データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ヴィエトナム和平に関する大平外務大臣談話

[場所] 
[年月日] 1973年1月24日
[出典] 外交青書17号,549−550頁.
[備考] 
[全文]

 長きにわたり続いたヴィエトナムにおける不幸な戦争を終息せしめることにつき,今般関係当事者間に合意が成立したことは,誠によろこばしく,アジアの一国としてわが国は心からこれを歓迎するものである。

 ヴィエトナム和平の実現は,アジアの諸国民のみならず汎く世界のすべての諸国民の期待に応えるものである。関係当事者が交渉による問題解決のためたゆまぬ努力を積み重ね長く困難な道のりをのり越えて今般和平の合意に達したことに深く敬意を表するものである。

 ヴィエトナムにおける停戦は,朝鮮半島における地道な対話の努力,日中関係の正常化等と相俟つて,アジアにおける緊張緩和の気運を一層増進し,アジアの平和と安定のために大きく寄与するものと確信する。

 わが国としては,互譲の精神により築き上げた和平合意を関係当事者が十分尊重し,またとくに南ヴィエトナムにおける両当事者が今後公正な政治問題解決につき真摯な努力を惜しむことなく,自らの運命を叡智と寛容の精神をもつて切り開くことによりヴィエトナムの永続的平和と政治的安定を確保するよう衷心から希望するものである。またヴィエトナムに引き続き,ラオス,カンボディアにおいても一日も早くく和平が達成されることを期待したい。

 わが国としては,従来より述べて来ているように,インドシナの平和維持と安定のためにアジアの一国として積極的にわが国に相応しい寄与をしてまいりたい。そのためにこのたび当事者間の合意により達成された和平を積極的に支持し,さらに将来のアジアの安定と平和を確保していくための国際会議開催等の方途につき進んで他のアジア諸国と協議検討していきたいと考えている。

 わが国としては,この地域の難民,戦争犠牲者の救済など緊急を要する問題については,迅速に援助の手を差し延べたいと考えており,このため政府としては必要な予算上の資金手当を準備している。

 また,インドシナ地域の戦後復興と経済開発のためには幅広い国際協力が必要であり,わが国としてもすでに明らかにして来たように出来る限りの協力をしたいと考えている。ただ,インドシナ復興のためにいかなる国際協力が可能であるかはヴィエトナム和平後のインドシナ情勢の推移,関係国の意向等を十分考慮しつつ,最も有効適切な方策を検討しなければならないと思う。