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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インドネシア賠償についての外務省資料

[場所] 
[年月日] 1970年4月17日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),960−961頁.外務省公表集,昭和45年,196−8頁.
[備考] 記事資料
[全文]

一、インドネシアに対する賠償は日本とインドネシア共和国との賠償協定に基づき、昭和三十三年四月十五日から実施されてきたが本年四月十四日に十二年間の供与期間を終了し、総額八〇三億八八〇万円(二億二、三〇八万ドル)の供与が完了した。

二、賠償及び賠償担保借款により実施した主なプロジェクト及びプラント類に対する支払い状況は次のとおりである。

  ブランタス河及びカナン河計画

    一〇九億一、三〇〇万円

  製紙工場

     六四億六、七〇〇万円

  合板工場

     二三億九、四〇〇万円

  綿紡績工場

     三二億七、六〇〇万円

  ホテル建設工事

     七四億八、二〇〇万円

  デパート建設工事

     三七億二、八〇〇万円

  ビル建設工事

     二〇億八、六〇〇万円

  橋梁建設工事

     三三億八、三〇〇万円

  ドック建設工事

     二二億六、四〇〇万円

三、前記二のプロジェクト及びプラント類以外の計画に充てられた賠償資金の支払状況は次のとおりである。

機械類(船舶、自動車等)

    二六七億〇、八〇〇万円

  消費財(医薬品、化学肥料等)

三三億六、二〇〇万円

  開発計画調査関係

      九億三、九〇〇万円

  教育訓練計画(留学生、研修生)

     三〇億八、〇〇〇万円

  賠償使節団経費

     一二億六、二〇〇万円

四、前記二のプロジェクト及びプラント類の現状を略記すれば次のとおりである。

  プランタス河及びカナン河計画ではネヤマ排水トンネル(完成)及び三Kダム(カランカテス、カリコント、リアムカナンの三ダム)の建設資金として大部分が使用されたが、三Kダムの未完成部分については、現在借款によるプロジェクト援助資金で継続実施中である。シアンタル・バニユワンギ等の製紙工場は既に完成し、稼働中である。合板工場については賠償資金をもって完成させるべく工事中のもの一件とインドネシア側が自己資金で継続して完成させる予定のものが一件ある。綿紡績工場は良好な状態で稼働している。ホテル・インドネシア及びバリ・ビーチ・ホテルは極めて良好な営業成績を上げ、外貨獲得、観光開発の面から高く評価されている。工事の完成していないビルについては、インドネシア政府とわが政府の民間企業との合弁により工事を継続するとともに、完成後の経営にあたることとなった。

五、インドネシア賠償によって実施されたプロジェクト及びプラント類の建設、操業は現地通貨不足、特に一九六五年のいわゆる九・三〇事件以後のインフレによる経済混乱等により、順調かつ効率的に実施されなかった時期もあるが、これ迄十二年間にわたって供与されたインドネシア賠償全般につき、総合的な立場からこれを評価すれば、輸入製品の国産化とこれに伴なう外貨の節約、インフラストラクチャー部門の改善(ダム建設等)と産業開発の基盤整備(電源開発調査及びその他のフィージビリティー調査等)、ジャワ島の人口拡散計画と地域開発計画の促進、余剰労働力の吸収(ジャワ島以外に建設された各種プラント類)、国際級ホテルの建設による観光開発(バリ島)、各プロジェクト分野における技術水準の向上、留学生、技術訓練生(研修生)の受け入れによるわが国の教育、文化等の紹介とこれに対する理解の促進等、インドネシアの社会、経済、文化、技術の面で直接的のみならず間接的にもその効果は少なからぬものがあった。

六、賠償総額の支払完了(四月十四日)後、四月十五日午後十時、インドネシア賠償使節団・アリフィン団長、インドネシア大使館・スキルマン公使等は外務省を来訪し、賠償総額支払完了の確認、賠償締結の挨拶、インドネシア共和国外務大臣発、愛知外相宛メッセージの伝達、残務整理期間中における使節団存続の確認等の賠償締結に関する諸手続を了した。