[文書名] 第5回日・タイ貿易合同委員会共同コミュニケ
1. 第5回日・タイ貿易合同委員会は,1973年1月22日から25日までバンコックにおいて開催された。
2. 閣僚会議においては,日本側から中曽根康弘通商産業大臣を首席代表とする代表団が,また,タイ側からプラシット・カンチャナワット商務大臣を首席代表とする代表団が出席した。
事務会議においては,日本側より吉田健三外務省アジア局長を首席代表とする代表団が,また,タイ側からウイチャーン・ワットオング商務次官を首席代表とする代表団が出席した。
3. 中曽根康弘通商産業大臣はさらにタノム・キテイカチヨン首相及びプラパート・チヤルサテイアン副首相を訪問する機会をもち,貿易その他の問題に関し意見交換を行なつた。
4. 両国代表は,1968年日・タイ貿易合同委員会創設以来の日・タイ貿易関係について検討し,世界的貿易環境の急激な変化が見られる重要な時期において,この合同委員会がかねてより一層の焦点を当てられるようになつている諸問題の迅速かつ実際的解決策を見出すべくより多くの時間と努力を払うべきであることを強く確信するに至つた。
5. タイ代表は,日本政府の輸入自由化に対するこれまでの努力を評価する一方,なおタイ国から日本への輸出品に障壁が残存することによる影響を分析し,タイ経済の有効な多様化を成功させるため不可欠の輸出品目の日本への輸出増加を容易にするため,個別にかつ詳細な提案を行なつた。
6. 日本代表は,日本が現在の立場を維持しなければならないとする国内的必要性を説明したが,この枠内であつてもタイ代表の指摘したタピオカでんぷん,パイナップル缶詰,皮製品及び葉タバコの輸入増加が可能であることに同意した。
7. 両国代表は,年間輸出目標の設定が,タイの日本への輸出増加のため最も有効な手段の一つであつたことを認めた。これに関連し,タイ代表は97品目にわたる農産品,鉱産品及び工業産品の1973年の輸出目標リストを提出した。
両国代表は,本年3月ないし4月に予定されている民間レベルの会議において,1973年の輸出目標につき合意し,かつその実施と達成をはかるための詳細を策定するべく関係民間部門に対し適切な指示と十分な奨励を与えることとした。
さらに,民間部門において,この目標に対する輸出実績につき半年ごとに検討することが,問題点を明らかにし,かつ必要な調整を行なうのに有益であることを認めた。
輸出目標のリストの討議にあたつて,タイ代表は,ほたる石の1973年の輸出目標に対し日本代表の注意を喚起した。日本代表は,ほたる石300,000トンの目標は現在の好条件が続けば可能であろうと述べ,また,この商品の輸出を増進するための追加措置として日本国内の輸入業者に対し,ほたる石備蓄のための援助が与えられている旨指摘した。
8. タイ国から日本への特定の輸出可能品目を開発するため日・タイ両国が緊密に協力することは,両国の調和のとれた経済発展に大いに貢献することを認識し,両国代表は協力のための諸方式を探究し,対日輸出品目の生産及び市場拡大に関する提案について討議を促進することを合意した。
(1) 生産に関する諸計画
日本代表はタイ国政府がエビの養殖及び家畜の病疫予防を促進するため最大限の努力をもつて協力することに合意した。
日本代表は,さらに豆類及びハチ蜜生産の開発に関するタイ代表の協力要請構想に留意しこれらに関る討議を進めるため更に詳細な資料の入手方要請した。日本代表は,また,タイ代表のタイ国内におけるメイズの総合的輸送手段に関する要請に政府が妥当な考慮を払うよう伝達することに合意した。
さらに両国代表は,日本の経済協力基金のタイ国農業及び農業協同組合銀行に対する借款交渉が進展していることに満足の意を表明し,この借款を直ちに実施することがタイ国の農業発展にとつて最も好ましいことに意見の一致をみた。
(2) 販路拡大に関する諸計画
両国代表は近い将来冷凍煮沸肉の対日輸出を可能ならしめるため,両国政府間で冷凍煮沸肉の加工に関する特別取決めを早急に締結することに合意した。
両国の代表は更にタイの生鮮果実の対日輸出の可能性について討議した。この種の果実のタイ国よりの輸出は,日本の植物検疫規制上の要請に合致しない限り可能ではないということに留意して,日本代表は要請があれば実情調査のため日本より専門家をタイ国へ派遣する用意がある旨述べた。
タイ国が生産能力を有する建設資材,工業製品の部品及び繊維品の将来の日本市場での需要調査につき,タイ代表の要請に応えて,日本代表はこのための調査を実施し,報告書を作成することについて合意した。
9. 域内協力の枠内においてわが国の援助計画を通じ,日・タイ間の緊密な関係の一層の増進が可能であるということを認識し,両国代表は,次の了解に到達した。
(1) 日本代表は,将来日本政府がタイ米その他の外米をKR食糧援助計画に利用するよう最大限の努力を払う旨述べた。これに関連し,日本代表はこの目的のためにタイ米の入手が可能となることが望ましい旨表明した。
(2) タイ代表は,また,日本政府がインドシナ援助を行なうに当つてタイ産品を利用すべく最大限の努力を払うことを要請した。
日本代表はインドシナに対する人道上かつ民生安定のための贈与を行なうに当つては調達されるべき財貨及び役務がタイ国内において妥当な競争価格で入手できる場合は,タイ国から調達するよう所要の手段を講ずる用意がある旨述べた。
さらに日本代表は日本政府が供与する借款に対し開発途上国からの調達を認めることを日本政府が既に決定した旨述べた。
タイ代表は,日本政府が同様の調達方式をインドシナに対する復興その他の目的のための贈与を将来行なう場合にも適用するよう要請した。これに対し日本代表は,現段階では,多国間取決めないしは2国間取決めによりそのような贈与を行なう具体的計画はないが,タイのこの要請に妥当な考慮を払うであろう旨表明した。
(3) タイ代表は,日本が導入した一般特恵制度が開発途上国からの輸出の流れを増大し,その結果これら諸国の発展の可能性を増大させている事実を認識し,品目範囲を拡大し,かつ条件を一層緩和することにより,本特恵制度に改善を加えるよう要望した。
日本代表は一般特恵制度は常時再検討を加えており,タイ代表の要望を考慮する旨述べた。
10. 両国代表は,広範にわたる諸問題につき,会議を通じ,終始友好的かつ効果的な討議が行なわれたことに満足の意を表明した。
11. 両国代表は,日・タイ両国政府が合意する1974年の早い時期に東京で第6回日・タイ貿易合同委員会を開催することに合意した。
12. 日本代表は,本会議期間中にタイ政府から示された歓待に対して深く謝意を表明した。