演説集,156−158頁.
[備考] 
[全文]

スハルト大統領代理閣下、スハルト令夫人、ならびに御列席の皆様。

 今夕ここに御来臨賜わり、厚く御礼申し上げます。

 私共の到着以来大統領代理閣下御夫妻はじめインドネシア官民各位の暖かい御配慮によつて快適にして有益なる滞在をいたし得ましたことに対し、妻とともに心から感謝申し上げます。今回の訪問において閣下をはじめインドネシア国民の方々に親しくお目にかかり、懇談する機会を得ましたことは私の大きな喜びであり、また、学ぶところはなはだ大であつたと考えます。限られた時間内ではありましたが、友情あふれるインドネシア国民の心にふれ、かつインドネシアの豊かな自然環境と偉大な可能性をより良く認識し得た思いがいたします。

 インドネシアの指導者各位は困難な現実を直視し、経済と民主の安定を第一の優先課題として、国民各層間の調和を図りつつ新たな基礎の上に現実的、実際的な国内政策を進めておられます。また対外的には善隣友好を推進し、世界の諸国と幅広い協調を遂げんとする努力を払つておられます。私は明日の発展のために、今日貴国の行なつておられる耐乏の努力に対し深い敬意を表するものであります。また、その賢明な対外政策に基づいて最近地域協力の推進に力を注ぎ、新たな地域協力機構の発足を見たことも意義深いと思います。同じ地域にあつて共通の問題を有する諸国が協同して相互の発展のため努力を払うことをわが国は歓迎するとともに、これが他の地域の諸国とのさらに広い協力を前進させるに役立つものとなることを希望するものであります。

 さて、今回私が貴国を訪問するにあたりまして、私はインドネシアの伝統的文化のひとつである四行詩のつぎの一つに感銘を覚えました。

  鳩の定めは空飛ぶにあり、

  その飛ぶ行方は岡なる巣なり。

  愛の出ずる門は眼にあり、

  その求むる宝はこころなり。

 今回私が貴国を訪問するに際して最も重要なことはインドネシアの人々のこころを知ることであると考えて参りました。そしてこのたびの滞在中私はいたる所でインドネシアの人々の暖かい心に触れることができました。私の今回のインドネシア訪問も極めて短期間となることを余儀なくされましたが、この間得ました経験を十分活用して私は、今後新たな基礎の上に立つ日・イ提携の一層の強化とアジアの発展のため尽したい所存であります。

 ここに大統領代理閣下御夫妻の末永き御幸福、インドネシア国民の光栄ある発展と日・イ両国間の友好の一層の促進を祈つて乾杯いたしたいと思います。